剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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また暫く投稿開きますごめんなさい!


70話 終わりと始まり

 

(あの日あの時、俺が復讐を誓った相手は本当に奴と同じ人間だったのか?)

 

段々とあの日俺が受けた恐怖とコイツが持つ妙な気配に整合性が見出せ無くなってきた。あのやる気の無さそうな鬼狩りと、責任感に溢れたこの男の言葉。

 

 

(知らない内に随分と考える脳が衰えたようだな。まだ狼のように唸っているだけのお前の方が内に秘める物は大きいように感じた)

 

と同時に朱雨様の言葉も頭を過る。俺が衰えてるなど、例え朱雨様のお言葉とあっても納得ならない。当時の記憶は無いが、それでもこの男に復讐を誓った時から力を蓄え続けて今、下弦ノ弐という数字を持つに至れた。

 

「甘露寺、お前たちは住民の保護と爆弾の解除に当たれ」

「…っ!煉獄さん…?十二鬼月を相手に1人で……」

「うむ。どういう訳かこの鬼は俺に固執しているようだ。それに、俺が柱として鬼殺隊を支える責務の為にも、奴を倒さねば示しがつかない」

「わ、分かりました!煉獄さん、無事でいてください!」

 

そうして甘露寺とか言った品のない桃緑色の髪の女は颯爽と街並みに消えていった。

 

(……なんだ。あの戦友のような関係、どこかで……?)

 

何故だか、奴らが戦闘中に交わした必要最低限の会話の中に妙な感覚を覚える。品の無い髪型同士丸ごと斬り捨てる時間もあったというのに、俺は何故立ち竦んでいるのかと、自分の動かぬ足に鞭を打ちたい。

 

(…まあいい。煉獄への復讐が完了後、奴の死体の前に部下共を誘い込み、絶望の渦中で嬲り殺すのも一興)

 

それでも俺の中に眠る復讐心は変わらない。過去に何かがあったのだろうと、今の俺は人間に牙を剥く狼のように、鬼として成すべきことをするまで。

 

【血鬼術 餓狼喰い】

 

無数の影から生まれた狼が、腹を空かした獣の如く奴へ牙を剥き駆けていく。

 

【炎の呼吸 漆ノ型 野炎立見】

 

だがその狼の群れも、円状に弧を描きながら迫り来る奴の広範囲の斬撃に全て崩れ去る。

やられたと思う場面やも知れぬがこれは真の狙いではない。

 

【血鬼術 石牙弾薬】

 

斬られた狼の中には予め爆薬を仕込んでいた。更には鹵獲控から火種となり得る銃弾を乱れ撃ちし、一斉に起爆させる。

___不思議と懐かしさに心躍らせながら、俺は全ての銃から引金を引く。

 

 

 

「流石の貴様もこれはどうだ!?爆弾と違って無造作に乱れ誘爆していく火薬の流れは読めまい!!」

 

この思いつきの血鬼術は先程の爆弾とは違い火薬さえあれば放てる。そして威力も人間相手なら申し分ない。しかも俺ですらどう炸裂するか分からない不規則性。

 

「さぁ……貴様の屍がもうすぐそこまで迫って来たぞ?まだ死なない……が、そろそろ瀕死の筈。どうだ?殺ったか???」

 

先程から散々痛めつけて来た以上ある程度はくたばって貰わなきゃ困る。刀を握ることすら不可能であとは死を待つだけが最も理想かつ憤死しかねる復讐の完遂。

 

「もう爆発音も聞こえん。指図め貴様の部下が爆弾を解除したのだろう……」

 

その解除された爆弾の分、……刀しか知らなそうな鬼狩り共に解除されたのは予想外だった。

 

「が、貴様が苦痛の末に三途の川へと向かうのなら上等かつ好都合だ………」

 

 

だが___

 

 

「……っ!」

「…どうした?俺はまだ立てるぞ?」

 

____奴は立っていた。背中を向けず、俺の方をじっと見据えて。

 

(……クソっ!)

 

すかさず俺は本能的に銃を取り出して奴に向けて引金を引いた。

奴の立ち姿を見た瞬間、俺は復讐の事も忘れ、『今すぐにコイツを殺さないと自分の身も危ない』と感じての咄嗟の出来事だった。

 

(……嘘、だろ?)

 

___引金から、弾が出ない(・・・・・)

 

さっきの一斉射撃で、弾薬も銃火器も全て使い切ってしまった。

 

 

「…蓮華殿、感謝する」

 

 

 

今まで鬼狩り相手に弾切れを起こすことなど無かった。

 

 

 

「……絶えていた炎の呼吸の陸から捌を………」

 

 

 

対峙して来た者は弾を使い果たす前に___

 

 

 

「___俺に伝授して頂いたこと」

 

 

 

__皆呆気なく息絶えたのだから。

 

 

 

【炎の呼吸 捌ノ型 焔斬り】

 

 

 

 

 

 

燃え盛る横向きの斬撃が、俺の頸に迫る。

 

 

 

 

 

(大丈夫ですよ!俺たちの剣は銃なんかに負けやしませんよ)

(惨めだな、いつまでも武士道だの時代遅れな)

(あぁ…えーと、とりあえず食え)

 

…頭を駆け巡るこれは、所謂走馬灯というものか。

 

 

 

 

(…堀川の刀か?これ贋作じゃねーか)

 

 

「…刀」

 

朱雨様が俺を鬼にしてくださった時のことが頭に過り、ふと呟きながら自らの懐を探る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【血鬼術 戦禍陣狼】

 

唯一残っていた武器、それは名も忘れた一振りの刀。

 

 

「確か…煉獄杏寿郎だったな……」

 

 

その刀ごと自らを血鬼術の影に包み込んで武装。

 

 

「俺は佩狼。ここから1人の武士として貴様を殺す」

 

 

例え真似事であったとしても、憧憬を抱いた侍として名を名乗る。

 

 

「あぁ、臨むところだ」

 

 

復讐でも仇討ちでもなく、1人の武士として向き合う。

そこにはもう、復讐(・・)の2文字はない。

 

 

 

 

 

 

【血鬼術 天然理心獣】

 

 

 

煉獄に対する畏怖と怨恨は残りつつも、不思議と煉獄杏寿郎(・・・・・)に対する復讐心は突然虚無へと変わった。

 

 

 

 

【炎の呼吸 玖ノ型 煉獄】

 

 

 

やがて煉獄杏寿郎も俺の技に迎え撃つかのように渾身の技とも言える型を繰り出してきた。

その型はあまりに洗練されており、瀕死の男が繰り出す物とはとても思えない。現に、俺が血鬼術で全身に纏っている影の鎧が抉り取られている。

 

 

「…………いい太刀筋だ」

 

 

気づけば、俺の頸は宙を舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ここは?」

 

意識を取り戻し、ハッと周囲を見渡す。確か俺は頸を落とされて鬼として(・・・・)死んだ。なのに何故俺は真っ暗闇な空間に1人佇んでいるのか。しかも真っ暗闇の筈なのに俺の体は何故日光の下かのようにくっきり目に映るのか。

 

 

 

「遅かったな」

「…えっ?」

 

突如声が聞こえた方へ振り返る。

 

 

 

「…こ、近藤さん?そして皆もどうしてここに………?」

 

そこにいたのは、かつて武士に憧れ志を共にした仲間たち。

 

「……どうしてって。お前を待ってたに決まっているだろう」

「そうさ、俺らは人を斬ってた連中。どの道天国には行けないし、それなら仲間を待ってからでも遅くないだろう?」

「…沖田、お前は相変わらずだな」

 

2人とも、俺より随分と先に亡くなったというのにずっとここで待っていたのか。懐かしさと共に、申し訳なさが出てくる。

…これでは本物の鬼に成り果てた鬼副長とやらも面汚しかもしれん。

 

 

 

「…ありがとうな」

 

 

 

 

 

 

「…さてと、実はまだこっちに来てない仲間がいてな。お前が最後じゃないんだ」

「え?」

「実は永倉と齋藤がまだ生きてるようでな」

「マジか。でも勿論俺も待つよ」

 

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

___場所は東京奥多摩 、雪降る険しい山道。

 

 

「半年ぶりだな義勇!」

「あぁ」

「水と支と柱で合同任務だなんて、こんな異例の事は初めてじゃないか?」

「あぁ」

「しかしなんで御館様はこんな奥多摩の山奥に俺たちを送り込んだんだろうな?」

「あぁ」

「ところで……」

 

 

 

 

 

 

「なんで蓮華さんもここにいるんだ?」

「やっと触れてくれたな。随分と2人の世界すぎて辛かったぞ」

「あぁ」

 

あんな義勇の言葉数で会話が成立してるのも私に中々触れてくれないのも色々言いたい事だらけだが漸く私にも光が当たったのでまあ良しとする。

 

「…まあちょっと、お前たちに着いていくと面白い事があるという言伝があってだな」

「なんだそれは」

「御館様からも許可は取ってる」

「本当…か?」

「本当だ」

 

実は杏寿郎にあの任務を投げたのはちゃんとした理由がある。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「妙な兆しが吹くような気がする……ですか?」

「あぁ、それも飛び切りに良い兆しがね」

 

突如御館様が私を単身産屋敷にお呼びなされた。至急との事で駆けつけてみたところ、既に御館様がいつもの場所におられた。

 

「……奥多摩にて水支柱に同行ですか。しかし良いのですか? 帝都に十二鬼月らしき鬼がいると、つい先程あの人(・・・)から情報提供が来たばかりですが……」

「うん、まだ鬼は動いていないようだからね。君も他の任務があるだろうし、最悪これは後回しにして貰って構わないよ。そしてもう1つ、それについて実は私に良い考えがあってだね。その件に関しては最近甲となった彼に任せてみようかなと思ってね」

「…っ!……それは!」

 

それはつまり、また新たな柱が誕生するかもしれないということ。そして、その新たな柱候補となるのが

あの酒男に代わって私が度々世話していた彼になるかもしれない。

 

 

「…そう、蓮華はどう思う?」

「そうですね……彼であれば無傷とまでは行かなくとも下弦であれば対処できるかもしれません。加えて彼には継子もいる事ですし、同行させて経験を積ませる事で一石二鳥の効果は得られると思います」

「やはり君もそう思うかい?」

「えぇ、彼ならば私の持ち場を任せても良いと自信を持って言えます!」

 

彼には時間のある時は度々稽古を付けたりした他、家系的にも私が何代にも渡って築いて来た縁がある。故に実力も理解している私が太鼓判を押せるということは即ち御館様の背中を押すことにもなる。

 

「…ならばもうひとつ頼まれてくれるかい? 実は彼につけてる鎹鴉が槇寿郎に石を投げられ追っ払われてしまって家に近づけないらしくてね。君の足で直接知らせを届けに行って欲しい」

「…承知致しました」

 

あの酒男は相変わらずだと、私も思わず苦笑いだ。とはいえ私には叱る資格も無いのかもしれぬが。

…とにかく、彼らの家に赴くとしよう。

 

「……ところで、私が何故水支柱2人と同行なのか具体的なことは…?」

「勘だよ」

「え……」

「勘だよ??」

「…分かりました。産屋敷家の先見の明、詳細は分からずとも外れた事はありませぬ故、この報せ伝えて参ります!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「…ということがあって帝都の件は投げてきた」

「マジか」

「御館様の先見の明は本物だ。何代にも渡って見て来た私だから分かるけど、的中率は10割さ」

「…本当か?」

「………少し盛った。9.5くらい。たまに明日の天気外してズブ濡れになりながらの時ある」

「外れの内容しょぼいな!」

 

そうこう談笑してると、どういう訳か急激に異端な雰囲気が漂ってきた。

雪道で暴れる音、血の匂い、舌につく視界が歪みそうな程の妙な気配。

 

「……いるな」

「鬼の…気配……」

「…あぁ」

 

談笑は何処へやら。鬼が絡むとなれば一斉に集中がそっちへ向くのは鬼殺の者として当然の事。水支柱だけあって私が顔色を変えると即座に臨戦態勢へと入り、全員嫌な気配がする方へ駆け出していく。

 

 

 

 

 

 

 

「頑張れ禰豆子!堪えろ!頑張ってくれ!」

 

そこには、鬼と化し身内であろう少年を襲っている少女と、少女鬼を斧の持ち手を咬ませて堪える少年の姿。

 

 




ー大正コソコソ噂話ー

この小説では佩狼=土方歳三説を推してます。


炎の呼吸、捏造の型一覧


陸ノ型 炎渦

周囲に渦巻く回転する斬撃を繰り出す。シェアァァ


漆ノ型 野炎立見

万葉集より4文字を四字熟語風に。
意味合いとしては東から登る太陽と沈む満月であり、東から弧を描いて西へ沈む太陽の1日を数日間送り何連撃か円状で放つ技。


捌ノ型 焔斬り

足を止めて横に薙ぐ型であり、玖ノ型煉獄とは薙ぐ方向が左右逆。
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