うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

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Sリーグ

Sリーグは月曜日以外が放送日で、その日に行なわれる最大3局を、夜6時から生放送している。中々に人気なようで、初週よりも2週目の方が来場者は多かったし、日曜日は固定で名人の試合があるから1番人が来ている。何だかんだで、名人の人気というのは凄まじいものがあるな。完全に将棋界の顔だし、俺が将来こうなる姿は全く想像出来ないわ。

 

「名人が勝ちそうね。神鍋八段は名人との相性が悪いのかしら?」

「勝率で言えば、名人に勝ち越しているの俺と九頭竜ぐらいだからな。しかしまあ、歩夢はこのままだとA級順位戦を勝ち上がれたとしても名人には勝てないぞ」

「……そう言えば師匠の順位戦の初戦の相手、久瑠野七段なのよね?」

「ああ。団体戦で受けた借りはキッチリ返してくるわ」

 

今年も名人を防衛し、恐らく来年、歩夢との名人戦になったとしても名人は防衛する可能性が高い。歩夢の対名人戦勝率が、明らかに悪いのだ。一昨年の竜王戦の挑戦者決定戦で名人との初手合わせで負けた後、名人には3連敗。その後は勝ったり負けたりを繰り返しているけど、通算成績は負け越している。

 

で、早指しになるとプロ棋士は大なり小なり棋力が落ちるのだけど、名人は落ちない。原作で於鬼頭さんが才能の数値化を行なった時に、名人は早指しにおいては歴史上のどんな名棋士よりも異様に高い数値を出したようだけど、過言ではないだろうな。

 

『長時間での戦いなら歩夢も勝てる可能性は出て来るでしょうが、早指しだと無理ですね。経験の差も大きいです』

(名人はこの持ち時間形式のトーナメント戦であるN○K杯で11回の優勝をしているからな。何なら去年も九頭竜に勝って優勝してるし、歩夢にとっては色々と不利だわ)

 

名人対歩夢の対局を、天衣と並べながら色々と検討をしていく。Sリーグは、A級棋士同士のガチンコ対決をほぼ毎日見られるという点でも嬉しいな。ファンだけじゃなくて、プロ棋士にとっても有り難い。

 

名人と歩夢のチームは、先鋒戦で歩夢が名人に負けたけど、残りの2戦で歩夢のチームメンバーが勝ち続けて逆転。チーム†聖騎士†の勝利だ。坂梨さんも普通に強いな。こりゃ、今年のC級2組は荒れるぞ。全勝以外で昇級することは、ほぼ不可能だろう。

 

団体戦も各チームの2試合目が終わり、徐々に順位の差が出来て来た。そしてこの団体戦のせいで、少し予定が遅れたが帝位戦の挑戦者決定戦も行なわれ、俺は紅組を勝ち上がった於鬼頭さんにアイのサポートもあり勝利。7月から九頭竜と帝位戦を戦うことになった。日程が詰まる詰まる。

 

……Sリーグを過密日程にしたのは、純粋にダラダラとやってられないという理由もあるだろうな。しかし6月と7月の対局回数はおかしいというか、月の半分以上は対局日じゃない?なお天衣の方が対局数は多い模様。そろそろ天衣は出席日数が危なくなって来た。

 

「各予選の二次予選まで勝ち進んで、そこで負けるのは1番辛いからよく考えろよ」

「分かってるわよ。今まではデビュー以来の連勝が続いていただけだし、少しは選ばないと私も身体が持たないわ」

 

選ばないと身体が持たないとは言いつつ、女流棋戦は全勝していく天衣。まあそっちはそうそう負けることが無いだろうし、楽に戦えているからむしろ勝ち上がった方が良いのか。流石に女流棋戦と各タイトル戦の予選を同日にすることは出来ないだろうし。

 

師匠が痩せている理由が分かった気がするわ、と言いつつ夜叉神邸に帰る天衣。迎えに来た晶さんは、二段に昇段したという報告を嬉しそうにしてきた。アマ二段は、他人に将棋が強いと自称出来るぐらいの実力だろう。これでマイナビ女子オープンのチャレンジマッチには挑戦するだろうし、下手したら女流棋士になるかもしれない。

 

……今の段階では、女流棋士になれる確率なんて1%も無いだろうけど。晶さんは奇襲戦法が大好きで、棋力が安定しない。一発勝負のトーナメント戦では奇襲戦法が上手く嵌ればある程度は勝ちあがれるだろうけど、下振れも酷いのでまあ組み合わせに恵まれれば予選突破するかな程度。

 

『天衣の後手番角頭歩は、晶さんもある程度指せるんですよね。……晶さんの師匠は、天衣にします?』

(天衣と姉妹関係になるか、親子関係になるかは晶さんの選択次第だな。最近は仕事も頑張りつつ将棋の勉強をしていたのは知ってるし、俺も天衣も弟子入りはOKするだろ。まあ弟子入りしたら指導は本腰を入れるけど)

『10歳年下の師匠とか、確実に話題になる構図ですね』

(世間的にはロリ師匠爆誕になる。あと月光会長が晶さんから見て曽祖父になるとか意味わかんねえ)

 

万が一女流棋士になった場合、誰の弟子になるかはわりと問題だ。というか晶さんが俺を選んでも天衣を選んでも、年下の師匠になることは変わらないのか。それなら師匠が月光会長というのも選択肢に入るけど、晶さんと兄妹弟子になるのか?そもそも月光会長が弟子入りを認めるかは微妙だし、難しい問題だな。

 

『晶さんには大会までの期間で、詰将棋の本を沢山買ってあげましょう』

(なるべく長手数の詰将棋を、だな。可能なら21手詰以上の詰将棋を、湯水の様に消化しよう)

 

晶さんのトレーニング方法としては、詰将棋の解答のページを先に見て流れを確認し、問題のページを見て頭の中の将棋盤を解答通りに動かすという方法になる。詰将棋だと盤面全体を頭に浮かべられない人でも何とかなりやすいし、アマ二段クラスなら終盤力だけじゃなくて局地的に深く読むトレーニングにもなる。

 

何より、時間がかからない方法だから隙間時間にちょうど良いだろう。同時並行で短手数の詰将棋を解かせていけば、短い期間で着実なレベルアップが期待できる。まあ晶さんの将棋、奇襲戦法が多いから終盤には将棋が終わっていることも少なくないけど。

 

試しに晶さんに本を渡してやらせてみると、13手詰ぐらいから解答を二度見するようになった。まあ、最初はそれでも良いや。詰みまでの手順を頭の中でちゃんと動かすことが目的であって、詰将棋を解くことが目的じゃないからな。なお天衣は問題を見ただけで瞬時に13手詰程度なら解く模様。

 

これは天衣だけじゃなくて、奨励会員でも簡単な13手詰なら30秒で解くだろう。あとあいなら31手詰でも瞬時に解きそう。それだけプロ棋士や奨励会員とアマが違うということで、明確な差でもある。……女流棋士相手に、1勝ぐらいは出来るかな。

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