TSしたダン・モロの胃がマッハで蜂の巣になって「クソが」って言ったガルパン転生《連載版》 作:道長(最近灯に目覚めた)
聖グロリアーナ女学院。神奈川県所属の学園艦であり、戦車道強豪校。
そして何より生粋のお嬢様学校である。本校があるイギリスの影響を強く受けた厳格な教育と優雅な習慣。その伝統と格式、誇りと気品と意地を重んじる校風が真の淑女を育てるのだ。マジノ? BC? カエル食ってるような奴はお嬢様じゃない。いいね?
話を戻して、戦車道は学園の花形、全校生徒だけでなく教職員やOGからも注目される中心的存在だ。戦車道履修者達は生徒の模範たろうと日々の自己研鑽に努め、周りはそんな彼女達に憧れ、見習いつつも、時として全力でサポートする。
そんな聖グロ戦車道だが、一つの大きな悩みを抱えている。それは
「予算がないわね」
ダージリンはクロムウェル巡航戦車の修理見積書を眺めながら呟いた。
アンツィオ高校あたりが聞けば「イギリス料理と紅茶が大脳だけでなく前頭葉までおかしくしたか?」と言いたくなるであろう発言だが、事実だ。
「マチルダ会は相変わらずかしら? アッサム」
「足だけしか取り柄のない金食い虫より、堅牢で優雅なマチルダを充実させろとのことです」
「『一生の最もすぐれた使い方は、それより長く残るもののために費やすことだ』」
「皮肉ですか? ダージリン」
「まさか、我が校の伝統を守るために奮闘してる方々よ。称賛するべきでしょう?」
「……消散すべきと言いたい訳ですね」
「『その場にいない人を、批判してはいけない』えぇ。私は淑女ですもの。決して、そんなことは言わないわ」
「決して、決してね」と、口ではそう言っているが、どう見ても自分に言い聞かせているようにしか見えない。アッサムは長く連れ添っている戦友に紅茶を淹れてやろうと思った。ここはアッサムの私室だ。愛用のティーポットと、今のダージリンにピッタリの茶葉を棚から取り出す。
「この香り……ダージリンのアールグレイね」
「ご名答。今回はアイスで淹れますから少し待っててくださいな」
「アイスティーなんて邪道よ」
「今は2人きりですし、言いっこなしですよ。それに貴女も好きでしょう? アールグレイのアイスティーは」
「……嫌いになれるわけないじゃない……」
いつもなら絶対に漏らすまい素直な言葉に、からかいの一つでも言いそうになるが、淑女たるアッサムは黙っていた。
紅茶の国の由緒ある淹れ方に、たちまちベルガモットとダージリンのフレーバーが溢れ出す。濃い目にしたそれを氷の入った頂き物のグラスに注いで、適温になれば完成だ。
「このグラス、アールグレイ様からのものね」
「こういう時しか使えませんから」
決して安いグラスではないが、聖グロ生徒の生活水準から見れば珍しくもない品物。けれども2人にとっては大切な宝物で、ダージリンもこれと同じものを2つ持っている。
聖グロリアーナ女学院戦車道先代隊長アールグレイ。彼女が現隊長ダージリンと副官のアッサムに、その職務を引き継いだ時、2人に贈ったもの。
「クラブハウスで堂々と、アイスティーを飲んでらっしゃったのはアールグレイ様だけだったわね。淹れたての紅茶に買ってきた氷をジャボジャボ入れて」
腰に手を当てて、瓶牛乳を飲み干すような仕草をするダージリン。その右手はティーカップを持っている手付きだった。
ちなみにその時使っていた氷はセブ◯プレミアムブランド。聖グロでは一周回ってレアな代物であるそれを、どこで手に入れたのかは今でも不明である。
「懐かしいですね。見ていられなくて私達2人でちゃんとしたアイスティーの淹れ方を勉強するはめになって……。今思えば、どこまで計算だったのかは分かりませんが」
手元のグラスを傾けるとカラン、と氷が鳴る。慣習のティータイムの時間に、この音が鳴るのはアールグレイがいたテーブルだけだった。
聖グロリアーナ女学院が保有しているクロムウェルは彼女の置き土産だ。自他共に認める変人だった彼女は隊長になった途端クロムウェルを導入、今までは冷や飯食いだったクルセイダー隊を率いて成果を上げた。
が、クロムウェルは昨年の全国大会で破損して以降、応急処置のみであとは放置されている。理由はOG会の最大勢力マチルダ会の圧力だ。結果クルセイダー隊は倉庫番に逆戻り、卒業したアールグレイもまた、半ば出禁扱いとなっている。
そして重度の格言癖以外は完璧な淑女で、アールグレイの奔放な行動に辟易し、世話係でありながら、ことあるごとにOG会へ苦言を呈していたダージリンが、満場一致で隊長に推されるのは、至極当然のことだった。得意な戦法は機動力を重視した撹乱戦を好んだアールグレイとは真逆で、マチルダの装甲を全面に押し出した浸透制圧。
マチルダ会はこれで安泰と胸を撫で下ろした。
それもアールグレイの計算の内だったのだが。その実ダージリンとアッサムは彼女の共犯者である。
勝てない伝統なんていらない。
それがアールグレイが最後に漏らした唯一の本音だった。
だからこそダージリンもアッサムも先代の遺産をしっかり受け継いでいる。クロムウェル、アイスティー、漫画、麻雀、mtg……等々。過激なセクハラ行為以外は。……セクハラの代わりに今代の隊長は
「アールグレイ様が作った切っ掛けを私達が潰すわけにはいかないわ。予算は下りずとも、なんとかクロムウェルを修理しなくてはね」
「もちろん……とは言ってもマチルダ会が絡まない予算なんて、あぁ予算といえば」
思い出話も程々に切り上げ、アッサムがいつものノートパソコンを開いてメールを確認する。
2人が思い出に浸るには、やらなくてはいけないことが多すぎた。
「情報部によれば、大洗女子が新しい戦車を購入する気のようです」
「みほさん達が? 失礼だけれど、どこにそんなお金があったのかしら」
ダージリンはグラスをテーブルに置くと、視線をアッサムに合わせる。「新着のメールが入ってます」と2、3操作をするのが見えた。
「どうやらほぼ個人購入の形態ですね。出資者は2名、鴉羽唯夢と猫山霧音という方です」
向けられたディスプレイに映っている写真を覗き込む。見覚えのない顔だ。
「随分と可愛らしい方達ね。特に白い子。背景は?」
「そこまではまだ。情報部も掴みあぐねているようでして……、この金額をすぐに用意出来る家となると、ある程度絞れそうなものですが」
「ふむ……」
ダージリンはしばし思案する。そしておもむろに立ち上がった。
「ちょっとクルセイダー会に連絡を取るわ。すぐに戻るから紅茶はこのままにしていて頂戴」
「えぇ。待ってます」
ドアの閉まる音。
「いつもの調子を取り戻したのは良いですが、また変なことを思い付いてますね……」
アッサム1人になった部屋で溶けた氷が楽しげな音を鳴らした。
ダージリンは一つ妙案を閃いた。その実行のため、クルセイダー会に連絡を取ったところ
「ごめんなさい、私達、クルセイダーのリバティエンジンで耳をやられてしまったの。もっといい戦車に乗りたかったわ」
いや、やられたのは人生の速度計でしょう、と突っ込みたかったが、とにかく了承は取り付けた。
クルセイダー会の皆様は卒業後即結婚か、一生をスピードの向こうに捧げるかの両極化が年々進んでいる。そして破局する場合も一瞬だ。ちなみに一番未婚率が高いのはマチルダ会。チャーチル会はクルセイダー会とマチルダ会の間。
(でも年々平均結婚率は減少して……、やめておきましょう)
何か空恐ろしい気配が背筋に這い上がってきた。まるでドグラ・マグラのような。理解してしまったら、自分は何かとても大切なものを失ってしまう気がする。
私は普通のチャーチル乗り。普通に生活してれば普通に結婚出来るわ。
だから毎年出会いを求め、パーティを徘徊するゾンビにはなり得ない、と自分に言い聞かせた。
そんなことより問題は クルセイダーをいかに大洗女子へ売りつけるかである。
戦車を購入するには手間がかかる。無名校が一からとなれば半年はかかるだろう。そこに私が颯爽と登場、紅茶片手に「お困りのようね」と如何にも貴族の義務かのようにクルセイダー(有料、クーリングオフ不可、保証なし)を提供するのだ。
大洗女子は戦車を手に入れ、自分達はクロムウェルの修理費用を得る。
お互いにwin-winの完璧な関係じゃない、と会心の策に顔がニヤけるのを抑えきれない。何より自分がカッコいい。きっとみほさんも惚れてしまうだろう。
通りすがりの聖グロ生が「またダージリン様が変なことを考えてらっしゃるわ……」と、そっと避けられようと気にならないくらい上機嫌だった。
今なら髪型を「サザエさんみたい」と言われても、スターゲイジーパイを顔面に投げつけるだけで許せそうだ、とも思った。いつものダージリンなら容赦なく、肥溜めマーマイト風呂にぶち込むだろうから寛大な対処である。
某共産国家の大統領みたい、と思った読者は夜道に気をつけるように。おそロシア。
が、ダージリンの機嫌が良いのはアヘン吸ってるような最高に冴えてる妄想しているから、だけではない。
最初にことわっておくがダージリンは頭がいい。
具体的に言えば頭が良すぎて筆者が描けないくらい。筆者より頭の良いキャラは描けない*1ので、そこはダージリンじゃなくて、やっすいティーバッグの出涸らしになっても許して欲しい。これ以上は筆者がクスリをキメる羽目になる。
しかし同時に大富豪の典型的な箱入り娘で、世間知らずだ。この世界線では若干、某掲示板に汚染されているが、人格形成に影響が出るほどではない。そもそも英国人は下品なジョーク大好きだしね。残念だが当然、むしろ正しいと言える。
故に彼女は突然現れた大量の現金を持つ白髪だか銀髪だか分からない身元不明の少女を見てピンときた。
(この子……きっと鷲◯麻雀で勝ったのよ!)
やっぱりアヘンキメてるじゃないか。やっぱり妄想じゃないか。アールグレイの遺した漫画の影響をモロに受けていた。なまじっか、その額を用意出来るレベルの家に生まれたのと、勝者を素直に称える高潔な性分が災いした。災いどころか天災だよ。
そして黒髪の方は勝手にカ◯ジ認定していた。あるいは森田◯雄。更にダージリンはカ◯ジがあまり好きじゃない。
リアルア◯ギに会えると思い浮き足立つダージリン。誰でもいいから巻き込みたいと思っていたところで丁度いい生贄
「行くわよ! ペコ」
「えっ、ちょっとダージリン様⁉︎」
「『時のある間にバラの花を摘め、時はたえず流れ、今日ほほえむ花も明日には枯れる』」
「ロバート・ヘリックですね、ってどこに行くんですか⁉︎」
オレンジペコにロクに説明をしないままヘリに乗り込むダージリン。リリーフカーに乗り込む巨人小笠原*2並にウッキウキだった。
妄想を垂れ流したちゃんとした説明をしたのは、もう30分で大洗女子の学園艦に着くという時で
「ねえペコ、アナタもア◯ギに会いたいでしょう?」
「こんなことのために勝手にヘリを飛ばしたんですか? その方に興味がないと言えば嘘になりますけど、えぇー……」
搭乗するや否や手渡されたア◯ギの単行本を膝の上に置きながら、ダージリンの話に辟易するオレンジペコ。横にはいつ運び込まれたのか残りの35巻が鎮座している。読み飛ばしに読み飛ばしを重ねてやっと、鷲◯麻雀のさわりまで来たが、先は長い。
(確かに会ってはみたいですけどね)
危機感より好奇心が優っている辺り、この子も相当な世間知らずだった。箱入り度ならダージリンをも上回っているので当然だが。
「私がア◯ギ、ペコはカ◯ジを探して頂戴。聖グロまでご案内してクルセイダーを買わせるのよ」
「もう完全に同一視してるんですね……。流石に見ず知らずの上級生に声をかけるのは厳しいので、私が猫山さんと話したいのですが」
「仕方ないわね。ヘリではちゃんとお相手するのよ」
「はい」
ア◯ギにお金絡みの話は死亡フラグでは、と思ったが、時間の無駄なので黙った。オレンジペコは聡い子なのだ。諦めているとも言う。それより続きが読みたかった。
「そろそろ着くわ。準備しましょう」
「鷲◯麻雀の結末まで読みたいんですけど……」
「残りの巻、全部鷲◯麻雀よ」
「えっ」
こうして大洗女子の学園艦に降り立った2人、幸か不幸かそれぞれ目当ての人物はすぐ見つけることに成功。
件の人物2名は戦車道演習中に、乗員の心を大破させると言う重大な事故を引き起こして、時間が終わるまで待機処分になっていたのである。片方は校門近くで草刈りを、もう一方は倉庫前でボーッとしていた。
そう。幸か不幸か、である。幸運だったのはオレンジペコ。不幸だったのはダージリン。
「とりあえずパンツ見せてくださる?」
「………………は?」
この日ダージリンの苦手な人ランキングに
なおこれ以降、激しい1位争いが生涯続く模様。
ダージリン
主なデッキは青白コントロール。
緑入れた方が強い?ウーロ?ベ◯スターズカラーの前ではゴミクズ同然よ!
ハンデスは◯ね。
アッサム
意外なことにメインはビートダウン系の赤緑。
ちなみにステロイドカラーとも言われる。810枚のバベルデッキも作ったことがある。何故か1人で笑い出す。
あとハンデス◯ね。
オレンジペコ
最初は何となく可愛らしいということで白ウィニーだった。パワー不足でよくダージリンに苛められていた。
だが鴉羽に黒森峰みたいなデッキを貸し出され、黒のハンデスに目覚める。そもそも何もさせなければいいんです。痛みは生きてる証拠。
打ち消し◯ね。
アールグレイ
聖グロ最強プレイヤー。乳首ステイシスとか使ってくる変人。本編登場予定はない。
鴉羽結夢
黒メインのデッキがほとんど。オレンジペコを黒に染め上げた。
黒枠のvolcanic islandsのNM品を4枚所持。
打ち消しもハンデスにも罪はない。だがマローは永遠に社長室に籠ってろ。
猫山霧音
何かよくわからないが枠が黒い宝石の描かれたカードと黒い蓮と3枚カードが引けるカードと時間がどうこうというカードが入った紙束を報酬にもらったことがある。とりあえず金庫に保管。
栄光あるイギリスの歴史を聖グロ生に説明されて一言
「じゃあ今あるのは偉大なる大英帝国の残りカスということか?」
アンケートの経過を見るに、皆さんダンモロが何したか知りたいようで。別に「最後まで付き合った」という言葉通りの意味なんですけどね。
文句は受け付けます。気軽にどうぞ。
ここ好きやってくださった方ありがとうございます。今気付きました。
気に入ったところがあればまたお願いします。
傾向調査(期待に添えるか、そもそも書くかどうかも未定です)
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試合が見たい(第一の被害者はプラウダ)
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毒にも薬にもならない日常回
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前世でダンモロは何したの?
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そもそもこんなの書くな
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