うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる 作:インスタント脳味噌汁大好き
九頭竜も俺も、福島に拠点を構えている。福島県ではなく、大阪府大阪市福島区の福島だ。関西将棋会館がある福島で、祭りのイベントを行なうらしく、あい女流1級はその実行委員をすることになった。
([聖天通商店街夏祭り]は、あそこの商店街の祭りだよな?)
『九頭竜の家から北福島小学校までの通り道にある商店街ですね』
決して小さな祭りではない。しかしまあ、女子小学生が実行委員で、あいがJS研のメンバーに声をかけてお手伝いをして貰っている姿を見ると児童労働にしか見えない。
そしてもう1人の実行委員になった天衣は、この祭りを手伝うことになった。
……天衣もこう見えて、タイトルホルダーだからな。夏休みになれば待ってましたと言わんばかりに男鹿さんが予定を入れて来たけど、その中の一つにこの祭りの手伝いもあった。
「……俺の家に来ても、面白いものは何一つ無いぞ」
「別に、面白いものを求めて行くわけじゃないわよ」
そのせいで、天衣が俺の住むアパートにやって来た。前に九頭竜の家に上がったけど、俺の家には入ったことが無かったことに気付き、興味を持った流れだ。後は、九頭竜がまたホテルに監禁されたので天衣とJS研の面子が集まれる場所を福島で確保したかったという理由がある。
九頭竜がホテルに監禁されたのは、免状の署名のため。誰かさんのキャンペーンのせいで、300枚の枠に追加で3000枚の応募があったらしいよ?……イマイチ、俺の影響力が分かり辛いな。名人の国民栄誉賞ブーストも続いているし、今回のキャンペーンは別途料金が必要ないやつだし。
……とりあえず俺も、今度また200枚は書かないといけなくなった。たぶん今のペースだと、4時間ぐらいは拘束されるな。会長と名人と九頭竜は、お疲れ様です。1枚1分で書けても、1万枚だと1万分。拘束時間は166時間。えげつない。
俺の住むアパートというか、マンションはそれなりに大きいマンションで、2LDKで家賃14万。8帖の部屋が2つと、15帖程度のLDKという感じ。入ってすぐの個室はゲーミング部屋&寝室で、奥のリビングに繋がっているもう一つの部屋は将棋用の部屋になっている。
とりあえずリビングまで天衣を連れて行くと、思っていたよりも狭いという率直な言葉を頂いた。あの豪邸と、一人暮らし用のマンションの一室を比べるんじゃねーよ。洗面所と風呂は広いし、家賃にしては広い方だぞ、ここ。
『大阪市の家賃は、東京の方の家賃と比べても遜色がないぐらいに高いですからね。ロリコン』
(天衣が家に来たいって言ったんだし、一度ぐらいは招いて良いだろ。……晶さんが手土産に持って来たの、超有名店のケーキをホールごとなんだけど)
とりあえずホールケーキを切り分けると、晶さんが紅茶を入れてくれる。流石に俺の家に紅茶がないことぐらいは、お見通しだわな。それとも、外出する時は常に紅茶セットとか持ち歩いているのかな?
いつも天衣の家で飲んでいる紅茶の味が、俺の家でも出せるというのは晶さんの料理スキルが高い証拠だろう。伊達に天衣の付き人をしている訳じゃない。美味しいケーキとの相性はよく、どんどん食べ進めている内に、急激な眠気が俺を襲う。
『あ、これ睡眠薬飲まされましたね。パソコンの閲覧履歴ぐらいは覚悟しておいて下さい』
(はあ!?うわ、マジだ。瞼が重くなってきた)
『睡眠薬を盛られると、将棋盤が次々と消えて行くのですね。なるほど……zzz』
(っく、パソコンはちゃんとシャットダウンするべき、だった……)
どうやら晶さんに睡眠薬を盛られたようで、俺は深い眠りについた。
大木が眠りについたのを確認し、天衣と晶は行動を開始する。まずは大木のスマートフォンの中身を確認するものの、検索履歴はゲームの攻略情報と電車のダイヤが上位に来ており、不審な点は見当たらない。強いて言えば、九頭竜とJSが一緒の写真が結構な割合でアルバムにあったぐらいだ。
ならばと大木が入るなと言った部屋に入り、ベッド周りを探索する。しかし残念ながら、大木はエロ本を持っていないためにそういう類の物は見当たらない。天衣と晶の2人は一通り部屋の探索をした後、電源が付いているパソコンの前に並び立つ。パソコンの画面はロックされておらず、大木の不用心さが表れている。
大木のパソコンは、デスクトップに多種多様なゲームのアイコンが並ぶ。天衣でも名前は聞いたことがあるようなゲームから、全く知らないゲームまで。そして天衣は閲覧履歴を見ようとクロームを立ち上げ、しかし閲覧履歴の方には進まなかった。
ブックマークの方に、当たり前のようにR-18の同人漫画サイトやエロ動画サイトが並んでいたからだ。大木は現在17歳。年齢の時点でアウトな上、エロ本サイトやアダルト動画の巡回は法的にもアウトである。
「……これって、どうなの?」
「……まだマシな部類です。大木先生に、特殊性癖の類が無かったのは喜ばしいことです」
天衣には見せられない内容のため、代わりにパソコンを操作し確認をする晶は現在21歳。初心な方ではあるが、知識はそれなりにある。大木の閲覧履歴から変な嗜好が無かったことは喜ばしい知らせだった。一方で、ロリが無かったことは残念な知らせだった。
色々と漁る内に、D○siteという購入サイトにも行き着く晶。購入履歴をクリックする際、大木の断末魔が聞こえた気がした晶だったが、気にせずにページを開く。すると大量の購入履歴が表示され、中には当然R-18のものもあった。
「趣味嗜好は公言している巨乳に加え、メイドとナースが群を抜いて多いです。同人誌の閲覧履歴は作品別だとFG○が多くて……そう言えば大木先生のスマホの方に、FG○は入ってないような?」
「FG○は入っては無かったわね。グラ○ルはツイッターの方でも画像を上げていたからプレイしているのは知ってたけど……プレイしていないゲームの同人誌を見るのは、普通なのかしら?」
「いえ、こういうのはプレイしているゲームが基本のはずです。私だって」
「私だって?」
「何でもありません!……何か、大木先生に刺さるキャラでもいたのだろうか?」
多くの情報を収集した後は、晶と天衣が見た範囲の履歴だけ消去する晶。大木の所為で、晶はパソコンの操作も上手くなった。と言っても上辺の知識だけで、誤魔化し方は完全ではない。そもそも大木は、晶の睡眠薬に気付いている。
部屋に入った痕跡を怪しまれないようにするため、晶は大木を運んでベッドへ寝かせる。晶の力が強かったのと、大木が軽かったことで、晶は苦も無くベッドへ持ち運ぶことが出来た。