来馬隊の斧   作:焼肉定食

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第3話

「……」

「何見ているのかしら。」

「あっ。藍先輩。」

 

と覗き込んでくる藍に春樹は珍しく気づかなかった。

ずっとボーダーから支給されたタブレットをずっと見ていたからであり周りに気をとられていたからである。

 

「……ってまたログ見ているの?」

「…はい。今週のランク戦僕が体育祭があって見ることができませんでしたので。」

 

と藍がログを覗くとそれはチームランク戦の映像であることがわかった。

あれから四ヶ月が経ち藍は嵐山隊に入ったのだが春樹は未だに部隊に入ってはいない。だが弧月が9012で8000以上のマスターランクに到達し新人王を獲得。

さらに交友関係が広く多くのボーダー内で春樹を知らない人間はおそらくいないだろうと言われていた。

 

「…本当勉強熱心ね。」

「データは裏切りませんから。」

 

春樹はデータによるランク戦の確率論に力を入れている。元々春樹は野球観戦が趣味でID野球の元にした数値や行動パターンによるボーダー評価を自分で製作し本部長に見られたところに驚愕されるといった出来事がある。

 

「……ふ〜ん。そういえば部隊どうするのかしら。」

「しばらくはフリーでいいと思います。僕は生活にそんなに苦しいわけではないですし。」

「……はぁ。毎回思うのだけどあなたの戦い方を見るにチームに入った方がいいと思うのだけど。」

 

と藍が嵐山隊に入ってからは毎回嵐山隊の訓練ルームで特訓しているのだが明らかに藍との連携はかなり高い。

藍もスコーピオンと武器を改造したスパイダーを使った連携は嵐山隊の連携でも崩されることがあるくらいなのだ。

 

「そういえばトリガー構成はどうしたのよ。」

「僕はメインは弧月(斧)、バイパー、ハウンド、バックワーム。もう一つはテレポーター、バイパー、メテオラ。シールドですかね。今の所。」

「シューターとしてならば出水先輩や玲先輩のトリガー構成かしら。それとテレポーターが少し浮いているのだけど。」

「結構便利ですよ。テレポーターは。トリオンバカみたいに使いますけど。どちらかといえば二宮先輩に寄せたかったんですが。」

 

不満そうに藍先輩と話している。テレポーターとメテオラの相性が良く結構土埃を起こすためにメテオラ。またトマホークを使えるようになり、また出水先輩と同学年の日浦茜繋がりで那須先輩の二人のバイパー使いと話す機会も多くなったことからバイパーを軸に戦うことになったのだ。なおリアルタイムで弾道を弾けるようになったのは春樹の体質が関係しているからではないかと二人は考えている。

なお実際春樹が二宮に憧れているのはボーダー内では有名な話で二宮さんが春樹に言おうとすると無邪気な顔でどうやっても断れない雰囲気になっていて結局許してしまうのが原因だ

ついでにその二宮の弟子ということになっている

そう話していると二人を側目に歩いてくる人が一人やってくる

 

「木虎さんと岸くんだよね?ごめん。ちょっと岸くん借りてもいいかな。」

 

すると見たことがない恐らく高校生か大学生であろう優しそうな人がこっちに来る。春樹自身記憶力は悪い方ではないのでその人は本部で見たことは恐らく一度もないはずだった。

 

「……?」

 

誰だ。と首をかしげる春樹。そして苦笑している先輩がそのまま続ける

 

「僕の名前は来馬辰也っていうんだ。普段は鈴鳴支部にいるんだけど……。」

 

鈴鳴支部と聞いて少し納得したようにする。それじゃあ本部であったこともないことを考えるとさらに納得する

 

「単刀直入にいうけど岸くん。僕たちの隊の矛になってくれないかな?」

「……」

「……」

 

少しあっけにとられたように春樹と藍が固まる。

これが後々部隊を組むこととなる来馬辰也隊長との出会いだった。

 

 

「……鈴鳴第一ですか?」

 

と春樹が聞かされたのはこうだった。

どうやらボーダーとしては同期に当たる村上先輩がいるらしい。

 

「うん。元々は三人でチームを組むつもりだったんだけど……でもそうするとどうしても攻撃が不安になるからね。」

「……あの、村上先輩の主体のチームを作るんだったら俺よりも他の人の方がいいんじゃ。」

「ううん。寧ろ鋼の負担を下げる為なんだ。」

「村上先輩のですか?」

「うん。鋼のランク戦スコアって知っているかい?」

「一応は。マスター到達してましたよね?8012くらいじゃなかったですか?一度対戦して8−2で勝った覚えがあります。5本打ち終わったら一度途中5分休憩とっていたので。」

 

すると鋼だねと確信すると同時にその数字で驚く

 

「えっ?鋼が負けたの?後半何本とったの?」

「5本ですけど。データが少なかったんで前半は少しデータを取っていて5分でまとめてその後全部取り返しました。」

「……データ?」

「えっと。確か。」

 

と春樹がボーダーも入ってからもう何冊も書いているランク戦ノートを取り出す。それを見た辰也が驚くがそれを気にせずに探していく。

藍すら驚くような手書きのノートの数々なのだ。しかも中身は余計に恐ろしい。

トリガー構成はもちろんのこと。個人ランク戦の動きや自分が気になったところを書き綴ったノートには細く丁寧に書かれている

 

「…もしかしてそれ手作り?」

「はい。ボーダー評価やログはボーダー外に持ち込むにはさすがに機密事項が多いのでこっちで個人的にまとめているものを使用してます。」

 

とあっさりいう春樹に来馬は絶句する。

実は藍や二宮さんと仲が良い理由についてはこのノートが全員だったりする。

今日あったことやランク戦が終わる度にノートをしっかりとってその改善をしっかりとランク戦をしながら取り直しているのだ。

トリオンや才能があることは春樹自身もわかっている。

でもだからといって努力を欠かさないと思ったことはない。

必死に努力しあがいて、それで慶を抜かそうとしていることは春樹の本当の姿を知っている人は知っていた。

強さには理由がある。それは春樹自身の理論の一つに入っている。

 

「……そっか。でも鋼ってサイドエフェクト持ちなんだけど。」

「サイドエフェクトですか?」

「うん。強化睡眠記憶っていうんだけど。」

「?睡眠ですか?」

 

サイドエフェクトとはトリオンと呼ばれるトリガー使いの才能みたいな物が多いとでるらしくトリオンの副産物的なものである。

それを持っている人は恐らく5分休んだことに意味があるのだろうと推測した。

 

「……って言っても僕は鈴鳴第一のこと知りませんし。返事はできないっていうか。」

「うん。それは当然のことだろうから一度僕たちの支部に来ないかな?」

「……」

 

春樹は少し考える。合わなかったら合わなかったで断ればいいかと思い。

 

「分かりました。」

 

と頷いた。

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