うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

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予約投稿の日付ミスってました


6組決勝

竜王戦の6組ランキング戦の決勝を迎えて、相手は棋士編入試験で天衣相手に負けたばかりの元真剣師さん。天衣に負けてから、若干覇気がなくなったけど鋭い眼光は衰えてない。いや対面すると普通に怖いわ。脅されそうでなんか嫌だし。

 

「大木先生は、夜叉神先生の師匠だと聞いた」

「はい。そうですが」

「将棋を始めるのは、若ければ若い方が良いんでしょうか?」

「まあ、19歳どころか9歳でルールを覚えても遅いと言われる世界ですからね。プロ棋士になった人は、大抵小学生までに将棋を覚えて、小学生の低学年頃にはある程度は強くなっています」

「……大木先生は、何歳の頃から将棋を始めたんですか?」

「0歳です」

 

対局前には一度、今一番強い棋士である俺と戦ってみたかったと夢を語ってくれた真剣師さんだけど、対局中も会話が多い多い。そんで早指しなのに持久戦を選択とか、泥沼化しそうだなこれ。

 

『付き合ってあげましょうよ。おそらく、もう二度と対戦しない相手でしょう?』

(いやまだわからん。歩夢と戦う前に2連勝したら3勝で棋士になれるだろ)

『それがあり得ないのは、マスターがよくわかっているでしょう。終盤力の欠如と受けの脆さが露呈したなら、攻め合い大好きな飯盛さんが攻め合わないはずがないじゃないですか』

(あー、うん。まあ無理だな。でも持久戦の構えで最初から受けの思考なら、強いんじゃないか?)

『フォローできてませんよ。今回はこちらが持久戦に付き合ったから勝負になっていますが、大半の棋士はこの段階で既に攻め始めています。あの受けを見て、その攻めを耐えられるとは思えません』

 

攻めは間違いなくプロ級だ。6組のランキング戦で、勝ち上がれるだけの武器は持っている。たとえパンツ一丁の槍兵でも、持っている槍からレーザーが出るならライフル兵に勝てる。それが戦車や爆撃機相手に通用するかはまた別の話だけど。

 

対局は持久戦になり、先に元真剣師さんが攻め始める。攻めは得意だから、一度攻め始めると本当に強いんだよな。並みのプロ棋士だと、この攻めはまず止められないだろう。まあ止めようと思ったら止められる攻めの段階で、A級棋士に通用するかは微妙だけど。

 

『天衣が初見で負けたのは、元真剣師さんが後手番角頭歩を使わせてから得意の右四間飛車での突破に成功したからでした。ですが今回の対局は、対局前の構想が微妙ですね』

(持久戦にしようとしたのは元真剣師さんだ。そこで元真剣師さんは、攻めて来てほしかったんじゃないか?攻めが通じなくて負けるより、守りに入ってたら攻め崩されて負ける方がこの人にとってはダメージが少ないんだろ)

 

元真剣師さんの、準備万端な攻めをガッチリと受け切るアイ。いやこれイジメに等しいだろ。攻め自慢の人の攻めを完全に受け切ってるよ。まあ攻めきれない方が悪いんだけど、さすがにこれは棋士編入試験の方にも影響しそう。

 

何よりこの人、今日こうやって俺と指すことが目標だったみたいだし……ああ、完全に攻めが切れた。指し切り状態だ。ここからなら、晶さんが指しても勝てそうだな。

 

終盤に入って、元真剣師さんが指し切り状態だったところから遅い攻めを再開したけど、アイは用意ができたら一気に元真剣師さんの玉を詰ましに行ったので、終局図は圧倒的な大差に。これで俺は6組優勝を果たしたので、決勝トーナメントに進むけど、この決勝トーナメントのトーナメント表も中々に頭のおかしい組み合わせをしている。九頭竜以外、6組優勝者が挑戦者にすらなれなかったのがよくわかるトーナメント表だ。

 

去年椚も通った道だけど、対局数がヤバい。5回勝って、ようやく挑戦者決定戦へ進出だ。こりゃ日程調整が大変そうだな。月光会長と男鹿さんが無理やりにでも調節してくれるだろうけど、色々とずれそう。

 

元真剣師さんは竜王戦5組への昇級が確定し、天衣も昇級者決定戦を普通に勝ちあがって5組昇級が決まった。アマで竜王戦の5組に昇級したのは史上初の元真剣師さん、棋士編入試験ではどうなるのかな。ぶっちゃけかなり厳しそうだけど、可能性は一応0じゃない。

 

そう思っていたらあっさりと飯盛さん、城ヶ尾七段に勝って棋士になった元真剣師さん。城ヶ尾七段はC級1組にいるし、負けるのは分かるけど飯盛さんが早指しで普通にミスって負けるとかいう凄く恥ずかしいことをしていた。元真剣師さんの方も早指しタイプだからヒートアップしたんだけど、あそこでミスるか。

 

『元真剣師さんは、運もあったということですね。晶さんみたいに』

(……晶さん、結局女流名跡の予選トーナメントで決勝まで行ったからな。このまま女流名跡のリーグ入りをしたら、規定で初段昇段だ)

『間違いなく、史上最弱の初段でしょうね』

(否定しようがねえな。そして決勝の相手は、晶さん以上に波が激しい焙烙さんだ。前に一回戦って負けているけど、展開次第では勝てる相手という時点で恵まれているわ)

『初年度のマイナビ女子オープンの予選トーナメント2回戦ですね。あのような泥沼試合になるなら、本当に展開次第では勝てますよ』

 

フリークラスからは抜け出しそうだし、このまま元真剣師さんも活躍していくのかな。これで棋士編入試験制度が確立されてから、この制度を利用して増えたプロ棋士は2人。他にも何人か受験資格は得たし、何人か権利を行使して棋士編入試験を受けたけど、やっぱりプロ棋士相手に勝ち越しは難しいようだ。

 

というか勝率5割以上の八段とか基本A級棋士が出てくるからそれまでに決めないといけない。となると、七段までで3勝1敗の星にしないといけないのは受験者側も辛いだろう。そして四段や五段の低段でも、椚とかあいとかが出てくる可能性がある。祭神の時に勝率は高いけど相対的に弱いやつが固まったのは、祭神にとって幸運だったのかもな。

 

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