うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる   作:インスタント脳味噌汁大好き

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告白

結婚式場のレストランで出て来たメインの肉料理は、美味いけどヘルシーだな。最近は太るために、脂っこいものを食べ過ぎたか。40キロには到達したことだし、死の危険がある痩せ過ぎ域からは脱出した気がする。なお標準体重まであと10キロほどは太らないといけない模様。腹だけ出そうで何か嫌だ。

 

「誰か付き合っている人は、いないのよね?」

「スマホとパソコンの中身を見て、いないという結論には至らなかった?」

 

少し酸味のあるソースがかかった蒸し鶏みたいな料理をもぐもぐ食べながら、天衣からの質問を受け流す。軽く受け流しているけど、内心はかなり焦ってる。この後に、天衣側から告白される可能性があるからだ。

 

『期待し過ぎていて気持ち悪いです』

(うるせえ。期待しても良いだろ。逆にこの流れで告白して来ないなら、九頭竜との絶望的な差を感じて泣くぞ)

『実際、容姿面では絶望を感じるほどの差があるでしょうに』

(内面は、こっちが腐り過ぎていて相対的に九頭竜がマシという感じか。……勝てているのは、収入ぐらい?)

『収入も、九頭竜は竜王と帝位の二冠なのでプロ棋士としてはマスターと差はありませんよ。というか収入で勝ってるとか言う時点で……』

 

肉料理の後はデザートを堪能し、楽しい食事の時間は終わる。席を立って、結婚式場の階段を降りている最中、天衣がとうとう聞いて来た。

 

「師匠は私のこと好き?」

「それは、LIKEかLOVEかどっちを聞いてる?」

「もちろんLOVEよ。そしてこの質問には、答えなくて良いわ」

「は?そっちから聞い」

 

そして天衣は急に見つめて来たと思ったら腕を首の後ろに回して来て、背伸びしてキスを迫る。唐突だなと思っていたら、にゅるりとした感触が口内に入って来た?ちょっと待て!?

 

(アイ、ヘルプ。天衣がガチだ)

『受け入れて平静を保つマスターもガチですよ?』

(う……ぁ、初キスはデザートのアイスの甘い味か)

『向こうはコーヒーの苦い味ですね』

(雰囲気ぶち壊すの止めてくれない?)

 

たっぷり十数秒、天衣に蹂躙されたけど完全に身体はフリーズしてた。抱き着かれて逃げ場は無かったし、逃げようともしなかったしな。

 

「好きよ、師匠。今の質問の答えがどうであろうと、絶対に好きって言わせるから」

「……いや、俺は天衣のことが好ん!?」

 

天衣の言葉に、俺は自分から告白をしようとして、天衣にタックルを食らう。もう一度キスをされ、俺は無様に尻餅をついた。天衣は馬乗りになるような形で、俺の唇を封じて来るけど、これ他人に見られたら人生終わるやつじゃね?

 

「今言わなくても良いのよ!せめて私が肩を並べるまで待ちなさい!」

「我が儘なお嬢様だな。肩を並べるって、天衣がタイトル戦で挑戦するまで待てってことか」

「そうよ。九頭竜も神鍋も、会長や名人も倒して絶対師匠の元まで辿り着くからそれまで待ってなさい」

「……分かった。まあ、全タイトルで待ってるから何処からでもかかってこい」

 

そして天衣は、タイトル挑戦するまで告白を待てと言ってきた。いや、タイトル戦で戦う前に告白は出来ないだろうし、タイトル戦で天衣と戦えるようになったとして、タイトル戦が終わった時はどちらかが負けた時だ。その時に告白ムードにはならんだろ。分からんけど。

 

……天衣が、タイトルに挑戦できるのはいつになるだろうな。当然だけど、まだ名人や九頭竜の域には到達していないし、その下の生石玉将や月光会長、歩夢相手に10回やって1回勝てる程度だろう。

 

プロ棋士初年度に勝ちあがれるとしたら、あまり注目されない棋帝や玉座か?特に玉座は名人が絶対防衛するマンになっていたし、力を注ぐ人はあまりいなかった。それが俺に変わって、どうなるかは分からないけど賞金は下位だし変わらないんじゃないかな。

 

誕生日に告白して来たお嬢様は、優雅に車へ乗り込み結婚式場を去る。……この後、天衣は後部座席でゴロゴロ悶えてくれるのだろうか?是非とも晶さんに聞きたいところではあるけど、ドライブレコーダーすら回収されるから口止めはされそう。

 

『10歳の女子に翻弄される18歳男性の図。なお精神年齢40歳』

(あーもう!40代ネタを引っ張るな。精神年齢なんて周囲の環境によって変動するものだし、2回目の幼稚園小学校中学校があったんだから仕方ないだろ)

『完全に浮いている存在でしたよね。ガリガリのチビでしたから当然ですけど』

(何か今日は特に辛辣じゃない?もしかして嫉妬?それとも更年期?)

『私は精神年齢18歳なので更年期とか言わないでくれます?あと嫉妬とか自惚れもいい加減にして下さい』

 

立ちあがって、周囲を見渡すと人影はない。どうやら、社会的に死ぬことはないようだ。アイが辛辣だけど、まあいつものことだし気にしない。

 

『別に見られてても、マスターが童顔なお陰で中学生カップルにしか見られないでしょう。下手すれば小学生カップルですよ』

(身長も相まって犯罪臭はしないということか?一応俺は、スーツを着ているんだが?)

『スーツを着ていても、中身がマスターですから……』

(……むしろ、天衣の方が大人っぽかったよな。綺麗に着飾っていたし)

 

店内の客からは小学生カップルだと思われたでしょうねと笑うアイだけど、一応俺は有名人だし大木四冠と気付く人もいる……はず。俺が低身長なことを知っている人でも、実際に見ると気付けない人は多いけど。

 

(それにしても……いきなり舌を入れて来るのはビックリしたわ。強気過ぎん?)

『それだけマスターへの想いが強かったのと……性意識の芽生えの時期に、マスターの回覧したエロサイトを巡回したせいじゃないですか?』

(まだ10歳だぞ?来月には11歳だけど)

『その時期からエロゲーやエロ同人を漁っていたマスターは何も言う権利がありません』

 

恐らくだけど、俺の見ていたサイトを見た影響が出た形にはなった。……釈迦堂さんの店で、天衣自身がメイド服を選んだということはあれやこれやを見ているはず。そりゃ、キスで舌は入れるわな。もっと凄いことをしているシーンを、見ていたということになるし。

 

天衣は晶さんの車で帰ったので、俺は1人で帰路に就く。今日はアイがやかましいから、すんなりと寝れそうにないな。変に拗ねられても困るし、今日も夜更かししてゲームは確定だ。


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