うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

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順位戦最終日

天衣の決意や月光会長との師弟タイトル戦があった最中に、あいのマイナビ女子オープン本戦決勝進出が決まり、本戦決勝はどちらが勝っても女王挑戦者としての最年少記録を更新すると大盛り上がりの中、順位戦の最終日を迎える。……九頭竜は先日、蔵王九段相手に劣勢を跳ね返して勝利しました。途中で劣勢になることに気付いて対応出来たのは色々とヤバいし、天衣に対して、九頭竜が蔵王九段に負けると言い切ってなくて良かった。

 

そして今日は、C級1組の最終日。今日勝てば全勝だから、順位に関係無く昇級をすることは出来る。しかしまあ、順位戦最終日の将棋会館の雰囲気は異質だな。

 

『なんか静かですねえ』

(火星戦力軒並向回)

『……今銃で撃たれるとしたら、天衣関係でしょうか?』

(あ、そうだった。やべえ、露骨な死亡フラグは立てれねえ)

 

アイと雑談しつつ、1人で盤の前まで移動する。べ、別にC級1組に友達がいないわけじゃないし。今日は知り合いでもそう簡単に話しかけることが出来ない日なだけだから。

 

(今日の対戦相手は、角換わりから矢倉を組みに行くのか)

『流石にマスターでも、研究済みの範囲ですね。

……何で腰掛銀から銀矢倉に変えたんです?』

(気分。

研究外しにはちょうど良いでしょ)

『向こうは後手しているのに先手番を握っているという状態に、少し考え込んでいます。

受け棋風の人に、攻めさせるなら銀矢倉はちょうど良いかもしれませんね。

……いえ、やっぱり無いです。マスターは相手を愚弄しているんですか?』

(手のひらドリルは止めろ。

あー、そろそろ交代で。こっから仕掛けるのは怖い)

『じゃあ最初から真面目に指しましょうよ。別に良いですけど』

 

今日は相手が居飛車党で、お互いに矢倉を組む展開に。互いに手数をかけて囲いを作った後は、アイさんが相手の矢倉を燃やしていた。火炎放射器で燃やしたかのように綺麗に相手の守り駒を清算し、丸裸にした後は華麗な詰将棋を披露して終局。相変わらず順位戦なのに持ち時間の消費は小便に行った2分だけである。

 

「師匠!昇級おめでとう!」

「ありがとう。結局、負けていても昇級は出来ていたか。まあでも、全勝すれば昇級は確定だし最後も勝てて良かった。

あ、対局終了後だから別に良いけど、対局終了前とかは順位戦の結果について口に出すのはご法度だから気を付けろよ?」

「ん、分かったわ」

 

しかし天衣も、あいの対策研究を練るのに忙しい時期なのに将棋会館まで来て祝福してくれる辺り師匠想いの良い弟子だ。念のために順位戦の暗黙の了解を教えつつ、天衣を実家まで送る。

 

(しかし、C級1組からB級2組に上がるのは大きいよな。お賃金的な意味で)

『基本給が大きく上がりますからね。ボーナスも増えますし……今回は、グラボですか?』

(どーしようかは、悩み中。食事のグレードでも上げようかなぁ)

『最近、アイスばっか食べているのにさらに痩せ始めていますからね。極力、高カロリー高たんぱくなものを食べましょう』

 

順位戦が何組というのは、棋士の基本給にも直結するのでみんな必死だ。C級2組、新人のプロ棋士が入る組では基本給が18万円ほどで、C級1組になると25万円。今回俺は、C級1組からB級2組に上がった訳だけど、基本給は25万から36万まで上がる感じ。ハーゲンダッツ500個分は上がったな。

 

……最近は対局中にハーゲンダッツを食べてお腹を壊す確率が減ったけど、単純に胃が鍛えられたんだろうか?内臓って鍛えられないものだと思っていたけど、もし慣れたのならアイスでの糖分補給がより容易になるな。

 

(糖分補給なら、スーパーカップとかの方が良い気もするけど毎回スーパーカップは食えないわ)

『冷えているのに甘味を感じられる時点で、どのアイスも結構な量の砂糖が入っていますよ。ハーゲンダッツは食べ切るのにちょうど良いサイズですし、無理に変えなくて良いのでは?』

 

将棋は脳のスポーツだから、対局中に甘い物を食べる人は多い。中にはコーヒーに、角砂糖を5、6個入れて飲む人もいる。なおハーゲンダッツはバニラでも1個で角砂糖5個分の砂糖が入っている模様。完全に脳の餌である。

 

……地味に、一部の信者がアイス食べるのを真似し始めているんだよね。なんか去年の12月からプロ棋士になった人で、今までの全試合で俺と同じようにハーゲンダッツを食べている人がいる。年上なのにめっちゃ敬拝してくるから怖い。三段リーグの最終局で俺に叩き落されて3位転落をしたのに、慕っている時点でこえーよ。

 

まあその人は、ホットコーヒーとアイスというコンボだけど。両方で糖分を補給出来て、お腹も壊しにくいようだ。だから真似というわけじゃないけど、俺もホットコーヒーとハーゲンダッツをセットで頼むことにしようかな。

 

日常的にもハーゲンダッツを食べることで、痩せ体型も脱出したい。ちょうど良い時期だし、まとめ買いするか。

 

『来週のホワイトデー、天衣にハーゲンダッツを渡そうとか考えてますね?流石にもう少し、考えて渡したらどうです?』

(……んー?でも天衣もハーゲンダッツは好きそうだったぞ?

というか手作りで何か作るのは難しいし、既製品になるのは仕方ないだろ)

『別に食べ物じゃなくても良いんじゃないですかね?というか大量のハーゲンダッツとか、貰って嬉しいか否かで判断して下さい』

(俺は嬉しいぞ?まあ食べ物じゃ無くて、ぬいぐるみやアクセサリーでも良いか)

 

先月のバレンタインデーでは、マイナビ女子オープン本戦の準決勝の後に天衣から大きなハートマークのチョコレートを貰っている。なお既製品。顔や身体はこちらを向けず、目線だけはこっちを向いて少し緊張しながらチョコを渡す天衣は可愛かったです。同時に、色んな葛藤が押し寄せてきて自己嫌悪もしたけど。

 

『いや、そろそろ認めたらどうです?一目惚れしたって。

私もマスターも根っこは同じですし、私のしたいことはマスターのしたいことで、マスターのしたいことは私のしたいことなんですぅー』

(うるせえ。人をロリコンにさせるな。見惚れたのは事実かもしれんが、一目惚れまでは行ってない……はず)

 

ホワイトデーのお返しは色々と考えた結果、最終的に行き着いたのがダイヤのネックレスだった。まあ天衣のチョコが4000円程度だったし、10倍返しを要求されたから4万円程度となるとネックレスが手頃だろう。

 

ブラックカードを持っているお嬢様にとっては、小さなダイヤモンドが付いたネックレスとか要らないものかもしれないが、もうアマゾンでポチってしまったので引き返せない。……いやこれ、引かれたらどうしよう?

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