剣と念の悪鬼夜行   作:狂戦士

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来週にももう1話上げる予定です


81話 次の任務

「炭治郎さん、今の技は何処で……?」

 

そう訊ねて来たのは珠代さん。気のせいか、珠代さんの口角が吊り上がってるような、口調もいつになく浮いた感じだ。

 

「あれは……ヒノカミ神楽は………俺の家系に………代々伝わる………舞いです………。元は………鬼を狩る………技ではなく………」

 

そう言いかけたところで珠代さんが俺の両手をギュッと強く握った。その瞬間、愈史郎さんからの殺気が異様に強くなった気がしたけど、珠代さんは上機嫌が故かその事に気付かずそのまま続けた。

 

「…あれは、炭治郎さんの家系ではヒノカミ神楽………そう呼ばれているようですが……元は数百年前、戦国時代に無惨をあと一歩の所まで追い詰めた剣士の扱っていた、鬼、いや、鬼舞辻無惨を殺す為に存在した呼吸です………」

「……!!?」

「驚くのも無理はありません……。ヒノカミ神楽……そう名前を変えて現在まで受け継がれていた……。当時この呼吸を知る者は皆鬼舞辻無惨とその取り巻きによって皆殺しにされていました…。炭治郎さんの家系でこの呼吸が名を変えて舞踊として受け継がれていたのも…恐らくは鬼舞辻無惨に悟られないよう、名を変えて継承されてきたのでしょう……」

「…………」

「ヒノカミ神楽、もといその正式な名前は日の呼吸と言います」

 

情報の多さに頭がこんがらがって来た。ヒノカミ神楽は元は日の呼吸で、戦国時代という途方も無い昔に無惨を追い詰めた剣士が使ってた呼吸で、俺の家系にどういうわけか名前を変えて継承されている。

 

「……炭治郎さんのご先祖様は、何か鬼殺隊と深い関わりがあったのでしょうか…………?」

「……いいえ、俺の家系は代々炭焼きを生業とする家系で…家系図を見ても……そんな事は書かれてません……」

 

竈門家はずっと鬼とは無縁の生活を送っていた。代々炭焼きとして、火を扱う仕事柄、ヒノカミ神楽を毎年舞っていただけで、その経緯も父からは「約束」の一言で深い事情は謎だった。

 

「……だとすれば何故……。炭治郎さん、貴方の刀の色は何色でしたか?」

「えっと……俺の刀は確か黒でした……」

「黒………間違いありません。始まりの剣士と同じ色………つまり、炭治郎さんの呼吸適正は……日の呼吸、すなわちヒノカミ神楽になります………」

 

俺の呼吸適正は、日の呼吸。水の呼吸を長らく学んできたけど、結局はヒノカミ神楽が俺の……。

 

「けど俺はまだヒノカミ神楽を使いこなせません……。今みたいに、1度使うとその強力さが故に反動が大きくて……しばらく動けなくなってしまいます…………」

「……そこは炭治郎、君の努力次第と言ったところだな。水の呼吸だってそうだっただろう?使い始めは動きに粗がどうしても残ってしまう。無駄を省き、正しい形を意識して、呼吸の常中で素の体力を極めていけば、いずれはヒノカミ神楽も自分のものに出来るはずだ」

「…はい!」

「まずは立て炭治郎、もう大丈夫だろう?」

「はい、もう大丈夫です!」

 

珠代さんと蓮華さんと会話していた今の時間で俺の体は段々元通りに動くようになっていた。

 

「…珠代さん、日の呼吸の正しい形はどんな感じでしたか?」

「………すいません。日の呼吸に関しては私も1度目にした程度でして………。それに数百年も前なので、記憶が曖昧なのです……」

「そう………ですか…………」

 

善は急げと、早速ヒノカミ神楽を極める修練を始めようと思ったものの、どうやら珠代さんも日の呼吸の正しい形は流石に分からないらしい。

 

「……さて炭治郎、私もヒノカミ神楽について調べてるとさっき言ったな?」

「はい、俺のためにありがとうございます!」

「ははっ、君は優しいし礼儀正しいし話してて心地良いな。まあ、それはさておきだ。珠代さんが示してくれた日の呼吸とヒノカミ神楽が全く同じ呼吸であることが確定した今、私の方でも1つ思い出したことがあってな……。実は鬼殺隊には代々炎柱を務める煉獄家という家系があってだな……。そこの家に確か歴代炎柱の書があった筈。もしかすると日の呼吸について何か記してあるかもしれん。ただ………」

「ただ…………?」

 

炎柱の書について話す蓮華さんから、雲行きの怪しい雰囲気と、苦虫を噛み砕いたような表情が見て取れる。

 

「…ちょっと家主が訳ありでな。私も掛け合ってみるが今すぐには難しいだろう。その間、炭治郎には引き続き任務を続行してもらう。続報は1ヶ月先の支柱合会議までに間に合わせる。炭治郎にはその支柱合会議に参加してもらい、そこで禰豆子の件も合わせて皆に認知してもらうというのはどうだ?」

「はい、分かりました!」

「うむ、いい返事だ。それと……別件だが………炭治郎、禰豆子のことだが………まず禰豆子の体を調べたいのが1つ。そしてもう1つ、その流れで禰豆子を珠代さんに預かって貰うというのはどうだ?

「禰豆子を…………ですか?」

「あぁ、人を喰わないと言っても禰豆子は鬼。鬼殺隊には鬼に家族を殺され強い憎しみを抱いている者も多い。今後、きっと炭治郎と他の隊士の合同任務も起こり得る。その際、隊士の恨みの矛先が禰豆子に向く可能性がある。禰豆子としても安全だし、珠代さんとしても付きっきりで禰豆子の体を調べられる………どうだ?強制はしないぞ。君たち2人の意志に任せる」

 

禰豆子を珠代さんに預ける。確かに禰豆子の存在はまだ周囲の人達から理解を得られない可能性がある。いや、まだという話ではなく、いくら蓮華さんが俺たちを認めているからとはいえ、未来永劫理解を得るどころか鬼殺隊から追われの身となる可能性もある。それならまだ、珠代さんのところで禰豆子を預かってもらっていた方が安全かもしれない。

 

「むぅ………」

「……………禰豆子?」

 

どちらにすべきか悩みに悩む俺を案じた禰豆子が、そっと手を握ってきた。

 

 

____________________

 

 

 

「お世話になりました」

「こちらこそ……数日に渡って禰豆子さんの事を調べさせて頂きありがとうございます」

 

それから数日後、先に任務に戻った蓮華さんを追いかける形で、俺たちは珠代さんと愈史郎さんの元から出発しようとしていた。

 

「……禰豆子さんについて、また進展があれば報告させて頂きます」

「はい、よろしくお願いします!」

「それでは、ご武運を

 

禰豆子は「むん」と一言頷く。そうして俺と禰豆子(・・・)は、珠代さんのいた浅草を後にする。

そうだ、俺たちはずっと何処までも一緒にいると、あの雪の日から決めていた。禰豆子は人を喰ったりなんかしないと蓮華さんも認めてくれた以上、その期待に応えるためにも、禰豆子は珠代さんの元に残らず俺と一緒にいる選択肢を取った。

 

「さぁ、次の所へ行こう、禰豆子」

 

背中に背負った籠の中で眠る禰豆子に、俺はそう告げて次の目的地への道を急ぐ。

 

 

「カァァァ!竈門炭治郎!!緊急事態ダ!」

 

すると、いつもより慌ただしく羽をバタつかさせた鎹鴉が姿を現し、急ぎ俺の肩へ着地した。

 

「どうした!?いったい何が……?」

「カァ……………奴ガ現レタ……!」

 

息を切らして飛んで来たと思えば鴉の口から出てきた得体の知れない()という単語。

 

「奴っていったい………?」

 

やがて息切れから回復した鴉が発した存在は、こんなにも早く対面する形になるとは思えない、その存在に蓮華さんが幾度も警鐘を鳴らしていたあの鬼(・・・)のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____満月ノ鬼ダ!!」

 

 

____________________

 

 

日の差さない暗い一室。そこには2人の男鬼。1人は何か書き物を黙々と読み進め、もう1人はその姿を目に腰を落としながらもう1人の男の言葉を待っていた。

 

「………ふむ、まさかそう来るとはな。今回の話は一段と面白かったぞ」

「……えぇ、筆が進みまして、楽しんで頂けたなら何よりです」

 

原稿用紙を読んでいるのは、肌が青白いこと以外容姿は人間に似た腰に刀を差した鬼で、もう一方原稿を読んでいる鬼を真剣な眼差しで見つめているのは体の至る所に鼓がある大柄で異形な鬼だ。

 

「………お前の作品はやはり最高だ。俺の家族も、お前の作品の続きを楽しみにしている……。唯一の難点は………世間がこれを受け入れないこと………。表に出ることもなく……ここで原稿用紙で終わってしまうのが惜しい………」

「…はい」

「……さて、今回の印税………とやらを渡そう………」

 

そうして原稿を読み終えた男が懐から取り出したのは、かつて人だった物の屍の体だった。

 

「こんなに………?丸々1人………?」

「…そうだ。ただそこまで希少ではない。100人探せば数人ほど見つかる程度の……10人程度の足しにしかならないが………要らないか?」

「い、いいえ!有難く頂戴します!!」

「ふむ、良い返事だ。……希少さの位で言えば下層に値するが稀血は稀血。……分かってると思うが、いつものように食うのに時間をかけ過ぎれば、匂いを辿って余所者が集ってくる。……早いうちに喰え。……そして俺の稀血供給だけに頼りすぎるな。……偶には自力で稀血を狩れ。………さて、俺はこの辺りでお暇させて貰おう………」

「……はい」

 

そうして、屍を受け取った鬼は早速食料に食いつく。その様子を眺めていたもう1人の鬼はこの場を後にしようと歩を進めるも、その足をピタリと止めた。

 

「……そうだ、響凱(・・)

「…………はひ?」

「あぁ、返事はいい。食ってる途中だろう?俺の話だけ聞いてくれればそれでいい……」

 

すると、食事中の鬼を気遣い淡々とした雰囲気で語りかけていた鬼の声色が変化し、やがて少し説教を垂れる者のものとなる。

 

「……お前の後任(・・)が決まった。……俺の百鬼夜行を色取るアイツ(・・・)が新しい下弦ノ陸だ」

「………………」

「……気に病むことはない。相応の力が取り戻せれば、いずれはお前も十二鬼月に戻れる。それまでに稀血でも喰って力を蓄えておけ」

「………………………」

「……十二鬼月になったから終わりでは無い。より強くなり、あの御方の役に立つことこそ、我ら鬼の宿命。………いいな?また力を付けて戻って来るといい」

 

言伝を終えた鬼が1つ指を鳴らしたその瞬間、奴の姿は一瞬で跡形もなく失せ、その場には稀血と呼ばれる死体の肉を喰らう鬼が残るのみだった。

 

「小生の作品も…血鬼術も…まだ………」

 

やがて死体を平らげた鬼は、次の獲物を探しに小屋から出て夜の山道へ消えて行った。

 

「今日の小生は幸運…。また近くに稀血……稀血の気配がする…………」

____________________

 

 

「何処だ………満月ノ鬼………」

 

鴉に急かされ、満月ノ鬼が出没したとされる場所まで駆け抜けること半日。気付けば日も高く昇り、もう既にとてもじゃないが鬼が出歩けるような時間帯ではない。

 

「……満月ノ鬼ハ毎回稀血ノ人間ヲ殺シテ、トアル場所ヘ定期的ニ運ンデイル!アッチニ!満月ノ鬼ガ決マッテ向カウ所アリ!」

 

鴉曰く、満月ノ鬼はこの辺りに定期的に出没するらしい。そして、現れる度に稀血の人間を狩っては、まるでこっそり動物を飼っているかのように決まった場所に毎回運んでいる。動物、とは言ったものの、稀血を運んでるということは鬼を育てていることになる。出没する度に稀血を狙っているあたり、恐らく依怙贔屓にしている者が近くにいると予想する。

 

「だとすると………」

 

対象に稀血を喰わせ、鬼としての力を増幅する手助けをしているのだとしたら、手がつけられなくなる前に倒しておかなくてはならない。

 

「満月ノ鬼が出るのは何処だ?」

「案内スルゥ!コッチ!コッチダ!」

 

満月ノ鬼、名前しか知らないけど、あの蓮華さんがあそこまで危険視している鬼。あらゆる鬼の常識を超えたという、そんな強力な鬼に、今の俺が立ち向かって果たして勝てるのだろうか。もし直面することになったとして、俺は禰豆子を護りきれるのか。

 

「いや……やるしかない…………」

 

どんなに強力な鬼だろうと、俺は戦って勝っていくしかない。禰豆子を人に戻し、悲しみの連鎖を断ち切る。刀を握った日から、そう決めていた。

 

 

 

「頼むよぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

満月ノ鬼出没の場所へ向かう道中、目の前に聞き覚えのある声と見覚えのある姿が見えた。

 

「俺と結婚して〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

…コイツは最終選別の時に会った、あの金髪の……確か名前は善逸だったか。

しかし、もう既に彼の知り合いを名乗ろうにも名乗り出にくい異様な光景。道行く女の子に泣きながら結婚を迫るその姿に、思わず他人のフリをしたくなってしまうが、対象の女の子が非常に困惑した様子なので間に入る他ない。

 

「チュンチュン………」

 

すると1羽の雀が俺の元まで羽ばたいてくる。何かを伝えようとしている。

…ふむふむ、自分はあの金髪の鎹雀で、いつものようにまた女の子に対して失礼な態度を取り続けているから、どうにかしてくださいと。

 

 

「何してるんだ道のど真ん中で!嫌がってるだろう!?そして雀を困らせるな!!」

「あっ!お前は!!」

「自分は弱いと泣くわ寝るわ終いにこれってお前は何のために隊服着てるんだ!?さあ、もう家に帰ってください」

「おい!その子は俺の事好きなんだから俺とけっこブヘェ!!」

 

ようやく善逸から女性を引き剥がせたのだが、女性の方は我慢の限界だったのか強烈な張り手が善逸の額に炸裂する。

 

「いつ私が貴方を好きと言いました!?具合が悪そうだったから声をかけただけでしよう!!それだけ元気ならもう大丈夫そうですねサヨウナラ!!」

 

そうして怒り心頭のまま善逸に縋り付かれていた女性はそそくさとこの場を後にした。強烈な一撃に、善逸は呆気取られたままこっちをじっと睨んできている。

 

「お前のせいで結婚出来なかったじゃねえか!!!」

「知るか!!!!!」

 

そして女性が去って開口一番、こちら側に謎の飛び火が来る。完全にとばっちりだ。

 

「俺弱いから!すぐ死ぬから!早く結婚しないといけないのに!」

「お前……なんで剣士になった?何故そんな恥を晒す?」

「酷い言い方!女に騙されて借金したから俺は仕方なく剣士やってるの!借金肩代わりしてくれた爺ちゃんが育手だったから!俺弱いから本当はもっとすぐ早く死ぬ筈なのに!!」

「何言ってるんだ!お前は最終選別でかなり強かった印象あるぞ!!?」

「はぁぁぁ!!?俺は弱いぞ!!?誇れるもんじゃないけど!!!」

 

…なんか話が噛み合わない。善逸は自分のこと弱いと言ってるけど、あの最終選別で下弦ノ伍を相手にそこそこ戦えていたような気がしたのは気のせいか。いや、もしかして善逸は眠った際の本領発揮に自覚がないのか。

 

「カァ!!何ソコデノンビリシテル!!共ニ早ク向カエ!!満月ノ鬼ガ出タノハスグ近クダゾ!!」

「あぁもう!こうしちゃいられない!!善逸一緒に行くぞ!!」

「えっ、ちょっ!待って置いていかないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

もしや善逸は眠っている時の記憶が無いのか。まあ、その辺りは後ほど触れるとして、今は近くに出没した満月ノ鬼を追うことにする。

 

____________________

 

 

「ここか………」

 

辿り着いたのは、山奥にひっそり佇む屋敷。鴉の導きによれば、満月ノ鬼が現れたのはこの屋敷とその近辺らしいけど。

 

「血の匂いがする……でもこの匂いは…」

「えっ、何か匂いする?」

「ちょっと今まで嗅いだことがない匂いが…」

「それよりなんか音しない?」

「音?」

 

善逸に音と言われたので周囲を見渡すと、草木の茂みの方に酷く怯えた様子で互いに抱き合っている男女2人の子どもがいた。





ー大正コソコソ噂話ー

響凱の作品は朱雨こそ気に入ってるそうですが、周囲の反応は冷ややかだそうです。そこは原作通りですが、ファンがいるおかげか響凱は原作より強化されてます。
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