俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~   作:稚拙

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超絶編

「観念しろ、ワイリー!」

 

 ―――カツン、カツン

 

「む、むぐぬぬぬぬ…。こうなれば…奥の手じゃあああッ!」

 

 ―――カツン、カツン

 

「み、見逃してくれえええ!こ、この通りじゃ!たのむ!ロックマン!」

 

 ―――カツン、カツン

 

「そんなことしたって、だまされないぞ!もう何度目だと思ってるんだ!?」

「………くそッ!いい気になるなよ!今回はお前に負けたんじゃないわい!ワシの作った、ダブルギアシステムに負けたのじゃ!つまりこの勝負はワシの勝ち!だ~っはっはっはっはっは!!さすがワシ!ワシ天才!」

 

 ―――カツン……。

 

「やれやれ…。まったく懲りてない様子だな」

「その声は……ラ、ライト!何しに来た!?」

「なぁ、ワイリー……お前の前に立つロックマンを見て、何か感じないか?」

「…………!」

 

 ―――カツン、カツン、カツン。

 

「ふ、ふん!憎ッたらしさ以外、何も感じんわい!」

「『正しい心』を持ち、『限界を超える力』を操る…あの頃、私たちがそれぞれ目指した理想の『歯車』が、かみ合った姿…それが、『今のロックマン』ではないだろうか?」

 

 

 

 

 

「本当に…………そう思ってるのか…………じーさん」

 

 

 

 

 俺が『そこ』に来た時には、既にすべてが終わった後らしき状況だった。

 歯車を象ったジジィの最終兵器は無惨なスクラップと化して墜落し、そこにはロックマンに追い詰められたジジィ、そして何故か、ライトのじーさんもいた。

 ―――ちょうどいいか。

 

「お前さん!?どうしてここに!?それにその姿は……」

 

 俺は今、ジジィの白衣を拝借して羽織っていた。

 

「後で洗濯して返すさ……、久し振り、じーさん……5度目の時以来だな」

「その声……まさか、きみはあの時の……!」

「また会えて嬉しいよ。……でも……」

 

 俺はじーさんを―――

 睨んでいた。

 

「……見損なったよ。あの時……俺はあんたと話して、あんたなら、ジジィの気持ちを受け止めてくれると思った―――でも……それは俺の買いかぶりだったみたいだ……気付いちまったのさ、あんたに……そして、あんたの『息子』のロックマンに決定的に欠けているモノにな」

 

 はっきりと、俺は確信した。

 

 だから―――突きつける。

 

 

 

 あんたとロックマンは―――『負け』を知らないんだ

 

 

 

「『負け』を―――挫折ってのを、じーさんはしたことがないんだろ。負けて、挫折して、そこから何かを学んで、なにくそって思って、一生懸命這い上がる……そいつはヒトとして必ず経験するものだ……でも、あんたにはそれが無かった……順風満帆すぎたんだ、あんたの人生は。努力はしたんだろうけど、その結果が裏目に出るってことが、今までのあんたには無かったんだ……!トップを走り続けた故に……あんたは負けたヤツの悔しさが……2位に甘んじたヤツが、どんなに惨めな思いをするのかがわからねぇんだ!あんたは知らず知らずの内に、心の中に『欠陥』を抱えちまったんだ……!」

「欠陥って……博士はそんな……!」

「お前もだよ……ロックマン」

「……え……」

「負けを知らないお前は……いや、“負けちゃいない”お前も、じーさんと同じだ……いや、もっと最悪かもな……『勝ちすぎた』んだよ、お前は。だから、負けたヤツの気持ちも分からずに、やれ正義のためだ平和のためだ……その正義や平和が、どれだけのロボットたちの犠牲の上に成り立っているのか……お前のために、どれだけのロボットが『負けた』のか……どんなに悔しい思いをしてたのか―――考えたこともないだろ?えぇ?正義のスーパーロボットさんよ……?」

「……………………………………」

 

 うつむき気味だったヤツは、ゆっくりと俺に視線を向けてきた。

 

「僕は……平和を乱すロボットを放っておくことはできない……それに、負けられない……僕が負けたら―――」

 

 

 

 

 世界は誰が守るんだ

 

 

 

 

 俺には―――

 俺を見るロックマンの目が―――

 

 『心』があるような、『それ』には見えなかった。

 

「そのためにお前は……どれだけの『心』を蔑ろにした……?どれだけの『想い』を踏みにじった……?悪の手先だから壊すのか?平和を乱すヤツの部下だから殺すのか!?……『正義』や『世界平和』って大義名分掲げてりゃ、考え無しに邪魔なロボット壊していいのか!?」

「それはっ……!」

「だからお前に、教えてやる―――じーさんにも、見せてやる―――」

 

 

『蔑ろ』にされたヤツらの『無念』を!!

 

『省みられなかった』ヤツらの『悲しみ』を!!

 

お前に―――

『ロックマン』という世界で唯一の『絶対勝者』に!

初めての『敗北』を刻み込むことでなァッ!!!

 

 俺は羽織っていた白衣を脱ぎ捨てた。瞠目したジジィとじーさんが同時に叫ぶ。

 

 

「「ダブルギアシステム……!」」

 

 

 俺はジジィの研究室にあった予備のダブルギアシステムを持ち出して、俺自身のボディに組み込んだ。

 ロックマンと正面きって戦うには、これがどうしても必要だって―――

 そう、ゴッスィーが言ってたから。

 

「何故じゃ……!?それ以前に、お前さんに機械の心得は無かったはず……!?」

「……寺の小坊主はさ、坊さんと暮らしてる内に、習ってもねぇのに経が詠めるようになるらしいぜ。たぶんそれと同じさ。今まで何回、ジジィの作業を手伝ったと思ってる?電気屋に再就職できるくらいのスキルは身につけさせてもらったぜ」*1

 

 胸板のド真ん中に、ウルト○マンのカラー○イマーよろしく取り付けたダブルギアシステム……やっぱり不恰好で、情けねぇな。弱点丸出しだ。

 

「駄目じゃ!やめるんじゃ!前にも言ったがお前さんにそれは扱えん!量産型ロボットのお前さんに、まして付け焼き刃のダブルギアは―――!!」

「そういう『理屈』は……俺の『心』で蹴ッ倒してやるッ!!行くぜ!!」

 

 

ダブルギアシステム、起動ッ!!

 

 

 

 

 

 

「グ!!ぁぁぁぁああああ!!!!!!」

 

 俺の全身を、得体の知れない不快なモノが這いずり回る感覚が奔った。赤と青のスパークが噴き出ると同時に、恐ろしいほどの脱力感が襲い、立っていられなくなった。

 

「だから言ったじゃろうに!!お前さんに……ジョーのボディにダブルギアシステムが適合しておらんのじゃ!!」

 

 ジジィの苦言が刺さる。俺の全身にのし掛かる『理屈』が、ジジィの危惧を実感させる。

 いくら……いくら『心』でそれを望んだところで、届かない―――それがこの世界の『理屈』だっていうのかよ……!

 

「……きみは……どうしてそこまで……」

 

 ロックマンの言葉が落ちてくる。それが、俺の『心』に油を注いだ。

 

「……だからだよ……」

「……え……?」

「“そう”、だからだよ……!」

 

 もう一度火が点いた、からか、立ち上がれるほどには全身に力が戻ってきた。

 

「お前が、俺の気持ちを解らないこと自体が……俺が戦わなきゃいけない理由なんだよ……!」

「……!?」

「俺はなロックマン……最初お前に負けた時はそんなに悔しくなかったさ……でもな……ジジィと一緒に暮らして、同型機(兄弟)同僚(仲間)たちが俺を頼ってくれるようになって……24時間365日、お前をブッ倒すコトしか考えてねえバカな“弟”もできて……『そういう連中』と付き合ってる内に……俺も、『そういう連中』のひとりとして、そいつらのために何かしてやりてえって……負け続けてるヤツを、一度は勝たせてやりてえって……ずっと『2位』に甘んじて、悔しい思いをしてるヤツを、『1位』にのしあげてやりてえって……『てっぺん』で笑わせてやりてえって……そう思うようになったんだ……()()()()()()、なったんだ……!だから……お前に負けるのが、この上なく悔しくなった!!」

 

 俺は、心の中に『欠落』を抱えた―――

 『世界最強の欠陥機』に言った。

 

「この想いを……この『心』を、お前が理解できないのなら……たかがバスター5、6発でブッ壊せると高を括ってるんだったら……!俺は……お前を絶対に許すことは出来ねえ!!俺の居場所を……俺の誇りを……俺は守る……!俺の大事なモノを……!俺が『心』から愛するこの世界を……!!お前の『手前勝手な正義』から!!」

 

 その時、俺の中に『ナニカ』が―――

 ほんの小さな、『ナニカ』が―――

 

 

 

 ()()()

 

 

 

 その『光』に従い、俺は(さけ)んだ。

 

 

 

 

行くぞォオォォオオ!!!!

 

 

ゴスペェェェェェェェルッ!!!!

 

 

WAOOOOOOHHHHHNNNN!!!

 

 

 

 響きわたる獣の咆哮。

 そして、俺の決意とゴスペルの闘志が、空中でひとつとなった。

 

 

―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 

 

 形容しがたい凄絶なエネルギーが渦巻き、空気が鳴動する中―――

 俺を見上げるロックマンは、ひどく驚愕した顔で―――

 少しでも“辻褄”を合わせようと―――“今の俺”という存在を『心』の中で解そうとするためか―――

 震えた声で、こう問いかけた。

 

「きみは…………いったい…………?」

 

 

 

「俺は―――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ス ー パ ー ジ ョ ー

 

 

 

 

*1
ダブルギアシステムは外付けハードディスク感覚で簡単に脱着可能らしい。事実、『11』のエンディングではライトットに取り付けられ、パワーギアを使ってボスロボットたちを運搬していた。

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