うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

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結婚式場

三段リーグを4連勝で好発進した天衣だけど、次の対戦相手は椚です。椚も当然開幕から4連勝で、今の天衣と椚にそれほど大きな差はない。序中盤では天衣が上かもしれないけど、終盤の椚はわりとえげつない。あと空さんと辛香さんが4連勝で、全勝はこの4人だけだ。

 

そんな時期に誕生日を迎えた俺は、今年で18歳になる。これでもう、R18の同人誌やゲームを買う時に後ろめたい気持ちを持たなくても良くなるし、運転免許も取ることが出来る。もう一度教習所へ通うことを考えたら憂鬱になったけど。

 

『10歳の時からそういうサイトを巡回したりしていたのに罪悪感とかありました?』

(微妙にあった。根が善人だから)

『今までに犯した罪が数えられない善人とは?というか根が善人だったら私に見せつけないでくれます?』

(無理だろ。どうやってするんだよ)

 

18歳の誕生日に、天衣に招待されたのは女王のタイトル戦の第5局があった結婚式場であるサン・アンジェリークKOBEという場所。結婚式がない時にはレストランとして営業しており、タイトル戦で縁が出来たから天衣に招待状が来ていたのだ。神戸の夜景を一望できるお洒落なレストランで、原作ではここで天衣が九頭竜に告白をしている。

 

ああ、ヤバい。今さらNTRの罪悪感が襲ってきた。九頭竜と天衣の父である夜叉神天祐が会ってないから、NTRも何も無いのだけど。

 

『本当に今さらですね』

(うん。でも見惚れた女がほぼ確定で不幸せなルートを辿るなら止める意欲は湧くかもな)

『分かりませんよ?九頭竜が正式に誰かと付き合うまでは天衣も幸せな時間が続きますし、13巻以降で空さんが死に、あいが九頭竜を諦める&好機と見て供御飯さんや月夜見坂さん達が迫らないという条件が揃えば天衣正妻ルートが発生します』

(逆に言えば、そのルート以外は愛人ルートか独身ルートしかなさそう。というかそのルートの発生確率低すぎない?空さんから万が一の後の九頭竜を任されたのってあいだよな?そのあいが九頭竜を諦めるってどういう状況だよ)

『ですが、空さんの死後はどのルートでもあいが諦めるか死ぬかじゃないと天衣は正妻にはなれないでしょう』

(そして空さんが死ぬ気配は微塵も無かったという。将棋指している途中に一回心臓止まって、その後自力蘇生したのに死んだら何故殺した案件だよほんと)

 

原作の後の展開を軽く想像すると、どう考えても空さんと九頭竜の仲は死別以外割けそうにないんだよな。……万が一死別したとしても、その後はあいが強敵過ぎるし、歳の近い供御飯さんや月夜見坂さんが奮起する可能性は高い。ああ、そう言えば九頭竜の好みど真ん中の桂香さんもいた。天衣の確率ひっく。

 

そんなことを考えながら、いつも通りのスーツを着て来たら、ここで天衣から誕生日プレゼントとしてネクタイを貰う。そしてその場で天衣にネクタイを結ばれる。俺のネクタイは安物だし、交換してくれても良いんだけど……天衣がヒールを履いているせいで、俺が屈まなくても天衣はネクタイを結べるの。下手すりゃ、中学生カップルに見られるんじゃね?

 

「このネクタイは、師匠が買ったの?」

「うちの親が買ったやつだな。というかスーツ関連は全部母さんが買ってくれた」

「へえ。優しいのね?」

「いや、かなり怖いぞ?そんでいて、母さんはわりとぶっ飛んでいるし」

 

……小学生のガキが、数十万数百万という金を稼いでスマホを大量購入する様子は、普通の親だと卒倒ものの光景だと思うし、自慢したくもなるだろう。そういうことをせず、俺の邪魔を一切しないどころか、全部分かってる的な目で見守ってくれた両親には感謝しかない。

 

「そう言えば聞いてなかったけど、どんな両親なの?」

「外見は普通、かなぁ?母さんが現場監督者で父さんが現場作業員という出会いだったから、基本的に父さんは尻に敷かれてた。歳も、母さんが2つ上だから少し珍しい夫婦だと思う」

 

父親の身長が175センチで、母親の身長が166センチなのにその夫婦の息子が157センチは色々とヤバい。天衣はまだ146センチだけど、2ヵ月で1センチは伸びる成長期だし、本当に再来年には抜かされるな。

 

「それにしても、小学生でネクタイを結べるのは凄いな」

「晶もネクタイ締めるの下手だから……」

「ああ、そうだったのか。いつもキッチリしてたからわからなかったわ」

「大木様、夜叉神様。どうぞお席へご案内させていただきます」

 

準備が終わったのを見計らって、店の人から声をかけてきた。その後ろをついて行く前に、原作の展開を思い出して腕を差し出すと、満足そうな顔で腕を絡ませてくる天衣。まだ10歳とはとても思えないな。来月には11歳になるけど。

 

夜景を一望出来る特等席に案内された天衣と俺は、ジュースで乾杯する。

 

「お誕生日おめでとう、師匠」

「ありがとう。こんなにしっかり祝って貰えるとは思って無かったし、嬉しいよ」

「どういたしまして。お礼に私を八冠の弟子にしてくれるんでしょ?」

「いつか、な。月光会長にもしもタイトルを独占した場合、免状の署名の肩書きは八冠で良いと言われたから、前より気は楽だわ」

 

名人はタイトルを独占した時、名前の上に竜王、名人、棋帝、帝位、玉座、盤王、玉将と7つのタイトルを書いていたことがあって、それだけでも大変だったらしい。

 

「……もっと早く生まれていればって思ったことはない?」

「無いな。スマホのない生活は想像したくないし、何より天衣と出会うことも無かっただろうからな」

「あっ……今の無し!というか、さらっと何恥ずかしいこと言ってるのよ!」

 

原作でもあった、早く生まれていればって質問が飛び出る辺り、今日天衣から告白来るんじゃない?出来れば俺から告白したいんだけど、向こうから来るならそれはそれでアリだと思う。

 

『ヘタレですか。マスターから決めに行って下さいよ』

(ヘタレじゃなかったら今この場には居ないんだよなあ。もっと早く告白しているはずだから)

『……これから2人の営みをずっと見せつけられるかと思うと、憂鬱な気持ちになりますね』

(まだしないから!あと5年はしないわ!)

『天衣が16歳になったらする宣言ですか?性欲強すぎません?』

(……性欲が強くなかったら、頭の中に同居人がいるのにエロゲーはしないんだよなぁ)

 

でも原作であった、名人批判はしなかった。名人のタイトル通算100期は、100人のタイトルホルダーが生まれる可能性を潰したという内容だけど、師匠が既にタイトル通算5期だからな。将来的にタイトル独占をすることは目に見えているし、悪魔とまでは言えなかった模様。

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