美食屋として働き始めて数週間、一龍さんから「猛獣と戦ってほしい」と依頼を受けた。
相手は、岩マジロ。捕獲レベル25の猛獣といきなり戦えと言う。けれどまぁ……治療費、俺の手持ちの武器の修理代等を含めて報酬金は多めにしてもらったから、良しとしよう。これが最期の日記になりませんように。
結論から言うと、勝った。尻尾の先の岩で潰そうとしてきたので避けて、更に額の角で突き刺そうとしたのを回避。壁に頭をぶつけて目を回してるところを、弱点の腹部を攻撃して終了した。
避けてばかりと思うかもしれないが、これは前の世界からの癖だ。
と言うのも、あまりモンスターの甲殻や鱗に余計な傷をつけると、商品価値が無くなってしまうからだ。綺麗な状態で仕留めれば、報酬金をさらに上乗せしてくれる。だから少ない手数で相手を仕留めようとする癖が出来てるのだ。
そのような事を一龍さんに話すと、大笑いしながら誉めてくれた。「市場に出される食材も傷が多いと安くなるから、そう言う考えは必要で、だけれど中々出来ない事だ」と教えてくれた。
あと、今回の岩マジロの狩猟の目的について聞いたところ、俺の実力を見たかったらしく、本当に危なかったら一龍さん自らが仕留めていたらしい。崖の上から見ていたと言うから、倒し終わった後に崖から飛び降りてきたのは納得だった。
それと、岩マジロのステーキ、めちゃくちゃ美味かったです。すりおろしたニンニクと合わせると最高。
岩マジロの狩猟から少しして、今日はごく普通の海辺の探索。特にパワースポットという訳でもない、ごく普通の海辺だ。そこの岩場を探索していたところ、不思議なことに岩マジロに酷似した生き物を見つけた。前に戦ったのが砂色だとしたら、今日発見したのは黒っぽく、さらに小さいのが多かった。
きっと、足場の悪い岩礁に適応するため、小型に進化したのだろう。
彼らから距離を取って観察を続けていると、分かったことがあった。
それは、彼らは普段は陸上に居るのだが、時々海へと潜る時があるのだ。俺も後を追って見ると、何と水中で魚や小動物を食べているのだ。恐らく、彼らの狩り場は水中だと思われる。しかし深くは潜れないようで、泳ぎはあまり得意じゃないとみた。
こうして食事を終えた彼らは、岩礁地帯で日向ぼっこをする。体力を回復するためか、それとも何か別の理由があるのか、詳しいことは不明だ。
と、ここで気付いたことがあった。それは彼らの見た目だ。甲殻でもある岩は、周りの岩と同じく海藻が貼りついていて、非常に紛らわしい。擬態の効果を持っているのだろう。
本題は、貼り付いた海藻だ。足元の岩に付着しているのを食べたところ、岩海苔だと分かった。
もしやと思い、昼寝している彼らに近づき、付着している海藻を失敬して一口食べてみた。……大当たりだ。それも、日向ぼっこをして居る為に程よく乾き、香りが強い。海からそのままの状態だから塩気もあり、食品として出すならば何も味付けをする必要は無いだろう。
その後、一龍さんにその事を報告した。何かあったときの為にと渡された、IGO製の高性能カメラで撮影した写真も添えて。一龍さんは驚き、すぐに調査班を向かわせることを部下に命令してたから、たぶん凄いことになったんだと思う。
何と、前に見つけた生き物は岩マジロから派生した亜種であり、まだ見つかっていない、すなわち新種だという事が明らかになった。
一龍さんが、その新種の命名権を与えてくれた。だから俺は、こう名付けた。
岩海苔マジロ、と。
~食材メモ~
岩海苔マジロ 捕獲レベル27(まだ発見されたばかりであるため、岩マジロを基準に設定。今後変更する可能性あり)
岩マジロが岩礁地帯に適応した亜種。足場の悪さに適応するために小型化し、尻尾の岩も無くなっている。
水中の魚や小動物を補食するが、人間を積極的に襲うような事はしない。岩を甲殻としている関係で泳ぎは得意ではないようだ。しかし水中に潜る過程で海藻が付着し、それが海苔となる。
食事を終えると岩礁で日向ぼっこをするため、海苔を取りたいなら昼寝をしてるときが狙い目。
読んでいただき、ありがとうございました。