うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる 作:インスタント脳味噌汁大好き
Sリーグが始まってから3週目で、一時的にリーグのトップに立ったけど、チーム九頭竜に後で抜かされるだろうなと思っていたら九頭竜のチームが女流棋士チームに負けた。
チーム修羅雪姫:先鋒九頭竜竜王○、中堅二ツ塚五段×、大将空四段×
チーム天空撃摧:先鋒釈迦堂女流六段×、中堅雛鶴女流四冠○、大将祭神女流四段○
チーム巨匠:先鋒生石九段×、中堅久瑠野七段○、大将辛香四段×
チーム風林火山:先鋒山刀伐八段○、中堅阿曽原六段×、大将八丁五段○
想像以上にチーム九頭竜の総合力が低いのか、単純にあいが強すぎるのか分からない。というかあいはここまで3連勝とかおかしなことしてる。そして空さんが祭神に負けているから、祭神もやっぱ強いな。
これで総合順位は1位が俺のチームで2位が山刀伐さんのチームという状態。中々の混戦模様だな?
1位:大神 5勝3敗 +2
2位:風林火山 5勝4敗 +1
3位:修羅雪姫 4勝4敗 ±0
3位:炎熱の駒 4勝4敗 ±0
5位:天空撃摧 4勝5敗 -1
6位:巨匠 3勝5敗 -2
チームの勝敗はそれほど重要じゃなく、要するにチーム全体で何勝勝ち越せたが焦点になる。……でも生石さんのチームが最下位になるっていうのは何か違和感しかない。いやまあ山刀伐さんに直接対決で負けたのが大きいんだろうけど。
ちなみに2位が同率だった場合、そのチーム同士の直接対決の成績を優先するのではなく、チームリーダーの直接対決になるので俺や九頭竜が有利なルールになっている。逆に釈迦堂さんのチームはここまで個人としては3連敗中の釈迦堂さんがチームリーダーなので苦しい。まあ釈迦堂さんのチームが同率2位になるとは思えないけど。
山刀伐さんのチームはこれから月光会長のチームや九頭竜のチームと当たるので、順位変動は激しそうかな。まだ勝ち抜けが確定したチームはいないので、団体戦としての目論見は達成しているようにも思える。拮抗した試合も多いし、大番狂わせもあるしで話題が尽きない。もう一つの方のリーグは順当な試合が多いようだけど、それでも順当という言葉1つでは片付けられない名勝負が沢山生まれている。
「で、マイナビ女子オープンのチャレンジマッチに顔を出すって、スケジュールが明らかにおかしいよな」
「元々これは決まっていたじゃない。晶も出るんだし、楽なポジションでの参加だから良いじゃない」
そしてマイナビ女子オープンのチャレンジマッチの日を迎えたので、天衣と晶さんと3人で会場まで移動。呼ばれたわけでもないのに、何かJS研の付き添いに来ていた九頭竜と会ったので、ちょっとドン引きしておいた。
いやまあ貞任もシャルロットちゃんも有段者だし出場するのは分かるけど、その付き添いに九頭竜が行くのか。お前もかなりの過密スケジュールのはずなんだけど、頭おかしいのか?
『九頭竜は勝ち上がっている棋戦も多いですし、明日は東京での対局だったはずです』
(ああ、明日はB級2組の順位戦だったか。順位戦は各クラスで日程が分かれているから把握し辛い)
『……シャルロットちゃんはいつまで日本にいるんですかね?』
(……んー、原作では明記されて無かったはずだし、一旦は帰るだろうけどまた留学しに来るんじゃない?)
組み合わせ表が発表されるけど、晶さんは比較的楽な山に……あ、晶さんと同じ山に焙烙さんがいる。互いに棋力に波がある者同士、面白い将棋が見れそう。
「……1回戦の相手は、名前も聞いたことが無いような女流棋士ね」
「毎年、ギリギリ降級点は取らない感じの成績だな。いや、1回降級点は取ってるからわりと崖っぷちだわ。本当に女流棋士の中でも弱い方だし、晶さんが勝てる可能性はあるぞ」
晶さんの初戦の相手は、毎年引退の危機に晒されている女流棋士だ。女流棋士の世界でも降級点というものはあり、それは年度内の成績によって決められる。今だと1年の通算成績で順位付けをして、下位5名に入ったら降級点なのかな。そして降級点を3つ貯めたら引退になるので、女流棋士の世界もわりとシビアである。
「ん、相振り飛車か。向飛車対向飛車とか稀有な対局してるなあ」
「2人とも、指す戦法を始めから決めていたんでしょ。
やっぱり晶の相手、レベルが低いわね」
「女流棋士と一口で言ってもピンキリだからな。女流四天王を始め、上澄みはまだマシだけどその下は奨励会員にも劣るからマジでアマチュアの延長」
『感性がアマチュアの延長にあるマスターが言うと説得力ありますね』
(うるせえ。序盤はむしろアマチュアの延長で良いんだよ。問題は中盤以降だ)
晶さんの相手は序盤こそしっかり勉強しているけど、中盤から酷い。まるで序盤を丸暗記して女流棋士になったような奴だな。序盤は確かに晶さんと相手で差が付いたけど……最新式の銃で殴って来るのは見てられない。
一方の晶さんは、種子島のような威力も微妙な銃だけど、しっかりと相手の心臓を狙って撃った。この辺はアイと天衣の指導の賜物だな。威力が微妙だから即死には至らなかったけど、確実に相手へダメージを残した。
『戦型丸憶えしておいて使いこなせないってギャグですか?』
(相手はしっかり序盤の後の勉強さえしていれば普通に勝っていたよな。あと何で終盤力は普通にあるんだろ)
『詰将棋は好きとかそういうのじゃないですか?あ、晶さんが詰ましに行ってミスしましたね』
(無理はしていないのでセーフ。相手に駒も渡ってないしな。しっかり必死にする辺りは昔の天衣にも似てる)
初戦は、しっかりと中盤のリードを確保し続けた晶さんの勝利。女流棋士相手に1勝出来たのだから自信も付いたようで、このまま4連勝してやると意気込んでいた。
しかし2戦目でA級棋士にも勝ったことがある焙烙さんと当たり、晶さんは見事に負けた。お互いに不発で泥沼の持久戦は見ていて面白かったけど、指している本人達にとっては辛い将棋だったはず。
敗者復活戦でも女流棋士相手に1勝はしたけど、その次で負けてしまって晶さんの女流棋士になるチャンスは潰えた。でもまあ全4局の相手、全員が女流棋士だったし、その中で2勝2敗は今の晶さんの出来を考えると十分だと思える。
あ、貞任はチャレンジマッチを勝ち上がってました。シャルロットちゃんは敗者復活戦の方で勝ち上がっていたけど、スタミナ不足のせいで途中敗退。JS研の面子も強くなったというか、九頭竜に育てられているのだから強くならないわけがない。同世代のあいとも何度も指しているだろうし、本人達の将棋にかける時間が他の女流棋士と比べても違い過ぎる。
JS研って、貞任とあいが中学生になったらJC研になるのかな?……何かJS研よりJC研の方がいかがわしい感じがする。