シスタープリンセス・オブ・エンジェルズ物語編(悪魔っ娘プリンセス) 作:平 一
(ある日ある場所で)
(可憐)「(妹達が解決した事件の目撃者に)あなた達はなぜこの姿を恐れるのですか?違う星の違う生物ではありません。あなた達と共通の物質に命の証を刻み、あなた達を生み、あなた達と共に進化し、あなた達に恵みと試練を与えて育み、さらにはあなた達が守り導いてゆくべき、この同じ星の生き物たちではありませんか……(優しく微笑む)」
(雛子)「(目撃者が感動して帰った後で)可憐ちゃん、最初は『これなら悪い人達も恐がって、襲ってきたりこないでしょう』って言ってんじゃないの? くしししし!」
(可憐)「(赤面しながら)あ……あれはあの時の話でしょう?」
(四葉)「それに、本当の生き物はこ~んな風に混ざっていたりしないのです!」
(亞里亞)「でも~、兄やは~、亞里亞がこの姿の時も~、優しく抱っこしてくれるの~」
(咲耶)「まあ! それって何だかとってもお耽美で官能的だわ! モローの『オイディプスとスフィンクス』みたいじゃない?」
(白雪)「それはもう、皆さんがこの星で使うボディーのデザインは、恐い中にも見慣れてくると味のある、姫の最高傑作でぇ~すの!」
(毬絵)「そういえば昔お兄様がダンテさんに見せてあげた扮装はすごかったですね。氷漬けの巨大な魔王が3つの顔にある口で、もがく歴史上の3大悪人を食べている……」(花穂)「あのあとお兄ちゃまの喉に人形が引っかかっちゃったから、花穂が急いでとってあげたの」
(凛々)「あれは、アニキがリアリティーにこだわって仮想現実知覚や立体投影を使わなかったからいけないんだよ! 私の人形のせいじゃないんだから(苦笑)」
(衛)「あっはっは! 別の時にはお腹の口から罪人を食べたあと、元に戻してお尻から地獄に落とすって案もあったけど、さすがにお下劣すぎて却下だったね」
(春歌)「本当の地獄は監獄じゃなくて、怒りや恨みや心配を残して亡くなった人の残留思念が、生者の世界に悪影響を及ぼさないよう、心を鎮めていただく場所なのですが」
(千影)「人間は恐れがないと悪事に走ってしまうこともあるからね……でも悪人だって脅しを手段にするからな。 彼らと同じはなれない」
(可憐)「お仕事とはいえ、これからはできるだけ、そんな方法を使わなくてもすむようにしいわね」
「……(一同、うなずく)」
〔参考資料〕
(情報部の標語)
我等は目、我等は耳。 天の計らい、地の出来事、我等自身の行いもまた、我等の前より隠るること能わじ。
(計画部の標語)
我等は頭脳、我等は心。 全ての生ある者のため、全ての同胞(とも)の総意のもとに、正しき知らせを善き意思に変え、確かな働きへと引き継がん。
(作戦部の標語)
我等は翼、我等は牙。 我等が良心と適正なる手続(すべ)に従い、愛し子(いとしご)達を助け、その妨げを退けん。
(標語の由来)
星間文明支援組織の草創期、ある種族がその発展に尽力した。
その種族は基盤となる元素が他の多くの種族と異なっていたため、利害衝突が少ない反面、勢力を広げることもできない宿命を負っていた。
だがその種族は、様々な先進種族間の橋渡しをしながら発展途上の種族達を援助するという組織の意義に賛同し、知識や便宜を提供したり、他種族の協力を得るなどして組織の確立に貢献した。
組織はこれを讃えて、その種族が提案した各部局の行動規範を彼らの言語で掲げることにした。
この種族には他の強力な種族の後押しがあったとか、他種族同士の紛争に巻き込まれるのを嫌ったのだという論評もある。だがその貢献自体に疑いはなく、また標語の内容も、各部局はその権限を自己のために濫用しない(情報部は自分に都合の悪い情報を隠してはいけないとか、計画部は星間社会全体のために意思決定しなくてはならないとか、作戦部の活動は目的だけでなく手段の適正さも必要である等)という当然の、あるいは当たり障りのないものであったため、この提案は承認された。
ところで、この種族の言語は(波長変換など行っても)発展途上種族を含め他の多くの種族からは異質な発音を含んでいるため、隠密行動が露顕した際には悪魔の呪文の類いと思われることもあった。
だがその内容を説明すると、あまりの落差に印象が強化されて称賛され、思わぬ協力が得られることもあった、という報告がある。
もっとも活動中は秘密が保たれるため、その標語は少数の協力者にしか知られることはない。