うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

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リーグ戦

10月から、下半期の三段リーグが始まる。玉座戦は結局、3連勝して四冠達成です。名人が3局とも古い将棋を持ち出して来てくれたので、久々に古い将棋の棋譜を読み込んだわ。……玉座戦は、アイが遊びに付き合う範囲を測られた気しかしないな。

 

『昔の棋士の方が自由に指していましたよね。平然と悪くなるような手も指しますし』

(現代将棋から見れば苦しい手はわりと多かったし、過剰に持ち上げるのも嫌だぞ。天衣が真似してちょっと悪影響出たし)

『何も言わなくても師匠の真似をする良い弟子ですね』

(そんな可愛い弟子相手に1勝も譲らないアイは流石の一言です)

 

天衣はアイとの11面差しに切り替えてからもう既に1500局ぐらい指しているけど、当然天衣は全敗です。天衣が想定以上の手を指して形勢が不味くなったら本気を出す、負けず嫌いの極みのような性格だな。

 

……ただまあ、天衣も1500連敗しているのに立ち上がってくる辺りはマジで鋼メンタル。負ける辛さを考えると、指せなくなる人もいる中で何度も負けられるのは精神力が強い証拠だ。方向性としては、九頭竜のように成長させるのが1番っぽいけど。

 

僅かに空さんや椚、辛香さんと天衣が当たらないことを期待していたものの、三段リーグの組み合わせ表を見て、その期待は木端微塵になった。5局目で椚、8局目で空さん、16局目で辛香さんと当たることが確定。1番の辛い相手と5局目で当たるのは嫌だな。せめて後半で当たりたかったけど、こればかりは運だからなあ。

 

なお辛香さんと椚は当たらないので、それだけでこの2人は得をしている。互いに互いが、当たりたくなかった相手だろうしな。

 

空さんと椚は、17局目か。最終日の鬼勝負になりそうだし、空さん視点8局目に天衣、17局目に椚、18局目に辛香さんって偏ってない?もしかしてどういうルートでも最終日に血を吐くことは確定しているとか?原作とは違ってラストが夏場じゃなくて、春前だからその点はかなり空さん有利なんだけど。

 

空さんの白雪姫という異名は、冬場の勝率が良い事にも起因する。逆に夏場は弱くて、それでも四段に昇段していたんだから、今季の三段リーグでは警戒しないといけない強敵だ。

 

「それじゃあ、全部勝ってくるわね」

 

負け癖がついてないか不安になるぐらいアイに負けまくっている天衣だけど、気分転換に色んなネット将棋で相手をボコっているからバランスは取れている。そろそろ、各種サイトからソフト指しだと判断される日が来るかもしれない。多面指しは、序盤から妙なタイムラグが相手視点であるからソフト指しの違反報告を受けやすいんだよな。

 

そんな天衣は、頼もしい発言をして東京へ向かう。俺はついて行けない。すまん、対局日は流石に休めないんだ。しかも玉将戦の挑戦者決定リーグの試合だしな。ここで俺は、また九頭竜と対決することになる。……於鬼頭さんとの対局だったら東京行けたのに、日程が空気読んでくれない。

 

「……大木は何を飲んでいるんだ?」

「タピオカミルクティー。前に祭りで出店してたでしょうが」

「ああ、店を出すって言ってたやつか。美味しいのか?」

「普通に美味い。あとカロリー爆弾だから俺にとっては必需品になる」

 

『本当にカロリーは高いですからね。マスターにとって、丁度良い飲み物です』

(これから、対局場には持ち込むことにするわ。ちょうど良い感じにニコ生とかに映るし)

『お店の宣伝にもなりますしね』

(案外、プロ棋士で飲食店を営んでいる人は多いよな。将棋喫茶みたいな店を持ってる人もいるし)

 

九頭竜との対局は、俺の先手で始まった。アイが先手を持って、負ける訳がないわな。九頭竜との対局中、タピオカミルクティーを飲みながら、ハーゲンダッツを食べる。やべえ、お腹いっぱいになるわこれ。

 

(んー、九頭竜が例のカウンター型の将棋をやるかと思ったらガチガチに囲ったな)

『よくある居飛車穴熊ですね。まあこちらも振り飛車穴熊なんですが』

(玉を薄く囲って細い攻めを繋げるのが大好きな九頭竜が金銀4枚を使った囲いにするのはわりとレア。この前のゴキゲン研での対戦結果を踏まえてかな?)

『……この対局が、香落ちでしたら端攻めから飛車をぶつけられて負けてましたね。まあ香落ちなら香落ちで指し方は変わっていましたが』

 

九頭竜は飛車交換を迫るものの、冷静に受け流したアイが先に守りの薄い7筋を突破。飛車を成って、桂馬と香を回収して2筋攻めを開始。角交換をして、2三の地点を狙えるように角を打つ。

 

先にこちらが2筋攻めを画策したから、九頭竜はこちらの穴熊の同じ弱点である2筋を攻めるのが難しい。それでも早そうな手で、こちらの角を攻めようとするけど、これたぶん角を切るんじゃないかな?

 

『3四角』

(ああ、そりゃ切りますよね。これ、俺でも攻め切れそうだな)

『続き指します?手順は分かってるんでしょう?』

(いや、手順前後が怖いからそのまま続き指して。この対局で負けたら、挑戦者決定リーグは九頭竜が1位になるし)

 

俺も全勝だけど、九頭竜も今のところ全勝。この対局に勝った方がグッと来年の玉将戦のタイトル挑戦者に近づくから、慎重にならざるを得ない。ここで負けたら玉将を獲得するのが1年遅れるんだよ。

 

穴熊から九頭竜の玉を引きずり出し、見事な姿焼きを決めるアイ。まあ穴熊対穴熊の戦いで、アイに勝つ方法は無さそうだな。たぶんアイの蓄積された棋譜の中では、穴熊の棋譜は多い方だと思う。それだけ優秀な囲いだし、決まれば勝てる、みたいな戦法の典型的な例だからな。

 

これで玉将戦の挑戦者決定リーグは、ほぼ1位が確定。最後に於鬼頭さんとの対局が残っているけど、まあ勝てるだろ。九頭竜に4連敗してタイトルを失った後だから、不調っぽいしリーグの成績も芳しくない。

 

玉将戦のタイトル戦は、持ち時間8時間の2日制だ。そして俺にとって、初となる2日制のタイトル戦になる。拘束時間が長いから、1日目で終わらせたいけど無理なんだよな。封じ手は、持ち時間を使ってもこちらがするようにしよう。

 

今まで獲得して来た棋帝、賢王、盤王、玉座は全て1日制のタイトル戦だ。……獲得するタイトルを選んでいることが、露骨過ぎて分かりやすい。でももう、残りは2日制のタイトルしかないから仕方ない。来年取る予定の帝位も玉将も、2日制のタイトル戦だ。

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