俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~   作:稚拙

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エピローグ
俺の名は。


 ―――――――――

 

 

 

 ―――………………

 

 

 

 

 あれは―――なんだ…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――“光”―――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……気がつくと、俺は大の字に寝転がされていた。

 視界を、雲一つない、吸い込まれるように透き通った青空のみが占めていた。

 

「………………………………」

 

 ふと、手が届くかもしれないと、右手を―――

 あぁ―――そういや、そうだった。

 右の手は『ヤツ』にくれてやったんだっけか。

 それなら、またジジィに催促しなきゃな。新しい腕取っ付けてくれって―――

 

「……!?」

 

 目を疑った。

 

 新品同様の、機械の右腕があった。

 まるで、『あの喧嘩』なんてハナッからなかったんじゃないかって思うくらいに―――

 

「……そうだ……!」

 

 そう思ってから(もた)げてくる疑問。

 

 ―――『あの喧嘩』はどうなった!?

 

「パンツマンは!?」

 

 がばりと上体を起こすと、黒いシルエットが目の前で腕組みをして立っていた。

 

「……目が覚めたかザコ野郎」

「………………バカ一……」

ばう!わおわおーーん!!

 

 と、死角からゴッスィーがそれはもう嬉しそうに飛び込んできた。

 

「こっ、こら!くすぐったいって!やめろって!あはは……」

「……てめーもゴスペルも……メモリー異常はねぇようだな」

「俺とゴッスィーが無事ってコトは……俺は……青パンマンに勝てたのか……?」

 

 そう疑問を口にすると、バカ一は意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「バーカ。てめーみてぇな『単なるザコ』がロックマンに勝てるわきゃねーだろ♪」

「じゃぁ、どうして……」

 

 負けてたのなら、俺もゴッスィーも、五体満足でいられるわけがないんだが……

 

「……お前さんのワシへの『嫌がらせ』が、結果的にお前さん自身を救う結果になろうとはな……フッ、何がどう転ぶか……全く以て不可思議千万じゃわい」

 

 そう言いながら歩いてきたジジィの顔を見上げながら、俺は立ち上がった。そこでようやく、俺が立っているのが広々とした草原だということに気がついた。

 

「ジジィ……そりゃどういう……」

「以前……お前さんが他のロボットたちと共謀して、ワシの部屋の前にしこたま置いていったモノがあったぢゃろ」

「あー………………ごめん。覚えてない」

「首じゃろ、首!!『ロックマンの首』じゃ!!それもにこやかに口を半開きにしたロックマンの生首を大量に置いていったろうが!!」

「あ~…………あ!」

 

 思い出した。

 『水晶編』を読み返してくれたら、ディスプレイの前の読者(アンタ)も思い出してくれると思う。ジジィが『ロックマンの首を取ってこい』って言うもんだから、同僚(なかま)たちと『実家』やそこらの基地にポツンと放置してあった『ロックマンの生首』をかき集め、ジジィの部屋の前にしこたま転がしといたのだった。あの時は首謀者の俺はもちろん、俺に与した連中もまとめて叱られたっけ。

 

「気味が悪いもんじゃからほとんどは処分したんじゃが……興味本位でちぃとばかし調べてみたんじゃよ。そうするとどうじゃ!あの『ロックマンの首』、実は電子頭脳搭載型ロボットに対応したリブートシステムじゃったんじゃ!!」

「……えぇと……つまり……どういうことだってばよ……?」

「ガクッ……まぁわかりやすく説明すれば、『ロボット専用瞬間蘇生装置』とでも云えるシロモノでな……ネジ一本でも残っていれば、そこからロボットを瞬時に再生できるんぢゃ!!……未だにどういう理屈なのかほとんどわからんのじゃがな。アレが残っていてよかったわい」

 

 まさか―――

 

 “生首(アレ)”って“1UP”だったのか。

 

 そんなモノ、ゲームの中にしか存在しないモノだと思っていたが、よもやこの世に実在してるとはな。まあ、そもそもこの世界、瞬時に体力が全快できるE缶(飲みモン)が存在してる時点で、どこか『ゲーム』めいてるとは感じていたんだが。

 

「何故そのようなモノが存在しておるのか、しかもソレが何故『ロックマンの首』の形をしておるのか……天才たるこのワシでも解析できんマユツバモノじゃが……」

「なぁ……『実家』は……?パンツ小僧とじーさんは……?」

 

 その問いに、ジジィは視線を促した。そちらに目をやると、あれだけの威容を誇った十二棟目の『実家』こと『歯車城』が、瓦礫と鉄屑の山になっている様が見下ろせた。ここは歯車城の裏手の高台だったらしい。

 

「ロックマンとライトのヤツは、そそくさと帰りおったわ。“あの8体”のボディを回収して、な。すぐに城の自爆が始まって、もはやここまでじゃと思ったが―――」

「……ゴスペルを追っかけて来てみたら、丁度修羅場ってたからな。ゴスペルのついでに、ジジィとてめーを拾ってやったってワケだ」

「ナイスなタイミングじゃったぞ♪イザという時には帰ってきてくれると信じとったからの♪」

「ケッ、調子に乗んな!オレはゴスペルの反応が途切れたから来てやっただけだ!さっきも言ったがジジィとザコ野郎はついでだ、つ・い・で!!」

 

 やれやれ、久々に再会してもこの調子か。相変わらずバカ一はツンデレのプロだ。

 

「それとザコ野郎!てめー何勝手にロックマンとバトってやがる!?ロックマンを倒すのはこのオレだ!」

「……お前ってホント野菜王子(ベ○ータ)思考だな……」

「はァ!?」

「兄貴~~~!!」

 

 その時、20体ほどの同型機(兄弟)たちが、野原の向こうから駆けてきた。

 

「兄貴!無事だったんですね!よかったぁ……」

「お前ら……『ジョーレンジャー』の……!それに他の連中も……お前らこそよく無事で!」

「ボディは壊されたが……電子頭脳は奇跡的に無傷で残ってくれた……」

「幸いにも、隊長と同じタイプのボディの予備もありましたからね」

「センパイが使っていたボディに、御利益があったみたいです♪」

 

 御利益、か。

 ヤツにさっぱり勝てなかった『負け癖』が染み込んじまってた俺のボディにゃ、そんなのは無いと思うんだがなぁ……

 

「それよりも兄貴!ロックマンと戦って、イイ線まで行ったそうじゃないですか!?」

 

 一人の同型機(兄弟)がグイグイ来る。モノアイをギラギラと輝かせて俺を見ている。

 

「イイ線って……オイオイ、俺ァ結局パンパンマンにゃ勝てなかったんだぜ?」

「今まで、ロックマンに触れること……攻撃を当てることさえ出来ずにやられたヤツは、数え切れないほどいます……中には直接ロックマンの姿を見れないまま、壁の向こうから攻撃されてやられたヤツも……」

「“ロックマンに一撃を加えた”……“ロックマンと戦って生き延びた”……それだけでも名誉なんですよ!?」

「まして、これまで17回もロックマンと戦って生き延びたなんて、ボクたちにとってはレジェンドですよ、レジェンド!」

「しかもタイマンで戦って、あと一発当てれば倒せるところまで追い詰めるなんて……」

「やっぱ兄貴はすげぇ!おれ達ジョーの誇りだ!」

「お前ら……」

 

 なんだよ……

 涙が出そうになるじゃねーか……

 モノアイからは涙は出んが。

 同型機(兄弟)たちの憧憬の視線で、俺はようやく悟った。

 

 俺は―――雑兵(ジョー)として“規格外”の喧嘩をしたのだ、と。

 

「よぅしザコ野郎!オレと戦え!ゴスペルはてめーに貸してやる!勝った方がロックマンと戦うってルールでなぁ!」

「あのなぁ……イイシーンなのに空気くらい読もうぜ……だからお前はバカ一なんだよ」

「そりゃどーゆーこった!?」

「それにな……ゴッスィーと合体出来たのはダブルギアがあったからでな……そのダブルギアも―――」

 

 俺の胸に強引に取り付けていたダブルギアは、既にボロボロになっていた。元々後付けだったからか、“1UP”も“俺のボディの一部”とは認識してくれなかったらしく、再生していなかった。

 

「―――ご覧の通りさ」

「チッ……ならジジィ!ダブルギアだったか?オレの分とザコ野郎の分!とっとと作って組み込みやがれ!」

 

 バカ一はジジィに詰め寄ったが、ジジィは意に介さずに笑った。

 

「……ありゃもう作らん。資材も金もかかりすぎるわい。あんなモノを作るんだったら、一からナンバーズロボットを作った方が安くて早いわ」

「ンだと!?」

「もう、“昔”にはこだわらん。今回の件で、昔のワシが如何に青二才じゃったか、よく思い知った。過去はもう振り返らん。ワシは未来に生きると決めたからの」

「……ジジィ……」

「お前さん……お前さんがワシのために戦ってくれたこと……ワシのロボットたちのために戦ってくれたこと……嬉しかったぞ」

 

 

 

 

 

 ありがとう

 

 

 

 

 

 ……え?

 

「ジジィ、今なんて―――」

「さぁてお前たち!今回は失敗じゃったが、まだまだワシは折れとらんぞ!これを見るがいい!十三番目の基地の設計図じゃぁっ!!」

 

 ジジィが取り出した紙に描かれた、十三棟目の『実家』の姿に、同型機(兄弟)たちが沸き立つ横で、バカ一は「ケッ……」と呆れていた。

 ……それにしても……

 ジジィが礼を言うなんてな……

 

 やべえ。

 

 明日、槍でも降ってくるんじゃねーか?

 

 ま、ジジィも懲りてないようで、これからまた平常運転、か。まぁ今回、ジジィも『ダブルギアシステム』という青春を燃やし尽くしたことだし、そろそろジジィを老人ホームにブチ込む算段も本格的に考えなきゃなるまいか。次の『実家』の近くにある老人ホームをリサーチしておかねば。

 バカ一とゴッスィーも帰省してくれたみたいだし、しばらくは賑やかになりそうだ。まぁまたいつ家出するかはわからんが。それまでは思う存分ゴッスィーを愛でつつ、ジジィの飯当番をしながら、気ままに老人ホーム探しをするとしよう。

 

 さて―――

 

 ここらで、一区切り、としようか。

 

 俺の奇妙な『二度目の生』は、これからも続いていくだろう。おそらく、ジジィが諦めない限りは。

 実のところ、語ってない話は山ほどあるんだ。ジジィが倒されたナンバーズロボットを復活させたり、じーさんやオッサンのロボットをコピーしてパンツマンに挑んだ話とか、『スペースルーラーズ』って発掘ロボを使って喧嘩しようとしたこととか、賞金が出るボードゲーム番組に出て一獲千金狙ったりとか、『サッカーで世界征服ぢゃーっ!!』とかトチ狂ったコトをジジィが言い出して、マジで世界中のサッカーの試合を荒らし回ったりとか、ジジィが南米の遺跡で掘り出した超古代のスーパーコンピューターが世界にエラい迷惑をかけた話とか、ロボットカーレースに出たりとか、未来から来たっていう、妙なロボット軍団が暴れ回った話とか―――

 

 まぁ、この内のいくつかは……いつか縁があったその時に、話すとしようか。

 

「…………おい、何してる!早く行くぞ!」

 

 バカ一が、俺を呼ぶ。

 

わんわん!わおーーーん!

 

 ゴッスィーがシッポを振って、俺を促す。

 

「隊長!」

「兄貴!」

「センパイっ♪」

 

 同型機(兄弟)たちが、俺の手を取る。

 

 ―――そして。

 

「……そーいや、まだ聞いとらんかったな。今晩のメシは何じゃ?……お前さん」

 

 とてつもなくヘンクツで、とてつもなく自信家で、世界とライバルに喧嘩を売ることが趣味の、地球人類で最もヘソの曲がった、それでいて芯が真っ直ぐなジジィが俺に訊く。

 俺は笑って、こう答える。

 

「……肉じゃがだ」

 

 ホント、こんな連中によくもまあ付き合ったと思うよ、俺。世界中の人間やロボットから後ろ指をさされ、ただひたすら、我が道を往く天下御免の悪の軍団って奴等にさ。

 

 でも、やめろと言われてやめたかどうか……ソレはたぶん、無いな。

 

 俺が同型機(兄弟)たちの隊長であり、センパイであり、バカ一の兄貴であり、ゴッスィーの飼い主で―――

 

 そして、俺とそいつらの生みの親である、この『メカフェチジジィ』の“共犯者”で、息子で、飯当番で―――

 

 かけがえのない、『家族』である以上は。

 

 

 ―――ん?俺か?

 

 

 俺はまぁ……これからも変わらず、マイペースでやってくよ。

 俺はまた、こいつらと歩き続けて、生き続けていく。この、ろくでもない、ゲームめいた未来の世界でさ。

 

 そう―――

 

 

 

 

 俺の名はジョー。

 

 

 

 世界一ヘンクツなジジィと、その『家族』の面倒を見たがっちまう―――

 

 

 

 ただの、お節介焼きさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 THANK YOU FOR PLAYING!

 

 ORIGINAL BY CAPCOM

 FROM "ROCKMAN" SERIES

 

 PRESENTED BY "CHISETSU"




 ようやく書き終わりましたぁ……
 習作のつもりで書き始めたら、いつの間にやら8ヶ月、ジョーさんに付き合っちゃってました。

 ともあれ、稚拙の『ヲタク道』の原点である『ロックマン』を題材に、それもザコキャラのジョーを題材にここまで書けるとは……しかも何回かランキングに載ってしまって、申し訳ないやら何やら……

 そして、またロックマンシリーズの最新作が発売されたその日には―――
 また、新たな姿となったジョーさんが帰ってくるかもしれません。

 もし、この小説をお読みいただいて、ロックマンシリーズに興味を持ったそこのアナタ!
 ぜひともゲーム本編をプレイしていただいて、ゲームの中のジョーさんやジジィに会いに行ってみてくださいね♪

 ジョー「読者(アンタ)とゲームの中で会えるのを、楽しみにしてるぜ!」

 それでは、またどこかで!
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