人の愛し方とかが分からないからと不器用にドクターの事を求める様にラップランドを書きたかったのと、危害を加えようとするレユニオンにガチギレする描写が浮かんだのでそれを表現したかっただけです。
ラップランドはテキサス一筋だろうJK!! の方は閲覧注意でお願いいたします……
「ふふっ……おはよう、ドクター」
朝、自室で目覚めた時真っ先に目に飛び込んできたのが灰色の瞳に映る自分の顔だ。 聞き覚えのある声が頭上から聞こえてきた時、私は今日も彼女が侵入したのか……と理解してしまった。
「おはよう、ラップランド……で、今日はどうしたんだい?」
「つまらない反応だなあ……最初の頃は驚いたり悲鳴をあげたりしていたのに」
「……流石に何度も朝目が覚めたら君が居る という事があれば慣れもするさ」
そう、こうして私室で目覚めた時こうして彼女が自分を覗き込んでいた事があるのは今日が初めてと言う訳では無いのだ。 既に何回か朝目が覚めたらラップランドが自分を覗き込んで居たり、ベッドの傍に椅子で座って居たり……最初などあまりにも驚いてしまい彼女の言う様に悲鳴を上げてしまった事があったくらいだ。
即座にオペレータースカジが扉を蹴破って突入してきたのだが、相手がラップランドであった事から一触即発の気配を見せるくらいの修羅場にまで陥った事もある。 最もお互い実力者であり即座に手を出さずに睨み合ってくれた事により何とか静止する事が出来たのだが……
さてここで気づく事があるだろう。 ラップランドは私の部屋に侵入した際部屋の鍵を開けたのか、扉を破壊せず部屋に入り込んでいるのだ。 それもその後鍵を何回か入れ替えたにも関わらずに だ。
ただそれで分かった事がある……彼女は私の部屋に侵入して起きるまで特に何もして居ない という事だ。 部屋のモノを触っている事も無く、重要な書類を盗み見する訳でも無く、ただ不定期に部屋に侵入してじっ と私も見ているだけならしい。 何度かオペレーター マンティコアが部屋の警護をしてくれた事があったのだが、その時確認した彼女は何処からか現れてじっ とドクターの顔を見ていた という報告を受けている。 それからはもう好きにさせておいても良いだろう と判断し、こうして普通に朝挨拶が出来る程度に慣れてしまったのだ。
「今日は実地で指揮の日だろう? キミが早く起きてこないと始まらないんだからボクが起こしに来たんだよ」
「……作戦開始までまだ半日もあるぞ?」
「準備にやりすぎる事は無く、また戦いは始まるまでの下積みと準備によって八割方既に決まっている……それでもまだ時間があるというかい?」
クスクス微笑みながら準備は万全なのか? と言外に質問してくる。 資料の読み込み、相手側戦力の配置、主な戦闘地域の予測箇所……頭には叩き込んだはずであるが、そう問われるとそう言えばあの部分はどうだろうか? この状態の場合はどうしようか……と疑問が次々と出てきてしまう。
「……確かにそうだな、最終確認をしておくよ」
う~んっ……っと手を伸ばして背伸びし、ベッドから起き上がる。 着替える事を察したのか、ラップランドはヒラヒラと手を振りながらボクは隣に居るね~ と扉から出て行ってくれた。 さて……今日も頑張ろうか。
さて、戦闘地域のMAPを呼び出し敵戦力の予想展開パターンからオペレーター達の迎撃配置パターン、不測の事態に備えての予備隊の配置パターン……それらを再度見直し、先ほど頭に浮かんだ疑問点に対する答えを端末に打ち込んでいく。
「う~ん……」
「ドクター、こっちはどう対処するの?」
「ああ、そっちにはこの高台から狙撃オペレーターで牽制射をしつつ、足を鈍らせてからスカイフレアのアーツで焼き払う。 前衛は最低限配備するが弱った相手を押しとどめる事を最優先させる為リスカムを配備。 徹底的に中距離から長距離で抑え込む」
「数で押し寄せてきても範囲術師が居るから平気って事かな」
「いざとなった時の予備隊は第二防衛ラインとしてここに、指揮所はこの位置だから十分対応できる配置だと思うよ」
端末を覗き込みながら質問をしてくるラップランドに考えている作戦を伝えていく。 他の人に説明する事によって自分の考えが相手に理解して貰えるか、また別の視点から見てその作戦に問題が無いか……その確認も行えるのだ。 作戦に参加するオペレーターへ説明する事前練習にもなる。
……そう言えばこうしてラップランドと事前打ち合わせをする様になったのは何時からだっただろうか? 前までは戦えさえすれば良いとしか考えていなかった様であったが……どういった心境の変化があったのだろうか? ラップランドに視線を向けてもいつも通り口元に微笑を浮かべ、今日の作戦も楽しくなりそうだなあ と呟いている。 うーん……ただ作戦の事をブリーフィングの前に聞きたいだけなのだろうか……? 彼女はどちらかと言うと退屈な事が嫌いな方だしな……
時計を見るとそろそろブリーフィングの時間だ。 ラップランドと話した事で頭や口の準備運動も済んだ事だし本番といこうか。 今回の作戦は龍門の部隊と共同作戦となる……チェンが来るのか、それともスワイヤーが来るか……
「……現状問題は無さそうだな」
『勿論よ、誰が協力してると思っているの?』
「ああ、スワイヤーの部隊練度や指揮を疑っている訳では無いよ。 相手の動きから予測できる反撃を考えて対処出来ているかを考えていただけだから……」
『んんっ……早とちりして悪かったわね……まあ、このまま押しきれれば問題ない筈ね』
今回は龍門の市街地に潜伏しているレユニオン部隊を殲滅する事である。 入り組んだ街路に狭い室内戦となるが今回はキツツキの様に一方から相手側を外部へと押し出し、そこを術師と狙撃手で刈り取る戦法を取っている。 押し出す側の主力は構造を理解している龍門の部隊で、それにこちらの前衛ペレーターを参加させ共に戦っている状態だ。 最も参加させているオペレーターは非感染者であり、指示はスワイヤーが出す事になっている。 彼女なら無下には扱わないだろうという信頼の元決定している事だ。
『処理できる範囲で押している予定だけど、予測以上に相手側が脆いわ。 もしかしたらそっち側を突破しようとしてるかも……』
『ドクター、パターン2の状態です。 敵の前衛部隊が押し寄せてきます……ちっ、決死の突破と言う事ですね』
スワイヤーが自分の考えを言うのとほぼ同時に重装オペレーターのリスカムから連絡が入る。 パターン2とは敵が交戦を諦め一方の突破のみを試みた場合の符号だ。 パターン2の符号が使われた時点で既に術師と狙撃オペレーターは敵を倒す事よりも足を狙う事や、出入り口等の狭い箇所へ範囲攻撃を行い突破阻止をする行動に出ている。 その例として空から幾つかの隕石が落ちて行くのが見える……スカイフレアのメテオフレイムだろう。
精神面的な事ではあるが、自分の背丈より大きな隕石が空から降りそそぎ地面への着弾と地響き、肌を焼く熱波を浴びれば誰だって怯える筈だ。 それが重装備を有していない一般的なレユニオン兵であるのならば……
『ステルス兵を確認した! 何人か突破しているかもしれない! 予備隊は警戒を!!』
『ゴースト兵も居る!』
「大盤振る舞いだな、まあ逆にそれだけの戦力をここで潰せれば暫くは龍門付近でのレユニオンの活動を抑えられるはずだ……よし、予備隊は行動予定に従い行動せよ。 ギリースーツで身を隠し突破する敵も居る事を念頭に迎撃してくれ」
前線からの報告に即時反応し、予定していたプランからどう対応するかを判断する。 ステルス状態の兵が多いというのは少し問題があるが……まあ、まだどうにかなるレベルだろう。
「じゃあ、ボクも行って来るよ」
「ああ、気を付けてね」
双剣を手に戦場へと赴く彼女を見送る。 最後の最後まで戦闘に参加させなかったのは彼女が今回の作戦で護衛を務めていたからだ。 本来なら主力部隊として前線で暴れて貰う所を最後の詰めとして指揮所へ近づこうとする敵を迎撃して貰う事になっている。 他にオペレーターは無く、まさしく最後の砦と言う事だ。 ブリーフィングの時、その事を発表した所各所から護衛が一人だけなのは如何なものだろうか という意見が多数あったのだが、彼女なら十分だと私は判断している……と言うよりも、実力で考えるならばラップランドは上から数えた方が早い実力者だ。 指揮所の護衛程度なら一人でも十分にこなせるとは他の人も分かると思うのだが……
『ドクター!!』
「はえっ?」
深く考え事をし過ぎていたか、はてまた作戦が終盤だった事からか、耳元の通信機から叫ばれるラップランドの声にぼやけた声で返事を返す。 簡易テントの布地が破かれるのはほぼ同時であった。 盾に傷を受けつつも五体満足でギラギラとした瞳が仮面の奥から見受けられる……あ、不味い。
「貴様が指揮官か、我が同胞の敵討たせてもらう!!」
「あ~隊長クラスか、そりゃ突破もしてくるよね」
空気を切る音と共に片手剣が横凪に振られる。 たたらを踏みながら後ろに身を投げ出す様に飛び跳ねる事によって初撃は躱す事に成功するが、オペレーターの皆と違い受け身を取るので精一杯だ。 片手で態勢を立て直しつつ立ち上がる事なんで出来ない。 尻もちを搗く形になり敵を見上げる様な体制になると……うむ、こうなってしまうと逃げきれないか。
相手が上段に剣を構え振り下ろさんとしている……相手はもう勝ちを確信し、逮捕されたり討たれた仲間の敵を取れると高揚感に満ち溢れているのであろう。 ただ、逃げなくても良いというのは良く分かっている。 何せ……私には最強の護衛が付いているのだから。
「ぎゃああ!!!」
ピッ と紅い筋がテントの壁を汚す。 飛び込んできた斬撃が今まさに凶刃を振り下ろそうとした相手の片腕を、その二の腕から先を切り飛ばし真横へと吹き飛んでいく。 あっけにとられている私の前へ白い影が敵兵との間に飛び込み、盾となる様に割り込んでくる……ラップランドだ。
「何をしてるんだい」
何時もの薄い笑みを浮かべた表情では無く、ただ何も感じさせない……濃厚な殺気を鋭い氷のように周囲に発しているのを感じる。 息をする事を忘れさせるくらいの……吹き飛ばされた兵士が痛みに喚くのでもなく、殺気に当てられ無事な方の片腕で何とかラップランドから這いずり離れようとしている。
「僕は、何をしているんだと 聞いて居るんだよ?」
「ひ、ひいいっ!!」
「言葉が理解できないのかなぁ……それとも、顔についているモノは飾りで……新しく開けてあげないとダメかな??」
スッ と切っ先を相手の喉元へと突き付けるラップランド……軽く力を入れるだけで相手の喉はあっさりと切り裂かれるだろう。 それはダメだ、抵抗してくる敵には容赦せず排除しなければいけないが既に相手は戦意を失っている。 それどころか片腕を失っているんだ、もう抵抗すら出来ない筈なんだ。
「駄目だ、ラップランド!」
立ち上がり、ラップランドの背後から腕を回して押しとどめる。 ピクリ と彼女の体が一瞬跳ね上がり、少しだけ相手の喉元から剣を下げてくれる。 ただまだ完全には下げていない、ひと呼吸あれば命を刈り取れる位置に突き付けたままだ。
「どうしてさドクター、キミは命を狙われたんだよ?」
「そうなんだけどさ……駄目だ、もう彼に抵抗の意思は無い。 殺しちゃ駄目だ」
「一度でも武器を持った相手に躊躇なんてしてちゃ命が幾つあっても足りないよ? だから……」
「それでも、だ」
腕に力を込めて再度彼女を力強く抱き寄せる。 それでも武器を向けられてでも、一度敵対してでも、戦う意思を失ったのならばそれを受け入れる。 そうしなければ……私達は何の為に戦うかを見失ってしまうだろう。
はあっ……っとラップランドは息を吐き剣を下す。 それに伴い突き刺すような殺気も緩めた様に飛散していく。
「ならドクター、コイツの手当てをしてあげたら? このままだと出血で死んじゃうよ」
「ああ……君、抵抗はしないでくれよ」
コクコク と首を縦に振るレユニオン兵。 抵抗も何も殺気に当てられた所辺りから何も出来なくなっている。 手早く止血用のテープを巻き、切断面からの出血を防ぐ。 切り飛ばされた腕は……早急に冷却して保存すれば、もしかしたら繋げられるかもしれない。
『ちょっと、通信に出なさいよっ! ……ねえっドクター、そっちは大丈夫なの?』
『予備隊より報告、敵部隊はほぼ降伏しました……何人か指揮所方面に逃がしました。 申し訳ありません……』
耳元の通信機が前線の作戦が終わった事を告げている。 各所に返答を返し、医療オペレーターを派遣する様に依頼する。 その間中もラップランドは剣を片手に、いつも通りの薄い笑みを浮かべながら止血したレユニオン兵と私を交互に見ているだけであった……
作戦が終わった事後処理を済ませ、ドクターは残務をこなすとあっという間に眠ってしまった。 部屋の明かりが落ち、彼の寝息が聞こえる様になってから天井の一部を外して部屋の中に音もなく着地する。 知覚されない相手だとしても、姿を消す前に居る場所さえ分かってしまえばその視界外から侵入してしまえば何処から来たのか判断出来なくなるからね。
何時もの通りベッドの脇に立ち、ドクターを見下ろす……ふふっ、静かな寝息だ。 今日はゆっくりと眠れているらしい……あんな命の危機に陥ったというのに。 正直遂には仕事をし過ぎて頭がおかしくなっちゃったかと思ったんだ、護衛をボク一人に任せるなんてさ。
だってそうだろう? 誰が流した噂だか、ボクがドクターの暗殺者だなんて言われたりもしてたのにさ。 実際は……まあ、今の所はそんな事はしない、テキサスも居るしここは強敵と戦う事に関しては文句が無いからね。 でも普通は暗殺者かも知れない 何て言われたらそんな奴と二人っきりになんてなりはしないはずだろう?
だけどこのドクターはあっさりと暗殺者である事を否定してきた。 機会なんて幾らでもあったのにそうしなかった だから大丈夫だってさ。 考えがあってなのか、それとも何にも考えて無いのか……まあ、どっちでも良いんだけどさ。
ただ気になる事……それは彼が平然と感染者に触れる事であり、周囲が恐れるボクにすら平然と触れ、あろう事か頭を撫でてきた事があるからだ。 確かにロドスには年少の子が多数存在しているし、オペレーターの中には背丈の低い人だっている。 だからと言って当たり前の様に作戦が成功した事……と言うより、無事に生きて帰って来れた事を喜んでいるという方が正しいのだろうか。
ただ……そう、ドクターが触れた部分が少しだけ温かかったから。 頭を撫でられた部分とか、肩に触れられた部分とか……何時だってドクターは誰かに分け与えている、元々そういう性格だったのか、それともそうならざるを得なかったのか……
欲しい物、必要なものは力で奪えば良かった、そうして生きてきたのだから……ただ、彼はそうしたいと思っても出来ないだろう。 力づくで奪った所でそれは本来の彼では無くなってしまう……人形遊びをしたい訳では無い。
「まあ良いさ、今はまだただの剣でいてあげる。 とても切れ味の良くて使いやすい剣……何処にでも持って行きたくなるようなそんな剣で……」
何時かボクの力が絶対的に必要となるようになるまで……依存させる程の力を手に入れたら、ドクター、キミはボクを
「愛してくれるよねぇ……?」
だから今は甘い夢を……おやすみ、ドクター
次は特に何もなければスワイヤーと龍門でお買い物したり食事したりするお話になる予定……
何時書けるか? それはお仕事次第です……