吾輩は呂布である 作:リバーシブル
「幹部」
「はーい、チーズ。いいよ〜、いいよ〜。ちょーキュート。俺、今後は携帯の待受絶対これにするわ」
「もう、少し恥ずかしいです。……ちゃんと可愛く撮れてますか?」
「うん、バッチリ。これ以上ないくらい最高にかわいい」
「きゃっ。リョウくんにそんな風に褒められると、流石に照れてしまいますね」
ある日の休日。俺たち二人は、絵に描いたようなバカップルのごとくキャッキャとじゃれ合っていた。
今日は約束していた休日のデートを満喫している最中だ。場所は、一ヶ月先まで予約が取れないと評判になっている大人気の和菓子店である。
店内は噂に違わぬ盛況ぶりで、見渡す限り空席は見当たらない。客層は女性グループか、あるいはカップルが大半を占めている。確かに、野郎一人の突撃では致命傷を負いかねない華やかな空間だ。
そんな店の熱気と甘い空気に当てられ、俺たちも存分に浮かれ上がっていた。
ふと周りを見渡すと、流行りのSNSとやらに載せるためか、運ばれてきた菓子の写真を熱心に撮っている連中が目についた。
それを見た俺は、愕然とした。手元にある学校支給の携帯電話に、『写真を撮る』という恐るべき機能が標準搭載されていたことに、今更ながら気付かされたのだ。
見ず知らずの赤の他人に自分の飯の画像を晒し、見せびらかすという奇怪な行動には欠片も理解を示せないが——この機能自体は、まさに神からの恩恵と言っていい。
俺はすぐさまカメラを起動し、和菓子なんぞと比べるのもおこがましいほど眩く輝いている、目の前のひよりを撮影することに全精力を傾け始めた。
休日の彼女は白を基調とした可憐なワンピースを身に纏っており、その破壊力たるや筆舌に尽くしがたい。もちろん、日常的に見ている制服姿も甲乙つけがたい至高の領域なのだが、それはそれ、これはこれである。
そんなわけで、俺は目の前に置かれた注文品の高級和菓子に一切手をつけることもなく、支給された携帯のメモリー残量を椎名ひよりの画像だけで容量圧迫する作業に邁進していたのだった。
「さて、写真撮影も堪能したし、そろそろ頼んでたやつ食べようか」
「いいですね。……あ、ちょっと待ってください。私も待受にする写真がほしいです」
「ん? さっき撮ったひよりの最高の笑顔、送ろうか?」
「違いますよ。私じゃなくて、リョウくんの写真です」
——思考が停止した。
いや、それは……恥ずい。だが嬉しい。しかし恥ずい。でもやっぱり嬉しい。以下、恥ずいと嬉しいの無限ループである。
「え、いや……俺単体の写真とか、流石に恥ずいって」
「いいじゃないですか、一枚ぐらい。さっき、あんなにたくさん私を撮影したんですから。不公平です」
少しだけ唇を尖らせて抗議してくるひより。その可愛らしい仕草に、俺の貧弱な防衛線は一瞬で瓦解しかけた。
だが、俺の仏頂面がひよりのスマホ画面を占拠するというのは、絵面的にどう考えても美しくない。
「ん〜。それとこれとは話が……。あ、そうだ。すみませーん!」
「はい、ご注文の追加でしょうか?」
声をかけると、近くを通りかかった店員がすぐにテーブルへやってきた。どうやら教育が隅々まで行き届いているらしく、表面上は嫌な顔ひとつ見せずに完璧な営業スマイルを浮かべている。
「すんません、注文じゃなくて。一枚、写真撮ってもらっていいですか?」
一瞬だけぽかんとした表情を浮かべた店員だったが、俺が差し出した携帯を見てすぐに要件を察したらしく、再び完璧な笑顔を貼り直した。
「かしこまりました。では、お撮りしますね〜」
先程よりもずっと体を密着させる。ひよりの肩と触れ合う。
「はい、チーズ」
ピロン、と気の抜けた撮影音が鳴る。
ちょうど別のテーブルから呼ばれる声が掛かり、「失礼いたします」と一礼したカメラマン(店員)が、一仕事終えた風のように去っていった。
携帯を受け取った俺は、さきほど撮ったばかりのツーショット写真をひよりの端末へと送信する。
「ね、これでどう? 俺単体より、こっちの方が絶対いいでしょ」
ひよりは小さく頷くと、無言のまま手元の携帯を操作し始めた。
やがて作業を終えたらしく、こちらへずいっと画面を向けてくる。
彼女の携帯の待受画面は、先ほどまでの落ち着いた花の画像から、俺たちが肩を寄せ合って笑っているツーショット写真へと変わっていた。
「……ふふ。写真を撮るのが、とても上手な店員さんでしたね」
ひよりが嬉しそうにはにかむ。
その笑顔を至近距離で浴びた俺は、先ほどの和菓子よりも遥かに甘い多幸感に包まれていた。
──────
一ヶ月待ちというハードルの高さも納得できるほど、和菓子の味は絶品だった。
俺もひよりも大満足で店を後にしてからは、彼女が気になっていたという映画を観るためシアターへと足を運んだ。
暗闇の中で二人仲良く手を繋ぎ、お行儀よくスクリーンを眺めていた俺の機嫌が、今までにないほど最高潮に達していたことは言うまでもない。
映画の上映終了後、ひよりの希望で大型書店へと向かっている道中。俺の携帯が空気を読まずに何度も振動した。
どこのバカだ、と苛立ちながら画面を確認すると、ディスプレイには龍園の文字が自己主張している。
やれやれ。我がCクラスのリーダー様は、休日のデート中に野暮な連絡をしてはいけないという一般常識を、幼稚舎に置き忘れてきたらしい。休日にも関わらず仕事の連絡をよこしてくるブラック上司の電話は、問答無用で無視するに限る。いつかどこかで聞いた現代社会の先人の知恵に倣い、俺は躊躇いなく携帯の電源をオフにした。
書店に到着し、ひよりがじっくりと新刊コーナーを吟味している間、俺は適当に目についた本を立ち読みして時間を潰す。
入学当初に比べれば、随分と活字に対する耐性がついたと思う。以前の自分と比較して、という低いハードルでの話だが。活字中毒のひよりと比べれば、読むスピードも読解力も月とスッポンだ。それでも、彼女の趣味に少しでも寄り添えるのは悪くない。
何冊目かの本を棚に戻したところでひよりが買い物を終え、店を出る頃には日はすっかり傾き、空は茜色に染まっていた。
楽しい時間は、本当にあっという間に過ぎ去っていく。
晩飯のメニューを話し合いながら寮へと足を進めていると——前方の道端に、酷く見覚えのある柄の悪い男が立ちはだかっていた。
「佐伯、てめぇ……携帯の電源切ってんじゃねえよ」
「こんばんは、龍園くん。こんなところで何をしているのですか?」
「おお、誰かと思ったら龍園さんじゃん。あららー? 携帯の電源切れちゃってたかー? ごめんごめん。あ、俺たちこのあと晩飯だから。そんじゃ」
「待てこら、オイ」
素通りしようとした俺の肩を、龍園がガシッと掴む。
「デートは楽しかったか? ……ああ、言わなくていい。てめぇのその満足そうな顔見てるだけで吐き気がしてくる」
「ならさっさと道を開けろよ。公害だぞ」
「チッ……。佐伯、椎名。前にも言ったが、幹部会を行う。当然、お前らも参加しろ」
「え? 聞いてないけど? そんなこと言ってたっけ?」
「相変わらず人の話を全く聞かねえ欠陥品だな。あの時、てめぇが晩飯がどうのこうの、と言い出して途中で抜けたんだろうが。後日、詳細を詰めると俺は確かに言ったはずだ」
……言われてみれば、そんなこともあったような気がする。カラオケ屋でのむさ苦しい会話なんぞ、俺の記憶の遥か彼方である。
「そもそも、私は幹部を受けるかどうかのお返事をまだしていませんが……」
ひよりが小首を傾げて正論を放つ。
すると龍園が、お前がどうにかしろと言わんばかりの鋭い視線で俺を睨みつけてきた。
やれやれ、仕方がない。
「まあ、その……なんだ。一応、リーダー様のお眼鏡に叶ったことだしさ。クラスに協力してあげようよ、ひより」
「リョウくんがそう言うのなら……わかりました。お話を受けましょう」
「ありがとう。ひよりがいてくれれば、俺はもう怖いものなしだ」
「ふふっ、それは流石に大げさですよ」
クラスの王の目の前で、俺たちは無自覚に(いや、半分わざとだが)甘いじゃれ合いを再開した。
それを見た龍園は、心の底からうんざりだと言わんばかりの表情を浮かべ、地面へとペッとツバを吐き捨てた。
「ちょっと。クラスのリーダーたるあんたが、ポイントが減るような真似はやめてくれる?」
寮のエントランスから姿を現したばかりの少女——伊吹が、不機嫌そうに眉をひそめて注意する。暴君である龍園を前にしても、その鋭い眼差しに怖気づく様子は一切ない。
「やっと来たか。椎名、伊吹を連れて買い出しに行ってこい」
「は? 買い物ぐらい自分でやりなさいよ」
「俺には他にやることがある。これは命令だ、さっさと行ってこい」
伊吹からの当然の文句を命令の一言で叩き潰し、有無を言わせず取り合おうとしない。
険悪になりかける空気をマイペースに切り裂いたのは、俺の隣に立つ少女だった。
「女子二人では大変そうなので……リョウくん、着いてきてくれますか?」
「いいよ〜」
もちろん悩むことなく即答した。
「よくねえよ、佐伯には他にやることがあんだよ。荷物持ちはアルベルトが店で待っている。途中で合流してこい」
「いや、それよりもリョウくんって呼び方もそうだけど…………あんたたち、なんなの?」
伊吹の呆れを含んだジト目が、俺たち二人の不自然に繋がれた手へとしっかりと固定されている。
「伊吹さん。どうかしましたか?」
「どうしたの。なんか俺達についてる?」
ひよりとお互いの顔を見合わせ、身だしなみを確認する。
ひよりが可愛すぎるという点以外におかしなところは見当たらない。
「伊吹、そこについては放っておけ。突っ込むだけ無駄だ」
龍園が深い溜息をつきながら、面倒くさそうに頭を掻いた。
「……はぁ。リーダーっていうのも大変ね」
「立ち話は終わりだ。椎名、必要なものは二人に伝えてある。買い物を終えたら佐伯の部屋に来い」
「は? 俺の部屋かよ。何も聞いてねえぞ」
まあ、見られて困るものなど何もないので別に構わないのだが。
「じゃ、いくわよ」
「はい。それじゃあリョウくん、また後で」
ひよりの柔らかい手が離れてしまい、名残惜しさに指先を無意味に動かしていると、龍園が心底呆れた顔で口を開いた。
「佐伯、骨抜きにされて日和ったんじゃねえだろうな」
「かもな、龍園。確かめてみるか?」
先程と打って変わった態度で寮へ向かいながら、迷うことなく言葉を返す。
「ククッ。そっちの顔のほうがよっぽど似合ってるぜおまえには」
「そうかもな……。で? これからなにすんだ」
寮の中に入るとエレベーター前に大荷物を抱えた男子生徒がエレベーター前で待っていた。
「おう、石崎。問題なかったか」
「お疲れさまです、龍園さん、佐伯さん。ばっちり借りてきました」
大荷物を抱えた石崎が、額に汗を浮かべながら頭を下げる。
「佐伯、少し荷物を持ってやれ」
「いえ! 佐伯さんのお手を借りるわけには!」
慌てて後ずさる石崎に、龍園は冷ややかな視線を向けた。
「石崎、そいつは学校からの借り物だ。万が一破損させた場合はおまえに弁償の請求が行く。それだけのプライベートポイントが払えるのか?」
「うっ、それは……」
「別に荷物持ちぐらいかまわねえよ」
俺が手を差し出すと、石崎は恐る恐る担いでいた巨大なバッグを渡してくる。受け取ってみるとずしりとした重みがあった。よほどデリケートな精密機器が入っているらしい。
野郎3人が狭いエレベーターに乗り込むと、途端にむさ苦しい男臭さが空間に充満した。
帰りたい。あ、ここが寮だった。
密室でのしばしの沈黙。なんとも気まずい空気が漂うが、俺からあえて話しかけるようなトピックもない。所在なさげに目の前の石崎をジッと見つめていると、不意にバッチリと目が合ってしまった。
「す、すんません……」
路地裏でカツアゲされるのを察したガリ勉くんのような怯えっぷりだ。俺が一体なにをしたというのか。ただ見つめただけなのに過剰な反応を示す彼に、以前から地味に気にかかっていたことを口にする。
「いや、別に怒ってないんだけど。そうだ、石崎クン。俺のこと、さん、付けじゃなくて、呼び捨てでいいよ」
「え!? む、むりっすよ! それは!」
「まーまー、そう言わずに。俺たち、同じ王様に仕えるしがない部下同士じゃないか。不自然だし、敬語はいらないよ」
嫌味たっぷりに龍園をチラリと見やると、当の王様は鼻で嗤った。
「ククッ、だとよ石崎。よかったな。これからは『さん』付けはいらねえってよ」
「あ、ありがとうございます……」
頼みの綱である龍園からそう宣告されては、もはや返す言葉も見つからないらしい。決して感謝などしていないであろう引きつった諦め顔で、石崎は言葉を絞り出した。
クラスメイトと朗らかに交友を深めながら、自室へと戻ってきた。
そういえば、ひより以外の人間を入れるのは初めてだ。なんとなくイヤな気持ちが湧いてくる。
「お、意外と整頓されてるな。掃除の手間はいらねえようだ」
「失礼、します」
背負っていた荷物をカーペットの端に慎重に置き、とりあえず来客用としてお茶の缶を出した。
振り返ると、招かれざる客二人は見事なまでに対照的な行動をとっていた。
部屋の隅にちょこんと腰を下ろし、借りてきた猫のように正座して固まる石崎。
一方で、家主の許可など欠片も求めることなく、堂々と部屋を物色している龍園。
「ちっ、エロ本の一つも見当たらねえ。部屋にあるのはつまらねー本ばかりか。……ん、こいつは」
龍園の手が止まり、本棚から一冊の本を引き抜いた。
そのタイトルは『女性の心を鷲掴みにする話し方ベスト100』。
龍園は特に何かを語るでもなく、心底くだらないゴミでも見るような目で、その本を俺のベッドへと無造作に投げ捨てる。
「てめえの気持ち悪りぃ口調は、これが原因か。こんなもんエロ本以下だろ、さっさと捨てちまえ」
「俺はソレ、もう読み終わってマスターしたから、龍園クンにあげるよ」
「マジでその喋り方はキメーよ。おまえ、一体どこ目指してんだ」
「ひよりとの会話にめちゃくちゃ役に立つのに……。で? 荷物を運んで、部屋の検閲をして終わりか?」
「なわけねーだろ。石崎、準備しろ」
龍園の短い号令に、石崎クンはビクッと肩を揺らし、即座に運び込んだ荷物を開いて何やら準備を始めた。
巨大なバッグから次々と取り出されていくのは、一台のタブレットPC。
小型のプロジェクター。
それを載せるための専用の台。
折りたたみ式の椅子。
そして、プロジェクター用の真っ白なスクリーンだった。
「龍園さん準備できました」
「よし、本題に入るぞ」
折りたたみの椅子にどっかりと腰を下ろし、龍園が手元のタブレットを操作してプロジェクターがスクリーンに映像を映し出す。
「まずは学校の注意人物を覚えておけ」
「おい、それは三人が戻ってきてからがいいんじゃねえか?」
「買い出し組が戻ってくる前に説明するのは上の学年のやつらについてだ。一年はともかく、二年、三年についてなんざ、現段階じゃいらねえよ。俺たち以外にはな」
買い出しに行っている三人は俺たちが、同じ一年どころか、上級生である二年、三年とも事を構えることを知らない。
現時点で、そんなことを伝えたら頭がおかしいとしか思われないだろう。
「なるほど。わかった続けてくれ」
メガネをかけた男子生徒が映し出されている。
「コイツは三年A組、
優秀のところをバカにした発音で茶化す。
龍園も俺も他人がした評価をあてにしていないからだろう。
そういえばいつぞやのカラオケ店で、優秀な三年がいると聞いた覚えがある。
それがこいつか。もう一度しっかりと男の顔を覚えておく。
顔立ちはそこそこに整っており、気に食わない優等生ヅラをしていた。
メガネをかけているということは、すくなくとも視力検査では俺が完勝するな。だからなんだという話だが。
「文武両道、勉強もスポーツもできるって話です。聞き込みしたところ、人望も厚く、評判通りって感じでした。あ、それと一年Dクラスに妹がいます」
石崎は手元のメモを見ながら話している。
ただの置物かと思っていたが最低限、解説の役割を果たしているようだ。
「ほー、それはご大層な評判だ。でも、妹のほうはDクラスか。兄妹揃って優秀ってわけでもないようだな」
「いや、そいつは違うぜ佐伯。妹はなかなかの上玉だ。なあ、石崎」
龍園が件の女子生徒を思い浮かべ、獰猛な笑みを浮かべている。
「え、まあ、正直なところ、めっちゃ美人っす」
少し照れながらも美人だと肯定する石崎。
特に興味もないので、妹から兄のほうへと話題を変える。
「上玉か、そいつはなによりだ。話を戻すが実際のところ、三年とやり合う機会があるかは微妙だろ。現実的に」
もちろん邪魔するやつらは全員ぶちのめしていくつもりだが、まずは同学年のやつらを平らげた後になる。三年ではこちらのクラス体制が追いつかないだろう。
「お前の言う通り、たしかに三年とドンパチやる機会は少ねえだろうな。だが、こいつは説明した通り生徒会長サマだ。この学校の生徒会は他所とは大きく違う。佐伯、おまえの生徒会ってやつのイメージは?」
「教職員のパシリ。学校に媚び売っておきたいカス。余計なことばかりしようとするマヌケ。そんな感じだ」
俺の率直な感想を龍園が鼻で笑いながら、生徒会の実情を説明してくる。
「クク、実におまえらしいクソみてえな意見だな。この学校では生徒会に一定の権力があるらしい。過去の例をあげると、生徒同士のケンカでの裁判役。そんな些細なところまで生徒会が介入してくる。お前ら二人とも、目をつけられねえようにしとけ。ま、手遅れかもしれねえがな」
なるほど、全く対決する機会がないというわけでもないらしい。
「ご忠告はありがたいが、目をつけるとしたら
「俺はハナから隠すつもりがねえからな。今のところ、名前が聞こえてくる三年はこいつだけだ。他は特に聞かねえし、なにより一度もAクラスを引きずり下ろすことができなかったマヌケ共だ。たいしたことがねえのは明白だ」
一度も下位クラスに落ちなかったということは、それがこの男が頭としての優秀さの証明でもある。
それは他の連中の実力不足であることの裏返しでもある。
スクリーンに次の人間が映し出された。
「俺達は二年のこいつらから直接的にやり合う可能性が十分にある。一つ上の連中だからな。そして、こいつは歴代一と評判の生徒会長と並ぶくらいには優秀な副会長サマだ」
歴代一というが、そもそもこの学校にそんなに深い歴史があるとは思えない。
その看板がハリボテではないことを祈ろう。
「どいつもこいつも優秀って言われて羨ましいもんだな」
「名前は
「石崎のやっかみは無視するが、面白いことに現段階で二年はクラス間での闘争が終わったらしい。Aクラスに上がる際にこいつが敵対した人間を全て叩き潰し、負け犬は無様に退学していった。結果、残ったのは牙の抜けた腰抜けどもだ。二年の現状はAクラスの一人勝ちってところだな」
「俺たちとは存分に気が合いそうだな。ブチのめしたやつを退学させているところとか、特によ」
「ククク、ああ、まったく気に入らねえな。俺たちの方針とは相容れるはずがねえ、いずれぶつかることは間違いねえ」
俺と龍園が反対の意味を持つ言葉を口にしたので、石崎は意見が別れたと思ったらしい。
だが、Cクラスの王とその狂犬は互いの真意を違えることはなかった。