スーパーヒーロータイム。これは日本男児、いや世界男児が通るであろう、通るべき時間である。そして男児が最も燃える時間である。あともしかしたら平塚先生みたいな女児も。俺は知らないけど、もしかしたら同級生や先輩、後輩と今まで見たスーパー戦隊とか仮面ライダーとかプリキュアとかで話が盛りがるのかもしれない。俺は知らないけどね! 今日のスーパーヒーロータイムは9時からになってしまい、小さいお友達からすると起きる時間が遅くなり嬉しいことだが、大きいお友達にとっては起きてなければいけない時間が延び、悲しいことになってしまった。何はともあ「お兄ちゃん! こんないい天気の日くらいは外で遊んできて!」
小町さんよお兄ちゃんはなあこれを見終わったら寝る予定なんだ。お願いだからそんなことを言わないでくれ。
「今なんて外出たらあれだろ、コロナとかうんたらとかで」
「コロナって何? そんなことより今日友達が来るからお兄ちゃんは外出てって!」
コロナを知らないだと…………ん? コロナってなんだっけ? ……俺たち人間を惑わすことこそコロナとかいう輩の策略では無いのか! それとも世界的に大流行するとっても危ない病原体とかなのか!
「ちょっと待て。そんな理由で俺は追い出されるのか」
「いいからお兄ちゃん! ほら、これお父さんから貰ったお金で暇つぶしてきてちょーだい」
「そんなはした金でお兄ちゃんが動くと思ってるのかい?」
「お願ーい、おにぃちゃん(はーと)」
そんなはーとまで口に出して言ってるあざとい攻撃じゃな、お兄ちゃん……
「へいへい、それじゃあお兄ちゃんは本屋に行ってきますよ」
そんなこんなで気がつくと俺は外にいた。小町に弱すぎやしませんか?そして寒すぎやしませんか?実はここは宇宙よりも遠い場所だったりしたのか! そんな訳ありませんよねそうですね。そして小町に貰ったお金を見る……1000円。本買ったら昼ごはん食べれないじゃん。ラーメン食べれないじゃん。
*
書店でお買い物終了! 最近のガガガいいねー。特にラブコメ系の作品がきてる気がするわ。是非! ガガガ文庫のラブコメを買ってください皆さん! さて昼ごはんを食べるかと思ったのだが、まだ10時。小町ちゃんに帰って来ていいよと言われた時間までは……言われてないじゃん。一生帰ってくんなって事かな小町ちゃん。お兄ちゃんちょっと傷つきました。結構傷つきました。
「比企谷くん? 比企谷くーん!」
ほんわかめぐりっしゅなぱわーではちまんの傷ついたこころ復活しちゃいました! さすがめぐり先輩! さすめぐ! ただここで反応してしまうとおそらく少し話をし、歩く流れとなってしまう。やることないからいいじゃん。この後にすげーじゃんと続く人はおそらく俺と同世代かそういうやつが好きなやつのどちらかだ。とりあえずぺこっとお辞儀をしておく。
「久しぶりだね」
そう言いながら近づいてくる。
「お久しぶりです。受験は大じょ……指定校でしたもんね」
「そうなの。周りの友達はそうじゃなくてね、だから私ひとりで映画を見に行こうかなと思ってたんだけど比企谷も一緒にどう?」
いつもの俺なら確実に断ってる。つばめがえしの命中と同じくらいの確率でだ。だが小町の話もあるし、徹夜のせいで断る言い訳を考えることが難しいので誘いを受けた。小町と徹夜のせいです。しょうがないなぁ、いつもなら断ってるんだけどなぁ残念だなぁ。だから
「是非お願いします!」
と控えめに答えたのだった。
*
「何を見に来たんですか?」
「これって、決めてたやつはあるけど比企谷くんが来てくれたんだし、比企谷くんが決めていいよ」
上映する映画を見ると目を引くものはFateなどのアニメーション映画。天気の子のような大衆受けする映画が見当たらないため、めぐり先輩にはおそらく合わないだろう。
「俺は着いてきただけですから、元々見たかったやつでいいですよ」
「んーわかったよ。じゃあこれね」
そう言って指を指したのはおそらく海外のラブロマンス。
「こ、これ見る予定だったんですか?」
「うん。私、この映画の監督のファンなの」
「分かります。俺も作者とかで読む本決めたりするんですよ」
意外にも話に花が咲いた。めぐり先輩とは生徒会選挙ぶりだったため、話題がなく気まずい雰囲気になるかと危惧していたがそんなことは無かった。ほんわかしていても生徒会長なのだろう、話の振り方や会話の広げ方は流石としか言いようがなかった。
「あ、暗くなったきたね。こんな感じの映画が始まるよって雰囲気、私好きなんだよね。私自身もドキドキしてきちゃうの」
そんな近くで囁かれたらこそばゆくて俺がドキドキしちゃう。そしてこんな風にされちゃったら、
「そっ、そうなんですか」
どもっちゃうの。八幡情けなくて恥ずかしい! こればかりは男児の自然現象なので、女子の皆さん優しい目で見てください!
「あっ、そ、そろそろ始まりますよ」
俺が会話を終わらせたみたいになったから俺の勝ち。なんで負けたか、明日までに考えておいてください。やっぱり逃げたみたいになってるので俺の負けです、すみません。
肝心の映画の内容は幼馴染の2人がぶつかり合いながらも仲を深めていくという、まあなんだありふれた内容であった。ただありふれた物語というのは理由があるからありふれているのであって退屈なものでは決してなかった。衝突の原因もどこか共感でき、心の移り変わりもまた、理解できるものであった。登場人物への感情移入……まあグダグダと色々言ってるが、端的に言うと俺は感動してしまったのだ。今までのものはただの言い訳だ。まあ、寝てないし。寝てないアピールするやつは嫌われる。嫌われてるやつが言うんだから絶対だ。
どうしようこんな姿見せられない。ていうか見せたくない。映画で1人で泣いてるやつとかやばいやつじゃん。と思いチラッと横を見てみると……居たよやばいやつ2号。
*
はい、お互いに立ち直りました。目元が赤い点は気にしない方向で。
「ひ、昼ごはん食べない?」
「そ、そうですね」
「じ、じゃああそこで食べない?」
マ○クか……正直、お金も心許ないことだしちょうどいい。もう小町から貰ったお金はとっくに本に溶けた。
「いいですね。この時間です。席が埋まっちゃうとあれなので、ちょっと急ぎめに行きましょう」
店内に入ると、ちらほら空席が見える感じだった。
「これなら急がなくても大丈夫な感じでしたね。わざわざごめんなさい」
「いいよ、気にしなくて。もし席が埋まっちゃってたらって考えるとね」
「それじゃあ、早く座りますか」
そういって俺はめぐり先輩の前に出るのだが……
「ソファーの席と椅子の席どっちにします?」
カッコつけて前に出たはいい。俺どちらでもいいのだが、めぐり先輩はどっちの方がいいんだろうと。ソファーのほうが普通はいいと思うのだが、何らかの事情があって椅子がいいとか……
そんな俺の内心の焦りを見透かしたのか、クスッと笑いめぐり先輩は言う。
「ソファーにしよっか」
なんか申し訳ない気持ちになりながらも腰を下ろし今度こそはと思い、
「めぐり先輩何にします? いっしょに頼んできましょうか?」
「お願いしていいかな? ちょっと御手洗にいってくるね」
めぐり先輩からメニューを聞いた。注文をするためにカウンターに並ぶ。こういう時何をしたらいいか困る。もしメニューを決めてない場合はメニューを考えればいいが、今回はとっくに決まっている。スマホをいじるのも何かきまりが悪い。とそんなことを考えていると順番が回ってきた。
注文を終えて、ほっとしていたのだがここは混雑の飲食店。ファストフード店と言えども時間はかかるのは道理だろう。あーあーあーあー…………
「どうぞ、先輩」
「おー比企谷くんありがと」
めぐり先輩はそう言いトレイを受け取り自分の席に置いた。めぐり先輩が頼んだのは名前はちょっとあれだが、バンズでえびなどを揚げたものを挟むハンバーガーだ。口を目一杯に開き、美味しそうに食べる。めぐりせんぱいがしあわせそうでぼくもしあわせです。ただ、じっと見すぎて通報とかされたら八幡メンタルブレイクなのでそろそろ黙って食べます。ポテトとる時に手が触れちゃって、あっみたいな展開が起きないようにもちろんトレイで分けております。うんやっぱりチキンフ○レオ美味しい。
*
お腹も満たせた所で帰りますかと言いたいところですが、未だに15時ちょっと過ぎです。小町の為にもまだ家には帰りません。いえ帰れません。しかし八幡、帰りの道の分のお金しか手元にございません。どうやって暇を潰そうかと思ったところでめぐり先輩が言います。
「映画も見て、昼ご飯も食べたからそろそろ帰るね」
まあ送ることでまた時間潰しになるだろうと思い提案する。
「駅までですが、送りますか?」
「お言葉に甘えて、送られちゃうね」
そう言ってめぐり先輩ははにかむ。いろはすよーこういうのがいいんですよ。見習えよ。ちょっと苦手だからって避けてないでぜひ学びなさい。
雑談をしながら残り駅から10分くらいの地点で、めぐり先輩は急に表情を変え、真面目な声色で言う。
「比企谷くん、文化祭とか体育祭とか生徒会選挙でも頑張ってくれたよね。でもなんでそんな人が相模さんにあんなことしちゃったのかなって思ったの。だからちょっと考えてみたの」
「ただ相模が文化祭委員長を、まあ、なんて言うんですか、サボってたというかそんな感じなのがムカついて、自分は真面目に委員会の仕事をしてたのにって思って。ちょうど誰にも邪魔されなさそうな場面でしたし」
そう、あれはただの八つ当たりだ。あの委員会で真面目に動いてた人ならば大なり小なり思ったであろう感情だ。
「……」
「まあ、そんな感じですよ。文化祭だってクラスでやることがないから実行委員に行ってただけですし、体育祭、生徒会選挙だって奉仕部の依頼だったから……」
「わかった、わかったよ。もういいよ」
鉛のような空気感の中、駅までお互い無言まま、歩くだけだった。残り改札をくぐるだけだが急に立ち止まる。ただ振り返るだけで何も言わず、そのまま人並みに消え去った。
*
もし、人生がセーブできたとしたら。何度でも何度でも繰り返し、トライアンドエラーが出来るのであれば俺はあらゆる手段を試し、どんなパラレルワールドの俺もおそらく同じくらい結末に至るのだろう。俺は全て上手くいくようにいくようにできるはずもない。言うなれば何一つ上手くいってないのである。そして自分だけが被害をこうむる結末に至ってしまったらそこで満足してしまう、いやそれこそが最善だと思うだろう。それが最悪の結末だと気が付かずに。そんなことを繰り返してきたのが比企谷八幡の灰色の青春である。まあ、やはり俺の青春ラブコメはまちがっているだろう。
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