剣と念の悪鬼夜行 作:狂戦士
実質小説版だけど吾峠呼世晴先生監修ありだから原作突入かもですね。
貿易港として栄える横浜の地に、まるで時代に取り残されたかのように長年人の入り込んだ形跡の見えない古びた屋敷。巷では変な噂が立っており、立ち入ってしまうと神隠しに遭うやら、得体の知れない何かを見たと言う。一方、その言葉を信じた者や鬼殺隊士数名が潜入を試みたそうだが、何も起こらず気づいたら入口に帰された者、そのまま帰ってこなかった者、色々な噂が立っていた。
そんないわく付きのような場所に2人の鬼殺隊士が突入しようとしていた。
「薄気味悪ぃ家だぜェ……」
1人は白髪を逆立てた全身傷だらけで露出の高い服を着た男、名を不死川実弥。
「待て実弥、単身飛び込むのは危険だ」
一方もう1人は至って普通の見た目で短髪で鬼殺隊の隊服を纏った男、名を粂野匡近という。
「あぁん? 危険だから行くんだろうが。中には鬼の手で行方不明となった連中がいるかもしれねえってのによ」
「…実弥、言い方が悪かった。
「……チッ、分かった……」
先輩鬼殺隊士ではあるものの世話焼きが過ぎるが為にいつもキツく当たっている実弥も鬼の存在を仄めかされるや否や我に返って匡近の言葉を真摯に受け止める。
(十二鬼月か…どんな鬼共が来ようが俺は刃を振るうだけだァ!)
血気盛んに闘志を宿らせる実弥。匡近と共に屋敷正面から堂々闊歩して行く、そんな時であった。
「!?」
嗅いだ事の無い異臭が実弥の鼻を覆った。腐乱臭か、あるいは菓子類か、そんな甘ったるい匂いに実弥は一瞬慄くも、即座に顔を振って匂いを払う。
「ん?おい匡近…、匡近ァ?」
先程まで実弥の右隣に居たはずの匡近が、忽然と姿を消した。
「…どういう事だァ?」
辺りを見渡しても気配すらしない。ならば瞬時に外へ出たのかと確認したものの、そこにも当然ながら匡近の影はない。まるで神隠しに遭ったかのように忽然と姿を消していた。
実弥はただ、その場で悪態をつくしかなかった。
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(そう、また鬼狩りが来たのね……)
どうやら私の住む屋敷にまた虫けら共が土足で踏み入ってきたらしい。屋敷周りに焚いてる
(………成程、白い髪した方は結構
このお香のおかげで毎度侵入者を事前に察知してるのだけど、今回はいつもの退屈で代わり映えしない雑魚共相手とは異なる異質な事情の持ち主がやって来たみたい。
(こんな一目で分かる珍しい子がやって来るなんて……こんな昂りいつぶりなのかしらねぇ……)
久方ぶりの心躍る感触。こんなウキウキ気分になるのは忘れもしないあの日、
夫に先立たれて娘も失った悲劇の母親という設定にもそろそろ陰りが見えてきた頃だった。
(あの親子、今は確か海の向こうで任に就いてるのよね……。初めて顔を合わせた時は家に泊めてくれだなんて少し驚くような頼み事をしてきた子だったけど、まさかその子が私の運命を変えるだなんてね………)
幸せになりたい私の欲望を汲み取って新たな生き方を示してくれたあの子。互いの目的は違ったかもしれないけど、私は確かに幸せへの切符を手にした。
(まぁ、今は目の前の鬼狩りを弄んであげるのが先ね……)
恩人であるあの子にまた会えたらいいなという私の細やかな希望も、きっと時を経れば叶う筈。
___その可能性により近づく為、私の左目にその
「…気分がいいわ。そうね、今回は特別に……
そんな私の傍らには病に苦しむ子どもたち。
「さて、白髪の子は興味深い事情を抱えてるみたいだけど、黒髪の方は外的要因で親兄弟が死んだだけでつまらなそうね。どうしようかしら?」
一方、私の屋敷に土足で踏み入った特に興味なしの片割れの方。どうしようかと悩むけれど、私の血鬼術を強引に破って
「さて、姿が見えなくなった片割れに彼らはどう焦りを見せるのかしら……」
急に神隠しの如く姿を消したとなればきっと慌てふためく奴らの姿が拝める。
ここはかつて私が人間だった頃に
「…さて、一方で白髪の子は、紆余曲折迷いながら段々この部屋まで歩を進めているみたいね……」
お香の探知が報せるには、強制的に二手に分かれさせられてお香の幻術に罹った白髪の子は、私が血鬼術で幻の中に作り出した1本道を通ってこちらに向かってる模様。お出迎えまであと僅かといったところね。
「……さてと」
親との辟易、それはとても辛いこと。
…私の子どもとして可愛がって救済してあげないといけないわ。
「ゲホッ!!ゲホッ!!」
「あぁごめんね!放りすぎちゃったわね。大丈夫?」
つい過去に思いを馳せすぎて私の傍で病床に伏せた6人の子どもたちを放ってしまった。
「あらまた吐いちゃったのね可哀想に…。ほら、お水飲んで……」
私は衰弱した1人の子どもの嘔吐物を拭き取り、お水を飲ませてあげた。もう3人は
「大丈夫よ。あなたたちは私がずうっと守ってあげるから」
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「………ッ!」
ふと背後から感じる気配。子どもたちの看病の間にチラりと視線をやればようやくご対面の目的の子、お香探知で察知した事前情報そのままの少年の姿。全身傷だらけでどう動いたらそんな哀れな姿になってしまうのか、ただ只管に可哀想だとしか思えない。
その証拠に私の長年の勘がこう告げている。家族間での辟易を切欠に自他共に傷つけ合うことがこの非行少年の顕れなのだと思う。
(絵に書いたような…なんと哀れな……)
やはり私は彼を子どもとして迎え入れ、救いの手を差し伸べてあげなくてはならないと心より感じた。
「みんな、新しい子が来たわよ。仲良くしてあげてね」
すかさず私は6人の子どもたちに対して彼を紹介する。彼も私の戯れに加わるのだから当然のことよ。
そうして引き続き彼らの世話をしていると鬼狩り特有の刀を抜く音と共に私の頸に向けて刃が振り下ろされる。
「……ッ!」
「だめよ、おいたしちゃ」
けれどそんな甘い斬撃、私に傷1つ負わせることなんて出来ない。これから貴方の母親となるのに、息子の攻撃をあっさり喰らうようでは情けない。だって強くて慈しむ慈母なのだから。
(その点では、かつて
彼は言っていた。鬼として術にだけ頼るような慢心は犯してはならないと。術だけではなく鬼という種族として基本の体術面においても強みがなくてはならないと。
そう言った意味ではあの夫の暴力も、私を不幸の被害者にするだけには留まらず、根本的な面でも強くしてくれたのね。
(まあ、あんな夫もう用済みだから要らなかったんだけどね)
ここから離れようとする輩は誰1人として決して許さない。自分の所有物が勝手にトコトコ離れていくのを見過ごすだなんて愚か以外の何でもないわ。
「匡近を何処へやったァ?」
「まさちか?」
まさちか、恐らく彼と同行してきた黒髪の子のことね。
「あぁ、あの子なら要らないからいいの。あなたを必死こいて探してるみたいだけどそのうち諦めて帰るでしょ。私が欲しいのは貴方だけなんだから」
あの子はこっぴどく屋敷から追い出してやったわ。もう一度ここに踏み入ろうものなら、以前私が過ごしていた空っぽの屋敷に送られてただただ迷うだけになるでしょうね。
「可哀想にね……」
私は彼の過去をある程度理解した。親に虐げられていたんだと、私の勘と彼の目が証明している。それを理解してあげた上で私は彼の両頬に手を添えた。
「あなた、親に虐げられていたでしょう? 父親? 母親? それとも両方かしら?」
彼の心の傷を、私が守ってあげることでどうか癒すことが出来れば、そう思って親身になるつもりで優しく微笑んだのに、彼は途端に顔色を変えて刀を構えだした。
「テメェェェェェ!!死にやがれェェ!!!」
「あらあら聞き分けない子ね。ダメじゃない。子どもが親に刀なんか向けちゃ」
彼は睨みを効かせながら私のことを見据えてくる。それを見て私は彼のあまりに滑稽な言動に笑みを零す。
(…とはいえここまで反抗的だと仕方ないわね、第2段階に移行しましょうか)
私はこの場にかけていた術の一部を解除する。
「っ……!?」
すると辺り一面がブヨブヨとしたまるで肉の塊かのように周囲が変化する。自分で
「なんだァ?この薄気味悪ぃ場所はァ?」
「私のお腹の中よ。これで貴方も私の子」
「はァ?」
「これでも信じない?」
丁度よく用済みと化した屍3つがあったので見せしめの意味も込めて腹に還してあげた。3人の死体が私の肉に沈んでいく光景が彼の目にも映ったでしょう。
「…ご馳走様」
「…………テメェ、亡骸を何処へやった」
「もちろん、食べてあげたのよ」
私の胎内に還すことでずっとお世話が出来るでしょと続けると、彼の怒りに燃えるかのような表情が再び顕となる。
「…その巫山戯た母親の真似事が気に食わねえ。今すぐやめろ」
「真似事?」
…今彼はなんと言ったか。私の行いを単なる真似事と? 私が幸せになる為にも子どもが幸せになるためにもと、献身的に支えるのが単なる真似事と言ったの?
「私は病に奪われた愛娘の代わりに、親に恵まれなかった子供たちをここで癒してあげてるの。わたしはそういった親に虐げられてきた子の事がすぐ分かるの。どんなに傷つけられてきたか、どんなに悲しい思いを背負ってきたか。だから私は彼らの母親になってあげた!」
この行いを否定することはそれ即ち子供を救うという私の善意に対する全否定。つまりは極めて悪しき行動と読める。
「ふざけんなァァ!!!テメェのどこが母親だァ?コイツらのどこが癒されてんだァ?」
すると、彼の声に充てられたのか背後から1人の息子がか細い声で何か言ってるのが分かった。
「…し…な……ず…が……」
これはいけない。重病人は喋れない筈なのに何か余計なことを口走ろうとしている。喉を潰してあげなくてはと、私は彼の喉に手を伸ばす。
すると私が手を伸ばし切る前に白髪の彼が猛速で私の目と鼻の先にいた彼の身を取り出して距離をとった。
「はぁ………」
誰にも気づかれないほどか細く小さな声で私は溜息をついた。
「アンタも母さんを捨てるのね」
私の前から居なくなろうとするなんて許せない。私が守ってあげると言ってあげたのに、今こうして奴は私の元を離れて向こう側に立とうとしている。
「ほんと要らないから。今すぐ死んで」
すると奴は白髪の彼を見据えるや否や泣き笑いのような表情で懐から刀を取りだし、そのまま何か一言二言だけ喋って自らの喉を掻っ切った。
そして飛沫をあげる真っ赤に咲いた華が、反射的に白髪の彼の頭体を染める。
「テメェ…こいつに何しやがったァ!」
「あらあら何を怒ってるの?その子は私を悪者に仕立てあげようとした。私は幸せに暮らしていたいのにそれを邪魔した。なら死んで当然の道理でしょ?」
そう私の心の旨を伝えればすぐ、彼は激昂し血眼になって真っ直ぐ日輪刀で斬りかかってきたわ。
____偽りの肉体に
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それから数分、そろそろ幻で彼を疲弊させる算段にも飽きてきた頃、事態は突然動き出したわ。
バリーン
近くで何かが割れる音と共に、突如辺りにかけていた幻術はまっさらと消えてしまい、気づけば先程追い出した筈の黒髪の彼が白髪の彼と合流していた。
「実弥!良かった!」
「匡近!無事だったのかァ……」
互いの無事を喜び合う2人、この光景はつまり、この匡近という黒髪の彼が私の予想に反してここら一帯の幻術を全て解除させてしまったということになるのね…。
そして続けざまに私の実娘の紗江が遺したであろう殴り書きの遺書みたいなもので出るわ出るわの私の本当の過去。
「またあの子が裏切ったのね」
私がそう口にすると、実弥という白髪の彼も匡近という黒髪の彼も、私に対する罵詈雑言を連発した。正直なところ、奴らの声に耳を貸す必要なんてないから聞くだけ無駄だろうと聞き流していたけど、最後奴らが口にした言葉に私は不愉快を隠し切れなかった。
「その名前で呼ばないで…私には姑獲鳥というあの子から頂いた大事な名前があるんだから!!」
奴が口にした弥栄という名前、それはとっくに過去のものであり、鬼と化した今となっては無用の長物。あの子だけが私の良き理解者、故に鬼となる道を選ばせてくれたあの子が命名してくれたこの姑獲鳥という名前は誇りだ。
(…なのに)
コイツらは生意気にもその名を口にした。お仕置きが必要ようね。
ー明治コソコソ噂話ー
当然原作の風の道しるべを参考にしながら書いてますがハーメルンの規約で原作コピペはダメみたいなところがあったので結構セリフ弄ってます。
次回から戦闘となりますが結構タブーなところ多そうなので戦闘編はだいぶ独自解釈の上で行う予定です。
今回みたいに将来柱や支となる者が下弦と戦闘するお話はオリ設定多めになるけど書いてよいですか? それともさっさと原作入った方が良い?
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次は宇髄天元だろ?書け。
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原作はよはよ!
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錆兎とか原作での死亡者の話は見てみたい