書きたいシーン・設定集   作:ぬがー

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ヒロアカ「爆豪メンタル轟・轟メンタル爆豪」

 ある日の轟家にて、親子が机を挟んで向き合っていた。

 

「進学先はもう決めたのか?」

 

 片方は父、轟炎司。

 ランキングNo.2のフレイムヒーロー・エンデヴァーも今はコスチュームを脱いで普段着で好物の葛餅をつつきながら、息子に進路を尋ねる。

 

「色々見てみたがやっぱ雄英にした。士傑も調べてみりゃ悪くはなかったが、設備が揃って自由が利くってのがデケェ」

 

 答えたのは三男の轟焦凍、中学三年生。

 体格は父に似ず線が細く見えるが、しっかりと鍛えられた筋肉がついている。そして眼光の鋭さは父譲りだ。

 

「そうか。まぁ妥当な判断だな。あそこ以上に金の掛かった学校はない。いい設備と選りすぐりの人材が揃っている。

 お前が受験して受からん高校はないし、トップヒーローを目指すなら雄英が一番だ」

 

「親父の方はどうなンだよ? 今年のビルボードチャートはいけんのか?」

 

「……まだ厳しい。軽傷とはいえ、今期は医者の世話になってしまった。委員会からオールマイト以上の評価を受けることはできないだろうな」

 

 焦凍からの質問に、苦々しげに炎司が答える。

 ヒーローは過去一年の事件解決数、社会貢献度、国民からの支持率などで順位がつけられる。炎司はソレで20年以上2位。3位以下とは比べ物にならない実績を持つが、1位との壁を超えることはできないままでいた。

 その理由は単純、戦闘力の差だ。

 国民からの支持率ではNo.1のオールマイトが圧倒するが、支持率より重視される事件解決数では歴代一位のエンデヴァーが勝る。しかし「決して倒れることのない暴力装置」として存在することの社会貢献度で大差がつくのだ。

 これを覆すにはオールマイト以上に強くなり、オールマイト以上に「倒れることはない」と思わせる必要がある。唐突にオールマイトが大怪我の後遺症に苦しんでるとか公表でもされない限り、何年も傷一つ負わずに大きな成果を出し続けなくてはならないのだ。

 

「さっさと一位とれよ。俺ァ高校卒業するまでしか待ってやんねーぞ」

 

「はっ、今から俺を超える算段か。確かにお前は俺の上位互換だが、経験が足らん。俺に一位を譲られる(・・・・)のを待っていろ」

 

 親子揃ってヴィラン染みた凶悪な笑みを浮かべる。

 炎司は正直なところ、焦凍に“個性”が発現したときに自分の夢―――オールマイトを超え、誰よりも強くなる―――を諦めかけてた。

 “個性婚”は前時代的と言われるだけあって成功率は高くなく、精々保険か失敗前提で逃げ道はないと意思を固めるためだった。その“個性婚”で理想の性能を持った息子が生まれたのだ。激しい嫉妬に襲われるとともに、子に託すのが一番達成できる可能性が高いと理解できてしまった。

 そして教育してみて、改めてその考えは間違っていなかったと思い知らされる。

 弱点を補完しあう二つの“個性”に、長男とは違う温度変化に強い体、何より自分に並ぶ向上心の強さ。どんなに訓練を厳しくしても笑って挑み、意地でも乗り越えてみせた。妻の冷も止めに入る必要を感じなかったほどだ。

 そんな日々に心が折れかけ、野望を託そうとした時に焦凍はこう言った。

 

『ふざけんな! オレはとーさんの人形じゃねェ! そのユメは自分でかなえろよ! オレのとーさんなんだしできるだろッ!?』

 

 衝撃だった。

 炎司に自分の夢を肯定してもらえた記憶はない。オールマイトは絶対の存在過ぎ、誰の目にも不可能な望みにしか見えないからだ。支えてくれる相手はおらず、後に続く者もなく独り進み続けるしかなかった。

 だがそんな日々は終わった。共に一番を目指す相手を、一番になることを不可能と思わない同志を得て、炎司の心に余裕が生まれる。

 自ら夢に向かって更なる邁進を続け、自分が夢を叶えた後に自分を超えていく後継者を育てる。焦凍に「家ン中ギスギスさせんなウゼェ!」と怒鳴られ、他の家族との時間も取るようになった。充実した生活は、加齢で成長が止まろうとしていた炎司をさらに成長させた。

 妄執ではない、一人だけの夢でもない、父として誇れる一番になろうと努力を続ける男がそこにはいた。

 

「譲られるのは気に入らねェな……! 道場いくぞ! 今日は予定空けてンだろ!?」

 

「勿論だ。だが食ってからにしろ」

 

「……甘ェのあんまり好きじゃねェンだよ」

 

 口は悪いが良家の子息、きれいに食べてから訓練を開始した。

 ふらふらになるまで体をいじめた後は、久々に一家揃ってご飯を食べた。轟家の一日はこうして過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって折寺中学校。

 今日は平日で登校日、中学三年生になったばかりのクラスでは進路についての授業が行われていた。

 

「えー、お前らも三年生ということで!!

 本格的に将来を考えていく時期だ!!

 今から進路希望のプリントを配るが皆!!

 

 だいたいヒーロー科志望だよね」

 

「「「「ハーイ!!!!」」」」

 

「うんうん、皆良い“個性”だ。でも校内で“個性”発動は原則禁止な!」

 

 教師が笑いながら生徒を注意し、生徒も笑って“個性”を納める。

 何も壊さない、傷つけないならこの程度のルール違反はどこでも笑って済まされる程度だ。

 

「そういやさ、カツキは志望校どこにした? お前ならどこでもいけそうだけど」

 

 騒がなかった二人のうち、真顔で姿勢を崩さなかった方―――爆豪勝己―――に指が伸びる“個性”の少年が声をかける。

 

「ん? 俺は雄英だ」

 

「雄英って、国立のか!? 今年偏差値79だぞ!? 成績いいのは知ってるけど、そんなに頭良かったの!?」

 

「模試じゃA判定だった。普通にやってりゃまず落ちることはねぇな」

 

 特に隠す気のない爆豪の返答にクラス中がざわめく。

 爆豪が学校一の成績で、何でも一流レベルで熟す天才なのは知っていた。だがそれはありふれた公立校の中だからで、国内最難関の雄英に通用するほどとは想像が追い付かなかったためだ。

 そんな反応をされる爆豪はというと、特に気にしていなかった。本人的には自分の学力や技能相応の学校に進学することを決めただけなのだから。

 ざわつきが治まらない中、教師が雑談のように騒がなかったもう一人の進路希望もばらす。

 

「そいやあ緑谷も雄英志望だったな」

 

 うつむいて顔を隠していた少年―――緑谷出久―――に周囲の視線が集中する。

 一拍おいて、全員がこらえられず吹き出し笑い始めた。

 

「ははははは!」

「はあっ!? 緑谷あ!? ムリっしょ!?」

「勉強できるだけじゃヒーロー科には入れねんだぞー!」

 

 周囲の声にさらに緑谷が縮こまる中、爆豪が待ったをかけた。

 

「ちょっと待て。言い過ぎだぞお前ら」

 

「かっちゃん……!」

 

「出久がヒーロー科受けるわけないだろ。準備だって何もしてないのに。雄英って言っても経営科の方のはずだ」

 

 助け舟が来たと顔を上げた緑谷が蹴り落されてさらに沈んだ。

 とは言えその発言に反論はできない。

 ヒーローは救助や興行も行うが、最も重要なのは“個性”を使って暴れる(ヴィラン)との戦闘だ。戦闘力皆無の緑谷がヒーローを目指しているわけがないと言われても仕方がない。

 それに勉学とヒーロー研究は努力していると言えるが、それが活かされるのはヒーローのマネージメントを学ぶ経営科に進学した場合だ。志望しているのはそちらと思われるのも順当だろう。

 

「いやヒーロー科で合ってるぞ」

 

「え……本当ですか?

 てことは記念受験かウケ狙いか。さっき大ウケしてたし、空気読めてねぇ俺が水差しちまったみたいだな。悪い出久、皆」

 

 先生の指摘に爆豪が本気で落ち込んだ顔をして緑谷に謝罪する。

 だが緑谷としてはそんなことで謝られても全く慰めにはならない。周囲のクラスメイト同様、緑谷が爆豪と同じ土俵に立てるわけがないという認識の上での謝罪だからだ。

 

「ち、違うよ。記念受験じゃ、ない。

 小さい頃からの目標なんだ……それにその……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってみないとわからないし……」

 

「……? いや、お前が受かるわけないだろ? 何言ってるんだ?」

 

 キョトンとした顔で爆豪が返す。

 うつむいたまま話していた緑谷も顔を歪めて前を向くが、不思議そうな表情のまま追撃が行われた。

 

「体鍛えてないし、何か技術を身に着けてるわけでもない。何より“個性”の特訓どころか再申請もしてないだろ?

 そんなんで何ができるんだ? 受かるわけないだろ?」

 

 当たり前のことを改めて確認しているだけの口調。それが緑谷の心をさらに抉る。

 そしてそれはこの程度では終わらない。

 

「あれ、緑谷って“無個性”じゃなかったっけ?」

 

「小さい頃はな。でも出久の涙腺は明らかに“個性”レベルで水が出てる。

 調べてみたけど自分の“個性”が思ってたのと違ったとか、成長して“個性”だってわかるくらいまで成長するって事例もあるらしい。

 ヒーロー目指す場合以外だと困らないから誰も再申請してないだけで、きっちりすれば“個性”持ちじゃないやつはいないって説もあるみたいだ」

 

「そうなんか。

 水出せるとか勢いと量鍛えれば十分ヒーローやれるじゃん。俺のなんかよりよっぽどいいやつだ。なんで再申請してねぇの?」

 

 爆豪と仲良さそうに話している指を伸ばす“個性”の少年は幼稚園からの幼馴染だ。

 つまり爆豪と幼馴染の緑谷にとっても幼馴染。そんな彼が本心から不思議そうに尋ねてくる。

 

「それは、その……!」

 

 緑谷は答えられない。

 ヒーローになることは小さい頃からの夢だ。だが、ただのモブヒーローになりたいのではない。

 オールマイトのような恐れ知らずの笑顔で救けてくれる、最高にかっこいいヒーローになりたいのだ。

 

 

 戦闘手段が泣くことなんて、かっこよくないヒーローになりたいわけじゃない。

 体を鍛えて、凡百なヒーローになりたいわけでもない。

 戦闘技術を身に着けて、地味なヒーローになりたいわけでもない。

 

 

 なにより、誰かを救けられる存在になりたいわけじゃない。

 

 

 救けることはあくまで手段で、かっこいいヒーロー(じぶん)になるのが夢なのだ。

 

 

 だから夢に繋がらない無駄な努力はしようとしない。

 だから夢に向かっていると思える雄英進学は本気で願った。

 

 だがこんなこと、仲がいいとは言えないとは言え幼馴染に言えるわけがない。

 「お前たちが夢見てるようなモブになりたいんじゃない」なんて顰蹙を買うのはわかっているからだ。

 余談だが、もし緑谷の周囲にクラスメイトをモブと呼んで憚らない、そしてそれが許されるだけの才能と実力を持った相手がいたとする。その相手に出久は本心からの敬意と憧れを抱き、目標として見ただろう。自分のやりたいができないことを堂々とやっている存在であるがために。

 

「お前ら緑谷に興味あるのはわかったが、もうその辺にしとけ。

 話さないといけないことまだあるから。休み時間に食い込んじまうぞ」

 

 一向に応えようとしない緑谷にクラスメイトの雰囲気が怪しくなってきたので、先生が声をかけ空気を換える。

 クラスメイト達も自由時間を削りたくないので素直に従い、そのまま緑谷の行動への興味は失われていった。

 折寺中学校の日常はこうして過ぎていく。

 




かっちゃんメンタルショート

 炎司と相性がよく、轟家は今日も幸せ。
 片側の“個性”しか使わないなんて言わないので、「左右どちらかからしか攻撃できないことを想定した歪な動き」を身に着けようとしない。結果、原作とは比べ物にならないレベルで強化される。
 赫灼熱拳もソレの氷版(地を這う氷ではなく、極低温の収束された吹雪。つまりれいとうビーム)も習得済み。
 だけど体格差と経験の差で父にはまだ勝ててない。父も原作より強化され、焦凍の炎も氷も短時間なら炎司の炎でまとめて相殺できるため。
 傲岸不遜で口が悪いが、父同様責任は背負うタイプなのと血筋と実力ゆえに受け入れられてる。現場でリーダーシップを発揮し、強引に主導権を握れる長所と表裏一体。


轟炎司

 理想の後継者が生まれて心が折れかけるも、激励を受け再起。
 原作より強く、家庭も穏やか。雰囲気も若干柔らかくなり、支持率も上がっている。
 焦凍の後も三人子供を作った。


ショートメンタルかっちゃん

 天然でマイペース。向上心や反骨心がずば抜けているわけじゃないので原作より戦闘力は大きく落ちている。
 代わりに協調性が大きく向上し、多くの技術を身に着けあらゆる現場で活躍できる人材に。
 なんでもあっという間に一流レベルではできるようになるという才能は、戦闘特化より幅広い技術が必要になる救助などに向いていたらしい。


緑谷出久

 “個性”涙腺。大量の涙がすごい勢いで出てくる。母親譲り。
 幼馴染が怒鳴って話を終わらせてくれなかったので心が折れる。
 進路希望の授業の後一週間引きこもり、感情に整理をつけて雄英高校経営科に進学。
 同じ趣味の仲間を見つけ、楽しくやっているようだ。
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