俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~   作:稚拙

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長兄の罠!?の巻
対話編


 四度目の喧嘩もダメだった。

 でもジジィは懲りちゃいなかった。

 昔のバラエティ番組のプロデューサーじゃないが言わせてもらおう。

 

 アンタの野望は本当に果てしないな……

 

 誰か止めんと本当に長寿シリーズ化するぞ。長々と野望を抱くのは信長とギ○ンで充分だ。『ジジィの野望』ってどんなゲームだよ。

 

 それと。

 今回から次の『実家』にたどり着いた過程とか、ブッ壊された下半身の修理に関しては説明を端折らせていただく。もう4度目ともなると説明するのもめんどい。読んでるアンタもワンパターンは飽きてきたんじゃないか?

 

 さて、ついに『実家』は5棟目になった。ワケワカランドーム状の構造物やら、アンテナやらキャノンやらがくっついてる、なんだかよくわからんがとにかくすごい攻撃的な違法建築物だ。

 そんな攻撃的な『実家』でジジィが考えついた、ドキドキ喧嘩作戦第五弾、それは―――

 

「……ブルースじゃよ」

 

 そーいや長兄、前回の喧嘩でカリンカたんを『実家』から連れ帰し、ジジィに屈辱を味わわせたんだっけ。そのことをジジィは相当根に持っているらしい。

 そして今回、替え玉作戦Ver.2.0として、長兄にジジィ代理をさせるつもり、とのことだ。

 

「でもよ、あれから長兄、完全に青タイツ側についたんじゃね?今更出戻りなんてしてくれねーだろ」

「それならもう手は打ってある。ブルースに化けさせたロボットに、ワシの軍団の指揮をさせるんじゃよ。そうすれば疑いはぜ~んぶブルースに向けられる!作戦名『ブルースの罠!?』じゃ!!」

「替え玉というか冤罪なすりつけとはこれまた外道(アレ)な作戦だな……そう簡単にうまく行くもんかねぇ……ライトのじーさんあたりに見抜かれるのがオチじゃね?」

「くっくっくっ……戦いは二手三手先を読むものじゃよ」

「チェックメイトまで行ったことないくせに」

「うるさいわい。さて、手筈が整うまでの間に改造じゃ、改造!!」

「毎度のことだが唐突だな……」

 

 さて、次のボディは―――

 

「…………へ?」

 

 なんと……!!

 

 特徴がない。

 ボディカラーは薄紫、だがフツーの人型だ。バスターもなければエアーマンタイプでもなく、ホネホネロックでもない。凡庸で、地味に懐かしい純粋人型だった。

 

「……ついにズボラになったか、ジジィさんや」

「フン、外見で判断するな。ワシはな、ジョーシリーズの可能性を『完全ヒト型』のそのボディに見いだしたのじゃよ。考えてもみぃ。ワシの軍団の中で純粋なヒト型なのはナンバーズロボットかジョーシリーズくらい……じゃが、ナンバーズロボットは対ロックマン用の特化型、いわばその道のプロフェッショナルじゃから、別の用途に使うからといって柔軟な改造はできん」

「確かに、今までスーパーでレジ打ちしてたヤツに『今から靴職人やれ』って言っても無理があるわな」

「そこで、ベーシックなスペックのジョーに、オプションとしてのメカを組み合わせることで様々な局面に対応させるコトにしたんじゃよ。『二度目』の時のアーマーのようにの」

 

 そこでジジィが俺に見せたのは、プロペラのついた砲撃マシンと、水上バイクを思わせるマシンだった。

 

「コイツらが俺達の『新たな愛機』ってワケか」

「左様!空戦メカに乗った『アパッチジョー』と、水上バイクに乗った『ライダージョー』じゃ!これからは汎用性こそがモノを言う時代じゃよ!ガ~ッハッハッハッハ!!」

 

 汎用性、ねぇ。

 そのおかげで俺は『特長がないのが特徴』の○ムカスタムみてーなボディにされたんだが。

 改造が終わったちょうどそのころ、外が騒がしくなった。同僚(ロボット)たちが群がっているその先には―――

 

「ワイリー博士!ご覧のとおり、Dr.ライトを引ッ捕らえてきました!!」

 

 赤いボディのトゲトゲしいロボット*1が、縄で縛られたサンタクロースのようなじーさんを引き連れてきた。

 映像で見たことはあるが、直に見るのは初めてだ。

 このじーさんが、パンツマンの生みの親、トーマス・ライトか。ジジィと反対に恰幅がいいこって。

 ……つまりは、これがジジィの“先読み”か。

 じーさんに正体見破られそうなら、そのじーさんのアドバイスをパンツ小僧が受けられなくすればいい。だからじーさんとパンツマンを物理的に引き離す、というわけか。

 ジジィよ……流石に二度目の誘拐……それも老人誘拐にはドン引きだ。

 極刑、待った無し。

 

「……こうして対面するのは“ガンマ”の時以来じゃな……ライト」

 

 いつの間にか俺の隣に立っていたジジィが、意地悪な笑みをじーさんに向けていた。

 

「……ワイリー」

「お前の造ったロックマンには煮え湯を飲まされたからな……果たしてお前の手助け無しで、ロックマンはどれだけ戦えるかな……?」

「そしてその責をブルースに背負わせる、か……お前は……“あの頃”の志すらも捨て去ってしまったのか……!」

「……!」

 

 じーさんの言葉に何かを感じたのか、ジジィは途端に顔をしかめた。

 

「……連れていけ」

 

 ジジィに命じられた赤いロボットは、じーさんを基地の奥へと連行していった。

 俺はジジィを見やった。

 ジジィはばつの悪そうな表情を浮かべていた。

 

 ―――――――――

 

 以前、カリンカたんを軟禁していた部屋ほどではないが、それなりに環境の整った部屋をあつらえ、じーさんはそこに囚われることとなった。

 幼女とじーさんではやはりやる気が違うのか、待遇はカリンカたんよりは落ちていた。冷暖房はあったがテレビもネットも無かった。俺ならたぶん、1週間で死ねる部屋だ。

 でもって、飯当番はやはり俺。毎日通いながら、基本的にはジジィと同じメニューを出している。前回干し芋と言ったが、ありゃ冗談。ちゃんとした食事を作ってる。ホントだぞ?

 4日ほどして、見張り役の番が回ってきた。

 

「お疲れ、兄弟」

「おう、交代か、兄弟。お疲れさん」

 

 ロボットだから疲れないんだが、同僚同士の挨拶というのは人間もロボットも変わらんらしい。

 俺は同型機(兄弟)を見送った。確かアイツはこの後大型ロボットの組み立ての手伝いだっけ。

 

「……相変わらずジジィはロボ遣いが荒いこって」

「…………その声は……いつも食事を作ってくれている……『きみ』か?」

 

 部屋の中から声が聞こえた。この部屋、防音性ゼロかよ……

 つーかやべぇ。そーいやジジィにバレた時も独り言が原因だったっけか。イカンイカン……

 しかし返事をしないのもなんか変だから、とりあえず。

 

「……そうだけど?」

「そうか、やはりきみか……いつもありがとう、美味しくいだだかせてもらっているよ」

「そりゃどーも」

「……ウチのロール*2も料理は上手だが……きみの料理にはどこか『懐かしさ』を感じるんだ。そうだねぇ……うむ、あれだ!大学時代、自炊をしていた時に作った料理の味にそっくりなんだよ」

 

 鋭いなじーさん。

 

「そっか、あんがとよ―――なぁ、じーさん」

 

 マトモに答えてくれるとは思ってなかったが、聞いておきたいことがあった。

 ジジィとじーさんしか、おそらく知らないことだろうから。

 

「どうしてジジィは―――ワイリー博士は、あそこまで『こじらせ』ちまったんだ?」

「……?」

「アンタに負けた劣等感や、社会への妬みや嫉みや反骨心……フツーの人間なら、そういうのをグッとこらえられようよ。でもジジィは世界征服っていう極端な方面に振り切っちまった。それには何か、『きっかけ』があるはずだって俺は思った。ジジィが『キちまった』、決定的なヤツが、さ。ジジィはなんだかんだで話しちゃくれんだろうから、いい機会だからアンタに訊きたい―――」

 

 俺は、扉の向こうのロボット工学の権威に真っ直ぐと尋ねた。

 

「『悪の科学者Dr.ワイリー』……そのオリジンをな」

 

 しばしの沈黙の後、じーさんは語り出した。

 

 ―――――――――

 

 ―――私とワイリーは、元々同じ大学の同窓生でな……あいつは変わり者として学科内でも有名な奴だったよ……

 だが、私が『心あるロボット』を造りたいと言って大学の教授たちの失笑を買ったあの日、落胆していた私に最初に声をかけてくれたのは……あいつだったんだ。

 驚いたものだよ。学科内きっての変人が、『心あるロボット』の開発に協力してくれたのだから。

 試行錯誤を繰り返す中で、不思議と友情も芽生えていった。こいつとなら、同じ目標、同じ夢へと歩んでいける―――私もワイリーも、そう思っていた。

 

 ―――あの時が来るまでは。

 

 ―――――――――

 

 ヤケにジジィがじーさんのコトに詳しいと思ったが、昔は親友同士だったのか。

 だが、今までの話でジジィとじーさんが決定的に袂を分かつような要素はなかったが―――

 

「……『あの時』?」

 

 俺は扉の向こうに(センサー)を傾けた。

 

 ―――――――――

 

 大学の卒業製作にワイリーが作り出したもの―――思えばそれが、『運命の歯車』だった。

 

 『ダブルギアシステム』―――

 

 このシステムを組み込んだロボットは、一時的ながらもその限界性能を超えたスペックを発揮することが可能となる―――というのが、ワイリーの理論だった。

 だが、私や大学教授たちはこのシステムの問題点に気付いた。もし、ワイリーの設計通りのシステムをそのままロボットに組み込んだ場合、内部構造に著しい負担を与え、最悪自壊に追い込んでしまう―――

 そして何より、悪用された際の問題―――

 それを指摘されたワイリーは憤慨し、こう返してきた―――

 

 ―――これを『心あるロボット』に組み込めば、ロボットたちをもっと活躍させてやれるはずだ!圧倒的なパワー!目にも止まらぬスピード!ロボットには、人間を超えた力が必要なんだ!そうすれば、ロボットたちはもっと人々に必要とされる!ロボットたちが主役の社会がきっと来る!

 

 どんなロボットでも、『ヒーロー』になれるんだ!

 

 ―――――――――

 

「結局、大学を卒業してしばらくしたワイリーは学界を去り……次に見た時には……だ。……私は……ロボットとは『良き友人』になりたいと願い……今でも、その思いに変わりはないよ―――」

「…………なるほどな……アンタとジジィとで、『ロボット』に対する価値観が違ってたわけだ。アンタはドラえもんを作りたかったが、ジジィはアトムを作りたかった、ってトコか」

「……オサム・テヅカとフジオ・フジコのジャパニーズ・マンガ・コミックだね。懐かしいなぁ。私も子供の頃、夢中になって読みふけったもんだよ……なるほど、わかりやすい例えだね。そうなると、私がドクター・オチャノミズでワイリーがドクター・テンマか……これほどまでに符合しているとは、あれは未来の預言書だったのかもしれんな……」

 

 へぇ、この人もドラえもんやアトムを読んでたか。この手のロボットマンガに憧れてその道に入ったって人は多いと聞くが、こんな未来の世界でもそれは変わらんみたいだな。何しろ、ジジィの書斎にもアトムやドラえもんが揃えてあったしな。それも相当古い、初版本と思しきヤツが。

 

「よくわかった……ジジィの『きっかけ』、確かに聞かせてもらった……その上で、アンタにしか頼めないことがある」

「……きみはワイリーの造ったロボットなのだろう?ワイリーに世界征服をさせるわけにはいかないよ。必ずや、ロックが……ロックマンが―――」

「結末は……俺にとってはもうどうでもいい」

「……!?」

 

 じーさんの表情が見える気がした。だろうな。主の宿願を『どうでもいい』と切り捨てるなんざ、量産型ロボットとしちゃありえねぇもんな。

 だがこれは本心だ。俺がこのじーさんに頼みたいことは、ただ一つ。

 

 

「ジジィと……きちんと向き合ってほしい。ロックマンに手加減なんかさせずに、全力でジジィに土下座させにきてほしい」

 

 

「……!?それは……」

「たぶん……いや確実に、ジジィは一生懲りない。何度でも、何度でも、な・ん・ど・で・も……世界に、ロックマンに……そして何より誰より……じーさん、アンタに全力で喧嘩を売りに来る。それこそ、どんな手を使ってでも、世界を喰らいに行く。だからアンタも、真正面からジジィを受け止めてやってくれ。全力でジジィの相手をしてやってくれないか。半端に手加減して『負けてやる』ことだけは、絶対にやめてくれ。そんな『負け逃げ』、ジジィは絶対許さねえだろうから……ジジィにとっちゃ、アンタを……『トーマス・ライトを超えること』が、ある意味世界征服以上の最終目標なんだよ……!」

 

 見えていないだろうけど、俺は心から頭を下げた。

 

「頼む。ジジィから、『生き甲斐』を奪わないでくれ……無関係なヤツらをたくさん巻き込むのはわかってる……そいつらにとっちゃ、無責任なことを言ってるのは百も承知だ……でも……それでも、俺は…………」

「それ以上、言わなくてもいいよ」

 

 扉の向こうから、優しい声がかけられた。

 

「もとより、そのつもりだよ。ロックを戦闘用に改造した、あの日から。私はロックマンを通して、ワイリーの“心”を感じ取っている。だからこそ、私は一度もワイリーに妥協したことはない」

「三度目の…………“ガンマ”の時は、『どうして』?」

「……私の中に、まだ『あの頃のワイリー』が残っていたから、かもしれんな……」

「お人好しなんだな」

「よく言われるよ。それで損をしている、ともね。でも私は、『あの日のワイリー』に誓ったんだ―――次は必ず止める、絶対に目を背けない、と。あの日、ワイリーを止められなかった後悔とともにね」

「じーさん……」

 

 ジジィが俺達を通してじーさんに挑んでいるように、じーさんもまた、ロックマンを通してジジィに向き合ってる。

 前にも思ったが、やはりこれは『代理戦争』なんだ。ジジィとじーさんは、俺達とロックマンを介して、壮絶な殴り合いを演じている―――

 ともあれ、ジジィのオリジンとじーさんの決意は―――

 

「よく、わかった。……そろそろ見張りも交代か。じゃ、俺、行くわ」

「待ってくれ……!料理といい、その思考といい、きみはただの量産型ロボットにしてはあまりにも……まさか……―――」

「おっと、よしてくださいよ。天下のDr.トーマス・ライトがオカルトなんざ信じちゃ、立つ瀬が無いでしょう」

「きみは……いったい……!?」

「……俺は―――」

 

 

 

 

 ―――俺の名はジョー。

 

 何の因果か、ヘンクツなジジィのパシリに生まれ変わった―――

 

 

 ―――ただの、お節介焼きだ。

 

 

 

 20XX年 謎の戦闘用ロボット軍団、武装蜂起。首謀者はブルースと目される

 

 Dr.ライト、ロックマンの目の前でブルースによって拉致

 

 水面下でDr.ワイリーによる第五次世界征服計画発動

*1
ワイリーが製作した量産試作型戦闘用ロボット『ダークマン』シリーズのリーダー格『ダークマン4号』のこと。ダークマンシリーズは元々、ベーシックな人型の筐体をベースに、四肢の装備を換装することで様々な作戦に柔軟に対応できるよう、量産を前提に設計していた戦闘用ロボットであるが、量産型とはいえザコロボットよりも高価な開発コストと、この時期のワイリーの資金難が重なったため本格的な量産を断念、試作型4体が製作されたのみに留まっている。両腕をバスターに、下半身をキャタピラに換装した戦車型の『1号』、電磁シールドを装備したベーシックな人型の『2号』、右腕部を大型バスターに、胸部をショックリング発射装置に換装した狙撃型の『3号』、そしてこれら3体の長所を統合し、さらに形状記憶合金とホログラムによって他のロボットの姿に化けることのできる特化型の『4号』が開発され、第五次世界征服計画の際、4号がブルースに成り代わりライトを誘拐、他の3機ともどもワイリーがダミーとして建造した『ブルース要塞』の守衛ロボットとしてロックマンの前に立ち塞がることとなった。なお、基本型が『2号』で戦車型が『1号』と、一見形状と番号に相違感を覚えるが、これは実際の製造順に番号が振られているためであり、最初に設計されたのは『2号』。

*2
型式番号:DRN.002。ライト製の少女型家庭用家事補助ロボット。ライトがロック=ロックマンに次いで開発した実用思考型ロボットの2号機で、ロックマンの妹的存在。世界で初めて少女型=女性タイプの電子頭脳を搭載した、この世界の女性型ロボットの長姉。電子頭脳における『性差』の試験と、複数の思考型ロボットによるコミュニケーションの観察も開発目的に含まれている。平時はライト家の家事やライトの助手をロックと分担して行い、事件が起こりロックがロックマンとして戦う際は、通信などでロックマンの戦いをサポートする。炊事、掃除、洗濯等の家事全般のプロフェッショナルで、家では他のライトナンバーズも彼女に頭が上がらない模様。

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