俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~ 作:稚拙
俺の名はジョー。
ジジィが悪の道に進むきっかけとなった因縁の機械―――『ダブルギアシステム』。
この度、ジジィはこのシステムを記憶の井戸の底から掘り起こし、のべ12回目となる喧嘩を世界に、そしてライトのじーさんに吹っ掛けようとしていた。
俺も今やジジィ軍団最古参のひとりとなり、喧嘩にも慣れたもんだが―――
「……まさかじーさんの研究所に直々に殴り込んで、ロボット拉致ってくるとは思わんかったぞ……」
ジジィの研究室に運び込まれていたのは、昨日ジジィがダブルギアシステムの被験者兼パンツ小僧への刺客にするためにジジィがさらってきた、8体の善良な一般作業用ロボットだ。全員、じーさんの研究所に年に一度の健康診断に来ていたばっかりに、哀れジジィの毒牙にかかってしまったのだ。現在は全員、強制停止プログラムによってシャットダウンされ、ピクリとも動いていない。
つーか、例の“ブルー○ットおくだけ”UFOじゃなく、それなりの戦闘力があるマシーンに乗ってじーさんの研究所を襲撃すれば終わってたんじゃねーか?……というツッコミは今更なのでしないことにした。
「ダブルギアシステムの開発にはナンバーズロボット並みのコストがかかる。チンタラ作るよりも『出来合い』の方が安くて早くてウマいんじゃよ」
「牛丼屋かよ……」
「……それにしてもこやつら、やはり“アタリ”じゃったわい。ライトの研究所に直々に健康診断に来るだけのことはある。民間の設計にしてはなかなかどうして、チョイとプログラムをイジればすぐにでも戦闘に転用可能なヤツばかりではないか……用心深い設計をしよるわ」
「どんなに無害なロボットでも戦闘用に魔改造できちまうジジィのセンスもなかなかマッドだと思うがな」
「持ち上げても何も出んぞい。……む?」
「どした?」
「このツンドラマン*1というロボット……コイツはコサックが造ったロボットじゃな……」
「意外なところでオッサンとも繋がってたか」
「思わぬ所でコサックへの意趣返しもできるとは僥倖じゃわい」
「フッ……今回の喧嘩、なんだか今までの集大成みてぇだな。今までの連中ももう一度起用してるみてぇだしさ」
そう、今回はなんと、今まで散々ジジィが渋ってた『戦力の再利用』を解禁したのだ。ガビョール*2にピッケルマン、バットン*3にスナイパーアーマー*4にウォールブラスター*5、シールドアタッカー*6にタテパッカン*7にリリック*8にキャノペラ*9にプロペラアイ*10―――と、今まで使ってきたザコロボットをこぞって再起用したのである。
「しかし厳選はさせてもらったわい。不変なれども陳腐化せず、今もって需要があるのは基礎設計が優秀という証明じゃ。優れたモノに新旧は関係ないからの」
「だからか?俺の新型ボディにあえて命名しなかったのは」
俺も『実家』の改装工事中に新型ボディに衣替えした。細かいディテールは違えども、盾とバスターというジョー伝統の装備だ。まぁつまりは『スナイパージョー』なんだが、ジジィは例の『命名の儀』を行わなかったのだ。
「まぁ今更じゃからな。……今回は総力戦じゃ。必ずロックマンを物言わぬ
いくつ歳を取ろうと前向きなのは良いことだ。ダブルギアシステムを作ったことで当時を思い出したのか、今回のジジィは本当に活き活きとしてるなぁ。
―――さて、ここからは俺も頑張らねばなるまい。ジジィはいつものごとく世界中の放送回線やネットワークをジャックし、大っぴらに喧嘩の開始を宣言。世界8ヶ所の都市に、パワーギア、もしくはスピードギアを組み込み、制御チップを取り付けて“洗脳”した8体のロボットを解き放った。
俺はその内の一体であるブラストマン*11の部隊とともに、朽ち果てた大規模遊園地でパンツ小僧を迎え撃つこととなった。
「……本当にいいんですか?おれが“アーマー”使わせてもらって……」
新入りの
「いーんだよ。俺は乗り物使うよりか、地に足をつけて戦う方が性に合ってるのさ。遠慮すんなって」
「ありがとうございます……!おれたちの手で、必ずロックマンを倒しましょう!」
「ああ……でもあまり無茶はすんなよ。死んだら全部終わりなんだから」
「はい……!それでは、おれは持ち場に……先輩もどうかご無事で!」
後輩は一礼すると、スナイパーアーマーにひらりと飛び乗り、ガシンガシンと足音を響かせて持ち場へと向かっていった。
「さて……俺も持ち場に行くか」
持ち場に行きながら辺りを見回る。ここを仕切るブラストマンが『バクハツアーティスト』を自称してるからか、爆発物だらけだ。前の喧嘩の時の
赤外線センサーで反応する導火線とか、前よりもハイテク化してるとはいえ、やはり爆発物満載、火気厳禁の四文字を胸に刻まねば―――
「あ、あの……一緒に組むことになりました……よ、よろしくお願いします……」
俺の持ち場でペアになったヤツを見て、俺は若干ヒイた。
コイツは『ファイアーサーバー』っていうロボットだ。なんでも野球場やらサッカースタジアムとかでビールの売り子をしてたロボをジジィが魔改造したらしく、背中のビア樽の中身をビールから揮発性オイルに変え、ホースの先を注ぎ口から着火装置に換えて、立派な汚物消毒ロボにしたんだと。
……だからなんでよりによってそんなヒャッハーなロボをこんな爆薬満載ステージに置く!?
火気厳禁と言ったろうが!?グレネードマンステージの時といい、発想が狂ってやがる。爆発物を扱うロボは揃いも揃って電子頭脳もバクハツしてんのか!?
「……お、おう、よろしくな」
「ぼ、ボク……ロックマンと戦うのは初めてなんで……でも嬉しいです!……先輩は何度もロックマンと戦って、生き延びてきた凄いジョーさんって聞いて……そんな先輩と一緒なら、きっと……!」
「あー……俺、異能生存体ぢゃないからね。まぁくれぐれも誘爆だけには用心を―――」
「見つけたぞ!ワイリーのロボット!!」
気配―――というか、思いっきり声がしたから振り返ればヤツがいる。
久々に見たタイツ小僧は……何というか少し印象が違っていた。
心なしか背が高くなり、タイツ部分にラインが入り、細かい部分のディテールが変わっている。どうやら心機一転したのはジジィだけじゃないらしい。
「出たなパンツマン!!新入り、撃ちまくれ!!」
「は、はいッ!!」
俺がバスターを撃つと同時に、ファイアーサーバーも不器用な手つきで火炎弾を発射する。牽制としては上出来じゃないか。
「く……先に進めない……!」
「地味だと思って甘く見てると痛い目見るぜパンパンマン!!」
「勝てる……!ボクたち、ロックマンに勝てますよ!あはははは!!」
「バカッ、それはフラグだ!!」
「こうなったら……これで!!」
青タイツの攻めの手が一瞬止まった、と思った、同時だった。
―――――――――え?
ヤツから青い閃光が迸ったのが見えた次の瞬間には―――
ヤツは俺の『上』にいた。そして。
赤い閃光が周囲を照らし、ロックバスターから巨大な光弾が2発、ファイアーサーバーに叩き込まれていた。
「……!!」
せっかく出来た後輩が一瞬で
そして後輩が木っ端微塵に砕ける瞬間、その爆発の炎が後輩の背負っていた揮発性オイル満載のビア樽に引火し、俺の頭上に落ちてくるのが見えた―――*12
―――俺の視界はオレンジ色の爆炎に覆われ、轟音のみが俺の