俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~ 作:稚拙
俺の名はジョー。
WRU―――世界ロボット連盟会長ミスターXことジジィがブチ上げた、世界最強のロボットを決めるためのロボット喧嘩祭―――『第1回世界最強ロボット選手権』が、半年後に開催されることになった。
なんかガン○ムファイトみてーな催しだな。
もっともコレはジジィの罠なんだが。パンツマンを特別招待したのも、おおかた“試合中の不幸な事故”に見せかけて、青パン小僧を亡きロボにする算段なんだろう。
……となると、今度の喧嘩にゃ俺の出番は無ぇか……と、ぼんやりと思っていた時期が俺にもありました。
ジジィが大会開催を宣言したWRU第1回総会から一週間後、世間が盛り上がりを高める中、じーさんサイドから公式のコメントが出された。
〈第1回世界最強ロボット選手権に際し、ロックマン以下、当ライト研究所所属の全ロボットの参加を
ジジィのラヴレターはあっさりと破り捨てられた。出たくねーんだってさ、パンパンマン。そもそも、この大会の開催すら、じーさんは強硬に反対していたらしい。
それからはテレビのニュースやワイドショーはこの話題で持ちきりになった。カットマン*1やエレキマンといったライトナンバーズ*2のロボットたちの職場には連日マスコミが押し寄せる騒ぎになっていた。そんな中、買い物に出ていたタイツマンがついにマスコミに捉えられる事態となった。
このとき俺ははじめて、『普段の青パン小僧』をテレビで見たんだが、普段はフツーのカッコなんだな。そこらへんにいる小中学生とほとんど区別が付かん。あのメットと全身タイツは処刑執行用の特別装束だったわけだ。コワイ!
で、青パン小僧は律儀にマスコミの取材に応じ、こう言った。
「僕が戦うのは、平和を乱すことや、人々の暮らしが理由もなく侵されることを見過ごせないからです。力を使うことは、本来は最後の手段だと思うんです。力に対して、闇雲に力で対抗するのは、よくないことだと思いますから……力比べや、力を見せびらかすような戦いに、僕は参加したくありません。僕が力を使う相手は、話し合いに応じない悪事を働くロボットや、悪い人に利用されているロボット……それだけです」
要約するに、『悪のロボット以外とはたとえ試合であっても戦いたくないでござる』ってことらしい。いやぁ、よくできた息子さんじゃないか、じーさん。
後日、WRUに正式にじーさんからの書状が届けられた。内容はもちろん、『ロックマンの出場辞退』。ともあれ、これでタイツ小僧を大会に特別招待するというジジィの計画はご破算となった。
しかしジジィは粛々と大会の準備を進めた。まるで『パンツマンが大会に参加しないのは最初から計画通り』とばかりに、だ。ジジィは俺に何も語らなかったが、いい考えがあると見た。
パンツ小僧の出場辞退正式表明からこっちは、むしろじーさんサイドが忙しくなった。じーさんの研究所に押し掛けてくる傍迷惑なロボどもが急増したらしい。パンツ小僧に大会への参加を直訴しようとする奴はまだマシな方で、中には『俺が勝ったら大会に参加してもらう』だの、『大会前の腕試しだ』とかのたまって、青パンマンに野試合を挑む奴まで現れる始末。先日も『KARATE003号』*3とかいうロボットがじーさんの研究所に闖入してちょっとした騒ぎになったとニュースで言ってたな。
さて、あっという間に半年が経ち、ついに大会当日がやってきた。
俺もジジィのSPとして会場に来たんだが、これまたすげぇ熱気だな。格闘技イベントは前世で一度だけ生で見たことがあるが、それと一緒だ。未来の世界でもこうした興行が大好きな奴は多いってことか。一番の目玉になるハズだったパンパンマンが出てないのにこの盛り上がりぶりは流石だな。ジジィよ、アンタプロモーターに向いてるよ。
「……パンツ小僧は会場には来てないようだぜ」
念のため、俺はジジィに小声で確認した。
しかしジジィはニヤリと口角を上げた。
「構わんよ。中継さえライトとロックマンが見ていればな」
「敢えて訊く……“何”が始まるんだ?」
ジジィは熱狂の下界を鼻で嗤い、言った。
「……『史上最大の戦い』じゃ」
そして、開会式が盛大に幕を開けた。
例の8体のロボットと、予選を勝ち抜いた有志参加の8体、計16体の猛者どもの堂々入場である。『全選手入場』ばりに紹介したいのはやまやまだが、字数が割けん。スマン。
有志参加の中には何体か見覚えのあるロボットもいる。ありゃオッサンのトコのファラオマン*4とダストマン*5だな。聞いたところによれば、オッサンはじーさんとは違って大会開催賛成派だったそうだ。それでじーさんと議論を交わしたことは想像に難くない。
ただ、大会開催には賛成だったとはいえ、実際に自分のロボットが大会に出場することについては何のコメントも出してなかったから何とも言えんが。もしかしたら内緒で出場してるのかもしれん。終わったらオッサンに大目玉食らうな、あの2体。
他には……この間じーさんの研究所に乱入して青パン小僧と大立ち回りを演じたらしい迷惑千万ロボ・KARATE003号じゃねぇか。決勝トーナメントに出てきたってことはなかなかの強者だったってコトか。侮れん。あとは重機の寄せ集めのようなヤツとか天秤を擬人化したようなロボットなどもいたが、初見故情報がなかった。
会場への選手紹介が終わり、いよいよジジィの開会宣言の時が来た。
実は俺も、ジジィがどうやって『喧嘩開始宣言』をするのかを聞かされていない。今回のジジィはヤケに勿体ぶっている。何が起きるのかわからないのは、客席や中継を見ている皆さんと一緒だ。ただ、『何かが起きる』ことを『知ってる』くらいしか優越感はない。どきどき。
「お前さんはドサクサ紛れにここから出ろ。指示は追って通達する」
「!?おい!?」
ジジィの言葉に驚く俺を尻目に、ジジィの座るWRU会長席が台座から分離し、反重力装置特有の軌道でスタジアムの中央へと向かった。無論、ジジィを座らせたまま。
「本日は、『第1回世界最強ロボット選手権』にお越しいただき、誠にありがとうございます。そして同時に、この大会は今大会で最初で最後の大会となるでしょう……何故なら―――全ての人々、全てのロボット、そして全世界が―――」
ワタシの下に平伏し―――
ワタシが世界を統べることになるのですから―――
その瞬間―――『それ』は始まった。
突如、16体のうちの8体のロボット―――それもWRUメンバーが造った『世界最強のロボット』たちが暴れ始めた。会場で破壊の限りを尽くし、有志参加のロボットたちを不意打ちし、あっという間に行動不能たらしめたのだ。
最初の攻撃のダメージを抑えたファラオマンとダストマン、KARATE003号が抵抗を試みるも、プラントマン*6のバリアに阻まれ、トマホークマン*7とヤマトマン*8に呆気なく大破させられた。
「今こそ真実を明かそう……Dr.ワイリーに技術と資金を与え、彼に世界征服を命じてきた影の支配者!!それこそがこのワタシ、ミスターX!!見るがいい!ワタシの最強の8体の戦士たち―――『ミスターエックスナンバーズ』の威力を!不甲斐ないワイリーとは違い、多少は見込みのある者共が造ったロボットよ……予定以上の性能だな、フハハハハハハハ!!!…………見ているかね、Dr.ライトとロックマン!ワタシは世界最強の力を手に入れた!!もはやワイリーなどという傀儡を使わずとも、ワタシ自ら力を行使できるのだ!!ロックマン……ワタシを止めたくば来るがいい!!もっとも……キミに匹敵する世界最強の8体のロボットに勝てればの話だがな!!フハハハハハハハ!!!!」
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………………
……
ジジィめ、本格的にどーかしちまったか!?
ジジィを影から操ってただぁ!?ジジィに代わって世界征服だぁ!?聞いてねーぞそんな企画!?お前がジジィだろ!?おまジジ!!
よもや度重なる喧嘩の敗北によるストレスがここまで溜まってたとわ……あの時『こころの相談ダイヤル』に電話してさえいればこんな事には……
仕方ない。今回の件が終わったら、うんと設備のいい、豪華な老人ホームにブチ込んでやるからな。家賃は『実家』を抵当に入れて工面してやろう。終の棲家に乞うご期待、ドーンミスイット。
つーか今まで、よくジジィは正体隠し通せてるな……本性出してからも全くバレとらん。世の中の誰もツッコまんかったから今ここで俺がツッコミを入れよう。
―――変装、モロバレやんか。
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つーことで、ミスタージジィが連れ去った8体の世界最強ロボット軍団は、世界各地の8ヶ所の基地に散り、そこでパンツマンを待ち構える算段となった。ここからはいつも通り、勝手知ったる展開だな。
で、今回の俺の勤め先は北米のカナダにあるブリザードマン*9の基地『フローズンアイランド』。そこで俺は潜水艦に乗って青パン小僧を待ち構えることになったんだが―――
「……ジジィめ、あからさまな冷遇措置を……」
俺が座らされたのは固定砲の砲座。つーか
ジジィのコトだから、これで『キャノンジョー』とでも呼ぶんだろーが、流石にこの扱いは俺でも納得いかん。大体、前回みたくメットール*10でも座らせりゃいいのによ。無敵時間もあって低コストなのに*11。
だいたい、ジジィは何故『戦力の再利用』をせんのだ。ジジィは大抵、前の喧嘩で使った戦力はほとんど使わん。今でも使ってるのといえば、バリエーションを変えて使い回してる俺達ジョーやメットール、オッサン製のシールドアタッカー*12の
……よし、ジジィを老人ホームにブチ込む前にまずは待遇改善交渉だ。
「せめてベアは要求しねぇと……それから……」
「この潜水艦の上なら基地に近づける!いくぞ!」
……ってパンツ小僧!?いつの間にここまで来てた!?
「えぇい、来ちまったモンはしゃーない!FPSシューティングで鍛えた俺の射撃の腕を―――」
―――見せてやろうと、トリガーに手をかけた瞬間、至近距離からバスターの連射を食らった。とゆーか、その内一発がちょーど砲台の砲口の中にスポッと入り―――
―――どかーーーーーーーーん!!
俺は射撃の腕を披露することなくあしらわれるハメになった。歴代屈指の惨敗である。
ちくせう。
だいたい、防御手段が無い上に移動もできんとか、完全にジョーの個性を殺しちまってる。これマジでジョーじゃなくてよくね?
さてその後はというと、なんと青パンマンは世界最強水準の8体のロボットをストレートで全員撃破するという修羅の所業を成し遂げおった。世界最強のロボットはやはりこの青い死神だったということだ。コワイ!
その勢いのまま、死神タイツはミスタージジィの本拠地・ニューメトロポリスに強襲をかけた。要塞化されたニューメトロポリスで
……パンツマンよ、騙されやすさはじーさん譲りなのな。
そしてジジィは『こんと゛は しんけんしょうふ゛ た゛!!』と、鼻息荒く死神パンツを『風雲!ジジィ城』へと招待した。過去最強の防衛装備、パンツ小僧をティウンティウンさせるための容赦のない布陣で迎え撃ったが、ヤツの目に入った
どうせ最後は実家爆発オチ……と思いきや。
翌日の朝刊の一面にこんな記事が載った。
〈せかいせいふくの つみて゛ Dr.ワイリー ついに たいほされる!!〉
〈ロックマンの かつやくによって Dr.ワイリーは たいほされた!!〉
〈……しかし ろうやのなかて゛ た゛つこ゛くよう ロホ゛ットを つくっているのかもしれない。〉
〈しかし へいわを あいする こころと あくに まけない ちからを もった〉
〈さいきょうのロホ゛ット ロックマンか゛いるかき゛り このへいわは つつ゛くた゛ろう!!〉
―――ジジィ、二度目の収監である。記事内容については何もツッコまんといてくれ。多分書いた奴もコーフンしてるんだろう。
どうやら『風雲!ジジィ城』には緊急脱出設備が無かったらしい。負け犬根性捨てた途端にこれとは実に不運だ。
しかし、だ。前にジジィが捕まった時と比べりゃ、ショックは無い。今回は事前に“保険”を掛けてたのを知ってるからな。
―――物事には、『始まり』と『終わり』がある。だが、それがどんな風に定義されるかは、後の世の連中にしかわからない。リアルタイムで歴史を感じ取るってのは、ごく一握りの連中にしかわからないと思ってた。
でも、今回だけは俺にもわかる。世間の連中はこれが『終わり』と思ってるようだが、全くもって不正解。そう、これは『始まり』なのだ……。
―――『史上最大の戦い』は幕を閉じ―――
―――かくて『宿命の対決』のゴングは、ここに密かに鳴ったのであった―――
20XX年 WRU会長ミスターX、第1回世界最強ロボット選手権の開会式にて、突如世界征服計画発動を宣言。世界最強水準のロボット達を奪取し、ロックマンに宣戦布告
数週間後、ロックマンによってミスターXの正体がDr.ワイリーであると暴露される
ミスターX改めDr.ワイリーによる第六次世界征服計画、ロックマンによって頓挫
逃走に失敗したDr.ワイリー、ロックマンにより身柄を確保され、世界征服の罪で二度目の逮捕
裁判で禁錮5000年の刑が言い渡され、かつて収監されていた重犯罪者専用刑務所地下100mの特別重監獄へと再び収監される
WRU、緊急理事会を招集。会長ミスターXことDr.ワイリー、全会一致の弾劾決議により、本人不在のまま懲戒罷免処分。その上、ロボットに関連した如何なる職務・事業に関わることを生涯にわたり一切禁止する『永久追放処分』が下される
その後現任の理事全員、今回の不祥事の責任を取る形で総辞職。ミスターXことDr.ワイリーに近かった会員にも処分が下された
一方、世界最強の8体のロボットは、ワイリーの技術が使用されている箇所を入念に排除した上で、開発元の各国の管理下で継続運用されることが決定される
トーマス・ライト、WRUの名誉顧問に。ミハイル・セルゲイビッチ・コサック、WRUの常任理事にそれぞれ指名され、就任。その他の常任・非常任理事もミスターXに関わりの無かった人物に総入れ替えとなり、組織の健全化が行われた。また、会長に過剰な権限が集中しないよう連盟憲章の大幅改定も行われた
X財団解体。ミスターXことDr.ワイリーの所有していた資産は凍結され、財団に所属していた企業は各界の他企業に譲渡もしくは買収された