TSしたダン・モロの胃がマッハで蜂の巣になって「クソが」って言ったガルパン転生《連載版》 作:道長(最近灯に目覚めた)
う◯こ。
う◯ち。
なんでこんなもん書いたんでしょう。そのくせ一番長い。最初に謝っておきます。ごめんなさい。
「んで、猫山ちゃんも資金を調達して来たと。スゴイね。息ピッタリじゃん」
私の言葉に揃って舌打ちする2人。勿論ポッポと猫山ちゃんである。
「馬鹿の一つ覚えか。老いぼれ鴉」
「獣は学ぶことを知らんらしいな」
「うん、キレイにブーメラン投げ合ってるよね」
「「コイツと一緒にするな」」
こみ上げて来た笑いを必死に噛み殺す。予想通りとは言え、これを打ち合わせなしでやられては腹筋に悪いことこの上ない。ここまで来るとガワが違うだけの同一人物じゃない?
私の内心を読み取ったのか、ポッポは抗議するような視線を私に投げつけたがそれも一瞬、再び猫山ちゃんを睨む。
「首輪付き、お前はどこで何をやってきたんだ?」
「……適当な破壊工作」
「まさかと思うがこの施設じゃないよな?」
タブレットの画像を見せられた猫山ちゃんはしばらく画面を眺めると、何も言わず自分の端末を操作し始める。
「逆に聞くが、貴様が襲撃したのはここか?」
「……なるほど」
互いの画面を見せつけ合うと、申し合わせたかのようにそれをテーブルに黙って置いた。
「あ。喧嘩はなしだよ。せっかく停学を回避させた私達の労力が水の泡になるからね」
「「チッ」」
予感がしたので釘を刺すと、不満げに再び舌を鳴らす2人がいた。やっぱりそのまま殴り合う気だったようだ。
「一体どうしたの鴉羽ちゃん?」
「報酬が減った理由が分かっただけだ」
柚子の問いにタブレットの画像を一瞥すると、すぐに機嫌が悪そうに目を逸す。
「猫山もか?」
「……あぁ」
「少しかりるぞ……、会長、何を笑っているのでしょうか」
「いや、まぁ。当てずっぽうだけど、2人とも言っていい?」
つられて桃も猫山ちゃんのタブレットを覗いた。そして、笑いを堪え切れていない私を訝しがる。
なんとなく、ホントになんとなーくだが結果を予想出来た私は、答え合わせの許可を取ると、心底イヤそうな顔で聞こえていない振りをする2人を尻目に答えを言う。
「お互い敵対してる会社の破壊工作を成功させたせいで、報酬減らされるとか面白すぎでしょ。ちょっとコントにしてもベタ過ぎ、ハハハっ、ごめん。笑いが堪え切れない」
唖然としている柚子と桃の顔もツボに入ってしまっている。そしてポッポも猫山ちゃんは、白い肌を赤くさせつつも睨み合いながら、勢い良く立ち上がった。
「「一発殴らせろ」」
「ちょっとストップ、ストップ!」
「会長、笑ってないで2人を止めてください!」
再び2人が殴り合いの姿勢を見せる。本来なら仲裁しなくてはいけないのだが、なんというか。
「ムリムリ! 笑いがとまんない!」
「なんでこの状況で笑えるんですか!」
「大丈夫だよ柚子。だってこの2人……」
その時生徒会室にノック音が響いた。全員の動きが止まる。
「ククッ、どーぞー」
「失礼しまーす。ってなんじゃこりゃ」
「ようこそ卵ちゃん。点検の結果報告だね。気にせずどうぞ」
この混沌とした場に現れたのは諸星玉子。西住ちゃんと一緒に黒森峰から転校して来た戦車道経験者。整備を手伝ったのか、下のツナギは土と油で汚れていて、上は最早トレードマークとなったよくわからないヒーローモノのTシャツ姿だ。正直言って、ダサい。
「とりあえず交換した部品と、そろそろ取り替え時期になる部品一覧だ。練習ならしばらく持つが、試合となるとまとめて買い換えないと引っかかるぞ」
「おーけー、ありがとう。あとはこっちでやっとくよ。お茶でも飲んできな」
「いんや。みほ達を待たせてるから……、さっきからずっと見てるけど何か用か?」
ポッポと猫山ちゃんを、不審に思った卵ちゃんが声をかける。2人は金縛りにあったように固まっている。猫山ちゃんは知らないが、呆然とするポッポなんて相当レアじゃなかろうか。
「そういやはじめましてか。ポッポ、こっちは諸星玉子さん。黒森峰からの転校生」
「モロ……星? その……Tシャツ、どこで」
「お。あんたコレの良さが分かるのか。自分で縫ったんだぜ。カッコいいだろ?」
「え、えぇ……」
まじまじとつま先から髪の毛先まで、ポッポは舐め回す様に見ている。
不躾な視線に居心地悪そうにしている卵ちゃん。非難の言葉が出ないのは人がいいからかヘタレだからか。多分どっちもだ。
「……ダン……、モロ?」
猫山霧音がそう呟いた。私は幽霊でも見た様な顔、というものを人生で初めて見た。
「そういえば、明日は鴉羽先輩が見に来るらしいよ」
「からすば……先輩?」
「あぁそっか。みほりんは知らなくて当然だよね」
帰宅の準備中に武部さんが、思い出したかのようにその名前を呟いた。
いつ会ったか記憶を辿ってみたけど、入学者向けのパンフレットに載っていたことしか覚えていなかったため、把握に時間がかかってしまった。
武部さんの優しいフォローに、やっぱり自分は抜けてるなぁと思いながら、同時に知っている情報を頭の中でまとめる。失敗は誰だってするからリカバリーは迅速に。
……うん。確か生徒会の会計の人だったはずだ。でも戦車道の活動中に会ったことはない。ちょっと不思議だけど、会計ということは裏で予算確保の為に尽力してるのかな?
「生徒会会計の先輩だよね? でも、まだ会ったことは無いような……」
「西住殿の言うとおりです。4月から全然姿を見てませんよ?」
「元々生徒会の方々の中ではあまり表には出ない方でしたけど、何かご病気でも患われたのでしょうか」
秋山さんの言葉が正しいなら、それは間が悪かったにしてはあまりに不自然で、ともすれば五十鈴さんの言うとおり病気か、あるいは家庭の事情か。と思ったが、言い淀む武部さんを見るに違うようだ。 周りを伺う仕草をしたあと、声を落として事情を話してくれた。
「あくまで噂なんだけど、新入生と喧嘩して謹慎処分になったって……」
「え……?」
「まぁ……」
手を口にかざす五十鈴さんと一緒に驚く。角谷会長を筆頭に強引な所はあれど、生徒会の人はそんな武闘派ヤ◯ザみたいなことはしないと思っていたから。
ただし逃げ道を塞ぐことはするけど。
(もしかしてヤ◯ザより厄介なんじゃ……)
「そんなバイオレンスな方でしたっけ? 確かに強硬なところはありましたけど、暴力に訴える方ではないと思いますよ?」
「そうそう! 私も信じられなくてさ! 落ち着いてて色気があって、冗談も言えて、頼りになる大人の女って感じで……ちょっとショック……」
そんな大声で反応すると声を潜めた意味がないんじゃ……。こういった影のある話をしても、イヤらしさを一切感じないので、あまり関係ないと言えば関係ないのだけれど。そこは武部さんの人徳である。
話を戻そう。実際に会計という職務を考えると、2人の抱いている人物像は大きく間違っていないと思う。そんな人が新入生と喧嘩するということは、ますます考え難い。
(ううん、逆かな。そんな人だからこそ手をあげちゃったんだ)
となると鴉羽先輩の地雷を踏み抜いた新入生の子が気になった。
「武部さん、相手はどんな子だったの?」
「分かんない。その新入生が遅刻してきたせいで見てた人がほとんどいないの。だから私も噂しか知らなくて……」
「それなら見たぞ。小柄でやたら白いヤツだったな」
声の主は冷泉さん。意外な発言者に皆の視線が集まる。
「マコ、それホント?」
「ん。小学生みたいな身長で鴉羽先輩と殴りあってた」
「殴り合い、ですか? 取っ組み合いではなく? ……鴉羽先輩って170位ありましたよね……」
冷泉さんは秋山さんの質問にゆっくりと頷く。
「ああ。それもグーでだ。回し蹴りとひじ打ち、よくわからん投げ技まで使ってたぞ」
「なにそれちょっと観てみたい。詳しく」
「鴉羽先輩は武道も嗜まれてたのですね……。でしたらあの佇まいも納得です」
食い気味の武部さんと矛先がどこかズレた五十鈴さん。もちろん私も含めて、周りも興味津々だ。近くにいる人達が聞き耳を立ててるのがよく分かる。
そんな野次馬根性丸出しの私達を微妙に煩わしく思ったのか、冷泉さんは一つため息を吐いたが、一つ一つ記憶を手繰るように話してくれた。
「私もよく分からんが、新入生と先輩がなんか言ったと思ったら、お互いの顔を殴ってた。先輩は鼻血が出てて、新入生の方は口の中を切ってたみたいでな。2人とも適当に血の始末をしたら……、なんだ。んー……あれだ、全身を使った高速アルプス一万尺を始めたんだ。一手間違ったら意識が刈り取られるようなやつ」
「そんな殺伐としたアルプス一万尺、誰もやりませんよ……」
「最初の一発以外クリーンヒットが無かったからな。じゃあ、はじめの◯歩の間柴vs沢村の序盤みたいなのだ」
「その例え、分かる方何人いらっしゃるんでしょう。分かりやすいですけど」
秋山さんの苦笑いに、例えが分かってしまった私はなんとも言えない気持ちになる。小学校低学年位までは父に連れられて床屋に行っており、待っている間に置いてあった漫画を読み漁っていたため、その辺りの話を覚えているのだ。家では少年漫画を読めなかったのもある。何巻かは姉が頑に読ませてはくれなかったけど。激しい暴力描写があるところ省いてくれたのだろう。
(あれ? じゃあなんで間柴vs沢村の試合*1を覚えてるんだろう?)
「そんなこんなでしばらくして、広報の河嶋先輩と、そどこが来てその場は収まった」
「じゃあ本当なんだ……」
「私が知ってるのはこれだけだ。その場では口止めされたけど、本人が来るなら知ってた方がいいだろう。今日あたり生徒会に顔出してるんじゃ「玉子先輩が危ない」うおっ……!」
体が勝手に走り出していた。武部さんが何か叫んだがよく聞こえなかった。
点検の結果を伝えに生徒会室に行くと、先輩は言っていた。そんな危険人物に、あの人畜無害の鈍感でいつもは頼りにならないおっちょこちょいのヘタレのあの人が出くわしたらどうなるか。狼の餌場に現れる殊勝な羊もいいところだ。
(超殲滅戦用の白兵戦装備*2を回収していくと……10分。間に合って!)
「ふーん。じゃあ、2人と知り合いなんだ」
「ま、まぁな。転せ……転入先にいるとは夢にも思わなかったがな」
ようやく落ち着いたらしい卵ちゃんが事情を話してくれた。聞くに昔、それぞれ違う旅行先で出会ったとのこと。それがまさか高校で再会して、ましてや、その知人2人が知り合っていたとは偶然にも程がある。
「それにしてもまたアナタに会えるとは思ってなかったわ。ダ……玉子」
「それは俺の台詞なんですけど。レイ……なんて呼べば良いでしょうか?」
「そうね。昔のあだ名でも良いけれど……唯明が良いかな」
「了解した。ユメ……さん?」
恐る恐る名前を呼ばれたのか不服らしい。ポッポはこれまた珍しく、分かりやすい不満げな顔をする。
「敬語は無しでいいわ。呼び捨てでどうぞ」
「いや、ですけど……んじゃ、またよろしくなユメ」
「こちらこそよろしく」
両者が心底嬉しそうな笑顔で握手をした。中々に感動的な光景だ。現に柚子は軽く涙ぐんでいる。涙ぐみはしなかったが私と桃も、思わず軽く拍手をしていた。
だが、この場に1人だけ、それに納得していない人間がいた。
ぺチリと、握手している手をはたき落とされる。それは言わずもがな。
「アタッ!」
「首輪付き……、お前は一体何をしてるんだ」
「アンタには関係ないだろう。それより、オレには何もないのか」
「何もないって、もう俺の上に座ってるじゃないか……」
さっきの握手の時に「邪魔だなぁ」と思っていたのは私だけではないはずだ。
空いていたパイプ椅子に座った卵ちゃんの膝の上へするすると、さも当然の様に彼女は移動したのである。
それも卵ちゃんが軽度の錯乱状態になっていた最初の時からずっと。
むしろ必死にスルーしていた我々を誉めて欲しい。あの桃ですら空気を読んだのだ。
「お前こんなキャラだったのかよ……? リンクス」
「霧音だ。霧音が、いい」
「分かった。霧音」
「ん。もう一回」
「霧音」
「もう一回」
「霧音?」
「もっと」
「霧音……」
「どこのバカップルだ、お前達は。首輪付きはいい加減離れろ」
誰が最初に突っ込むか、という逆◯チョウ倶楽部現象に終止符を打ったのはポッポだった。
内心では一番突っ込みたかったに違いない。むしろよく我慢した方だと思う。
「断る」
「……そんな迷いのない目で言われてもな。玉子が困ってるだろう」
「え、うん?まぁ、体温たけぇなとは思ってるけどよ」
それって暑苦しいって意味じゃん。という言葉は口には出さなかった。直接言えないのはなんともらしい。でも、流石に猫山ちゃんも意味は察したようで、頭を傾けて不安そうに、下から卵ちゃんの顔を覗き込む。
「オレは邪魔か?」
「いや。あー……、邪魔、ではないな」
その顔と低身長のコンボで落ちない男などいなかろう。女であるワタシですら断りにくい。ヘタレが相手なら尚更だ。
「それは禁じ手だな。このヘタレがそう尋ねられて頷けると思うか?いいから離れてやれ」
「イヤだ」
「オイオイオイ。何おっ始める気だお前ら!」
しかしそこはポッポ。そんなものはきかぬと引き剥がしにかかる。が、当然抵抗されるわけで。卵ちゃんの膝上では残像を伴うハンドスピードで、無駄にハイレベルなキャットファイトが始まる。片方は鳥だけど。
一見、防衛側の猫山ちゃん不利かと思われたこの一戦、意外なことに互角の様相を呈していた。どうやらポッポが椅子役を気遣って、攻めあぐねているようだ。
「早く止めてくれ!」
悲痛な叫びだ。いくら加減しているとはいえ、目の前でそんなことをされたら生きた心地などしないだろう。
「会長、助けてやった方がよろしいのでは?」
「んー?……大丈夫じゃない?」
でもそれは当人の感想で、第三者から見ればただの喜劇である。
「……そっか。桃ちゃん、お腹空かない?実は試合の帰りにケーキ買ってきたの」
「だから桃ちゃんはやめろ。生徒が困っているのを見逃す訳には……」
柚子も分かってくれたようで、渋る桃を宥めながら冷蔵庫を開ける。渋い桃とか需要ないし。
……*3。
ん~、楽しみだなぁ、干し芋モンブラン(棒読み)。
そこの栗の代用品の安物*4とか言った奴、お前はリス*5かぁ? 淫◯*6かぁ? 言いがかりじゃないかって*7? 証拠ならほら、C.◯*8だって◯ッチじゃん*9。栗じゃないけど
「お前達、俺を見捨てる気か!?後生だから助けてくれ!ホント、後生だから!俺が保証するから!」
見捨てるとは人聞きが悪い。君を信用して任せているのだよ。
「そうだ。喧嘩中の2人?それ見逃してあげる代わりに、戦車道履修ね。 車長は卵ちゃん。よろしく~♪」
「はぁ!? お前、これ見てそれ言うとか頭がイカれたか?大体コイツらが俺の言うことを聞くわけ……」
「「別にいいぞ」」
予想通り快諾する2人。未だに手は分身してるけどね。理解していないのは当人と桃だけだった。
「マジかよ。じゃあ今すぐそれをやめろ」
「「だが断る」」
「……聞いたよな?早速命令違反だぞ。ホントに良いのか?これで良いのか?そもそもコイツらに命令とか、命が幾つあっても足りな……、あ、なんか胃がキリキリしてきた」
「へーきへーき。そういうのは期待してないから」
信用はしてるけど、信頼はしてないんで。
「じゃあなんで俺を車長にするんだよ!」
その時、卵ちゃんのシルエットが傾いた。声を張り上げた時に変な力が入ったようで、パイプ椅子のバランスが崩れてしまったようだ。
「へっ?」
「ん?」
「ヌッ?」
そこから先はスローモーションのようだった。
倒れる卵ちゃんに巻き込まれた猫山ちゃんが機敏な動きで身体を捻る。いわゆる相撲の庇い手の様なことを行うために、卵ちゃんの肩の辺りを抱き抱えた。
ポッポはその倒れかかって振り上がった足を掴む。
結果、どうなったか。
「ムゴッ」
「んッ!」
「……んほぉ*13」
倒れた卵ちゃんの顔の上に猫山ちゃんが座り込み、彼女の脚の間にはポッポが顔を埋めているこの状況が生まれた。
……これってどこのt◯-l◯veる?
「ムゴッ、ムゴムゴ、ンゴォ!」
「あまり……、しゃべるな……!」
「……*14」
そしてこの急展開に突っ込む暇も与えず、生徒会室の扉がビターンと、開け放たれる。
「先輩!無事ですか!」
一瞬の空白。
ここにアサルトライフルを携えた、ダー◯・ベイダーみたいなマスクを被った不審者が飛び込んだせいで、生徒会室のカオス値は計測不能になった。私の頭は一時的に考えるのを放棄したが、黒塗りの不審者はそうではなかったようだ。
襲撃者が引き金を引くのと、ポッポと猫山ちゃんが飛び退くは同時だった。アサルトライフルをバラ撒かれ、私の悲鳴より早く、筒状のものを放り投げる。
「はぁ?」
「へっ?」
「んなっ!」
「ほう」
「ちっ」
「……みほか?」
そこから煙が吹き出して、あっという間に視界が塞がれ、生徒会室が煙で満たされる。煙感知センサーを切っていて良かった(良くない)*15。
「先輩!逃げますよ!」
「みほ!こりゃ一体どう言うことだ!」
「いいから、今は脱出します!なんで先輩はいっつも虎穴の前でウロウロしてるんですか、ヘタレなのに!」
「やべぇ。みほにまでヘタレって言われた。すっげぇ泣きたい」
白い世界で声が響く。マスクのせいで声はくぐもっているが、襲撃犯の正体は西住ちゃんらしい。
……えぇ(困惑)……?
「逃がさん」
「とりあえず換気か。窓を開けますか」
「けほっ、けほっ。なんで鴉羽ちゃんは平気なの?」
「慣れてるから。それにしても、久し振りに本気で避けたな……いいセンス*16だ」
「こほっ、感心してる場合か!」
呆けてる場合ではなかった。柚子はともかく、桃は指示を出した方が安心するだろう。
「柚子は換気扇回して、カワシマは西住ちゃんを確保」
「襲撃犯は問題ないわ。獣には、おあつらえ向きの状況だから」
「……なるほどねぇ。じゃあカワシマは出入り口に立ってて。立ってるだけで手出しはしなくていいよ」
指示を出し終わった後は、ポッポと2人がかりで生徒会室の窓を全開にしていく。あとは煙が抜けるまでの少しの間、2人揃って手持ち無沙汰だ。
「で、卵ちゃんとはどんな関係?」
「……デカイ借りがあってね。昔、最期まで付き合ってもらったの」
気になる言い方だが、深くは踏み込むまい。恐らくお互いに不幸になるだけだから。
「ふーん……、猫山ちゃんも同じ理由?」
「なぜアレが出てくるかしら、……多分そうね」
「そう。結構情には情で返すタイプだよね、ポッポは」
「寝言は寝てから言って頂戴。ご存知の通り、大抵のことは金と力で解決してるでしょ」
ただ、これに関しては、終わらせたくなかった弱い自分がいるだけ。
最後の言葉は聞かせる気はなかったのだと思う。
これは何と言うべきか。ポッポは何故か複雑に考えてるようだが、それはきっと、もっと単純な。
「なに拗らせてんのさ、ポッポ。そんな難しく考える必要は「先輩を離してください!」…流石。あの煙の中、よく捕まえたね」
やっと部屋の中が見渡せる様になった生徒会室、その出入り口付近では、西住ちゃんと猫山ちゃんが件の人物を巡って綱引きをしていた。
余程卵ちゃんを譲りたくないのか、2人とも決して彼女を放す気配はない。
「お前が、離せ。それと、マスクを外してもらおうか」
「イヤ、です。こんなヤ◯ザの事務所みたいな所に、先輩を置いていけません!」
「俺を巡って争うのはやめ、グエッ」
蛙が潰れたような声がした。よくよく見ると、2人の腕が肺と胴回りを締め上げていた。あれでは息が苦しかろう。
あと西住ちゃん。確か文科省に反対してるって意味では反社会的集団だけどさ、今のあなたも完全にヤ◯ザの鉄砲玉だからね?
それと、西住ちゃんの実家を堅気だと思える人間は、全国でもごく少数だと思うんですけど*17(名推理)。
「極ってる、極ってるから!あ、ホントに落ち」
「きゃっ……」
「しまっ」
ついに酸素が足りなくなって、膝に力が入らなくなった卵ちゃんが崩れ落ちた。猫山ちゃんは反射的に飛び退いたが、最後まで離さなかった西住ちゃんの方は卵ちゃんの上に倒れ込む。
鳩尾に頭突きをいれる形で。
「……クソが」
それがトドメとなった。最後にそう呟いて、卵ちゃんは意識を失う。
換気扇の回る音だけが聞こえる。
西住ちゃんがマスクを外した。
「あの……私、先輩だけもらって帰りますね」
「ほうほう。……ヤ◯ザの事務所にカチ込んで、ただで帰れると思ってんの?」
「いや、冗談だからね!」
どこからまな板と包丁取り出した*20!? まな板の上に腕を置くな! あと目力*21がスゴい! 怖いからマスクつけ直していいよ!
あとポッポと猫山ちゃんは「見込みがあるな」とか「悪くない」とか言うな! 勘違いの収拾がつかなくなるじゃん!
このあと追ってきたあんこうチームとも一悶着があって、帰るのが深夜になったり、タカシくんの告白イベントがあったり、誘拐事件があきて確認できるだけで3人の修羅が生まれたり、性転換薬なるものをチームマヨネーズが飲んだりしたりと、色々な出来事が起きるのだが、これだけは語らねばならない。
この物語は『ガールズ&パンツァー』。流れるのは汗と涙と戦車のオイルくらいで、決して血は流れなかったし、これ以降、鴉と山猫が戦場に現れることは二度となかったと言う。
「会長さん、早く決めてください。それとも貴方が直々に腕を落としてくださるんですか?」
「腕ェ!? 何もいらないからとりあえず包丁とまな板をしまいなって!」
「確かに包丁だと腕は落とせないわね……、あぁ、確かチェーンソー*22が」
「これか?」
「なんで生徒会室にそんなの持ち込んでんのぉ! ヤ◯ザもスプラッタも禁止ィ!」
……ないったらないのだ。
……多分。
終わりっ! 閉廷! ……以上! 皆解散!
余計な諸々は1週間以内に活動報告に上げます。
長文化した場合はこっちに書きますけど。
※6月29日 活動報告でこれからのことを簡単に上げさせていただきました。