俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~   作:稚拙

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パンツマン&バカ一の巻
叛逆編


「何故じゃ……何故、お前さんまで……!?」

 

 ひざまずいたジジィが、俺を見上げる。

 

「待遇が悪いところよりも良いところで働きたいのは当然だろ。それほどアンタのトコが“ブラック”だったってことだ。もう、アンタの下で働くのは御免だ」

「こんな結末になるとは……残念じゃ」

「……それは俺も同じだよ」

 

 俺はジジィの額に、バスターの銃口を突きつけた。

 ジジィは臆すことなく、俺を見据えていた。

 

「それじゃ―――」

 

 

 

 

 

 おやすみ、ジジィ

 

 

 

 

 

 ―――ドゥ…………ン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……俺の名はジョー。

 

 まさか、こんなことになっちまうなんてな―――

 昨日までは想像すらできなかった。ジジィが俺のメシのメニューに文句を言い、なんだとと俺が小言を返す、いつもの日常―――

 

 それが、突然終わりを迎えようとは―――

 

 

 

 ―――――――――

 

 時は今朝まで遡る。

 ジジィが耳掻きが無いと騒いだから、ヒマな連中でだだっ広い『実家』中を探すハメになり、大型ロボの格納庫の前に落ちていたのをようやく見つけた。

 

「……ったく、ジジィはなんでこんなトコに落としてたんだか……」

 

 耳掻きを拾い上げたその時、何体かの同型機(兄弟)がこちらに近づいてきた。

 

「耳掻き、見ッけたぜ。すまねぇなぁ、こんなくだらねぇコトで駆り出しちまって―――」

 

 ―――一瞬、殺気を感じた。

 

「!」

 

 同型機(兄弟)のバスターが一斉に火を噴いた。俺はとっさに横っ飛びして、寸での所で回避した。

 

「おい!何のつもりだ!?冗談にしてもタチ悪すぎだろ!?」

「―――冗談ではない」

 

 今までに聞いたことのないような、底冷えするような声で同型機(兄弟)は言った。

 

「アルバート・W・ワイリーに従う、この城のすべてのロボットに通告する。今すぐこの城を明け渡せ」

「……お前、頭でも打ったか?」

「明け渡さない場合、実力行使を以て目的を遂行する」

 

 どうやらマジらしい。俺は銃火の嵐の中を突っ切って、ジジィの元へ急ぐ。

 つーか、一体何がどうなってる!?

 もはや『実家』中から銃声や爆発音が響きわたり、同僚(なかま)同士での戦闘が勃発しているカオスの極みだ。

 俺はなるべく手荒なことはしたくなかったから、護身のための攻撃も最小限に止めていた。だからだろうか。一瞬の油断が生じたのは。

 

「障害を排除する」

「!」

 

 視界のド真ん中から突き刺さる同型機(兄弟)の銃口。やばい―――

 今度こそ、俺は死んだか―――

 

 ジジィを老人ホームにブチ込めぬまま夭折することを覚悟し、走馬灯を電子頭脳がスタンバイしかけたその時―――

 

 獰猛な獣の唸りが響き渡り、その同型機(兄弟)の首がスパッと飛んだ。

 瞬間、物陰から何体かのメットールが躍り掛かったが、俺ではない誰かのバスターの発砲音と同時に爆ぜた。

 戸惑いながら振り向いたその先には―――

 

「久々に“帰省”してみりゃ……面白ぇ祭りが開催中じゃねーか」

わんわん!

「バカ一……ゴッスィー!」

わぅん!はっはっはっはっ♪

 

 今はその凶悪スマイルが随分と頼もしく見える。ゴッスィーが尻尾を振りながら、俺に駆け寄ってきた。

 

「その喋り方とゴスペルの甘え具合……テメー、『あのザコ』か?何があった?」

「それは俺が知りてぇよ。ジジィなら何か知ってるかもな……」

「ならとっとと行くぞ。ちょっくら締め上げりゃ何かしらゲロるだろ」

「……頼もしいこって」

 

 俺とバカ一とゴッスィーは、襲い来る同僚(なかま)たちを追い払い、正気を保ってる同僚(なかま)をかき集め、ジジィの部屋へと向かった。案の定、ジジィの部屋の前には、正気を失った同僚(なかま)たちがゾンビの如く殺到していた。

 

「オ゛ラァ道開けろォ!!死にてェヤツからかかってきやがれ!!」

「最優先排除対象:『フォルテ』を確認。排除開始」

 

 バカ一の姿を見るや、同僚(なかま)たちが一斉にこちらを向き、攻撃してくる。

 

「ザコ!てめーは部屋に籠もってるジジィをつまみ出してこい!ここの有象無象(ポンコツ)共はオレとゴスペルが片づけとく!」

わんわん!!」(キリッ)

「……わかった!後でE缶オゴるぜ!!」

「ハァ!?どうせならS缶にしやがれ!」

 

 ゼータクなヤツだと心中で苦笑しながら、俺はジジィの部屋へと突入した。すかさず自動ドアのロックをかけると、そこには慌てた手つきで荷物をまとめているジジィの姿があった。

 

「ジジィ!」

「おお、お前さん!無事じゃったか!」

「いいタイミングでバカ一とゴッスィーが里帰りしてきてくれたんでな。……こいつはなんの騒ぎだよ!?」

「むぅ……おそらく、何者かによって一部のロボットたちになにかしらの命令信号が外部から送られたか、あるいは電子頭脳そのものをワシの知らぬ間に入れ替えられたか……いずれにせよ、ワシの組んだプログラムを書き換えるとは、並のハッカーではないわい」

「ライトのじーさん……のはずないか」

「当たり前じゃ!“あの”ライトがこんな回りくどい手を使うとは思えん!」

 

 アンタもなんだかんだでじーさんのことを信用してるじゃないか。心中ほっこりしたが、今はそんな場合じゃない。早く『実家』から脱出しねぇと。

 

《抵抗を続ける、アルバート・W・ワイリーとそれに従うロボットたちに、引き続き通告する》

 

 城内放送が響きわたる。俺はそれに聞き耳を立てる。

 

《今すぐ投降し、この城の正当なる主であるロボットの王―――“キング”様に明け渡せ。さもなくば実力行使を以て排除する》

「……!!キング、じゃと……!?」

 

 キング……その名もズバリ“王様”か。誰に断りもなく王を名乗るなんざ大した自信だ。だが、その名を聞いたジジィは瞠目していた。

 このリアクション……まさか。

 

「……何か知ってんだな、ジジィ」

 

 ジジィは辺りをキョロキョロと見回し、俺以外のロボットがいないことを確認し、小声で告げた。

 

「キングは……ワシが作ったロボットじゃ……!!」

「はァ!?……つまりこの戦いは内ゲバか!?エ○ーゴとティ○ーンズの内戦か!?」

「例えは相変わらずよくわからんが……キングはワシがフォルテの後継機として造ったロボットでの……フォルテはスペックこそロックマンに匹敵するがその…………アレじゃろ?」

「うん、アレだな」(即答)

 

 部屋の外から盛大なクシャミが銃声に雑じって聞こえた。よくできたロボットはクシャミもするのだ。

 

「後継機ったって……ジジィ確かバカ一をベースに新しいの造ってなかったっけか?“最後(Z)エロス(ERO)”とかなんとか」

「お前さんじゃあるまいし、ワシが自分の作品にそんなヒワイなセンスで名前をつけると思っとるのかアホタレめ。それとは別口じゃ。フォルテ並みの水準のスペックを保ったまま、知能もまた優れたものにしようと造ったのが……キングじゃ。ワシの持つロボット工学の知識、その全てを電子頭脳にインプットし、フォルテの戦闘能力とワシの頭脳を併せ持った、まさしくロボットの王、最強のロボットなのぢゃ!!」

「……ジジィの頭脳を持ってるってフレーズが出た時点でロクな予感がしねぇんだが」

「あやつには地下の研究室を与えて、しばらくは自由に研究や開発をやらせておったのじゃが……まさか叛乱を起こすとは……ワシのロボットの電子頭脳を外部から誰にも気づかれずに書き換える芸当も、ヤツの仕業と云うなら頷ける。ワシのプログラムを熟知しとるから当然か……」

「どーすんだよ?非常停止装置とか、自爆装置とか積んでねぇのか?」

「ワシがそんな非人道的なモノを積むと思っとるのか戯け者が!ワシャロボットたちの自主性というのを尊重してじゃな……」

「教育論に脱線してんじゃねぇって。マジでどーすんだ?ジジィが出て行ったところで無事に済む保証はないぜ?……いっそ老人ホームに避難すっか?」

「ドサクサ紛れに老人ホームにブチ込もうとするでないわッ。こうなれば渡りに船、大いに利用させてもらうわい。幸い、制御装置はあるからのう」

「あるならとっとと使えよ……」

「いや―――」

 

 ジジィはその悪知恵を最大限に回転させ、凶悪な笑みを浮かべてこう言った。

 

「この際、キングにはやれるところまでやってもらう。ワシの城を乗っ取るのも、これからヤツが実行する“計画”の前段階に過ぎぬだろうしの」

「……キングが"喧嘩"をおっ始めるってのか」

「十中八九、な。おそらくライトとロックマンも黙ってはおるまい。そこでぢゃ、ワシはこれからフォルテとここを脱出して、ライトのところに転がり込む。城を乗っ取られた被害者としてな。そしてキングがロックマンを叩き壊したのを見計らってキングを制御、晴れて世界征服達成!……という筋書きじゃよ」

「アンタホントそーゆーコトには頭が回るな……」

「ぬははは!伊達に悪の天才科学者と世間から呼ばれとらんわ!」

「……で?俺はどーすんの?できれば俺もこんな修羅場からはとっととオサラバしてぇんだが」

「お前さんには悪いんじゃが、何かあった時のために、連絡役として残ってもらえんか?」

「マヂかよ……」

「小型のホットライン通信機も預ける。“キング軍”の内情は詳しく頭に入れておく必要もあるからの」

「わかったよ……でもどーするよ?俺、『敵』と認識されてるぜ。何か身の証でも立てねぇと、信用してもらえねぇと思うんだが」

「それなら……」

 

 ジジィは、部屋の奥から“あるモノ”を取り出しつつ、ドヤ顔で言った。

 

「ワシにいい考えがある」

「それ、失敗フラグじゃねーよな……」

 

 ―――――――――

 

 ジジィの策に乗ることにした俺は、ジジィをとっととバカ一に押しつけ、ジジィから託された“それ”とともに、“キング軍”の軍勢の前に出て、白旗を掲げた。別にバッ○・クランみたく文化が違うわけでもなく、俺の投降はすんなりと受け入れられた。

 ちょうどその時、俺の(センサー)に小さな音が入った。ジジィが『実家』からの脱出に成功したらしい。バカ一よ、恩に着る。

 

「……さて、モノは頼みなんだが……俺も“キング軍”に入れてくんねぇか?もうこのジジィのトコで働くのもウンザリなんだ。な?この通り、()()()もそっちに引き渡すからよ」

「頼ム、コノ通リジャ!!」

 

 俺が縛っている()()()が土下座する。すると“キング軍”のロボットたちは何やら相談してから、俺に告げてきた。

 

「ならばお前がキング様に忠誠を誓う証を示せ。手始めに―――」

 

 メットールの一体が()()()の目の前の床にエネルギー弾を放った。着弾したとたん、()()()は情けない声を上げてビビった。

 

「その老人に引導を渡せ。そうすれば、キング軍の軍門に降ることを許可する……そう、キング様は仰られている」

「わーお……」

 

 ……いきなりロボット三原則破らせるなんざいい根性してるな。

 もっとも、ここにいるこの()()()は―――

 

 

 影武者(ダミー)なんだがな。

 

 

 さっき、ジジィの部屋で三度目の喧嘩の時に使ったという影武者ロボットを見せられた時は、さすがの俺もツボにハマって爆笑した。あまりにも出来すぎていたからな。

 なんでも相当精巧に造られているらしく、量産型ロボットのセンサー程度ではホンモノの人間と見分けがつかないらしい。しかも、あのパンツマンでさえ見事にダマされたというのだから、品質保証はバッチリだ。

 そんなわけだから、コイツはジジィの皮をかぶったロボットだ。撃って壊したところで俺の手は汚れん。遠慮なく破壊してくれよう。

 

「……了解。キング様、御照覧あれ」

 

 俺はジジィロボの額にバスターの銃口を向けた。

 

「イヤジャ!ワシャイヤジャ!ソウジャ、オマエサンニ世界ノ半分ヲヤロウ!ワカッタラワシニ協力シロ!OK?」

「OK!!」

 

 ―――ズドン。

 

 ジジィロボは額からケチャップめいた液体……というかケチャップを噴き出して機能停止した。そーいやこの間からケチャップの減りがヤケに激しいと思ってたが、コレが原因だったか。

 ……え?最初のシーンと違う?まぁこまけぇことは気にしてくれるな。

 

 ―――数日後、キングは『ロボットだけの世界』を造るべく、喧嘩の開始宣言を行った。

 ジジィと離れた初めての喧嘩……果たしてどう転ぶコトやら……それにしても……

 

 

 ……ジジィ、何食ってんだろーか。

 

 

 

 20XX年 Dr.ワイリーの基地内で反乱が発生。『キング軍』を名乗る一派に基地が占拠される。ワイリーはフォルテとともに脱出し、ライト研究所に保護される

 

 数日後、キング軍の首魁であるロボット・キング、世界征服計画発動を宣言。ロボットだけの世界を作るため、人類に宣戦布告

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