うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

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ミス

昨年度の順位戦、昇級をした人は大体知っている面子だった。B級1組からA級へは俺と久瑠野さんで、B級2組からB級1組へ昇級した面子には九頭竜が入っている。飯盛さんや二ツ塚さんはC級1組からB級2組へ上がったし、C級2組からは天衣と鏡洲さんが上がっていた。

 

空さんは1敗したせいで、順位の差で昇級出来ず。今年のC級2組は同じく1敗だった坂梨さんがいる上、椚やあいがいるからそう簡単には昇級出来無さそう。ちなみに坂梨さんは今年の詰将棋選手権で実質優勝をしていた。1位が俺で2位があいというバグキャラだったから、3位の坂梨さんは実質優勝扱いで良いだろ。

 

で、今年の詰将棋選手権で全問正解が出来なかった月光会長は今年もA級を維持したけど、宣言通り引退をした。まあ今年、ギリギリA級残留という位置だったし来年は落ちる可能性も高かったからな。俺がA級入りするということは、確実に順位が1つ下がるということだし。

 

電脳戦はソフト側の物理的勝利で幕を閉じたため、今度はソフトじゃなくて人に俺を負かそうと、とある動画サイトで九頭竜、歩夢、天衣の3人が俺相手に脳内将棋を挑むという企画があった。

 

一応昨年度の勝率2位3位4位が挑んで来た形だけど、無事アイが全勝した。後で見返したらコメント欄にあった「3人で勝てるわけないだろ!」「本当に3人ぽっちじゃ勝ち目ないの草」「どの3人組でも勝てないからセーフ」などのコメントが印象に残ったわ。

 

『九頭竜が800人いればちょっと怪しかったかもしれませんがね』

(……たぶん10人以上を相手にするの、俺は無理だぞ?いや相手は出来るけど、絶対どっかでミスするし全勝は無理)

 

電脳戦後、俺を上回ることが出来る可能性を示されたプロ棋士達は諦めがより一層悪くなったし、来年以降の電脳戦はハード面の制限をかける方向で話が進んでいる。まあ持ち運ぶのが現実的ではないというスパコンを持ち出したのはアレだし、今までなぁなぁで済んでいたハード面の話が議論されているのは良い事だ。

 

天衣の方は3度目の女王戦の第3局を迎え、挑戦者のあいが今までの2局で連敗したけど、今日は天衣が中盤でミスったからあいが勝ちそうな局面。昨年の夏に奨励会の三段に合格し、1期抜けを果たしたので才能はぶっちゃけ男性含めても歴代トップ5に入ると思う。

 

(あい相手に初敗北……は初対面で反則負けだったけど、プロ棋士になった後は初めてか。まあ今までの女流棋戦で対あいの成績、19戦19勝だったしそろそろ負ける頃だとは思ってた)

『むしろ、今まであいとの対局でミスしなかったことの方が凄いんですよ。九頭竜の対マスターを除いた対戦成績、昨年度は勝率93%でしたか?要するに九頭竜でも7%の対局ではミスをするんです。ミスしながらも勝った対局を含めると、ミス率は10%を超えるでしょうね』

(ミス率0%のスパコン様が何か言ってる)

『マスターも全力の時のミスはほとんど無いに等しいじゃないですか』

(0に等しい有と、完璧な無では大きな違いがあるんだよなぁ……)

 

対局はあいが優勢のまま終盤に入り、逆転の芽を潰された天衣は素直に頭を下げる。ようやく天衣相手に1勝をしたあいだけど、苦手意識は刷り込まれてそうだな。得意の終盤で小さいけど1つミスをしているし、あいの終盤力も人間らしいところがあったか。

 

「お疲れ様。中盤のミスは酷かったけど、もしかして俺の真似?」

「ええ。師匠の真似をしてみたかったのよ」

「ということは、やっぱり3五歩で開戦想定での縛りか。意図は読めたけど、咎められた手以外のポイントでもその読み筋にはミスがあるから後で伝えておくわ」

「……ミスがある私の間違った読み筋まで読めるものなの?」

「天衣の読み筋を、何万回と見たから読めるだけだ」

 

天衣はプロ棋士になってから、無敗というわけじゃない。強い棋士には負けているし、格下相手でもたまに負ける。それでも1年間を通して、勝率は8割5分とトップクラスだ。上にいる九頭竜とかいう奴と大木とかいう奴が頭おかしいだけです。

 

『ペテンの歩に類する相手のミス待ちの手は、相手の読み筋を知っていないと怖くて使えませんからね』

(そこで相手がミスをする、と確信してなければ中々指せないわ。今回の天衣の突き歩はまた意味が違うけど)

『将来的に相手玉の逃げ場を封じる手、としてみれば良い手かもしれませんが、自玉の弱点を晒した手ですから大問題ですよ』

(好不調の波もあるけど、少し視野が狭まっているのが問題だな。……天衣がわざと負けた感じもするし、そんなに心配しなくても良い気がするけど)

『ぶっちゃけると勝たなくても問題のない日ですからね。過密スケジュールで3連勝したくなかったでしょうし、試すには持って来いの相手だったんでしょう』

 

女流棋戦でも、3番手直りは適用される。というかむしろ、女流棋界の方が1強状態の問題は大きかったからな。空さんの5年間タイトル戦で無敗は色々とヤバかったし……今年のC級2組の順位戦では、あいと空さんがぶつかるから見物だな。

 

その後の女王戦第4局では無事に天衣があいに勝利し、女王のタイトルを保持。四冠目となる女流棋帝は恐らく空さんと争うことになると思うけど、空さんも空さんで不憫だな。どうせならあいとタイトル戦をして来たら良いのに。

 

(あれ……?空さんがあいに将棋でも負けたら、空さんがあいに勝っているのって九頭竜と知り合ってからの期間の長さだけ?)

『それだけで十分じゃないですか。あと倫理観は勝っていると思います』

(倫理観はあいの方が壊れてそうか。……空さんが九頭竜と同じ屋根の下で過ごした期間は、まだあいの3倍ぐらいあるからリードはしているのか?)

『昔の9年間と直近の3年間、どちらの方が記憶に残りやすいかと問われれば……』

(……やっぱり中学進学の時点であいを追い出せなかったの、空さんは辛いなぁ)

 

空さんはもうすぐ18歳になるはずだけど、相変わらずのツルペタ体型。まあ病弱だし仕方のないことではあるんだけど、あいや天衣の発育の良さと比べると少し残念ではある。

 

ちなみに九頭竜と空さんが定期的にラブホへコスプレ研究会をしに行っているのは何処かの雑誌のスクープでバレたので、九頭竜と空さんが付き合っているのは公然の秘密と化した。これで一線超えてないのは色々と凄いと思う。時々あいから天衣へ空さんのコスプレ画像が流れて来るけど、あの小魔王はマジ小魔王してるわ。

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