吾輩は呂布である   作:リバーシブル

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「終着」

「さて、改まって自己紹介といこう。これからクラスを仕切る龍園 翔(りゅうえん かける)だ。ヨロシクする必要はないが、今後このクラスは俺に従え」

 

 放課後、HRが終わり担任が立ち去りボス猿宣言を始めるロン毛少年。

 彼の両脇にはオールドタイプの不良と人種による肌の違いでなければ肝臓を壊しているだろう巨漢が立っていた。さしづめ番犬ってところだろう。

 

 

「おつむが弱いお前らに説明してやるが、これから間違いなくクラス間での闘争が起こる。その際に学校側から落ちこぼれと評価された面子で他クラスと競っていくわけだ。だが他クラスの優秀な生徒とやらに纏まりのない烏合の衆で勝てる筈もない。見事にこの1ヶ月でその結果が出ているわけだしな」

 

「つまりお前らは龍園さんの指示通りに動けば良いんだよ。わかったか!」

 

 取り巻きAが騒ぎ立てる。心底鬱陶しい、消すか。

 けれど、龍園の言っていることも的外れではない。遅かれ早かれ誰かをクラスの神輿に担ぐ必要がある。

 ただでさえ劣勢な側なのだ。個人が好き勝手に動いてはお話にならない。

 

 

「石崎、かってに喋るな。しかし、その通りだ。坂上も言ってたが今回俺が動かなければ上位クラスとの差は広がっていた。この中にも疑問や異様さに気づいていたヤツはいるだろう。だが、実際に行動したのは俺だけだ。

 今後はクラスの王として命令を出す、まだ俺に従わねえヤツがいるなら何時(いつ)でも来い。相手になってやる」

 

 何名かが俯き視線を逸らす、既に牙を折られた負け犬どもの無様な姿が目に入る。クラスの連中を見るに反乱分子は既に潰しており、形式だけの儀式だ。用意周到なことで期待していいのかもしれない。

 これは自分がクラスの王として、正式に君臨することを認めさせる授与式に過ぎないのだから。

 

「どうやら反論もないようだ。1つ約束してやる。俺を王に仰いだからには必ずこのクラスをAクラスに上げてやる。俺の公約はこれだけだ。

 それからこの中から幹部を募る。俺に力を貸し、クラスの中枢に関わる人間を幹部として迎え入れる。もちろん、待遇は期待していいぜ。その能力に見合った報酬と立場をくれてやる。とりあえず今日から一週間が採用期間だ。

 一番でかいカラオケ屋の404の部屋を抑えてある。そこで俺が放課後から選別を行う。また、それとは別に相談事や陳情があるなら今のうちに来い」

 

 

 龍園がクラス全体を見回す。俺と一瞬だけ目が合うが、何を言うでもなく視線が通り過ぎる。

 誰一人として声を上げずに石崎が解散を言い渡す。

 クラスの王様御一行が教室から出ていき、教室に落ち着きが戻る。思ったより混乱がないのは初めから想定の範囲内だったようだ。小さなグループで話し合う姿は見られるが徹底抗戦の構えを取る生徒はいない。

 

 バラバラと教室から去っていくクラスメイト諸君。

 隣の彼女を見ると、帰りの準備を終えてカバンを持とうとしているところだった。

 

「椎名さんはクラスのリーダーにはならないの?」

 

「そうですね……。佐伯くんが補佐してくれるなら立候補してもいいですよ?」

 

 ひよりはイタズラっ娘のような笑みを浮かべて笑っている。

 

「それもいいね、女王の誕生だ。クラスの王様に問題というか、気に食わないところってあった?」

 

「まだあまり龍園くんの事をよく知りませんし、様子見といったところです」

 

 ひよりの言葉に納得を覚え頷きながら、教室を出ていく。

 今日は彼女が部活の日なので、俺は適当に時間を潰さなくてはいけない。

 部活棟で分かれる前に彼女から嬉しい提案をされた。

 

「佐伯くん、私たちが知り合って、はや1ヶ月です。そろそろ名前でお呼びしてもいいですか?」

 

「まじ? いいの? じゃあ、俺も遠慮なくひよりって呼ぶね」

 

「ええ、リョウくん。では私は部活なので、ここでお別れです」

 

 

 別れる寸前で大事な事を聞いておく。

 彼女を呼び止め質問をする。

 

「なんとなく聞いときたいんだけど、Aクラス行きってどう思ってるかな?」

 

「私はそこまで乗り気ではないというか……。いえ、もちろん上がれたら嬉しいですが。それに佐伯くんもAクラスに上がりたいでしょうからクラスに協力はしますよ」

 

「そっか、それだけ聞けたらよかったよ。ひよりちゃん、部活頑張ってね」

 

 手を振り彼女と別れる。

 放課後の予定は決まり、俺は足早に校内から立ち去った。

 

 ––––––––––––––––––––––––––

 

 

 カラオケ店は敷地内に何店舗かあったが、一番大きなカラオケ店はすぐにわかった。

 店員に1人での利用かを尋ねられるが 404 の部屋に用があることを告げる。

 奥の部屋であることを伝えられ、礼を言って奥へと進む。

 

 

 少し入り組んだ通路を歩くと目当ての部屋番号が見えた。

 扉の内側から制服が掛けられており室内が見えないようにされていた。乱交パーティーでもやっているのか。そんなバカな考えが頭に浮かび、すぐに消えた。

 

 

 さて王様とのご対面と行こう。躊躇うことなくドアを引いた。

 室内は薄暗く、照明を絞っているようだ。寮の自室よりは遥かに広く、大きめのソファーとテーブルが置かれているが、手狭であることを感じさせない。

 

 

 ソファーに1人だけ座りテーブルに足を乗せ、視線を携帯から動かそうとしない龍園。

 周りの連中は様々な態度だが、全員がこちらを値踏みしてくるような視線を飛ばしてくる。腕を組み睨みつけてくる男、直立不動のままこちらを見据える黒人、髪の毛を弄りながらも意識を向けてくる女。

 

 室内には4人の人間が居る。龍園、黒人、石崎、髪の短い女がいた。こいつらが王様と愉快な取り巻きの皆さんか。

 

 俺はテーブル近くまで歩き、手近にあった四角い椅子に腰掛け荷物を置く。

 タブレットを操作して飲み物を注文する。俺以外の分は既に机の上に置かれており、クラスメイトなのに仲間ハズレは寂しいからな。

 

 すぐに注文通りの品が運ばれてきて店員からグラスを受け取る。俺はグラスにストローを挿し、冷えたコーラを味わう。

 

 ふぅー、と一息ついた。周囲の人間のそれぞれ違った反応を見せる。女は呆気にとられており、石崎は侮辱されたと言わんばかりに顔が歪んでいる、黒人はサングラスをしており表情が読めない。

 龍園は携帯での用事を終えたのか、こちらに目を向けていた。

 

「こんなに早くクラスの人間が来るとは思ってなかった。それでお前は何をしに来たんだ?」

 

 俺は龍園の質問には答えず、ストローに息を吹き込んで泡をブクブクさせて遊んでいた。

 ていうか、これペプシじゃん。俺は品質偽装に愕然とした。

 

「オイ! テメー龍園さんの前でフザケてんのか!!」

 

「うるせえな。聞こえてるわ、叫ばないと会話できないのか?」

 

 俺は雑魚を無視して、龍園と視線をぶつけた。

 くくっと噛み殺した笑いが聞こえてくる。

 

「おいおい、今日は随分と乱暴な言葉遣いだな。その態度から相談事って線はないだろうから幹部の件か。日頃女の尻を追っかけてばっかのテメーが何のつもりだ?」

 

「ボス猿争いなどに興味がなかったが、そうも言ってられなくなった。それとお前らに丁寧な態度など必要あるかよ」

 

「テメエが動くのはAクラスへの昇格の件か。たしかに現状はトップとのクラスポイント の差は2倍近い。上位クラスへ上がること。それが一ヶ月間クラスに全く関与しなかった、お前が重い腰を上げた理由か?」

 

「そんなとこだ、ついでに王様とやらの実力を測りに来てやった。本当にクラスを率いるだけの器かどうか、な。龍園、お前次第だが手を貸してやってもいい」

 

「ほう? クラスを一月で纏めた俺に不服か。だが佐伯、お前に何が出来る。先日のテストでも平均以下の結果のお前が。手を抜いていたのか?それとも泳ぎが得意な事でも自慢するのか?」

 

「そんなつまらないことじゃないさ。もっとお前好みだろうよ。俺の出す条件を飲めば、クラス闘争に協力してやる」

 

「一応、聞いといてやるよ。条件は?」

 

「俺が指名する人物への危害をあたえないこと。これを確約するならお前の部下になってやる」

 

「指名か、どうせ椎名なんだろ? お前がクラスで他の人間と会話している所を見たことがねえよ。そこまで女1人に固執する理由が分からねえが、お前は交渉が下手だってことは理解した。

 話にならねえ、お前はバカすぎる」

 

「よくわかったな。俺の条件は彼女1人だけだ。返事は?」

 

「それだけ大事にしている女だ。これから椎名を狙うと言えば、お前は俺たちに偉そうな態度も反抗することも出来なくなる。自分の弱点を晒していることも気づかねえ、お間抜け野郎だ。

 そんなヤツの手などいらねえよ。誰がクラスの王なのか、理解させてやる。アルベルトッ」

 

「残念、交渉は決裂か」

 

 

 黒人がこちらに向かってくる、人種による身長差を感じる。かつての俺ほどではないが、それでも180cmを優に超えている長身だ。今の俺よりは遥かに大きい。

 俺は立ち上がりもせずに椅子に座ったまま、近づいてくる男を眺めている。周りが困惑し、戸惑っている気配を感じた。

 

 血に刻まれた本能の違いか、命令を果たすため迷うことなく近づいてきたアルベルトが一般男性の二倍はあるだろう太い腕を、俺目掛けて振り下ろす。

 真っ直ぐに顔面へ向けて放たれた拳を右腕、二の腕の内側で受け止める。どうやら彼は力自慢らしい。奇遇なことに俺と同じものが自慢の1つのようだ。

 受け止められると思っていなかった黒人がすぐに腕を抜こうとするが、俺はそのまま万力の如く締め上げる。押すことも引き抜くこともできず右腕は動かせなくなった。

 

 慌てた様子だったが、どうやら腕を引き抜くことを諦め、別の手段でねじ伏せることにしたようだ。

 左拳を叩き込もうと左腕を引き勢いをつけ、俺の横っ腹めがけて拳を打ってくる。俺はそれを拳で受け止めることにした。

 アルベルトが拳を放ってくる場所に俺も左の拳をぶつけ、相殺させる。一度だけでなく、何度も、何度も左拳がぶつかる。

 

 ゴンッ!ゴンッ!鈍い音が室内に響く。サングラスをしていて表情が読めないが、体中から汗が吹き出しており、順調とはいえないようだ。顔にも焦りが浮き出ている。それと対象するかのように俺の顔に笑みが浮かぶ。

 この学校に入学して一度も力を使わなかった。俺の体は暴力に飢えていたらしい。久しぶりの暴力を振るえる機会に体が歓喜の声をあげる。今は左拳への痛みすら心地良い。

 

 

 楽しい一時(ひととき)は呆気なく終わりを迎えた。十回を超える拳のぶつけ合いの結果、アルベルトが膝をついた。俺は押さえつけていた右腕を離してやる。何事か呟きながら左手を抑え始めた。

 

「あ、アルベルト……」

 

 なかなかにタフでパワーのある男だった。残りの三人も同程度なら楽しめそうだ。俺としては椅子から立ち上がらせる程度の頑張りは期待したい。

 

 残りの連中を値踏みする。女は顔色が青ざめ血の気が引いている。

 女と王様は後に取っておこう。俺は嫌いなものから食べる事にした。石崎に向かってニヤリと笑い、かかってこいとジェスチャーをする。

 

「うわぁあああ!」

 

 プレッシャーに耐えきれなくなった石崎が突っ込んでくる。ついため息が出てしまう。先ほどのアルベルトと違ってテレフォンパンチなどふざけているとしか思えない。殺意も込めれておらず、気合のみのスタイルなど児戯同然だ。

 

 石崎のノロマなパンチを払い除け、そのまま掌底を顎先にかすめる様に打ち込む。

 俺の狙い通りの場所にカウンターを喰らい、意識を刈り取られ石崎は後方に倒れる。奇麗な脳震盪だ、後遺症も残らないだろう。

 

「次はどっちが相手してくれるんだ? 一人ずつである必要もないし、2人がかりでも、手駒が足りないならダウンした2人を起こして4人でも問題ないぞ」

 

「お前が上から目線だったのはこれだけの力あってのことか。俺が相手をしてやる、そのニヤけた面を笑えなくしてやる……ぜ!」

 

 龍園は話してる最中にテーブルを蹴り飛ばしてきた。

 俺はテーブルを足で受け止める、想定の範囲内だ。いつのまにか机の上からグラスの1つが消えている。当然、龍園が持っておりグラスの中身をこちらにぶち撒けてくる。

 

 俺は濡れたくもなかったので、椅子から立ち上がり回避行動を取る。立ち上がる羽目になったか、王様らしからぬ卑怯な手段だが別に気にすることでもない。

 警戒していた追撃は行われなかった。龍園は右足を半歩引き、両手を顔の前に構え、腰を少し落として待ち構えている。

 

 先ほどのお遊戯から、俺がカウンターパンチャーだと判断したらしい。攻めるより守る方が楽といえば楽だしな。

 

 その誘いにノッてやる。龍園との距離を一瞬で詰め、一気に腰を落とし正中線が走る場所目掛けて拳をぶっ放す。

 龍園の反応出来ない速度で拳が放たれ、防御も間に合わない。一撃で大きく状態が逸れ、さらに2発立て続けに打ち込む。両手のガードが下がり、龍園の顔がガラ空きになる。勢いをつけたヘッドバットで吹き飛ばす。

 

 さきほどの連中に放った一撃よりずっと重いものを打ち込んだ。龍園は意識が朦朧としているようだが、クラスの王を名乗るだけあり立っているのは称賛に値する。

 このままノックアウトするのは容易いが先ほどのお返しに追撃はしない。

 

「グッ、て、てめえ」

 

 龍園はまだやり合う気のようだが、体が言うことを聞かず後ろのソファに倒れるように崩れた。意思とは裏腹に体が使い物にならないのだろう。

 

「王様が倒れちまった、次の相手をしてくれるか?」

 

 女は唇を噛んだまま動けないでいる。龍園はソファーに体を預けたまま、こちらを睨みつけてきた。

 

「クソが、今回はお前の勝ちだ。殴るなり、好きにしろや。だがテメェの弱みをこっちが握ってる事を忘れんじゃねぇぞ。必ずお前の隙きを突いて、俺が勝ってやる」

 

「そいつは困る、致命的な弱点だしそれに命より大事な人だからな」

 

「クックっ、どうする? この場で俺を潰して置かないと、後顧の憂いとなるぞ」

 

「龍園、後顧の憂いと言わずに。今、やれよ。そこの女使って拉致でもなんでもすりゃいい。

 だが、その扉から出た瞬間––––––––お前を殺す」

 

 先ほどのお遊びとは違う、本気の殺意を放つ。今後、彼女に危害を与えるならお前らに生命はない。

 俺の表情から笑みが消え、本来のモノが出てくる。

 

「これだけの圧力……。佐伯、てめぇ、どれだけの……」

 

「もう一度、聞く。彼女に手を出すな。返事は?」

 

 龍園と視線を合わせて、視線を逸らさせずに睨み合う。龍園の中に先ほどまでは存在しなかった感情が出てくる。俺の気配に当てられ、手が震え膝が笑いだす。

 先に折れたのは龍園だった。

 

「くっ……。わかった。今後、椎名には手を出さない。これでいいか?」

 

 俺はその返答に満足して殺気を収め、最近学んだ笑顔を作る。この部屋に溢れていた重圧が、消える。

 一番の重要事項に問題がなくなった、これでクラス間闘争に励める。

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

 突然、異音が聞こえた。何の音かと思ったら、女が勢いよく呼吸している音だった。

 俺の殺意に晒され、呼吸すら出来なかったようで慌てて息を吸っている。立っていることも出来ずに座りこんでいた。

 弱者を無視して龍園との会話を続ける。

 

「合意できてよかった。話せばやっぱり、わかりあえるね人間てやつは。それとも王様ってやつの人徳かな?」

 

「どの口で言いやがる、テメェ。俺を王として認めるってことは命令は聞くんだろうな?」

 

「もちろんだ、不安なら今後の方針を俺に命令しろや。それにお前好みの能力だっただろ」

 

「カッ、抜かしやがる。だが聞いておきたいことが1つ。佐伯、お前が王にはならないのか?」

 

 龍園の立場からすると、至極まっとうな質問だろう。

 だが、今世で王として生きるつもりはない。そんなのものより遥かに大事なものある。

 

「あー、そういうのは散々やって懲りてるの。それに俺はポイントの件も気づけなかったし、まとめ役のリーダーとして向いてない。だから適材適所で行こうぜ」

 

「なら早速、他クラスのリーダーでも闇討ちして回るか? そうすりゃ烏合の衆を潰すだけだ。学校側がなんの実力を測るか、わかったもんじゃないが」

 

「それも問題はないがもうちょい、平和的に行こうぜ。それとお察しの通り、勉学には期待するな。まじでテストはアレ、精一杯だったから。俺の強みを活かせる命令にしとけ」

 

「贅沢な野郎だ、俺の提案を蹴りやがって。だが、切り札はとっておくか。そうだな……、佐伯、部活には入ってないんだろ? ポイントの為にも部活に入れ。お前、武道系なら余裕だろ」

 

「随分、学生らしくなったがポイントと部活に何の関係があんだ?」

 

「人の話を聞いてねえやつだ。坂上が言ってたはずだ、学校は実力を測ると。恐らくは部活等の活躍に応じてポイントの加点がある。それがどっちのポイントだろうと、あって困ることはない」

 

「なるほどね、部活には入るが汗くせー武道系は御免だ。入る部活は俺が決めるぞ?」

 

「何でも構わねーし、そこまで口出しする気はないが女の尻追っかけて文化系に行くんじゃねえぞ」

 

「わかってるわ。弓道なら問題ねーだろ? 柔道やらより、よほど向いてるんでな」

 

「テメェの強さを持って武道より”向いてる”と言い切る程か、楽しみにしてるぜ」

 

 俺たちの話し合いが一段落した所を見計らって、どうにか復活した女が会話に参加してきた。

 

「チョット待って。話の途中で悪いんだけど、アンタ達さっきまで本気でやりあってたのに、なんで平気な顔して話し合いしてるわけ?」

 

「ふん、お互いの目的の為にこれ以上争う必要がないだけだ。こいつはクラス昇格のため、俺は、この暴力装置を利用できる。ついでだ、伊吹。アルベルトを連れて治療用に包帯、その他必要な物を買ってこい」

 

「はぁ? どうして、あたしが……」

 

「こいつの暴力をお前も体験しとくか?」

 

 伊吹と呼ばれた女がアルベルトを伴って、扉を開けて叩きつけるようにして出ていく。

 

「じゃじゃ馬だな、お前の女か? 気の強いのが好みなのか」

 

「お前じゃあるまいし、そんなもので幹部を選ぶか。クラスの女で俺に刃向かってきたのが、あいつだけだった。それに武道の心得があった、まぁ、お前に比べたら児戯みたいなもんだったがな」

 

「う、どうなったんですか……?」

 

「おう、石崎戻ったか。座ってろ、まだダメージが抜けきってないだろ。決着はついた。こいつとは今後、協力関係になる」

 

 1人寂しく、放置されていた石崎君がようやく目を覚ます。よろけながらソファーまで歩き倒れるように座った。

 声をかけるべきか悩んだが、面倒いので放置。

 

「はぁん、女の好みを否定はしないのね。あ、そうだ。王様、俺が手を貸す条件で一個追加な」

 

 チッと舌打ちを鳴らし、しかめっ面で顔を上げる。後から、条件の追加などたまったものではないと言いたげだ。

 

「さっさと言えよ、どうせ碌なものじゃないんだろ?」

 

「そう悪い話じゃないさ。条件というより終着点だ。 俺が力を貸す以上、クラスの王なんて小さい所で満足してもらっちゃ困るぜ」

 

「学年ってことですか……?」

 

 恐れずに石崎が会話に入ってくる。俺にも敬語になっているのは、先ほどの戦闘の結果か? 

 

「学年だと160人そこらか、そんなチンケな所をゴールにしてもらうわけにはいかねー。当然、狙うのはトップ。学校の王様になってもらう」

 

「な、1年どころか、学校全体の……? 流石に無茶だ。さ、佐伯、さん、一年の他クラスも手強い。Bクラスは既にクラスとして団結してるし、Aクラスはほとんどポイントを失っていない、それに頭として優秀なヤツが二人もいます」

 

「クックック、イカれてるぜ。佐伯よぉ、お前この学校の勢力を知ってて言ってるのか? 

 一年はともかく、2年は既にクラス間の争いに決着が付いてるって話だ。それに三年の生徒会長は歴代1優秀だと評判だぜ。そんな奴らを相手に喧嘩しようってか」

 

「現状は誰一人として知らねーな。知ってることは、Cクラスのトップだけ。それとも、王様の看板を降ろすか?」

 

「いいぜぇ、その誘いにノッてやるよ。テメェこそ日和って、途中で降りるんじゃねーぞ」

 

「交渉成立だ。今後ともよろしく、王様。せいぜいこき使ってくれや」

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