俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~ 作:稚拙
新顔編
俺の名はジョー。
ジジィが有り金全部はたいて、全世界を巻き込んでおっ始めた第六回ジジィの喧嘩、後に『史上最大の戦い!!』と呼ばれることとなるかならんか知ったこっちゃない空前絶後の大喧嘩は、ジジィがワッパかけられて終わった。
まぁ今回は、ジジィが『こんなこともあろうかと』、7棟目の『実家』を僻地に違法でこさえてくれてたから、
それから少しの間は
ある日、格納庫からマッドグラインダー*1が勝手に出撃した時、俺は悟った。
―――始まった、と。
俺は
そこには、マッドグラインダーがその口から火を吹きながら、巨大なローラーで地球クリーン作戦よろしく市街地を“地均し”していく様子が見えた。怪獣映画よろしくなド迫力の光景だ。カメラさんナイスアングル。
程なくカメラが切り替わり、ジジィが収監されていた刑務所が大写しになった。そして―――
―――ドゴォォォォォン!!!
刑務所、大爆破。
やることがハデだねぇ。
そしてどこから持ち込んだのか、“ブルー○ットおくだけ”によく似た見覚えありまくりのUFOが、刑務所から飛び出してきた。その瞬間、俺の背後のギャラリーから歓声が上がった。
「ワイリー様だ!ワイリー様が出てきたぞ~!!」
「みんな、出迎えの準備をするぞー!博士の凱旋だぁぁ!!」
そりゃ嬉しかろう。“親”も同然の恩人が帰ってくるんだ。中には互いに抱き合って、涙も流せないのに肩を震わせて嗚咽しているヤツまでいる。
それを見た俺は、確かに“笑ってた”。顔ではなく、心で。
らしくもなく、俺の中に“甲斐性”なんてものも芽生えちまったらしい。ったく、ジジィのヤツめ……
そして数時間後、到着したUFOから薄汚れた囚人服姿のジジィが降り立つと、それはもう割れんばかりの野太い歓喜の声に『実家』が沸きに沸いた。
「……お勤め、ごくろーさん」
久方振りのジジィの面にそう言うと、ジジィはフッと笑って。
「ムショのマズいメシに飽きてきたからの…………今日の夕飯は?」
この様子だと、ブタ箱の中でも相変わらずだったようで安心したような呆れるような。俺も心の中で笑い返した。
「………………筑前煮」
―――――――――
その後、俺は改めて今回の喧嘩計画を聞いた。
今回は脱獄から間を置かずに喧嘩を仕掛ける故、第2回以来となる久しぶりの正攻法、替え玉やら搦め手やらをせずに『ジジィ軍』の旗印を掲げて勝負に出る。既にジジィの脱獄を幇助した4体のナンバーズロボットが各地に展開していて、占拠した地区の要塞化を進めている、とのことだ。
「もっとも、揺さぶりをかけるための手はもう動いてるんじゃがな」
「揺さぶり?」
その時、ジジィの部屋に黒いロボットが入ってきた。
「ようジジィ、帰ったぜ」
「おお、フォルテ!首尾はどうじゃった?」
「ロックマンのヤツ、あっさり騙されてたぜ。本当にあんなお人好しが世界最強なのか?」
前々回、ジジィが作ってた虎の子、『漆黒のパンツマン』ことフォルテ……もう動き出してたのか。
……にしても、帰ってきて早々ジジィ呼ばわりとはなかなか面白いヤツじゃないか。まぁ仮にも『悪の天才科学者』と世間様から呼ばれてるジジィの“息子”、パンツ小僧みたいな優等生的性格もしっくり来んからな。
「ところで……なんだこのザコ?」
「……初対面早々ストレートだな……」
「あぁ、紹介しとらなんだな。ワシの軍団の中では古株のジョーでな、作戦立案の手伝いや新型のテスターもしてくれておる。ロックマンと何度も戦って生き延びた悪運のいいヤツじゃよ。これから共にロックマンと戦う者同士、仲良くするんじゃぞ」
「よろしくな、兄弟」
俺は右手を差し出したが、フォルテはフンと鼻で嗤った。
「こんなザコと同格に扱うんじゃねぇ。オレはロックマンをブッ潰して最強になるんだ!ザコ如きが馴れ馴れしくすんな」
こりゃまた……単純な不良タイプと思いきやベ○ータみたく鼻っ柱もビンビンだったか。自分が一番、自分が最強じゃなきゃ気が済まない、つまりは―――
「なるほど、“最強バカ一代”か」
「ッ!?バカたぁなんだバカたぁ!?」
「いや、最強になるんだろ?それしか考えてないんだからそーじゃん。最強バカ一代。略して“
「せっ、せめてバカは外しやがれ!オレはだな、オレが最強だと証明するためにロックマンをだな……」
「最強になること以外、やりたいことあんの?」
「!!ぐっ……う……そ、それは……」
いやー、面白いヤツだ。イジり甲斐がある。
ふと、俺の視界、バカ一の足元に、見慣れん紫色の犬型ロボットが目に入った。俺をギラリと睨みつけながら、低い声で唸っている。
「へぇ、ワンコまでいんのか。そーいや、パンツ小僧もワンコ連れてたな*2。フレンダー*3を赤くしてちっこくしたよーなヤツ。……コイツは?」
「フン、ちょうどいい。『ゴスペル』、“遊んで”やれ」
「GRRRRRRR!!!」
ゴスペル、とバカ一に呼ばれたワンコは、それはもう凶悪な咆哮とともに躍り掛かってきた。……が。
「おっと!」
俺はワンコの首根ッ子を抱え込むように掴んだ。
「おぅおぅ、なんとも元気なワンコだ!」
前世でワンコを飼ってたことを思い出すなぁ。俺が高校生の時に病気で死んだんだが、ソイツがまたカワイイヤツだったんよ。まぁ夜によく遠吠えしてご近所さんから苦情が来たり、通りすがりの人にはたとえご近所の顔馴染みさんだろうと吠えかかったりする……今から思えば俗に言う『駄犬』だったかもしれんが。
「ウチのワンコを一撃で“ダウン”させたこれなら……どうだ!」
ワンコの喉元を、俺は思いっ切りくすぐった。コレ、ウチのワンコが大好きだったんだが……果たしてこのロボワンコに通用するか―――
「―――ワフン♪アンアン♪♪」
「おお!?こらやめろってゴッスィー!くすぐったいだろっ!?」
数分間の格闘の後、ゴッスィー、服従のポーズ。
まさかウチのワンコの弱点とゴッスィーの弱点が同じだったとは。今度はコレ、パンツマンちのロボワンコにも試してやるか。
「おい、ジジィ……」
「むぅ……ゴスペルはフォルテ以外には絶対に懐かんようにプログラムしていたハズじゃが……」
「わう?」
「……そーいや“揺さぶり”がどーたらこーたらって言ってたけど……それって何のことだ?」
曰く、ジジィは前回の喧嘩の時には既にバカ一とゴッスィーをこしらえていたが、その前回の喧嘩で目撃したタイツ小僧のパワーアップに衝撃を受けたらしい。青パン小僧がロボワンコと合体してパワーアップするそのシステム*4を、バカ一とゴッスィーにどーしても組み込みたいんだと。
『青タイツよりも強くなれるなら』と、ジジィと利害が一致したバカ一は、“自分も平和のためにジジィとやりあってる正義のロボットだ”と身分を偽り、パンツ小僧と接触したという。
「後は何かのきっかけでフォルテをライトの研究所に忍び込ませて、パワーアップのための設計図を盗み出せれば、作戦は成功じゃ!」
「……あえてツッコまんとこうと思ったがやっぱ言う。……また窃盗かよ」
「ばう!」
「う、うるさい!良いところは積極的に採り入れる、温故知新というヤツぢゃ!!」
「まどろっこしいがこれもロックマンを倒す為だ……おいジジィ、いつでもオレとゴスペルをパワーアップできるように準備しとけよ!」
「お前こそ、きっちり仕事を果たすんじゃな。期待しとるぞ」
「……フン」
これでまた、『実家』が賑やかになるな。弟とペットが同時にできた気分だ。
これらの『新顔』が、果たしてこれからの『喧嘩』にどんな影響を及ぼすのか……楽しみでもあり、不安でもあり……
だが、これだけは伝えておかねばなるまい。
「……バカ一」
「あぁ?……つかバカ一言うな」
「折り入って、お前に頼んどかなきゃならんコトがある」
「言っとくがロックマンを倒すのはこのオレだからな、分け前はやらねーぜ」
「いや、俺の頼みってのはな、その……俺に何かあった時のことだ」
「そいつも心配はいらねーぜ。てめーのカタキは取っといてやる。ロックマンをブッ潰してな……!」
「あーパンツマンは今は置いといて……もし、俺が
「くぅ~ん……」
ゴッスィーが物悲しげに鳴く中、俺はバカ一の肩にポンと手を置いて懇願した。
「ジジィを老人ホームにブチ込むという大役を託そうと思う」
「知るか」
200X年 Dr.ワイリー収監から数ヶ月後、出自不明の大型ロボット(マッドグラインダー)が都市を襲撃。その混乱の隙を突き、ワイリーが収監されている刑務所を4体の戦闘用ロボットが襲撃。刑務所は破壊され、Dr.ワイリー脱獄。直後、第七次世界征服計画発動を宣言
ロックマン、Dr.ワイリーを追跡中、自身もワイリーと戦っているという謎の戦闘用ロボット・フォルテと遭遇