うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

81 / 168
福島JS祭り

聖天通商店街夏祭りという名の、福島JS祭りが始まる。この日に三段リーグの第15局、第16局も行なわれ、その結果、鏡洲さんは2敗、坂梨さんは3敗となる。椚は3敗をキープしているので、昇段する可能性が僅かに出てきた。他力だけど。

 

辛香さんも2敗なので、昇段の可能性は高い。よって最終日は、鏡洲さんは2敗しなければ昇段が確定。一方で坂梨さんと辛香さんは、直接対決があるのでどちらかが落ちることになる。最終日の鬼勝負だ。

 

『……とうとう、未来知識を活用した博打じゃなくてお金儲けを始めましたか。本当に流行るかは、謎ですね』

(火種は既にある感じだし、乗っかって良いものだろ)

 

夜叉神家の屋台では、祭りでお馴染みの焼きそばやフランクフルト、りんご飴やフライドポテトが並ぶが、その中に一つ、そろそろ大ブームが起きそうなお店がある。

 

『タピオカが再流行して大ブームになったのは、2018年末から2019年ですか。今から準備しておけば、かなりの荒稼ぎは出来そうですね』

(どうだろ?タピオカがりゅうおうのおしごと!世界では大流行しない可能性もあるし、微妙な賭けになりそうだな)

 

今さらだが、原作である「りゅうおうのおしごと!」は現実をモチーフにした別世界だ。しかしながら、前世と差異のある部分は少なかった。だから前世の知識を利用したお金儲けが出来たり、出来なかったりする。何でオルフェは阪神大笑点しなかったん?

 

『コロナが流行るなら、マスク買占めがヤーさん達にとって1番潤うでしょうね』

(流石にそこまで人の道は踏み外さんわ。そもそも、マスク買占めのリスクがかなり高い)

『コロナが流行らなければ、大損しかしませんしね。……それでも常に在庫として、500枚ほど買い占めているのは屑の所業です』

(良いだろ別に。腐るものじゃないし、自分で消費するんだから。あとマスクは変装にすげー便利)

 

俺の保有する現実世界の知識は、死亡日の2020年3月22日まで。原作知識は12巻までだし、2020年4月以降の世界を知らない。コロナで人類は、どうなったんだろうな。

 

タピオカミルクティーに関しては今から準備しておけば、近い未来で大儲けが出来る。なので屋台だけではなく、夜叉神家と協力して店を出すことにもなっている。これで将来流行らなかったら抹殺されそう。ヤーさん怖い。

 

『マスターがインスタ映えする写真を撮れれば、少なからず流行るのでは?』

(そこまでフォロワーはいねえし、流行を起こす側にはなれないだろ。にしても、屋台はどこも盛況だな)

『雑誌でもWあいがプロデュースする祭りということで、大きく取り上げられていましたからね。将棋界のファンも結構な人数が来ていますし、大成功でしょう』

 

「シャルちゃんは師匠の弟子にして貰うんでしょ?お嫁さんとどっちになりたいの?」

「んー、りょうほう!」

「だめだよシャルちゃん。両取りを掛けても、取れる駒は1つだけなんだから。

ですよね、師匠?」

「ん!?ま、まあしかしアレだよ。両取り逃げるべからずって格言もあるから……」

 

JS研の面子も浴衣姿で来ており、あいは冷静な目でシャルちゃんを窘めていた。帝位戦の第2局も勝った九頭竜の今の発言は、要するにシャルちゃんを弟子にもお嫁さんにもしたいということかな?これに関して、もう俺は突っ込む権利を持たないという。

 

「それ、どうせ片方しか取られないから慌てるなって意味じゃない。九頭竜先生」

「いや、九頭竜は今両方OKという意味で使ったと思うぞ?」

 

天衣も黒の浴衣に身を包んでいて、晶さんとお揃いか?同じ黒い浴衣だから、似て見えるのかな。こうして見ると、晶さんも美人だから反応に困る。長身の女性が浴衣を着ると、それだけで映えるからな。

 

祭りは夕方になると客が増え、将棋ブースも本格始動する。メインは天衣とあいの指導対局だけど、人が来過ぎているので九頭竜と俺も動員された。今回は100面指しとかいう曲芸を披露することもなく、普通に10面での指導対局。

 

こっちの方が、お客さんにとっても良いしな。今回はお金も貰っているし、一人一人丁寧に教えて行く。しかしまあ、天衣とあいの人気は凄いな。1局1000円の値段設定だから気軽に申し込んでいる人も多く、列が途切れない。

 

ガチャガチャも凄まじい勢いで回されているし、直筆の手紙の残弾が一気に無くなっている。問題のタピオカミルクティーは、大ブーム中じゃなくても結構売れているので店の件は心配しなくても良さそう。下手すりゃ借金持ちとは言わないけど、そこそこ痛い赤字になるかもしれなかったし。

 

『JS達の手紙の売れ行きが凄まじいですね。天衣が手伝ったのは、大きいです』

(女王奪取して、世間での知名度もうなぎ上り中だしな。帝位戦の第1局で、大盤解説の聞き手役をしていたのも大きいわ)

『女王奪取以来、天衣は世間一般にも知られるようになりました。その影響の大きさは、よく分かりますね』

(空さんが下地を作っていたお陰だから、その点は感謝しかない。その空さんの人気は少し下がったけど、依然として高いままだからな)

 

原作ではこの後に雨が降って来るけど、テントを張っているし雨対策は一応している。でもまあ、祭りの開始時間を俺の進言で予定より少し早めたので雨の心配はあまりしてない。

 

空さんが来たのと同時ぐらいに雨が降るんだよなと思っていたら、空さんが桂香さんと一緒に来て雨が降り始める。マジで雨女としか思えないタイミング。

 

『将棋ブースに関しては夜叉神家に大きめのテントを出すよう言ったお陰で、学校まで移動しなくて済みますね』

(滝のような雨だから、移動するだけでも濡れる。このまま、しばらく雨は振り続けるのか)

『屋台は大ダメージです』

(……あっ。

いやでも、こういう経験もあるだろうし何とかなるんじゃない?屋台の撤収速度、尋常じゃないし)

 

一応、祭りはある程度終わっていたから被害は最小限。将棋ブースで将棋を指すお客さん達は、雨が止むまで追加で対局を申し込んでくれている。大盛況と言える盛り上がりだったし、お客さんの満足度は高そうだったから大成功と言っても良い。

 

さて、原作のイベントは尽きたが帝位戦はまだまだ続く。また帝位戦の第3局で大盤解説の依頼が入っているけど、聞き手役は天衣じゃなくてあいだ。あいは可能な限り、大盤解説の希望を入れたからな。こういうこともある。

 

天衣もあいが九頭竜のことを落とそうとしているのは知っているし、個人的にはたまよんとやるより気が楽だ。あっちは会話中、何個もデストラップを仕掛けて来るからな。……天衣が聞き手役をやるようになった以上、たまよんと共演することは少なくなるはず。とりあえず次の大盤解説は、無難に終わるよう祈っておくか。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。