剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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79話 鬼殺隊外部協力者

 

「次ハー!浅草!浅草へ向カエー!」

「分かった。次はそこに鬼がいるんだな?」

「イヤ…スコシ違ウ!浅草デハ炭治郎ニ会ッテモライタイ者ト接触ゥ!接触シテモラウ!詳シクハ到着シテカラ!」

「?」

 

初任務を終え、休む間もなく浅草へ向かうように鴉に指示されるが、何だか次の任務は少々事情が異なるらしい。

 

「既ニ現地ニハ蓮華モイル!マズハ蓮華ト合流セヨ!」

「蓮華さんが!?」

 

どうやら浅草では既に蓮華さんが任務に当たってる模様。鴉も詳しいことは到着してから話すとの事なので、現地に赴いたらまずは蓮華さんを探し合流するところから始めると言ったところか。

 

 

____________________

 

 

 

「ここが………浅草…………」

 

辺り一面、溢れんばかりの人だらけ。夜だというのにあちこちから光が差し込んで来ていて、噂でしか聞いたことの無い物が沢山ありすぎて思わずぶっ倒れそうになる。

 

「はぁ……」

 

初めての大都会にもうクタクタだ。1歩足を進める度に新しい情報が次々と舞い込んで来るものだから、頭がおかしくなりそうだ。

 

「すいませぇーん………山かけうどん1つ………」

 

色々と疲れきった俺は、とりあえず腹ごしらえにと、町外れにあったうどんの屋台に腰掛ける事にした。

 

「はいよ〜!……………あんちゃん大丈夫かい?顔色悪いぞ?」

「大丈夫です……」

 

少し疲労が顔に出過ぎてしまったのか、うどん屋の店主さんにまで心配されてしまった。

 

「ほいよ、うどん1杯」

「ありがとうございます…いただきます……」

 

そうして割り箸を手にうどんを啜る。疲れに染み渡るいい味だった。

 

「ご馳走様です……」

 

そうしてうどんを食べ終えて立ち上がったその瞬間、嗅ぎ覚えのある独特の匂いが鼻に入ってきた。

 

「この匂い……!」

 

禰豆子を箱に戻し、俺は一目散に駆け出した。

この匂い、俺の家に残っていた匂いと一致する。間違いない。間違いなく鬼の始祖である鬼舞辻無惨の匂いだ。

 

「何処だ……!何処だ………!」

 

浅草の人混みを掻き分けて匂いの大元に段々と近づいてくるのが分かった。奴はもうすぐそこにいる。

 

「いた……!」

 

そうして俺は鬼舞辻無惨と思わしき男の腕を掴んだ。

 

 

「ん?」

 

奴も腕を掴まれた事に気づいた様子だった。

 

「…どなたですか?」

「……パパ、どうしたの?」

「あなた?どうかされましたか?この方はお知り合いですか?」

「!!?」

 

腕を掴んで分かった。鬼舞辻無惨の傍らには、人間の奥さんと子どもが付き添っていた。

 

「さぁ、私にも……私に何か用ですか?随分慌てていらっしゃる様子ですが……もしかして人違いですかね………」

「……………」

 

鬼舞辻無惨は普段は人間社会に溶け込んでいるのか。人間のフリをして、奥さんと子どもまで連れていて……。

 

「おい少年、月彦様に何の用だ?」

 

すると、無惨と俺の間に割って入るように、1人の男が鬼舞辻の腕を掴んでいた俺の手をガシッと掴んで目の前に立ち塞がった。

 

「この方をどなたとお考えで?この日本の経済を支えし貿易商の社長であらせられる月彦様に仇なすというのか?人違いか?ならばとっとと失せろ。この御方はお前のような小童がその汚い手で触れていいような御方では無い!」

 

護衛らしき男は俺の腕をギリギリと強く締め上げる。そして匂いからして、この男も俺の家を襲撃した実行犯でこそ無いが鬼舞辻無惨と同じ鬼だ。

 

「よせ朱雨、人違いだろう?あまり事を荒立てるんじゃない」

「ははっ!これは失礼しました月彦様!」

「ウチの護衛の者が失礼した。恐らく人違いだろうが………私に何か御用か?」

 

そうして俺が戸惑っていた矢先、一瞬鬼舞辻の手が通行人の男性の首元を掠めた。

 

「あなた…?どうかされました?」

「グゥゥ………グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

男性は途端に理性を失い、飢えた鬼となって今にも隣にいた女性に襲いかかろうとしている。

 

「危ない!」

「グォォォォォォ!!」

 

隣の女性に噛み付こうとしていた男性を無理やり地面に押さえつける。こうでもしないとこの人は人の味を覚えてしまう。

 

「おいどうした!?何の騒ぎだ?」

 

すると騒ぎを聞きつけた野次馬の他、警察官らしき人たちもこちらにやって来た。

 

「あっ!コイツ刀を持ってるぞ!」

「おい少年!そこを退け!」

「ダメです!この人には誰も襲って欲しくないんだ…!誰か縄を……」

「いいから退け!」

 

警官2人に引き剥がされそうになりながら、この人に誰も襲わせまいと必死に食らいついている中、鬼舞辻無惨一向はこの場を離れようとしていた。

 

「月彦様、この場を離れましょう」

「そうだな。ここに長らくいたら2人にも危害が及びかねない」

 

こうしている間にも、鬼舞辻無惨とその護衛の鬼は2人を連れて遠くへ離れて行っている。

 

「鬼舞辻無惨!俺はお前を許さない!地獄の果てでも追いかけて、お前の頸を斬る!!!」

「……あの餓鬼ッ!…………月彦様、お気にされる事はありません。すぐにこの場を離れましょう」

「………………あぁ」

 

腹の底から叫んだのも束の間、鬼舞辻無惨一向の姿は人混みの中に消えて行った。そして、鬼舞辻無惨の気配が消えると同時、若干ながら別の鬼の匂いが漂ってきた気がする。けど、他の鬼とは違う、まるで禰豆子のような人喰い鬼ではない鬼の匂い。

 

「…炭治郎、援護に来たぞ!」

 

加えて、野次馬騒ぎに混ざって聞こえたこの声。

 

「蓮華さん!!」

「説明は後だ!そのまま炭治郎は周囲の安全確保を頼む!あとは私と彼女たち(・・・・)に任せてくれ!珠代さん愈史郎さん!」

 

【惑血 視覚夢幻の香】

 

蓮華さんが叫ぶと同時、辺り一面に花紋様の帯みたいな光景が拡がる。微かに香る鬼の匂いから血鬼術の類みたいだけど、不思議と以前出会した鬼とは異なり術から敵意の匂いがしない。

 

「やはり……蓮華さんの仰っていた通り……貴方が炭治郎さんですね………?」

「貴女は……?」

 

血鬼術の隙間から2人の男女が姿を現す。

 

「私は………鬼ですが、医者でもあり、あの男、鬼舞辻無惨を抹殺したいと思っている。その意志の元、今は蓮華さんを通して鬼殺隊とも連携する、外部の協力者でもあります」

 

 

____________________

 

 

「お父さんは来ないの?」

「仕事があるんです。商談に行かなければなりません……」

 

先程の騒ぎの中心から遠く離れた街角の一角、2体の鬼と2人の妻子供が送迎の馬車を前に言葉を交わしていた。

 

「貴方………」

「奥様、ご心配なさらぬよう…。月彦様は私が責任もって護衛致します。大丈夫です。警官に尋ねるだけですから……」

「ふふふ…そうね。朱雨さんがいれば……」

「…えぇ、私の護衛は優秀です。先程の騒ぎと同様の事件が起きても、彼であれば私の身に危険が及ぶことも無いでしょうから……」

 

そうして妻子を馬車に乗せ、2人の姿が遠く離れ見えなくなるのを見届けた彼らは、近く路地裏の方へ歩を進めた。

 

「…………」

「…………」

 

2体の鬼は静寂の路地裏を無言のまま歩く。

 

「…………先程の餓鬼、月彦様のご正体に気づいてる様子でしたね」

「あぁ、この貿易商の身分も早く捨て、新たな潜伏先を探る必要があるやもしれん……加えて…………」

「…………えぇ、早急に奴の口を塞がなくてはならない」

 

薄暗い路地裏にて目を合わさぬまま言葉を交わす2体の鬼。そんな鬼の真正面から酔っ払った男2人と女1人がフラフラと姿を現す。

 

「痛っ…なんだてめぇ!」

 

あろう事か酔っ払いのうち1人が自らぶつかりに行った挙句、当たり屋的に鬼2体に絡み始めた。

 

「すいません……急いでおりますので……」

「悪いな兄ちゃん」

「おい待てよ!」

 

そうして鬼2体はこの場を後にしようとするが、酔っ払い男はそんな2体を逃さまいと肩を掴んで2体にとっての禁句を口にしてしまう。

 

「おいおい随分いい服着てやがるな2人とも。気に入らねえ。青白い顔して死にそうな奴にチビ野郎が!いきがってんじゃねえぞ」

「あ?」

 

その言葉を耳にした瞬間、鬼2体の表情が変わる。

 

【星の呼吸 弐ノ型 超新星】

 

そして、絡んできた酔っ払い男は一瞬のうちに護衛の鬼によって体を一刀両断された。

 

「は?」

 

一方、一瞬で連れが斬られたことに呆気取られた酔っ払いの兄だったが、こちらは護衛されていた鬼の方に蹴り上げられ、血飛沫を上げながら遥か上空に吹き飛んでいった。

 

「あなた……やっちゃん………」

 

瞬きする間もなく連れ2人を殺された女の方はその場でへなへなと腰を抜かして座り込んだ。そんな女に対し、鬼2体は続けた。

 

「私の顔は青白いか?死にそうか?」

「俺の体が小さいか?護衛には不適切か?」

 

 

「この御方への無礼、そして俺自身に対する軽蔑、行動を共にしていた貴様も同罪、死に値する」

「私の血を大量に与えられ続けるとどうなると思う?人間の体は変貌の速度に耐えきれず、細胞が壊れる」

 

やがて1人残った女の体は崩れ落ち、ドロドロに溶けていった。続け様に護衛の鬼が刀を振るい、女は消滅した。

 

矢琶羽(・・・)朱紗丸(・・・)

 

護衛の鬼が指を鳴らし名前を呼ぶと同時、その場に2体の新手の鬼が姿を現した。

 

「…何なりとお申し付けを」

「…この御方の正体に勘づいた鬼狩りがいた。まだ遠くには行ってない筈。耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りだ。奴の頸を持ってこの御方に差し出すんだ」

 

「「御意!!」」

 

 

____________________

 

 

「こっちだ炭治郎」

 

鬼化した男性とその連れの女性を珠代さんと愈史郎さんの2人に預けた後、俺と蓮華さんは遅れて遠回りする形で浅草の路地裏を歩いていく。

 

「……済まないな。少し事情が事情なだけに、遠回りする必要があってな……」

「大丈夫です!俺と禰豆子なら何処までも歩けます!だよな?禰豆子?」

「ふんふん!」

「ははっ、元気そうで良かった」

 

そうして浅草の路地をぐるぐる歩き回ること半刻、蓮華さんはとある場所で足を止めた。

 

「……ここって」

 

先程から何度も遠回りする過程で通った道。そう、通った道ではあるのだが、幾度も通り過ぎる度にどうしても違和感が捨てきれなかった場所だ。

 

「……周囲に鬼の気配なし。そろそろ頃合か……炭治郎、禰豆子、私に続け」

 

そうして蓮華さんは行き止まりの壁に向けて歩き始める。一瞬どういうことかと思考停止しそうになったが、蓮華さんが壁をすり抜けて向こう側に渡ったのを見て、違和感の正体に納得がいった。

 

「禰豆子、行くぞ」

 

そうして俺たちも蓮華さんの後に続いて壁の向こう側へ渡った。

 

「来たね…2人とも」

 

壁を抜けた先には、外からは見えなかった筈の立派な屋敷の姿があった。

 

「さて、鎹鴉から既にとある人物と接触するように言われていただろうけど改めて説明しよう…。そうだね、まずは何処から話すべきか………」

 

屋敷の中へ入ると、そこには女性と男性が1人ずつ、それと先程恋人を鬼にされた女性が布団に寝かされていた。この2人が先程蓮華さんが名を呼んでいた珠代さんに愈史郎さんだろうか。

 

「まず街で鬼にされた男性は地下牢へ……これで人を襲う心配はひとまず保留と言ったところだな」

「えぇ、お気の毒ですが……」

 

先程より地下から聞こえてくる呻き声と若干ながら漂う鬼の匂いはさっき浅草で鬼にされた男性のものだったのか。

 

「…珠代さんは医者だと聞きました。鬼なのに、人の治療をしていて辛くないのですか?」

「貴様、珠代様に失礼な!」

「よしなさい愈史郎」

「はい!」

 

俺の失礼な質問に愈史郎さんが血相を変えて掴みかかってくる。やはり失礼な質問だったらしく、愈史郎さんの腕が俺の頸を締め付ける。しかし珠代さんの制止で振りほどかれる。

 

「愈史郎は私が鬼にしました。ですが私は決して鬼を増やそうとは思ってません。重病で余命幾許もない方々に、鬼になっても生きたいか了承を取っています。ただ、基本的に人を鬼に変えられるのは鬼舞辻以外いません。数百年かけて、鬼に出来たのは愈史郎ただ1人ですから」

「数百年!?珠代さんは一体何歳なんですかヘブッッッッッ!!!」

「女性に年齢を聞くんじゃない……」

「よしなさい愈史郎」

 

数百年と聞いて咄嗟に尋ねてしまったが、かなり失礼な質問だったと反省。

 

「貴様こそ…鬼の妹など連れて……醜女じゃないか……」

「……醜女?」

 

禰豆子が醜女?愈史郎さん、今禰豆子を指差して醜女と言った。

 

「はぁぁぁぁ!!?これが醜女か!!?禰豆子は町でも噂の美人だったぞ!!!?」

「炭治郎、落ち着け!」

「はっ、すいません………」

 

禰豆子を罵倒されて否定したいがあまり少し喧嘩腰になってしまった。

 

「…炭治郎、ここからが本題だ」

 

そうして蓮華さんが2人に向けて視線を移す。

 

「彼女らが鬼殺隊外部協力者、珠代さんと愈史郎さんの2人だ。炭治郎の想定通り、鴉から言われていた接触してもらう人物というのはこの2人のことだ」

 

この2人が、そうなのか。人間の匂いもしなければ、鬼特有の悪臭もしない。不思議な感じのする2人だけど、敵意はしないし寧ろ俺に対して好意的な印象だ。

…いや、愈史郎さんの方からは敵意こそ無いものの、妙な視線を感じる。さっきの件もそうだし。

 

「彼女は鬼であるが鬼舞辻を抹殺したいと考えている。食事も人を食らう必要がなく、貧しい人から輸血と称して血を分けてもらい、それで食い繋いでる。愈史郎はもっと少量の血で足りる。…種族は違えど今は志を共にする仲間。…特に、そこの愈史郎が持つ血鬼術には助けられている。さっき炭治郎も見ただろう?壁をすり抜けたやつだ。彼の幻術は御館様の屋敷を隠すのにも利用されてるくらい凄いものなんだ」

 

さっき壁をすり抜けたのはそういうこと。何も無い空間だと思った場所にこの建物が見えたこと含め、全て愈史郎さんの血鬼術だったのか。

 

「そして炭治郎、君をここに呼んだのは他でもない。彼女の研究、すなわち鬼を人間に戻す研究だが、どうしてもあと1歩、先に進めない。そのため、君の妹…禰豆子の血を採らせて欲しい…。禰豆子が2年間人を食わずにいること、鬼舞辻の呪いを自力で外したこと…珠代さんを除けば何もかも無い。君の妹を人間に戻すため、どうか協力してくれないだろうか」

 

鬼を人に戻す研究、もしかしたら禰豆子の存在が、多くの人を救うことになるのなら、そんなの答えは1つに決まっている。

 

「禰豆子、協力してくれるか?」

「むんむん!」

「よしよーし…偉いぞ……」

 

禰豆子も前向きな様子で、うんうんと頷いた。

 

「そしてもう1つ、これは炭治郎にとっても苦難の道となるだろう……。炭治郎には十二鬼月、即ち鬼舞辻の血が濃い鬼から血を幾つか採取して欲しい。下弦…いや、研究の完成にはきっと上弦の血も必要になるだろう。満月ノ鬼や上弦は今世代の支や柱が束になってかかっても一筋縄ではいかない存在…。どうか、頼めるだろうか?」

「……はい勿論です。それによって多くの命が救われるなら、俺は喜んでこの身を投じます!」

「…やはり君は優しいな…………全員伏せろ!!!

 

蓮華さんが叫んだ瞬間、鬼特有の悪臭が漂ってくると共に、何かが壁を破る。その何かは建物の中を縦横無尽に動き回り、辺りを破壊していく。

 

 

「キャハハハハハハ!!矢琶羽の言った通りじゃ!!!何も無い所に建物が現れたぞ!!!」

「ぬう………朱紗丸、派手にやりすぎだ。わしの服が砂埃で汚れたぞ」

 

やがて壁が崩落し、土煙の向こうから見えてきたのは、2体の鬼の姿。

 

「炭治郎、この鬼は中々強そうだ。きっと研究に役立つだろう。倒して血を採るぞ」

「はい!!!!」

 





ー大正コソコソ噂話ー

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