俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~ 作:稚拙
「『スーパージョー』、じゃと……!?」
予想外かつ想定外の事態に、ワシはただ唖然とする他なかった。
じゃが……確かに『あやつ』は、ゴスペルと合体を果たし、赤と青―――ダブルギアシステムの輝きをその身から放っておる……!
「ワイリー、彼は一体……!?
ライトも大層な驚きぶりじゃが―――此奴が驚いているのは“ガワ”ではあるまい。
“あの時”―――ライトを人質として捕らえた『五度目』の時……メシ当番にしたことで勘づきおったか。
「……『心』はな。じゃがボディとソフトウェア自体はなんてコトはない、ごくありふれた量産型じゃ……!それにゴスペルにも、フォルテ以外のロボットとの合体プログラムなぞ組み込んだ覚えはない……!まさかこやつは……本当に『心』だけでゴスペルと合体して……ダブルギアシステムを起動させたというのか……ッ!?」
思えば、フォルテ以外には絶対に懐かぬようプログラムしておったゴスペルがこやつに懐き、こやつが前世で犬を飼っておったコトを聞いた*1時点で、疑っておくべきじゃったかもしれん。
『畜生道』に堕ち、二度目の生を受けるのは、何も『ヒト』だけではないということか―――
ワシは、ワシの造ったロボットが、ワシを含めて誰も意図せんかった、論理的かつ科学的に考慮して100%起こり得ない非科学的超常現象―――所謂『奇跡』と呼ぶべき埒外の現象を起こしたことに歓喜できず、ただ心底驚嘆するしか出来なかった。
何故なら―――
これらすべてが、ワシの関与できない、俗に『オカルト』と称される領域に由来するモノであるらしいことを、無意識に認めたくなかったから……やもしれん。
「往くぞ―――」
スーパージョーはロックマンにバスターの銃口を向け、放った。
紫色の光条が、一瞬でロックマンへと届く。ロックマンは動けんかったようじゃが、レーザーはロックマンの右の足元に着弾していた。
「次はこれだ」
スーパージョーのバスターに紫色の輝きが集束し、巨大なエネルギー弾となって放たれた。それも、3発連続で。
ロックマンはスライディングで2発をかわすも、最後の3発目を喰らい、仰け反り吹っ飛んだ。
「……強い!」
すぐさまロックマンは受け身を取り、体勢を立て直す。
最早只の量産型ではないことを奴も悟ったか、表情からは余裕が失せていた。
「…さっき、ゴスペルの記憶メモリを同期させてもらった時に引っかかったんだが……ロックマンよ……前にバカ一に言ったな……『ニセモノのチカラじゃぼくにはかてない』って。確かに“
スーパージョーが紅蓮の閃光を発し、両の腕をバスターへと変え、ロックマンに向けた。
「思い知れ……これが『力』だ!!」
二門のバスターから、ロックマンのチャージショット並みの大きさの、真紅のエネルギー弾が連続で発射される。
「“ダブルバスター”じゃと……!?」
そんな機能を組み込んだ覚えは勿論無い。それにダブルバスターは、使えこそすれ排熱が追いつかず、オーバーヒートする可能性がある、ハイリスク・ハイリターンの典型の筈……*2
それをこうも簡単にやってのけるとは……ダブルギアの賜物か、それとも―――
「でも……そんな『力』だけを
降り注ぐエネルギー弾の間隙から撃ち返しながら、ロックマンが叫ぶ。
「意味はあるさ!お前が俺に『負けた』という事実が残る!じーさんがジジィに『敵わなかった』という結果が刻まれる!」
ロックマンは足を止め、赤い閃光を放ってパワーギアを発動、チャージショットを二連続で放つ。二発のエネルギー弾がぶつかり合って相殺されるも、スーパージョーが放った3発目のチャージショットがロックマンに命中した。
「ぐぅッ……!」
「そして
今度は、スーパージョーの全身から蒼白い輝きが放たれる。
「お前の醜態に世界は幻滅する……誰もお前に頼らなくなる……『正義のスーパーロボット』も、負ける時には負けるんだって、世界が気付くんだよ……!」
吐き捨てるようにあやつは言うと、目にも留まらぬ高機動を駆使し、不規則に空中を舞った。そして無数に浮かび上がった蒼白い残像から、青色のレーザーが五月雨の如くロックマンに浴びせかけられる。
「く……!スピードギアッ!!」
ロックマンもまた、ワシとライトの目視では捉えられん機動力でスーパージョーを追う。しかし、同じスピードギア発動状態なら、基本スペックがダイレクトにモノを言う。ゴスペルと合体し、字面通りにまさしく翼を得たあやつには追いつけない。
「遅い」
ロックマンに突撃したスーパージョーは、そのままロックマンを空中へと打ち上げ、何度も体当たりをぶつける。
「土に
天井近くまで打ち上がったロックマンの周囲に、無数のスーパージョーの分身が、取り囲むように出現する―――!
「そして―――」
すべての分身のバスターの銃口が、力無く宙に浮いたロックマンに向けられ、蒼白い無数の光が空間に灯る―――
「お前を天から引きずり下ろす!俺のこの名を記憶に刻めッ!!!!!」
流星雨と見紛うばかりの青い閃光の群が、ロックマンに向けて全方位から同時に殺到し、大爆発を起こした。
「ロックマンッ……!!」
床に叩き墜ちたロックマンに、ライトが瞠目して叫ぶ。
「ザコ同然に蹴散らされる俺達の気分ってヤツが……ちったぁ身に
スーパージョーがロックマンの目の前に降り立つ。
「お前さん……お前さんはいったい……!?」
「……ジジィはそこで見てるだけでいいぜ。―――くたばってねぇんだろ、ロックマン。立てよ。まだ終わってねぇぞ」
吐き捨てるようにあやつは言った。よろめきながらも、ロックマンは立ち上がった。
「簡単に死なれても困るんだよ。……あるんだろ、E缶。待ってやるからとっとと飲め」
「お前さん……!?」
何を考えとるんじゃ!?ロックマンを倒すために戦っとるんじゃなかったのか!?フォルテじゃったらここで確実にトドメを刺しとったぞ!?
心の中でツッコんでいる内に、ロックマンはどこからともなくE缶を取り出し、ストローを刺して飲み始めている。あぁ……あの音が……『勝った!』と思った瞬間に勝ちがこぼれ落ちていく、『ライフエネルギーが回復する音』が聞こえよる……それにしてもロックマンめ、一体ドコにあれだけの量のE缶を隠し持っとるんじゃ……格納する場所など見当たらんのじゃが。
「ロック……」
「……大丈夫です、博士。下がっていてください」
ロックマンは立ち上がると、真っ直ぐにスーパージョーへと視線を突き刺す。
「こんな戦いが何になるんだ……!きみはどうして、こんな……!」
「…………それでも、戦いたくない、か。…………本当に、
スーパージョーは何故か穏やかに語った。まるで、兄が弟を語るような語調で。
「そこまでロックのことをわかってくれているきみが……何故ロックと戦わねばならんのだ……?」
「だからこそ、さ。だからこそ俺はこいつが“危険”だって思ったんだ……『結果』だけを見て、『理由』も問わず、ただそこに起きてる
「理由……信念…………」
「立ち話もアレだから、体動かしながら考えな!!」
あやつはひらりと飛び立つと、全身から赤い閃光を放ちながら叫ぶ。
「お前に倒された奴等の無念……“もう一度”味わいながら、な!!」
分子模型にも見える独特な形状の、それも超大型の球体が、あやつが天へと向けたバスターの砲口から出現し、ロックマンへと投げ放たれた。
「……!伏せろライトォッ!!」
ワシはとっさに叫んでいた。次の瞬間、耳を引き裂かんばかりの轟音と、凄まじい熱風とが同時に襲ってきた。ライトもワシの横に伏せていた。
……しかし、まさか特殊武器を……それもロックマンキラー*5の特殊武器を使いおるとは……
確かアレはバラード*6の……あの機能はジョーのボディではなくゴスペル由来のモノだ。フォルテのサポート用の予備の特殊武器スロットを使いおったか。そして特殊武器チップの出所もワシの研究室、か……いよいよもってあやつは、『量産型』の域を超えるつもりでいるらしい。
「まだだ!!」
その声の方向に振り返ると、パワーギアの赤い光に包まれたロックマンが、硝煙の向こうにいると思しきあやつにバウンスボールを連射する。あの武器は直接上方を狙える上、攻撃範囲も広い。威力に目をつぶれども『当てるだけ』なら、な。
バウンスボールが硝煙の向こうに消えた、次の刹那―――
―――キュイィィィィン!!!
命中した、にしては妙な音が鳴り響く。ロックマンも違和感を覚えたのか武器チェンジを行い、ツンドラストームで硝煙を吹き飛ばした。その向こうには―――
「よォ」
あやつがいた。
だがあやつは金色のシンプルな槍を天に掲げ、その槍先にはエネルギーの渦が球体状に圧縮されていた。
だがその威容に怯むことなく、ロックマンはバスターを連射する。しかしそのバスター弾は、まるで引き寄せられるようにエネルギーの渦へと向かっていき―――
―――キュイィィィィン!!!
バスター弾をエネルギーの渦が吸収し、その輝きを増す。
「受けた恩は忘れるな、受けた痛みは倍返し、ってな!!」
エネルギーが凝縮された三日月状の刃が放たれる。ロックマンはスライディングでかわすも、先程までロックマンが立っていた地面に大穴が穿たれた。
「今度はエンカー*8のミラーバスターじゃと……!?となると……まさか!?」
「ご期待通りに……次はコイツだ!」
スーパージョーが蒼く輝くとともに空中に多数の分身を創り出し、四方八方に回転する円盤型エネルギーカッターを投げ放った。今度はパンク*10のスクリュークラッシャーか。無造作かつ無軌道に放たれた回転エネルギーカッターが軌道を変え、ロックマンに向けて殺到する。
「お前はこうして……何体のロボットを切り裂いた?」
ロックマンもまたスピードギアを発動し、前後左右、そして頭上から曲がり来るスクリュークラッシャーをかい潜る。だが、その先に―――
「何体のロボットを砕いた?何体のロボットを焼いた?」
まるで『置いてあった』ようにバスターが命中した。あやつ、ロックマンの行動を先読みしておったのか。
「覚えてねぇよな……覚えてるはずもねぇ、よな。……ヒトが今までの人生でどれだけのパンを食ったか、いちいち覚えてるはずもねぇのと同じだよな……つまりはそういうことなんだよ……お前がやってる『世界平和』ってヤツは、な!」
「く……!」
「そんなお前が『世界』を……『平和』を守るなんざ―――嗤わせる」
あやつは、片膝をつくロックマンを見下ろしながら、ふわりと空中に浮かび上がると、スッとバスターの砲口を天へと向けた。途端、あやつの周囲の空間に、無数の『
「目の前の、たった『一人』さえ救う方法もわからねえお前に―――『未来』は無いぜ。お前が、『コイツのかつての乗り手』になる前に……ここで終わっておいた方がいい」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
あやつがロックマンに砲口を向けた瞬間、無数のサクガーンがロックマンに雨の如く殺到、有無を云わさず、ロックマンは大量のサクガーンに埋もれることとなった。
「ロック!!!」
「スピードギアで時空間に干渉したとでもいうのか、あやつは……!!」
無論、ダブルギアシステムにそのような機能は無い……はずなのじゃが、今のあやつなら何をしでかしても不思議ではないとも思わせる。
「……この程度じゃねぇだろ」
降り立ったあやつが、山と積もった大量のサクガーンにそう言うと、山の一角から青い手がズボッ!!と突き出た。瞬間、数え切れぬほどのサクガーンは、何処かへと転送されるように掻き消えた。
「てめぇの『未来』に埋もれた気分はどうよ?」
「……未来の僕……クイント*12の武器か……!」
「今までお前が、俺の
あやつは転送で現れたサクガーンを手に取ると、その切っ先をロックマンの鼻先に突きつけた―――
「お前に刻んでやるよ。世界で初めてお前に“敗北”を教えてやった、『俺の名』を―――!」
振り下ろされるサクガーン。
―――だが。
―――ガキィィィィン!!!
「……!」
ロックマンはサクガーンの切っ先を―――
突き出した頭、そこに被ったヘルメットで、受けていた―――
「…………僕だって……何も考えていないワケじゃない……!ワイリーに作られたロボットにだって、『心』があることは知っている……!でも……平和を壊すことと壊されることは……!!等価値なんかじゃ、絶対ない!!!」
すっくと立ち上がったロックマンは言う。
「ワイリー、フォルテ、今まで戦った全てのロボットたち、人間たち……そして、きみにも…………守りたい『世界』があることはわかる……!けれど、そのために『別の誰かの世界』が壊されることは、絶対に間違ってる……!僕は……『守る手段』がない人々やロボットたちの代わりに、『世界』を守る―――」
「………………………………」
あやつはモノアイを消し、黙ってそれを聞いていた。
「―――――――――――――――でも」
「!」
紅いモノアイがロックマンを見据えた。
―――瞬間。
―――ピシッ
「今…………この時だけは、そうした理屈を―――」
―――パキキキキキキキ
「僕は自ら、破棄する―――」
「……!」
ワシの横でライトが瞠目した。
「きみの『心』を受け止められるのは、『ロックマン』じゃ、できないって、理解した―――だから、きみと戦うこの時だけは―――」
―――パキィィィィン!!!
『ロックマン』じゃなく―――
ただ、ひとりのロボット―――
『ロック』として、戦わせてもらうよ
サクガーンの衝撃からか、真中心からヒビが伝ったロックマンのヘルメットが、真っ二つに割れて両側に落ちた。
ワシは思わず、ロックマンの顔を見た。
―――憑き物が落ちたような、清々しい表情をしていた。
―――――――――
―――そうだ。
―――俺はそれを、待っていた。
「……ごめんなさい、ライト博士……僕は―――」
ヤツは申し訳なさげにじーさんに詫びた。じーさんはひどく驚いた様子だったが、やがて力が抜けたように笑った。
「いいんだよ。今この時だけは、それでいい……ロックのやりたいように、望むように……思うように、彼と向き合ってくれ」
「……!はい!」
そう―――
ヤツは敢えて、『ロックマン』という『英雄の称号』を今だけはかなぐり捨て、単なる『世界最強のロボット』として、俺とトコトン闘り合ってくれるらしい。
「『守るべき世界』が噛み合わねぇなら、いっそ
「考えるのは、今だけやめる。今きみの目の前にいる僕は……『ロックマン』じゃない……ただのひとりのロボット―――――『ロック』だ!!」
「…………イイぜ……!」
俺は心中で笑んでいた。
「それでいい!!!!」
全力で駆け出し、ヤツの顔面に拳を叩き込む。
「『ヒーロー』が何だ!『平和』が何だ!!『世界』が何だ!!!そんなモノ、ネジ一本の足しにもなりゃしねぇからな!!余計な題目無え方が!下手にルサンチマン*13じみて受け取られるコトも無ェ!!」
「きみには『守るための戦い』じゃ勝てない!『理解するための戦い』も届かない!だというのなら!!」
ヤツは拳を振りかぶり、俺の顔面に叩き込んでくる。
「『戦うための
「上ォォォ等ォォォだァァァッッ!!」
俺はスピードギアを発動する。ヤツもまた、全身に青白い輝きを纏った。
「嬉しいぜ!お前が俺を!単なるザコの俺を『対等』と認めてくれてよぉ!!」
連続で放つバスター弾の間隙を、ヤツは縫った。
「引きずり下ろし甲斐があるぜ!!」
スクリュークラッシャーを10発、全く違う軌道で投げ放つ。だがヤツは、撃ち落としが通用しないはずのスクリュークラッシャーを全弾撃墜した。見ると、ビームカッターを発生させるユニットの基部、その中心が正確に撃ち抜かれていた。
「一度使った特殊武器の長所と短所なら、すべて把握している!!」
「そうかッ!!だが!それがどうしたァッ!?」
お次はバラードクラッカーだ。5、6発連射したが、あちとらはチェインブラストを放つ。空中で爆発物が連鎖的に轟音と閃光を撒き散らす。
動かない黒煙を突き破り、パイルドライブで突撃してくるヤツに、俺はサクガーンで応戦する。三度、四度と切っ先がぶつかり、火花が散り、空中に静止する。
「俺は勝つ!!お前に『負け』を教える!!お前の『絶対』を破壊する!“力尽く”でなァァァァッッッ!!!」
「僕だって……!!負けるもんかぁぁぁぁあ!!!」
互いにパワーギアに切替えた。紅蓮の閃光が迸る。俺はサクガーンを投げ捨て、ヤツだけを見据えて駆け出す。ヤツもまた、俺と鏡合わせのように走り出した。
「うおぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぬぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
一撃一撃が、必殺級の威力を持つ拳を連続で叩き込み、また叩き込まれる。互いの一発で、命中した場所の装甲がひしゃげて抉れる。
―――その時だった。
ヤツが放った右のストレートが、妙に鮮明に―――
「!」
俺はヤツの腕を取り、そのまま力任せに地面に叩きつけた。
「ぐぁ…………ッ!!!」
ヤツの口から赤黒い液体が吐かれる。間髪入れず、ヤツをそのまま上へと放り投げ、無防備なヤツにバスターの砲口を向け、発射した。
狙いは―――少しブレた。エイムなんざこだわってられるか。案の定バイタルエリアには掠らず、ヤツの右肩に命中した。肩口の水色のコーティングを裂いて、
―――致命的ではなけれども、腕が上がらなければバスターもロクに撃てまい。それも利き腕の右だ。
―――勝ちを手繰った!
そう感じたのも一瞬だった。
ヤツの目は、死んでいなかった。
ヤツの脱力しきった右の手が、拳と固められ、俺に向けられた。バスターを撃ち返すか。だがお前の右肩は今死んだ。回路も断線してりゃバスターに変形すらままならん。よしんば撃てたとて、マトモに狙いをつけられるものか。いっそ右には見切りをつけて左で―――
高を括った俺の思考―――その埒外を、ヤツは放った。
ヤツの鉄拳がカッ飛び、バスターを構えたままだった俺の右腕を『持って行った』。
―――最早右腕が使えないと判断して、どうせ棄てるならいっそぶつけてしまえ―――ってか。
なら、望み通りに壊すまで。俺は即座に左腕をバスターに変え、背後をターンして戻ろうとしていたヤツのアームをノールックで撃ち落としてやった。空中で受け身を取って着地したヤツは、表情一つ変えてはいなかった。
俺は右の二の腕から先を、ヤツは右肩から先を喪い、さらに双方満身創痍だ。『CAUTION』だの『DANGER』だの、俺の視界の中で警告表示が重ねて表示され、赤々と点滅している。まるでブラクラだ。うざってぇ。もしゴスペルと合体していなけりゃ、とっくの昔に機能停止しているダメージか。
俺とてそうであるならば、ヤツもまたこの程度の損傷が入ってる、か。片腕欠損は見りゃわかる。
―――このまま泥試合はヤバいか。
なら、ラストだ。
これでラストにする。
次の一発。この一発に、俺の全てを賭けてやる。
―――すまんな、ゴスペル。もう少しだけ、俺に力を貸してくれ……!!
ヤツと目が合う。
ヤツも己の中で、何かを決したか。ヤツの視線とともに、ヤツの心が俺に突き刺さる。
―――往くぞ。
考えることはやはり同じか。
パワーギアとスピードギアの同時発動。
本格的窮地が身に迫った時のみに発動が可能となる、“火事場のクソ力”。
使いどころを誤れば自分さえ滅ぼす諸刃の剣を、俺とヤツは同時に解き放った。
そこからの俺とヤツの思考と行動は、鏡合わせのように同じだった。残された左腕をバスターに変形させ、互いの眼前の標的に砲口を向け、照準を合わせ、ありったけのエネルギーをチャージする。
己の全てを賭けた渾身の一閃を、俺は―――否、
俺とヤツは、抜銃した。
今まで見たこともない巨大なエネルギーショットが、俺とヤツのバスターから繰り出され、空中で衝突し、エネルギー同士が力比べを始めた。スパークしたチカラが四方八方へと飛び散り、空間を裂き、俺の視界を占めて純白の無へと染め上げていく。
俺は最早、野獣めいた咆哮を上げながら、バスターからエネルギーを送り続けていた。心をなくした、“ただの機械”のように。
―――だが、これだけは、俺は成さなければいけない―――
俺は、目の前にいる『世界最強のロボット』に、教えなければならない―――
報われなかった者の想いを。
貶められたヤツの意地を。
壊された連中の無念を。
『敗北』を。『失敗』を。『挫折』を。
そしてそこから這い上がる者の、心の強さを。
そうだ。
『刻む』んだ。
俺が、この世界で初めて、『
そう―――
俺は―――
20XX年 Dr.ワイリーによる第十二次世界征服計画、ロックマンによって頓挫
ワイリーとの最終決戦の後、突如現れたワイリーのロボットと交戦
その勝者は―――――――――――――――
以下、年月を経ているため解読不能
Next...epilogue.