俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~   作:稚拙

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メタルヒーローズの巻
0点・家出編


 俺の名はジョー。

 

 正直……8棟目となる今回の『実家』は史上最悪の立地条件だ。

 

 なんと、中東某国・活火山の火口の中。

 

 外で足を滑らせたが最期、灼熱のドロドロマグマにネジ一つ残さず溶かされ尽くす極限の地……既に作業をしていた同型機(兄弟)やメットールが10体ほど犠牲になっている。明日は我が身だ、おそろしや。

 こんな地獄谷に長々と暮らしてはいられん。ジジィにはとっとと喧嘩をおっ始めてもらい、パンツマンにこの劣悪物件をブチ壊してもらわんといかん。……こんなのは初めてだな。まさかタイツマンに助けを請う心境になろうとは。

 

 だが―――ここに来て、ジジィは『待ち』の手を取った。どうやら、前回の喧嘩でしくじったのは脱獄早々喧嘩を仕掛けてしまったことだと自己分析したらしく、充分な戦力が整うまで喧嘩を自粛、戦力増強に専念するということだ。今更ステイホームかよ、流行に乗ったつもりかっての。

 

 こりゃ、本格的に労働環境の改善を求めて春闘をおっ始めなきゃいかんかなぁ……と考え始めていた、ある日のことだった。

 俺が買い出しを終えて帰ってくると、向こうからゴッスィーを連れたバカ一が歩いてきた。

 

!わんわん♪

「おおゴッスィー!ただいま!元気してたか?」

わん!

 

 俺を見る度、シッポを振りながら元気に駆け寄ってくるゴッスィー……

 不憫に思う。こんないたいけなワンコにまで、不自由な生活を強いらねばならんことを。おのれ、ジジィめ。

 

「こんな所に何ヶ月もカンヅメにしちまって……すまんなぁ……」

くぅ~ん……

「フン、いつまでザコと遊んでんだ?とっとと行くぞ、ゴスペル」

 

 バカ一がゴッスィーを促す。しかしその先は出入口の方向だ。

 

「どっか行くのか?買い出しならさっき俺が―――」

「出てく」

「……は?」

「出てくんだよ!オレはここから!もうこんなトコでカメみてーにじっとしてんのはガマンならねーんだッ!!オレはとっととロックマンをブッ倒してェのにジジィは悠々自適にチンタラしてやがる!!甘ったるいんだよどいつもこいつもな!!」

 

 突然の家出表明である。

 まぁ確かに気持ちはわかる。誰だってこんな僻地からは一刻も早く脱したい。中には独自にじーさんの研究所を襲撃しようなんて計画をジジィに内緒で立ててる、血の気の多い同僚達(ヤツら)もいるほどだ。

 我の強いバカ一はその鬱憤がいち早く噴出しちまったんだろう。なまじ、『パンツマンを倒して最強になりたい』という願望とプライドが強烈な分、なおさら。

 

「オレはオレのやり方でロックマンをブッ倒す!そのためにはこんな所で油売ってるヒマはねぇ!…………言っとくが止めても―――」

「あっそ。まぁ元気でやれや」

「…………………………」

 

 一瞬、バカ一の表情がマヌケなポカン顔になった。

 

「え……えらく薄情だな……てめーはてっきり引き留めるかと思ったぜ」

「まぁ……俺に何かあった時にジジィを老人ホームにブチ込めるヤツがいなくなるのは残念だが」

「それはてめーがやりやがれ。……なんだったら……ついてきてもいいんだぜ?」

「ほぅ……?」

「……か、カン違いするな!ロックマンと闘りあって生き延びたてめーなら、ロックマンの攻略法がわかるかもしれねぇし、それに……てめーがいるとゴスペルが喜ぶからな……///」

 

 コイツにツンデレられてもあんまし嬉しかねぇ。俺はため息をついてから返した。

 

「生憎……俺がいねぇと日々の衣食住さえままならねぇジジィがいるんでな。それに俺に何かあった時に備えて、同型機(兄弟)たちに料理教室を開く予定もある。おいそれとここを離れられん事情があんだよ。家出するんなら勝手にしやがれ。ジジィには俺から適当に言っとく」

「……ケッ、余計なお世話だ」

くぅ~ん…………

 

 ゴッスィーが寂しげな声で鳴く。俺はしゃがみ込んで、頭をなでてやる。

 ゴッスィーも因果なワンコだと思う。バカ一の相棒として生まれちまったばかりに、俺に懐けど結局はバカ一の命令には逆らえんのだから。まぁ、今のところバカ一がゴッスィーをコキ使うようなことをせずに可愛がってるようだからいいんだが。本当のところ、ゴッスィーはこのバカ一の家出について、どう思ってるのだろうか。

 

「ゴッスィーは……どうしたいんだ?」

 

 そう訊ねると、ゴッスィーは即座にバカ一の隣に走ると、元気に一声吼えた。

 

「……そっか」

 

 バカ一がフッと笑んだ。それがゴッスィーの意志なら、俺は何も言わないさ。

 

「じゃぁな。精々溶けちまわねぇように気をつけるんだな」

 

 そう言って俺に背を向けたバカ一に、俺は買い物袋の中のモノを2つ掴んで、バカ一に放り投げた。バカ一が振り向かずに1つをキャッチし、もう1つはゴッスィーがジャンプしてパクリと咥えた。

 

「……どういうつもりだ」

 

 俺が放ったE缶を掴み、振り返らぬままバカ一が静かに言う。

 

「メシも食わずに出て行く気か?弁当くらい持ってけ」

「チッ、どこまでもお節介なヤツだ……」

「性分でな……またジジィが喧嘩仕掛ける時……お前はどうする?」

 

 俺の問いに、バカ一の背中が止まった。

 

「…………気が向けば手を貸してやる。精々それまでロックマンを生かしとけ」

「ツンデレwww」

「ッ!!っるせぇ!行くぞ、ゴスペル!!」

WAOOOOOOONNN!!!!!

 

 バカ一が高々とジャンプすると、その背に変形したゴッスィーが合体する。コウモリさながらの翼を広げた『スーパーバカ一』は、天高く飛び去っていった。

 

「まったく……」

 

 素直じゃないヤツだ。ま、かく言う俺もそうなんだが。裏表のなくて負けず嫌いなところはやっぱり“親子”だな。もっとも、それを言ったところでジジィもバカ一も顔を真っ赤にして否定するだろうけど。

 俺がジジィにバカ一とゴッスィーが家出したことを伝えると、ジジィはこの『実家』中に響きわたる声で大絶叫した。

 

 

 

 

フォルテのアホンダラァァァァァァァァッッッ!!!!

 

 

 

 

 20XX年 フォルテ、ワイリー城から出奔

 独自にロックマンを狙って行動を開始する

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