俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~   作:稚拙

16 / 33
宿命の対決!の巻
新顔編


 俺の名はジョー。

 

 ジジィが有り金全部はたいて、全世界を巻き込んでおっ始めた第六回ジジィの喧嘩、後に『史上最大の戦い!!』と呼ばれることとなるかならんか知ったこっちゃない空前絶後の大喧嘩は、ジジィがワッパかけられて終わった。

 

 まぁ今回は、ジジィが『こんなこともあろうかと』、7棟目の『実家』を僻地に違法でこさえてくれてたから、同僚(仲間)たちが路頭に迷うことなく、きっちりと集結することができた。

 それから少しの間は同僚(ロボット)だけで暮らしてたんだが、それがまた楽しくてさ。修学旅行やってる気分だったなぁ。もっとも、城の主たるジジィがいないことに、不安を感じてたヤツも多かったことは事実なんだが。

 

 ある日、格納庫からマッドグラインダー*1が勝手に出撃した時、俺は悟った。

 

 ―――始まった、と。

 

 俺は同僚(仲間)たちをテレビの前に緊急召集し、テレビのスイッチを入れた。

 そこには、マッドグラインダーがその口から火を吹きながら、巨大なローラーで地球クリーン作戦よろしく市街地を“地均し”していく様子が見えた。怪獣映画よろしくなド迫力の光景だ。カメラさんナイスアングル。

 程なくカメラが切り替わり、ジジィが収監されていた刑務所が大写しになった。そして―――

 

 ―――ドゴォォォォォン!!!

 

 刑務所、大爆破。

 やることがハデだねぇ。

 そしてどこから持ち込んだのか、“ブルー○ットおくだけ”によく似た見覚えありまくりのUFOが、刑務所から飛び出してきた。その瞬間、俺の背後のギャラリーから歓声が上がった。

 

「ワイリー様だ!ワイリー様が出てきたぞ~!!」

「みんな、出迎えの準備をするぞー!博士の凱旋だぁぁ!!」

 

 そりゃ嬉しかろう。“親”も同然の恩人が帰ってくるんだ。中には互いに抱き合って、涙も流せないのに肩を震わせて嗚咽しているヤツまでいる。

 それを見た俺は、確かに“笑ってた”。顔ではなく、心で。

 らしくもなく、俺の中に“甲斐性”なんてものも芽生えちまったらしい。ったく、ジジィのヤツめ……

 そして数時間後、到着したUFOから薄汚れた囚人服姿のジジィが降り立つと、それはもう割れんばかりの野太い歓喜の声に『実家』が沸きに沸いた。

 

「……お勤め、ごくろーさん」

 

 久方振りのジジィの面にそう言うと、ジジィはフッと笑って。

 

「ムショのマズいメシに飽きてきたからの…………今日の夕飯は?」

 

 この様子だと、ブタ箱の中でも相変わらずだったようで安心したような呆れるような。俺も心の中で笑い返した。

 

「………………筑前煮」

 

 

 ―――――――――

 

 

 その後、俺は改めて今回の喧嘩計画を聞いた。

 今回は脱獄から間を置かずに喧嘩を仕掛ける故、第2回以来となる久しぶりの正攻法、替え玉やら搦め手やらをせずに『ジジィ軍』の旗印を掲げて勝負に出る。既にジジィの脱獄を幇助した4体のナンバーズロボットが各地に展開していて、占拠した地区の要塞化を進めている、とのことだ。

 

「もっとも、揺さぶりをかけるための手はもう動いてるんじゃがな」

「揺さぶり?」

 

 その時、ジジィの部屋に黒いロボットが入ってきた。

 

「ようジジィ、帰ったぜ」

「おお、フォルテ!首尾はどうじゃった?」

「ロックマンのヤツ、あっさり騙されてたぜ。本当にあんなお人好しが世界最強なのか?」

 

 前々回、ジジィが作ってた虎の子、『漆黒のパンツマン』ことフォルテ……もう動き出してたのか。

 ……にしても、帰ってきて早々ジジィ呼ばわりとはなかなか面白いヤツじゃないか。まぁ仮にも『悪の天才科学者』と世間様から呼ばれてるジジィの“息子”、パンツ小僧みたいな優等生的性格もしっくり来んからな。

 

「ところで……なんだこのザコ?」

「……初対面早々ストレートだな……」

「あぁ、紹介しとらなんだな。ワシの軍団の中では古株のジョーでな、作戦立案の手伝いや新型のテスターもしてくれておる。ロックマンと何度も戦って生き延びた悪運のいいヤツじゃよ。これから共にロックマンと戦う者同士、仲良くするんじゃぞ」

「よろしくな、兄弟」

 

 俺は右手を差し出したが、フォルテはフンと鼻で嗤った。

 

「こんなザコと同格に扱うんじゃねぇ。オレはロックマンをブッ潰して最強になるんだ!ザコ如きが馴れ馴れしくすんな」

 

 こりゃまた……単純な不良タイプと思いきやベ○ータみたく鼻っ柱もビンビンだったか。自分が一番、自分が最強じゃなきゃ気が済まない、つまりは―――

 

「なるほど、“最強バカ一代”か」

「ッ!?バカたぁなんだバカたぁ!?」

「いや、最強になるんだろ?それしか考えてないんだからそーじゃん。最強バカ一代。略して“バカ一(バカイチ)”でもいーか」

「せっ、せめてバカは外しやがれ!オレはだな、オレが最強だと証明するためにロックマンをだな……」

「最強になること以外、やりたいことあんの?」

「!!ぐっ……う……そ、それは……」

 

 いやー、面白いヤツだ。イジり甲斐がある。

 ふと、俺の視界、バカ一の足元に、見慣れん紫色の犬型ロボットが目に入った。俺をギラリと睨みつけながら、低い声で唸っている。

 

「へぇ、ワンコまでいんのか。そーいや、パンツ小僧もワンコ連れてたな*2。フレンダー*3を赤くしてちっこくしたよーなヤツ。……コイツは?」

「フン、ちょうどいい。『ゴスペル』、“遊んで”やれ」

GRRRRRRR!!!

 

 ゴスペル、とバカ一に呼ばれたワンコは、それはもう凶悪な咆哮とともに躍り掛かってきた。……が。

 

「おっと!」

 

 俺はワンコの首根ッ子を抱え込むように掴んだ。

 

「おぅおぅ、なんとも元気なワンコだ!」

 

 前世でワンコを飼ってたことを思い出すなぁ。俺が高校生の時に病気で死んだんだが、ソイツがまたカワイイヤツだったんよ。まぁ夜によく遠吠えしてご近所さんから苦情が来たり、通りすがりの人にはたとえご近所の顔馴染みさんだろうと吠えかかったりする……今から思えば俗に言う『駄犬』だったかもしれんが。

 

「ウチのワンコを一撃で“ダウン”させたこれなら……どうだ!」

 

 ワンコの喉元を、俺は思いっ切りくすぐった。コレ、ウチのワンコが大好きだったんだが……果たしてこのロボワンコに通用するか―――

 

―――ワフン♪アンアン♪♪

「おお!?こらやめろってゴッスィー!くすぐったいだろっ!?」

 

 数分間の格闘の後、ゴッスィー、服従のポーズ。

 まさかウチのワンコの弱点とゴッスィーの弱点が同じだったとは。今度はコレ、パンツマンちのロボワンコにも試してやるか。

 

「おい、ジジィ……」

「むぅ……ゴスペルはフォルテ以外には絶対に懐かんようにプログラムしていたハズじゃが……」

わう?

「……そーいや“揺さぶり”がどーたらこーたらって言ってたけど……それって何のことだ?」

 

 曰く、ジジィは前回の喧嘩の時には既にバカ一とゴッスィーをこしらえていたが、その前回の喧嘩で目撃したタイツ小僧のパワーアップに衝撃を受けたらしい。青パン小僧がロボワンコと合体してパワーアップするそのシステム*4を、バカ一とゴッスィーにどーしても組み込みたいんだと。

 『青タイツよりも強くなれるなら』と、ジジィと利害が一致したバカ一は、“自分も平和のためにジジィとやりあってる正義のロボットだ”と身分を偽り、パンツ小僧と接触したという。

 

「後は何かのきっかけでフォルテをライトの研究所に忍び込ませて、パワーアップのための設計図を盗み出せれば、作戦は成功じゃ!」

「……あえてツッコまんとこうと思ったがやっぱ言う。……また窃盗かよ」

ばう!

「う、うるさい!良いところは積極的に採り入れる、温故知新というヤツぢゃ!!」

「まどろっこしいがこれもロックマンを倒す為だ……おいジジィ、いつでもオレとゴスペルをパワーアップできるように準備しとけよ!」

「お前こそ、きっちり仕事を果たすんじゃな。期待しとるぞ」

「……フン」

 

 これでまた、『実家』が賑やかになるな。弟とペットが同時にできた気分だ。

 これらの『新顔』が、果たしてこれからの『喧嘩』にどんな影響を及ぼすのか……楽しみでもあり、不安でもあり……

 だが、これだけは伝えておかねばなるまい。

 

「……バカ一」

「あぁ?……つかバカ一言うな」

「折り入って、お前に頼んどかなきゃならんコトがある」

「言っとくがロックマンを倒すのはこのオレだからな、分け前はやらねーぜ」

「いや、俺の頼みってのはな、その……俺に何かあった時のことだ」

「そいつも心配はいらねーぜ。てめーのカタキは取っといてやる。ロックマンをブッ潰してな……!」

「あーパンツマンは今は置いといて……もし、俺が電子頭脳(ドタマ)ブチ抜かれたりとかで『実家』に帰って来れなくなったら……」

くぅ~ん……

 

 ゴッスィーが物悲しげに鳴く中、俺はバカ一の肩にポンと手を置いて懇願した。

 

 

 

「ジジィを老人ホームにブチ込むという大役を託そうと思う」

「知るか」

 

 

 

 

 200X年 Dr.ワイリー収監から数ヶ月後、出自不明の大型ロボット(マッドグラインダー)が都市を襲撃。その混乱の隙を突き、ワイリーが収監されている刑務所を4体の戦闘用ロボットが襲撃。刑務所は破壊され、Dr.ワイリー脱獄。直後、第七次世界征服計画発動を宣言

 

 ロックマン、Dr.ワイリーを追跡中、自身もワイリーと戦っているという謎の戦闘用ロボット・フォルテと遭遇

*1
整地作業用ロボットをベースに、ワイリーが大都市襲撃用に改造した大型ロボット。ワイリーが事前に準備していた脱獄用ロボットの一体であり、大都市を襲撃、破壊活動を行うことでロックマンや警察の目を引きつける役目を担う。前部にある特殊合金製ロードローラーで進路上のあらゆる物を轢き潰し、口部の火炎放射器と頭頂部のブーメランカッターを発射して都市を攻撃する。都市部襲撃の際、軍やロボットポリス、有志のロボットたちによる反撃によって損傷したため、ロックマンと相対した時には所々の装甲が傷つき、動力パイプの破断が見られ、火炎放射器が機能不全を起こして使用ができなくなっていた。

*2
ライトがロックマンのために開発した犬型サポートロボット『ラッシュ』のこと。ワイリーの第三次世界征服計画(本小説における『ジジィの最期!?の巻』)から戦線に投入された。大ジャンプ用コイル、空中飛行用ジェットクラフト、水中航行用マリンビークル等に変形、ロックマンをサポートする。ロックマンの行動範囲の拡張を主目的としているため、単機での戦闘能力は皆無。

*3
森林保護活動用の犬型ロボットで、ラッシュの設計ベースともなった。元々は尻尾から消火液を放射して森林火災を鎮火する機能を持っていたが、逆に口から火炎放射を行うようにワイリーに改造されてしまった。

*4
『パワーロックマン』と『ジェットロックマン』のこと。ラッシュがアダプターに変形してロックマンと合体、それぞれ近接格闘能力と空中飛行能力をロックマンに付与する。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。