吾輩は呂布である   作:リバーシブル

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「遊戯」

 王様が宣言した翌日もCクラスに目立った混乱が起こることはなかった。

 龍園はクラスの反抗勢力となりうる連中を、念入りに叩きのめしているようだ。

 

 クラス全体が、龍園を王として受け入れるのに不服ではないように感じられる。少なくとも今すぐに表立って反発しようという態度の人間は出てこなかった。

 龍園を認めるのに時間を必要としなかったのは、既に手柄を上げているからだろう。

 担任も言っていた学校の仕組みを見抜き、クラスポイントの大幅な減点を食い止めたのは大きな加点だ。

 既に結果を出しているのなら、反抗するより王として認めたほうがクラスにとってプラスと判断しても不思議ではない。

 

 宣言から一日でクラスを掌握した龍園の手腕は見事だ。

 しかし、万事が思い通りというわけにはいかなかった。

 俺という存在を見誤った結果──、派手に躓きかけてしまった。

 

 これには龍園も冷や汗をかいただろう。話し合い次第では、クラス内で内乱が始まるところだった。

 そうなってしまうと、他クラスとの闘争どころではなくなる。

 だが結果的に俺は龍園の傘下に収まり、内容だけ見ればCクラスの戦力は整いつつある。

 

 それでもまだ、上位のクラス──Aクラスには及ばないだろう。個々人ならともかく、クラスの総合力では勝負できない差があるとみえる。

 Aクラスは最初の一ヶ月でクラスポイントが僅か60ポイントしか減少していない。流石は優秀と言われるだけのクラスだ。評判通りと言ったところだろう。

 

 現状、Aクラスには二通りの可能性が考えられる。

 まずAクラスには優秀な頭脳(ブレーン)がいて、その人物がクラスを纏めている。あるいは、トップではなく参謀として指示を出している。

 どちらにしろ、クラスを纏めている人間がいる。二つ目に比べるとこの可能性は非情に高い。

 

 統率が取れているということは、龍園が一月かかったクラスの掌握を序盤で終わらせたことにほかならない。

 その点だけでも、こちらの方が劣っている。これは龍園だけの責任とは言えないが。

 

 考えにくいが、二つ目の可能性は文字通りにAクラスが優秀だった場合だ。

 Aクラスの生徒には減点されるような行動を取る間抜けがいなかった。それならばリーダーどころか、クラスとして纏まる必要もない。個々人で切り抜ければいい。

 

 だが現実的にありうるのは、やはりリーダーがいる場合だ。二つ目は次点のBクラスのクラスポイントを見るに可能性が高いとは思えない。Cクラスとは150ポイントしか開きがなく、生徒の質というのは考えにくいためだ。

 

 どちらにしろ、()()()から争っては、現時点では勝負にならないと考えられる。

 

 真っ向から競うなら、そうだろう。

 だが、別に正々堂々と勝負しなくてはいけない理由など有りはしない。

 仮に優秀なリーダーがいるなら、そいつを消せばいいだけ。頭のいない有象無象など恐れるに足りない。

 

 校則、法律、モラル、常識、倫理、道徳、全てはキレイ事だ。

 それらを気にする必要などない。死人だけが沈黙を確約してくれる。この世界は敗者に容赦なく牙をむく。

 勝てば官軍。負け犬の戯言では誰の耳にも届くことはない。

 

 結果が全てであり、それだけに意味がある。

 ああ、──絶対に彼女を敗者などにはさせない。

 そのためになら、俺はどのような悪行も、この手を汚すことにも躊躇いはしない。

 

 –––––––––––––––––––––––

 

「今日は弓道部の方に行くのですよね?」

 

「うん。別に行きたくもないんだけどね。でも、顧問がうるさくて」

 

 宣言のあった日から、さらに2日が過ぎた。

 王様の命令に従うべく、担任に入部届を提出しようとした。ところが、担任は入部届を受け取れないと言いやがる。

 

 担任に提出期限が過ぎていると突き返された入部届。

 俺としてはその時点であっさりと諦めてもよかったのだが、クラスのため──いや、彼女の期待に応えるためにも、ここで引き下がるわけにはいかなかった。

 

 食い下がろうとした俺に、担任は他の方法を説明し始めた。どうやら、部活の顧問に直接提出して受理されさえすれば、問題はないらしい。

 

 そんなわけで先日、俺はいやいやながらも弓道場へと足を運び、顧問の男に入部届を叩きつけた。その場で無事に入部届は受理された──そこまではよかった。だが、提出は済んだにも関わらず、なぜか翌日である今日の放課後、必ず弓道場へ来るようにと呼び出しを食らってしまったのだ。

 

 弓道部の顧問は、三十過ぎの男性教諭だった。若者と呼ぶには老けていて、おっさんと呼ぶには若すぎる、中途半端な年齢の男。

 その顧問は、入部届の期日が過ぎていること自体にとやかくは言わなかった。ただ、一年生がこの半端な時期に、しかもたった一人で入部してくるという事実がひどく引っかかったらしい。

 

 弓道部に友人がいるわけでもなく、見学に来た過去もなく、おまけにやる気など微塵も感じさせない俺の態度。不審に思われるのも無理はない。

 男は入部届を見るなり、鋭い目でこう告げてきた。

 

『明日、弓道に必要な道具一式を用意しておくから必ず来るように』

 

 よほど俺の顔に「面倒くさい」と書いてあったのだろう。顧問はさらに念を押すように言葉を継いだ。

 

『来なければ、自分が直接探しに行く』と。

 

 むさ苦しい男に教室までストーキングされてはかなわない。そのため、放課後、俺は珍しくひよりと別行動をとることになった。彼女は図書室で読書をするらしく、小さく手を振ってそちらへ向かっていった。

 

 ひよりと別れた後、俺は後ろ髪を引かれる思いで、足取り重く弓道場へと向かっている。

 なぜ、あの天使を放っておいてまで、むさ苦しい男と顔を合わせなければならないのか。

 

 そもそも、予定表によれば今日の弓道部は休みのはずだ。わざわざ休みの日に呼び出す目的は何なのか。

 ひよりは「大会も近いから、実力を試したいのでは?」と言っていた。しかし、新入りの素人(と思われている)一年の力など、普通はアテにするまい。

 

 他にどんな理由があるだろうか。

 強豪校の野球部などには、入部試験があると聞いたことがある。それと同じようなもので、選抜試験を課すつもりか。流石に不合格にして入部させないということはないだろうが、しばらくは矢拾いなどの雑用を押し付ける腹積もりかもしれない。

 あるいは、技術とは全く関係のない精神論を説教してくるつもりか。

 

 昔、武術を学ぶために手当たり次第に扉を叩いた時期があった。その際、武道だの、思いやりだの、まずは雑用からだのとうるさく説教を垂れてくる連中が少なからずいた。実にくだらない。

 どれだけ綺麗な建前を並べ立てようと、武術の本質は所詮「暴力」だ。その絶対的な事実を誤魔化すための方便など、俺には一切必要ない。箒とチリトリを持って床を磨いたところで、強くなることなどありはしない。

 

 相手を的確に打ち負かし、叩き潰す。ただそれだけの暴力を、何か高尚な精神修養だと勘違いしている輩の言葉など聞く価値がない。しかし、現代──特にこの国では、よほどその建前が重宝されるらしい。俺には全く理解できなかった。

 

 そんな御託を並べる連中のもとには二度と行くことはなかったが、逆に「戦闘」を大前提として技術を教える場所も確かに存在した。そこでは精神論など皆無。ただ如何に素早く、的確に人体を破壊するかに重きを置いていた。

 

 懐かしい日々だ。力の練磨。己の肉体を鍛え上げ、剥き出しの刃の様に研ぎ澄ましていく感覚。

 様々な暴力を学んだ。その中には当然、弓もあった。弓という武器自体、今の俺になる前──前世の時代から、恐ろしいほどに相性が良かった。

 

 そんな血生臭い昔を懐かしみながら歩いているうちに、目的地の弓道場に到着した。

 引き戸を開け、中へと入っていく。

 しかし、道場内には誰もいなかった。照明は点いているが、人の気配は全く感じない。

 人を呼びつけておいて遅刻とは、人間性を疑うのも無理はない。こちらはひよりとの時間を割いてやってきているというのに。

 

 苛立ち紛れに道場の奥へ視線を向けると、遠くに静かに佇む「的」が目に入った。

 久しく、弓というものに触れていない。

 まあ、数年ぶりに引こうが俺の腕に微塵の影響もないだろうが、暇つぶしに一応試射しておくか。

 俺は壁の弓立てにかけられていた弓を適当に手に取ると、ブレザーの上着を鬱陶しそうに床へ放り投げた。

 

 射位に立ち、的を見据える。

 的までの距離は、おおよそ三十三間。約六十メートルといったところか。

 前世で馴染みがあったのは、馬上で己の絶対的な膂力に任せて引き絞る強弓。あれは和弓と比べてもっとコンパクトで、殺傷力に特化したものだ。

 対して、この日本の和弓は縦にひどく長く、上下の長さが非対称という特異な構造をしている。純粋な腕力だけで力任せに引くものではない。

 

 たしか──。

 すうっと、肺の中の空気を吐き出す。

 そのまま和弓を扱う際の基本動作、「射法八節」の所作を脳内でなぞるように体を動かした。足踏みから始まり、流れるような動作で弓を引き絞っていく。

 

 弓道というものは、簡単に言えば再現作業だ。

 俺に言わせれば、決められた動作を完璧な手順通りに行い、ブレなく放てば、矢は勝手に的の中央に吸い込まれる。的は逃げも隠れもしないし、茂みから伏兵が矢を射掛けてくる心配もない。競技相手がいきなり殴りかかってくることもないのだ。

 

 であるならば、全員が的のど真ん中に当て続け、勝敗など一生つかないのではないかと思うのだが……どうやら他の人間たちは、こんな止まっているだけの的を普通に外すらしい。理解に苦しむ。

 

 ギリリ、と限界まで張り詰めた弦の音が、静寂の道場に響き渡った。

 

 スッ、と弦から指を離す。

 和弓という武器は、やはり独特だ。過去に何度か手にした際にも思ったことだが、矢を放った時の「音」が他の弓とは全く違う。

 空気抵抗が極限まで計算し尽くされているためか、映画や漫画でよくあるような『ビュンッ!』と風を裂く野暮な音は発生しない。

 弦を離した瞬間、ただ弦が弓の弦枕(つるまくら)を打つ、パチッ、という高く澄んだ硬質な音だけが静寂の道場に響き渡る。

 

 直後、パーンッ! という小気味良い破裂音が少し遅れて鼓膜を揺らした。

 放たれた矢は、まるで最初からそこに突き刺さっているのが自然の摂理であったかのように、空気を滑り、寸分の狂いもなく的の黒点──そのド真ん中を貫いていた。

 

 当然の結果だ。俺の心に驚きもなければ、達成感からくる喜びも湧かない。ただ息を吐くのと同じように、当たり前の現象を起こしただけのこと。

 俺は表情を変えることなく、傍らに置かれた矢筒から次の矢を無造作に引き抜いた。

 

 面倒な所作などとうに省略している。ただ射抜くという結果を最短で弾き出すための、極限まで最適化されたモーション。

 流れるような動作で矢をつがえ、引き、放つ。

 

 パチッ、パーン。

 パチッ、パーン。

 

 メトロノームのように正確でリズミカルな音が、無人の道場に連続して響き渡る。

 放たれた手持ちの矢はすべて的の中央へと吸い込まれ、黒点の中に密集した小さな森を作っていく。

 

 少し狙いを操作すれば、先に突き刺さっている矢の筈(尻の部分)に後の矢を寸分違わず命中させ、縦に真っ二つに割くことも容易い。継矢といわれる、いわゆるロビン・フッドの真似事など、俺にとっては造作もない手品だ。

 だが、俺はその衝動を理性で押さえ込み、あえて数ミリ単位で着弾点をずらしながら的を埋めていった。

 あんなものでも、学校の備品であることには変わりない。無駄に破壊して顧問の男に弁償しろなどと因縁をつけられ、こんなくだらない理由で貴重なポイントを減らされるのはバカバカしいからだ。

 

 最後の矢が的の黒点に吸い込まれ、硬質な破裂音の余韻が道場に溶けていく。

 無造作に弓を下ろした、まさにその時だった。

 

「──素晴らしい技量だな。全射的中とは恐れ入る」

 

 パチ、パチ、パチ。

 静寂を破るように、ゆっくりとした拍手の音が背後から響いた。

 振り返ると、そこには道場の入り口の壁に寄りかかりながらこちらを見つめる男──今日俺を呼び出した張本人である、三十過ぎの弓道部顧問が立っていた。

 いつからそこに居たのか。男の目は、単なる新入部員を見るものではなく、得体の知れない怪物でも観察するような、探るような鋭い光を帯びていた。

 

「……偶然ですよ。運が良かっただけです」

 

 俺は適当に肩をすくめ、模範的な高校生を演じてみせた。

 実際のところ、こんな平坦で、しかも誰も邪魔してこず、この距離というふざけた好条件なら、あと百本射ようが千本射ようが俺が的を外すことなど絶対にあり得ない。

 だが、ここで「当然だ。的がデカすぎる」などと豪語して、無駄に目をつけられるのも面倒だ。郷に入っては郷に従え。日本の美徳である謙遜とやらを適当にまぶしておくのが、今後の学校生活において一番角が立たない処世術である。

 

 しかし、顧問の男は俺の言葉に感心するどころか、呆れたように小さく鼻で笑った。

 

「謙遜などしても隠しようがないだろうに。……お前が今射っていたのは、距離は『遠的(えんてき)』で、的は『近的(きんてき)』のものだぞ?」

 

「…………は?」

 

 俺は思わず、間抜けな声を漏らしてしまった。

 遠的? 近的? なんのこっちゃである。

 俺の脳内には、人体を貫通させるための弓の引き方や、風の読み方、騎乗からの射撃術といった実戦的な知識は山のように詰まっているが、現代の平和なスポーツである弓道のルールや専門用語などはほとんど詰まっていないのだ。

 ただ、あそこに的があったから、六十メートルほど離れた場所から射抜いただけである。

 

 俺が本気でポカンとした顔をしているのを見て、顧問は深いため息をついた。どうやら、俺が本当に知らないことを察したらしい。

 彼はゆっくりと歩み寄りながら、呆れ半分、呆然半分といった様子で説明を始めた。

 

 要約すると、こういうことらしい。

 弓道には大きく分けて二つの競技形式がある。

 一つは『近的』。的までの距離が近く(二十八メートル)、的が小さい(直径三十六センチ)。

 もう一つは『遠的』。その逆で、的までの距離が遠いが(六十メートル)、的はデカい(直径一メートル)。

 

 つまり──俺は先程、本来なら二十八メートルの近距離で狙うはずの三十六センチの的を、わざわざ六十メートルも離れた遠距離の射位から、全弾ど真ん中に命中させていたということらしい。

 現代弓道の常識からすれば、どうやら難しいことのようだ

 

(……なるほど。そりゃあ、運が良かったで済ませるには無理があるな)

 

 俺は内心で納得しつつ、この全く噛み合わない状況をどう誤魔化したものかと、小さく頭を掻いた。

 

「……まあ、なんにせよ」

 俺は肩をすくめ、わざとらしくため息をついて話題を強引に切り替えることにした。

「待ち合わせ相手がいつまで経っても来ないことへの怒りを、上手く弓に乗せられたってことですよ。おかげで集中できました」

 さも『待たされて苛立っていたから、腹いせに無茶な距離から射ってやったんだ』と言わんばかりの、もっともらしい言い訳。高校生らしい、少し生意気な反抗態度を装ってみせる。

 しかし、それを聞いた顧問の男は、申し訳なさそうな顔をするどころか、心外だとばかりに片眉を深く吊り上げた。

 

「……私は、指定した時刻通りにちゃんと道場にいたぞ」

 

「ほう?」

 俺は内心でひどく感心していた。

 教師という立場の人間が、生徒を待たせておいてここまで堂々と遅刻を正当化し、息をするように嘘をつき通すとは。この高度育成高等学校の教師は、存外面の皮が厚いらしい。

 なんせ、俺がこの道場に足を踏み入れた時、人の気配など微塵もなかったのだから。

 俺が嘘つけという疑念に満ちた視線を真っ直ぐに向けると、顧問は頭痛を堪えるようにこめかみを押さえ、深々と、そしてひどく重いため息を吐き出した。

 まるで、常識を知らない哀れな子供を窘めるような目だ。

 

「佐伯、お前、何か根本的な勘違いをしているようだが……」

「勘違い?」

「今私たちがいるここは『遠的場』だ。普段、弓道部が日々の活動に使っていて、私がさっきからお前を待っていたのは、隣の『近的場』に決まっているだろう。そんな常識も知らんのか」

 

「…………」

 俺は、完全に無言になった。

 遠的場。近的場。

 なるほど、そういうことか。どうりで前よりも的が遠くになった気がした。

 要するに俺は、部活の集合場所すら間違えて勝手に隣の施設に入り込み、勝手に遠くの的を射抜いてドヤ顔をしていたというわけか。

(知るかよ、そんなローカルルール)

 俺は内心で盛大に悪態をついた。入り口にデカデカと『こちらは遠的用です。初心者は隣へ』とでも書いておいてほしいものだ。

 これ以上、無知な素人のボロを出すのは得策ではないし、何より、こんな不毛な会話を続けるために大人しい高校生の猫を被り続けるのが、急速に面倒くさくなってきた。

 

「……で?」

 俺は、努めて作っていた愛想の良い高校生の仮面をあっさりと捨て去り、本来の低く、温度のない声音に戻した。

 背筋の力を抜き、重心をわずかに落とす。ただそれだけで、道場の空気が数度下がったかのような錯覚を周囲に与える。

「結局のところ、俺の入部は認めてくれんの?」

 

 敬語すら放棄した俺のあからさまな態度の変化に、顧問の男はわずかに目を細めた。だが、激昂するわけでもなく、ただ、やはり面倒なものを抱え込んだ、というように短く肩をすくめた。

 

「……条件がある。他の生徒と無用な揉め事を起こさないこと。そして、指定された大会には必ず出場すること。それが守れるというのなら、入部を許可する」

「もちろんだとも」

 俺は鼻で笑い、壁にかけられていた弓を無造作に元の場所へ戻した。

「そもそも、あんただって俺みたいな得体の知れない生徒に、毎日熱心に部活に顔を出して、他の部員と仲良く青春の汗を流してほしいなんて、これっぽっちも思ってないだろ?」

 

 顧問は否定しなかった。

 彼はただ、厳しい視線を真っ直ぐに俺に向けて、念を押すように低く凄みのある声で言い放った。

 

「……大会だけは、絶対にサボるなよ」

「ポイントのためにせいぜい努力しまーす」

 

 床に放り投げていたブレザーを拾い上げ、肩に担ぐ。

 これ以上この男と話すことはない。早く図書室へ向かわなければ、ひよりとの貴重な放課後の時間が減ってしまう。

 背を向け、道場の引き戸に手をかけた俺の背中に、顧問の呆れたような声が届いた。

 

「お前のロッカーは名札を貼っている。中には道着と弓を置いておく。練習したいなら好きに使え」

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