俺の名はジョー ~メカフェチジジィと世界を喰らう~   作:稚拙

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新たなる野望!!の巻
再起編


 俺の名はジョー。

 

 ジジィが死んだから今回が最終回―――

 

 にするわきゃいかねーー!!

 

 UFOの中で、俺はジジィの蘇生を試みた。幸いというかご都合的というか、前世で死ぬ前に自動車学校で習った心肺蘇生法がどうにか効いたらしく、ジジィは割と呆気なく息を吹き返した。前回深刻な感じで終わったが別にそこまで深刻でもなかったぜ。

 

 UFOがたどり着いた4棟目の『実家』は、極北の地・ロシアの某山中に建てられていた。出入口から湯気出てるよ……ロボでよかった。人間なら凍死してる。

 俺はUFOの中にあった防寒着をジジィにかぶせて、医務室にブチ込んだ。『実家』に人間はジジィひとりだけだから、医療設備は完全オートメーション化されている。後はジジィ謹製の医療メカがどうにかしてくれるだろう。

 

 ―――――――――

 

 3日後、医務室に行ってみた俺が目にしたのは、真っ白に燃え尽き、憔悴しきったジジィの姿だった。

 

「もう、やめじゃ……―――」

「……………………は?」

「ワシャもう、諦めることにする……悪の天才科学者・“Dr.ワイリーの最期”じゃよ……3度も……3度もやって失敗したんじゃ……ワシャ運がなかったんじゃ…………じゃから、もうやめじゃ……ワシャここで隠居する……」

 

 『不屈』という熟語を体現した―――俺がそう思っていたジジィが、こう口にした―――

 瞬間、カッとなった俺はジジィに詰め寄り、襟首をつかんで壁にたたきつけた。

 ロボット三原則?だから知らんと言っとるだろうが。

 

「アンタそれ……本気で言ってんのか!?」

「ああ本気じゃよ!ワシャやめた!世界征服はもうせん!諦める!結局ワシャロックマンに……ライトには一生勝てんのじゃ……!お前さんが常々言うとおり、老人ホームに入って余生を過ごすのが似合いじゃて……」

 

 

 ―――プツン。

 

 

「……ッざけんじゃねーぞ!!俺ゃな、今のアンタみてぇなヨボくれた哀れなジジィを老人ホームにブチ込みたきゃねーんだよ!!最高にイキッて調子こいてて、エンジン全開のジジィを老人ホームにブチ込みたかったんだよ!!それにな、『諦める』なんてこと、俺以外の同類(ロボット)たちには死んでも言うな!!いいか、俺達はアンタに造られた、いわばアンタの子供みてぇなモンだ!アンタの夢、アンタの欲、アンタの願望……世界に、ライトに、ロックマンに喧嘩売って、でもって勝つ!世界を喰らうアンタの野望!そのためだけに生み出された悪の申し子共だ!!でもってアンタが世界を獲るためなら、喜んで命を差し出す大バカ連中だ!!……そんな奴らがよ、アンタ無しで生きていけると思うのか……?アンタが生き甲斐無くすとな、俺ら全員存在価値が無くなるんだよ……!!」

 

 俺は静かにジジィの襟首から手を放した。

 

「造ったからには……最後まで責任持ちやがれ」

 

 言いたいことは全部言ってやった。

 勝手に“降りる”なんざ、もう許されない。

 俺はともかく、ジジィに造られた連中は皆、『ジジィが世界を獲る』、その大願成就だけが生き甲斐で、そのため()()に生きている。そんなヤツらを差し置いて、手前勝手にやめるなんざ筋が通ってねぇ。

 『地獄まで付き合う』と、常々言ってるヤツらの手前―――な。

 

「……………………ほざきおったなァ量産型ァァッ!!!!」

 

 ジジィは叫び、俺を真正面からブン殴ってきた。老爺の拳とは思えぬほどの衝撃がボディ全体に伝わったと思うと、俺は部屋の壁まで吹っ飛ばされていた。

 

「とっくの昔に覚悟なんざできとるわバカタレがッ!!ワシはな!!この計画のために過去のすべてを棄てたんじゃ!!ローバート工科大学次席!LITマニュアルデザインコンテスト4年連続準優勝!世界技術大賞銀賞!ノーブル物理学賞ノミネート!!全部全部全部!!惜しくはなかった!全部ワシにとっては屈辱以外の何物でもない、この世の俗物(アホ)共が勝手に作った価値基準!!ただライトを褒めてワシを蔑ろにするためだけの称号じゃったからな!!じゃからワシは決めた!!既存の固定観念から脱却した、人類史上誰も成し得なかった偉業を―――『世界征服』を成すと、な!!!」

「だったらなんでやめるなんて言いやがった!?たった三度喧嘩に負けたぐらいで!!」

「負けたじゃと!?寝言は寝て言わんか!!ワシャまだ負けとらん!!ライトが繰り出しおったロックマンがち~とばかしちょっかいかけただけじゃ!!」

「だったらあのジャンピング土下座はなんなんだよ!!」

「社交辞令じゃやかましい!!頭下げときゃその場は凌げるんじゃ!!」

「その場凌ぎで次はどーすんだよ!?えぇ!?」

「決まっとるじゃろうがアホタレが!!!」

 

 ジジィはツバを飛ばしまくりながら叫んだ。

 

「世界征服、続行じゃぁぁぁぁぁぁ!!!!こうなったらもう意地でも諦めてやらんわ!!憎ッくきロックマンをスクラップにしてライトに吠え面かかせてくれるわァ!!刑務所にも老人ホームにも叩き込まれてたまるか!!ワシャな!塀の中でも終の棲家でも死なんぞ!!ワシはワシの支配する世界の中心で!ワシの造った子供(ロボット)たちに囲まれて!ワシという存在が人類史に刻まれたことを噛み締めながら!笑って大往生するんじゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 ジジィは俺に右手を差し伸べた。

 

「ワシの覇道……特等席で見る権利をくれてやる。ワシに造られたからには“前世”も“中身”も関係ない……お前さんに選択権は無いぞ。黙ってワシの手足になれ、量産型」

 

 正直、最後のジジィには素でビビった。

 少しだけ、同類(ロボット)たちが心底このジジィに入れ込む理由が、理解できた気がした。

 このジジィには、同類(ロボット)たちを惹きつける、ある種のカリスマがあるんだろうか―――

 ともあれ―――

 やる気出したみてぇじゃねぇか、ジジィ。

 こんな顔で表情は出せんが、俺はフッと笑ってジジィの手を取った。

 

「了解しました、“ワイリー博士”」

「フン……お前さんに改まってそう呼ばれると気色悪いわ。今まで通りで構わん」

「そうか、ジジィ」

「……それはそれで癪じゃな」

 

 ともあれ―――

 俺達は改めて、“新たなる野望”に邁進する『共犯者』となったのだった。

 

 

 

「それにしても、ロボット三原則にこうも簡単に逆らえるとは……やはりお前さんの電子頭脳をパカッと開いて―――」

「あーもしもし?特別養護老人ホーム加富根苑さんですか?」

 

 

 

 

 20XX年 ミハイル・セルゲイビッチ・コサック(Dr.コサック)による世界征服計画発動―――を隠れ蓑にした、Dr.ワイリーの第四次世界征服計画発動

 世界の8つの大都市がコサック傘下のロボット軍団により占拠

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