うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

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新定跡

大木と名人の名人戦第7局は、異例の盛り上がりを見せた。三番手直りが現実のものとして機能するようになると、最初こそ盛り上がったものの、大木が角落ち上手で九頭竜や歩夢相手に勝利する光景が連続して見られるようになると、徐々に興味が失われていった。

 

しかし名人が、角落ちでなら将棋の神様でも勝てると言ったのは将棋界では有名なことであり、三番手直りを提案したのは全て今日この日のためではないかと薄々ファンの間では噂になっていた。そして対局が始まると、名人の方が持ち時間の消費量が少ないという異常事態が見られた。

 

「……師匠は強さの質が、持ち時間の消費量によって変わります。序盤から、ここまで考えているのは珍しいですね」

「えっと、最初の居飛車と見せかけて中飛車にするところまでは、大木先生の構想通りですよね?」

「師匠が陽動振り飛車を使うのは、相手の研究を外したい時です。しかしそれすら、名人の想定通りだったんだと思います」

「大木先生が陽動振り飛車を使うところは、確かにあまり見ませんね。そしてそれすら、名人の思惑通りだったと……」

 

この対局の解説役は天衣で、聞き手役は鹿路庭だ。もうすでに鹿路庭よりも背が高い天衣は、パッパッと大きな駒を動かして指し手の解説を行う。2人ともルックス面で人気があり、天衣は順位戦で2連続昇級を果たしたことから厳しい将棋ファンからも実力を認められている。

 

対局は、大木が駒落ち分不利なまま封じ手に入る。大木が初めて封じ手をしたということで、ネットの掲示板は大いに盛り上がった。

 

 

 

【大木七冠】名人戦第7局スレpart13【角落ち上手】

 

114:名無し棋士

角落ちってやっぱりハンデとして大きいのか

 

115:名無し棋士

そりゃ大駒一枚ないんだから大きいよ

 

116:名無し棋士

大木が……負ける……?

 

117:名無し棋士

オーキロボも人の子だったか

 

118:名無し棋士

【悲報】大木ロボ、人間だった

 

119:名無し棋士

封じ手初めてじゃね?

 

120:名無し棋士

天衣ちゃんとたまよんが並ぶとたまよんの胸のでかさが分かる

 

121:名無し棋士

>>120

わかる

 

122:名無し棋士

名人もこれソフトフル活用してるよなあ

 

123:名無し棋士

天衣ちゃんのは服がかっちりしてるから揺れが少ない

 

124:名無し棋士

いくら強くても、わしは今の将棋を面白くないと思うよ

 

125:名無し棋士 

スレ蔵王は帰って、どうぞ

 

126:名無し棋士

大木が封じ手でも考え込むのか

 

127:名無し棋士 

まだ名人有利だ

 

128:名無し棋士

大木がタイトル戦で初めてタイトル戦らしい持ち時間の使い方しとる

 

129:名無し棋士

電脳戦でもタイトル戦らしい持ち時間の使い方してただろ

 

130:名無し棋士

電脳戦はタイトル戦だった……?

 

131:名無し棋士

区分としてはスペシャルマッチ的な位置づけじゃね?

 

132:名無し棋士

!?

 

133:名無し棋士

おい、大木が指そうとしたぞ

 

134:名無し棋士

山刀伐が慌てて止めたwww

 

135:名無し棋士

初めてだからね。仕方ないね。

 

136:名無し棋士

おーきの初めて……

 

137:名無し棋士

音声がなくても分かるドタバタ感に草

 

138:名無し棋士

弟子からはポンコツロボットといわれたことがあるんだっけ

 

139:名無し棋士

弟子(天衣一人)

 

140:名無し棋士

今は2人だけどな

年上の女性が弟子ってどういう状況だよ

 

141:名無し棋士

巨乳大好き侍、義によって助兵衛いたす

鹿路庭珠代>清滝桂香>夜叉神天衣>供御飯万智>祭神雷

 

142:名無し棋士

3位と4位が入れ替わったか

 

143:名無し棋士

イカちゃんの方が大きくない?

 

144:名無し棋士

お前らどんだけ胸が好きなんだよ

 

145:名無し棋士

女流棋士のお胸スレはランキングについて日々討論してるぞ

 

146:名無し棋士

天衣とたまよん目当てで解説を視聴しているのが半分はいると思う

 

147:名無し棋士

お嬢様ああああああ!

 

148:名無し棋士

お嬢様ああああああ!って何のネタだっけ

 

149:名無し棋士

>>146

いても3割ぐらいだと思う

 

150:名無し棋士

>>148

天衣ちゃんが解説をしていたイベント会場で観客席にいた謎の新人女流棋士が覆面をしながらお嬢様あああああ!と叫んでた

 

151:名無し棋士

将棋の話しろよ

 

152:名無し棋士

将棋の話したいなら実況スレ行けよ

 

153:名無し棋士

正直殺害予告される理由がわかるよね

ほんとに大木のニュースは場違いすぎてウザいもん

誰に需要あるの?

 

154:1

!aku153

★アク禁止:>>153

 

155:名無し棋士

>>1やるやん

153はお金の準備しておいた方が良いぞ

 

156:名無し棋士

そういえば殺害予告した人どうなったの?

 

157:名無し棋士

懲役3年執行猶予4年の判決だったはず

 

158:名無し棋士

執行猶予つくのかよ

 

159:名無し棋士

それ便乗した上に厳密には殺害予告じゃなかった奴だろ

悪質な奴は確か猶予なしで懲役2年6ヶ月だったはず

大木は金あるから片っ端から訴えてるぞ

 

160:名無し棋士

封じ手オワタ

 

161:名無し棋士

名人が新定跡を生み出し、角落ちでようやく勝てそうな相手。それが大木。

 

162:名無し棋士

ここからでも名人が負けそうなのが怖い

 

 

 

そして翌日。対局はもうひっくり返らないことを悟った大木は形作りを始める。前日に引き続いて解説をする天衣は、大木が頭を下げたのを見て名人が満足そうに頷いたのを見逃さなかった。

 

「……世間では将棋界に尽力した人格者とか言われているけど、やっぱり根っこはただの将棋人ね」

「何か言いましたか?」

「いえ、何も。

それではここから詰みまでの手順を見ていきましょうか。この名人の打った銀は、取ると5手詰め、逃げると7手詰めになります。易しいので少し考慮時間を取りましょうか」

 

後日、大木の指し手は上手での新定跡となり、名人の指し手は下手の新定跡に対抗する定跡となる。どちらも変化こそ多いものの、最善を辿れば中盤までほぼ一本道であり、名人と大木の対局は両者がその最善を辿っていた。

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