二日目。どうしてもバッカスドラゴンを食わせたいと言うことで、野宿した。あと、昨日飲んだドリンクのおかげか、二日酔いはしなかった。
けれど……ドラゴン探索の途中、激しい雨が降ってきた。やむを得ず、近くの洞窟に避難した。雨は体温と体力を奪うからな……。結構深い洞窟で、俺と所長が入っても広い洞窟だった。
雨がやみそうにない。それに、先ほどからウイスキーのような匂いが充満している。ただじっとしてるのも退屈だし、2人で洞窟を探索することにした。
この洞窟は、琥珀が多く埋まっているようだ。試しに手に取ってみると、綺麗に輝いている。
その時だった。手に乗せていた琥珀が溶けて液体になってしまった。その瞬間、さっきよりも強いウイスキーの香りが広がった。
試しに
だが、どうしてこの洞窟だけ、ウイスキーの琥珀があるのだろうか? より深く潜ってみることにする。
理由が判明した。それは、目の前にある巨大なドラゴンの化石だ。所長が言うには、バッカスドラゴンと酷似していると言う。この化石の周りには沢山の琥珀が散りばめられていて、肋骨部分の先から滴るウイスキーが溜まり、少し大きめの水溜まりも作っている。あまりの神秘的な光景に、所長もあんぐりと口を大きく開けて驚いていた。
ここからは俺の想像なのだが、恐らくこの化石は、バッカスドラゴンの祖先にあたる生き物だろう。鯨の骨から油が出ているように、このドラゴンも骨からウイスキーが染み出ているのだ。まあ、化石から分泌するなんて初めて見たが。
ウイスキーが琥珀のようになるのは、前の世界での経験から来ている。前の世界では、竜琥珀という石があった。これは、大昔のモンスターの体液が結晶化したもので、ベルナ村に居た頃はよく集めていた。このドラゴンの体液がウイスキーとして、竜琥珀の原理も合わせると、辻褄が合うのでは無いだろうか。
さて、このウイスキーの琥珀……。俺は『バッカスストーン』と名付けた。そして、決めた。
俺の、人生のフルコースメニューのドリンクに入れることを。
これは、美味いと言う理由だけではない。ここまで“偶然”が産んだ食材は、そうそうお目にかかれないだろう。
化石が風化や浸食で壊れることなく、綺麗な状態でウイスキーを分泌し続けていると言うのは、滅多に無い。もはや奇跡と言っても良い位だ。もし雨が降らずに洞窟にも行ってなかったら、見つけられなかったかもしれない。
そして、これは新種の食材になるのだが……俺は公表しないことにした。
もし公表したら、バッカスストーンを求めて多くの美食屋たちが訪れて、石を掘ったり、最悪の場合ドラゴンの化石を奪おうとするだろう。
それに、ウイスキーの分泌が終わってしまうと、このバッカスストーンは二度と作られない。どれほど遠い未来になるか分からないが、いつかこの化石は分泌が止まり、そして二度と作られなくなる。自然に消えていく運命なのだ。それを、人の手で早めてしまってはならない。
この日記を見ている者が、善良な、自然に敬意を持つ者であることを祈ろう。もし俺の死後、この日記を見つけたら、必ずこのページは燃やしてくれ。バッカスストーンの眠る洞窟の場所は教えない。自然の運命に委ねよう。
~食材メモ~
バッカスストーン 捕獲レベル測定不能
(何もメモされていない……)
読んでいただき、ありがとうございました。次回もお待ちください。