俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~ 作:稚拙
俺の名はジョー。
緊急事態が勃発した。
ジジィがジジィの造ったロボットに『実家』を追い出されちまった。
成り行きから俺はそのロボット『キング』率いるキング軍に潜入し、内部から逐一ジジィに報告しながら、喧嘩を始めたキングの成り行きを見届けるコトになったのだが。
「だから洗濯物ぶち込んで洗剤入れてボタン押しときゃいーんだって!ロボット造ってんのに家電に疎いとかギャグかよ!?」
《うるさい!!ワシャ洗い物なんざ自分でやったことないんぢゃ!!それなのにライトの所の小娘が容赦なくコキ使いおる……》
「どこぞで『働かざる者、死ね』と聞いたことがあるぞ。居候がブツクサ文句言うな。切るぞ」
《あ、ちょっ……―――》
―――ぷつん。
……こんな調子である。
ジジィはじーさんの研究所に無事に転がり込めたらしいが、家事をやらされて悪戦苦闘、ひっきりなしに俺に通信を寄越してくる。ただでさえ潜入任務中なのに、これがバレたらどーするつもりだ。つーかこんな事のために通信機持たせたのか、あのモノグサジジィは。
さて、ジジィどころか全人類に喧嘩を吹っかけ、『ロボットだけの世界を創る』という、ジジィの『世界征服』というアバウトな目標よりかは大義名分としてかなりまかり通っている天下御免の
ジジィ軍を内部から乗っ取っただけあって、構成員の大半は元同僚の面々だった。だが、どいつもこいつも微妙にスペックアップしていて、なかなかの強さだった。ロンパーズ*1は色が黒く塗られて耐久力がアップしてたし、ファイヤーメットールは足まわりがキャタピラに換装された上に火力がアップしてやがった。旧スペックの俺だけ、なんか置いてかれた気分だ。
あと、前回の喧嘩でパンツ小僧に負けて以来行方をくらましてたテングマン*2、そして青タイツに完全破壊されたはずのアストロマン*3までもがキング軍に参加していた。テングマンはともかく、アストロマンには流石にビビったな。まさに幽霊を見た気分だ*4。足は……あ、元々アストロマンには無いか。
さらに、キングが『ジジィの頭脳を完コピしたロボット』だけあって、キングは独自に高性能な6体のロボットを開発していた。それこそ、ジジィのナンバーズロボットに匹敵するほどのスペックのヤツだ。そいつら『キングナンバーズ』に、テングマンとアストロマンを含めた8体に、キングは占拠したエリアの仕切りを任せていた。その上、『実家』の真ん前に得体の知れない『関所』まで作って防備を固めてやがる。
結論―――
キング、パねぇ。
“慰安サーカス団*5”なんて組織すらある余裕っぷり、ジジィより安定感バツグンだわ。こりゃホントーに世界征服達成しちまうかもな。ジジィも寝首を掻かれて当然のハイスペックぶりだ。とてもジジィの息子にしてバカ一の弟とは思えん。『兄より優れた弟など~』とか聞いたことがあるが、まぁロボット、ひいては機械全般に限った話、『兄』の欠点やら問題点を補填した上で後から世に出る『弟』の方が優秀なのは、ある意味当然なんだが。
そしてもう一つ安定感バツグンの理由がある。誰あろう『ジジィがいないこと』だ。
元人間の俺が言うのも変だが、今までの喧嘩は純粋な戦力こそロボットだが、肝心要の舵取りは『人間』のジジィがやっていた。だからこそ詰めが甘く、バカ一が文句を言う要因になってもいた。
だが今回は、全体指揮すらもロボットだ。そこに人間の意思は一切介在しない。徹頭徹尾合理的、YESかNO、すべてかゼロ。下っ端のメットールですら、緻密かつ完璧な計算の上で配置されている―――
なんとも恐ろしい、まさに血も涙もない鋼鉄メンタルの軍団だ。
それ故だろうか―――俺は『実家』でキング軍の雑用をやってたこの数日、明らかに居心地が悪かった。肩身が狭い。周りの連中全員が、やることなすことすべてに完璧を求めてくる嫌味な上司と化したようだ。まぁ実際に就職したことはないんだが。
だが、風雲急を告げた。わずか一週間で、パンツマンはすでにこの『実家』まで迫ってきているという。いつになく早いじゃないか。
それもそのはず、今回はタイツ小僧のみならず、なんとバカ一とでタッグを結成、2人がかりでゴリ押してきたというのだ。まさかあの2人が組むとはな。これぞ『ロックマン&フォルテ』、いやさ『パンツマン&バカ一』というヤツか。
世界の危機に黙っていないだろう青パンマンはともかく、あのバカ一がキングに食ってかかる動機が―――あ、あるわ。
大方、『オレに無断で王を名乗るなんざ気に入らねえ!テメェをブッ倒してオレが最強の王ってことを証明してやるぜ!!』ってところか。うん、やっぱり
さて、ついにパンツマン&バカ一がこの『実家』へと乗り込んできた。にわかに慌ただしくなる我らが『実家』。身構える俺の目の前、アルファベットの『K』を意匠化したキング軍のエンブレムが描かれた隔壁に、5発の穴がサイコロの目よろしく穿たれたと思うと、巨大かつ見覚えバツグンの青白いエネルギー弾が隔壁を吹っ飛ばした。最強タッグのお出ましだ。
「行こう、フォルテ!この城のどこかにキングがいる!」
「ケッ、命令すんな!……オ゛ラァ!帰ってきてやったぜ!聞いてんだろキング様よォ!首を洗って待ってやがれ!!」
なんというエクストリーム帰宅だ。まぁ、元気そうで安心したぜ、バカ一。
……それから、パンパンマンもな。
「侵入者発見」
「照合完了。最優先要警戒対象:『
「警報発令。排除開始」
俺の安堵も束の間、機械的な同僚たちが蒼と黒のシルエットに一斉射撃を開始する。青タイツとバカ一はまるで示し合わせたかのように互いに逆方向に跳躍し、狙いを分散させる。
「『スプレッドドリル*6』!!」
オレンジと白のツートンに変わったタイツマンのバスターから巨大なドリルが発射され、それが無数の小型ドリルに拡散、テリーRの大群を穿って一掃する。
「オラどうした!?ビビってンのか!?」
バカ一が
「!?!?」
「バーカ、オレはこっちだぜ!!」
と、バカ一は反対側に立っていた。気がつくと
「あばよ」
バカ一が親指を下に向けた瞬間、
あの武器には見覚えがあった。
「『コピーヴィジョン*7』と『リモートマイン*8』か……ホンットエゲツねぇな、お前」
「その声……!!
「そう思いたきゃ勝手に思っとけ。……ま、E缶オゴらずに済んだのはラッキーだったけどな」
「ほざけ。……丁度いい機会だ……テメェは前から気に入らなかった……ザコのクセに偉ぶりやがってクソ生意気なんだよ!ゴスペルには悪いがここでスクラップにしてやるぜ!!」
凶悪なスマイルとともに、バカ一のバスターが火を噴く。自分で調整でもしたのか、前とバスターの“傾向”が違う。チャージをまったく使わず、一発あたりの威力を絞って連射性能に極振りして弾幕を張ることに特化したセッティングか。手数重視とはコイツらしい。
「パンツマンとお揃いはイヤってか?面白い“クセ”つけたじゃねぇか!!」
「そーゆーテメェは何も変わってねぇようだなぁエ゛ェ!?」
「ハッ!別にパワーアップだけが強くなる手段じゃないぜ!」
俺はシールド裏の手榴弾を投げ、それをすぐさまバスターで撃ち抜き、シールドで視界を覆う。爆音と閃光が同時に吹き出した。
「チッ、閃光弾か!チャチなマネを……!」
「!!フォルテッ!」
と、今度は死角からパンツマンのチャージショットが飛んでくる。俺はとっさにシールドを構えた。それなりの衝撃はあったが、完全シャットアウトには成功した。
「……1対2とかズルくね?」
「ケッ、サシでオレの目に付いたテメェが悪いんだよ」
「何もせず通してくれるなら、危害は加えない!」
「甘ェぞロックマン!向かってくるヤツはブッ壊す!!それがたとえ顔見知りだろうとジジィのオキニだろうとなぁ!!」
「そーゆーことだ!!気が合うなぁバカ一よォォッ!!」
俺はパンツ小僧へのツッコミに気を取られてたバカ一へ猛進し、伸ばした右腕で思いっきり首根ッ子を薙いだ。いわゆるラリアットである。勢いのまま仰向けに倒れるバカ一。
「ぬァ!?テッメェ!!」
「戦いは飛び道具だけじゃないんだぜ!!お次は……コイツだぁッ!!」
寝技の体勢に移行した俺は、バカ一相手に
「なんだこりゃァッ!?い゛ッ!?いでででででで!!!!折れるッ!腕が折れるゥゥ!!」
「人型ロボットとて
「ザッ……!ザコロボの分際でェッ!!」
バカ一は極まっている方とは逆の腕をバスターに変え、床に向かって発砲した。反動で固めが解かれ、間合いが離れる。
「……妙な技繰り出しやがって……!」
「さしものお前のメモリーにもブラジリアン柔術はインプットされてなかったみたいだな」
「知るかボケ!!」
「隙が見えたぜバカ一よ!!」
俺はツッコミの隙を見逃さず、バカ一の上を取るべくジャンプした。
―――瞬間、バカ一の口角が上がるのが、はっきりと見えた。
素晴らしいサマーソルトが俺の体を捉え、俺は再度宙に舞った。
「……ッ!『飛び込み見てからサマソ余裕でした』ってか!?対空とはやるじゃねーか!!」
「くっちゃべられるたぁ上等だッ!それならもう一撃くれてやらぁ!!」
「ゴっふぅぅぅぅぅ!?」
腹にバカ一の蹴りが見事に入り、吹っ飛ばされた上に壁に叩きつけられた。前世を含めたこれまでの人生の中で喰らった一番イイ蹴りだ。
「格の違いを思い知りやがれポンコツが」
「フッ……」
壁際にもたれかかった俺に、バカ一は砲口を向けた。
「じゃぁな、ザコ野郎」
「…………ジジィには考えがあるみたいだぜ」
「!」
瞬間、バカ一の狙いが下へとずれた。そして銃声とともに、俺の下半身は消し飛んだ。
…………………………やれやれ、ようやくお役御免か。今までの喧嘩で最高にグダっちまった。我ながら関節技繰り出すとか大人げなさ過ぎた。あれか、相手がパンツマンでなく主にバカ一だったからか。そんなバカ一も俺の出した『情報』に何かを感じたのか、“お情け”をくれたみたいだがな。
それにしても、キング軍のブラックぶりはハンパなかったな。『ロボットだけの世界』ってのがいかに恐ろしいかを存分に体感できた。これは将来やってくるAI社会への警鐘だな、うん。
さて、その後どうなったかというと―――
パンツマン&バカ一は数々の障害を乗り越えてついにキングと対面、久々に出てきた長兄の助けも借りながらキングとの勝負に勝利した。
そしてここでネタばらし。キングは自分がジジィ製ロボットであることをついに告白したんだが、そのタイミングでジジィが介入、ここぞとばかりにキングを制御装置に押し込んで操ったんだが、怒りに燃える青黒タッグを止められるはずも無く、キングは乗っていた大型ロボットごと撃破され、爆発の閃光に消えた。
ついでにジジィも懲らしめられ、これまでの『実家』の中で最も数奇な運命を辿った9棟目の『実家』は、ついにその役目を終えて闇夜を照らす巨大松明と化した。
今回は流石にジジィに同情する。自分が造ったロボットに寝首を掻かれ、なにくそとそれを利用して喧嘩したはいいが、最後のオチは変わらなかったんだから。
ちなみに今回、ちょっとした怪談めいた後日談がある。語った通り、キングは青タイツ&灰色タイツに負けたんだが、『実家』の跡地からはキングのパーツや残骸やらが一切発見されなかった。コイツはミステリーなんだが、ジジィは懲りずに新しい『実家』で『キングⅡ世』なんてヤツを考案して設計図をバカ一に見せてたし、バカ一はそれを見てウンザリしてたし、そこに乱入した長兄にキングⅡ世の設計図を収めたCPUをブッ壊されるしで、結局『キングの系譜』はジジィの頭の中からも『実家』のCPUからも、キレイさっぱり跡形もなく消滅していた、その矢先―――
ネットである噂が広がっていた。キングに似たロボットが、世界のあちこちで目撃されているというのだ。全身に真っ黒なフードを纏って、主に今回のキングの喧嘩で大きな被害を受けた場所に前触れ無く現れ、復興作業を手伝い、ふらりと姿を消している……らしい。
コイツがキング本人なのか、それとも今度こそ幽霊の類なのか―――俺は詳しく調べるのはやめにした。案外、パンツマンあたり真相を知ってるかもしれないが……ま、そこはそれ、だ。俺はもうあんなブラックな憂き目に遭うのは御免被るしな。キングが生きてようと死んでようと化けて出てようと俺には関係ない。もう知らん。
……と、俺が絶縁宣言したところで、この度のキングの喧嘩が、人間たちに『ある恐怖』を植え付けてしまい、ジジィが『野望の復活』を決意するきっかけとなった、『ロボット社会史上最悪の法律』が制定・施行されるきっかけになってしまうのだが―――
続きは……また今度な。
20XX年 キング軍に対抗するため、Dr.ライトとDr.ワイリー、一時的に休戦。ロックマンとフォルテ、協力してキング軍への反攻を開始
キングが占拠したワイリー城での戦闘で、キングがワイリー製作のロボットと判明。そこに現れたワイリーによって再洗脳が施されるも、搭乗していた大型ロボットごと撃破される。しかし、その後の調査でキングの残骸は発見されなかった
ワイリー、キング破壊に便乗しワイリー城を奪還。そのままロックマンを撃破し、自らの意向に従わぬフォルテに制裁を加えようとするが、敢え無く敗退
キングが推し進めていた世界征服計画を強奪する形で行われたDr.ワイリーによる第九次世界征服計画、ロックマン&フォルテによって頓挫
数週間後、世界各地で戦災復興活動を手助けする謎のロボットの目撃情報が相次ぐ。キングに似ていたという証言もあり、WRUによる調査も行われたが詳細不明のまま調査は終了
この頃から、人々のロボットに対する不信感が徐々に高まっていく。ロボット排斥を訴えるロビー活動も増加し始める