シスタープリンセス・オブ・エンジェルズ物語編(悪魔っ娘プリンセス)   作:平 一

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悪魔っ娘プリンセス その1 ヒナちゃんのいたずら

 その日、学校から家に帰ろうとしていた兄は、近道をしようと通った裏道で、2人の不良にからまれてしまいます。すると、どこからともなく3人の妹たちが現れました。一人の妹が兄の手をとります。『花穂ちゃん……』『さあお兄ちゃん、こっちへ!』

 

次の瞬間、不良たちは不思議な光景を見ました。夕日を背景に、人間の胴と腕と蝙蝠の翼をもった、鹿のような姿の生き物がキューンと鳴きながら、少年の手をとって空に舞い上がっていくのを。気がつくと不良たちは、残る2人の少女に前後を挟まれています。

 

 『何だお前ら! どんな手品だ!』と慌てる2人に、可愛い八重歯の少女が告げます。『手品じゃありませんの。 兄ちゃまをいじめる人は許せませんの!』といった直後に、少女はやはり翼をつけた、しかし狼のような恐ろしい怪物に変身して、彼らに吠えかかります。不良たちは悲鳴をあげて、もう1人の小さな女の子のそばをすりぬけて反対側に逃げ出しました。

 

 しかし次の角を曲がった先には、またその子供が立っていたのです。思わず足を止めた2人に、その女の子は『ヒナのお兄たまに、なにしようとしたの?』と言いました。不良の兄貴分は女の子に『うるせえ、どけ!』と叫び、弟分に『おい! 行くぞ』と声をかけますが、弟分は『なんか動けないっスけど』と固まっています。すると兄貴も『あ……お前も!?』(笑)。そんなやりとりをしている間に幼い少女は巨大な蜜蜂に変わっていました。ちょっとオシャレにカラフルで、片方の羽にブルーのドクロ、もう片方にピンクのハートマークがついていますが、まぎれもなく蜜蜂の姿です。

 

 呆然としながらも、2人が呟きます。『おい、昔こんなの妖怪図鑑で見なかった?』『……なんか、ハエのカッコしてたような気もしますけど』すると2人の脳裏に、あの小さな女の子の声が響きました。『昔はハエの眼を借りるのが、人間社会を調べるのに一番都合がよかったんだよ。飢饉、疫病、不衛生……人口の割に大勢人が死んだの。14世紀は特にひどかった』『あ……あは、あはははは! 君って見かけの割に随分お姉さんなんだね。いくつなの?』

 

その質問に蜜蜂は、『レディーに歳をきくなんて失礼よ!』とかわして、続けます。 『今はハチなら、やっつけられることが少ないし、いてもそんなに変だと思われない。 でも虫だって、甘くみてると大変なことになるんだよ。さあ悪い子がどんな目にあうか、ヒナがたっぷり教えてあげる。くししししししし……(笑)』『ああっ、ちょっと待……いや、あの、うわっ、ぎゃああぁぁ!』2人の恐ろしい悲鳴は、だんだんくぐもったようになりながら消えてゆきました。

 

 兄が花穂ちゃんと帰宅してすぐ、四葉ちゃんと雛子ちゃんもお家にやってきました。

兄が『あの人たち、どうなったの?』とたずねると、雛子ちゃんは茶目っ気たっぷりに、『あのお兄ちゃんたち、今頃息ができなくなってるよ。きししししし……』と笑うので兄が驚いて、『大変だ!』と立ち上がろうとすると、『大丈夫ですわ、兄上さま』と毬絵ちゃんの声が響き、目の前の空間に、ある医院のなかの映像が浮かびあがりました。

 

 『へんへ~ぼくらちらいりょ~ぶれひょ~か(先生僕たち大丈夫でしょうか)?』と、哀れな声を出しているのは、鼻に何か栓のようなものを詰められた、あの不良たちです。サンプルをとって調べていたお医者さんが、『おおっ、これはっ!?』と驚きの声をあげると、不良たちはぎょっとして『ろ~しらんれすか(どうしたんですか)っ!?』と聞きます。するとお医者さんは、『何だかプロポリス(蜂が巣作りに使う抗菌物質。健康食品にもなる)みたいなもんじゃな。ひょっとしたら身体にいいかもしれんぞ。少しずつ溶けてるようじゃから、しばらくたったら自然に取れるじゃろ』と答えました。

 

それを聞いた2人は安心のあまり、椅子からすべり落ちそうになります。そんな2人にお医者さんは、『どうせまたよその悪ガキに因縁つけて、返り討ちにでもあったんじゃろ。何が悪魔じゃ。毎年花粉症になるくせに治しにも来んで、遊びほうけておるからじゃ。何なら薬も要るか?』   2人が帰ったあとで、医師は微笑んでつぶやいたのでした。『何かあったとしても、悪魔なんかじゃあるまい。たぶん……』

 

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