書きたいシーン・設定集   作:ぬがー

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魔人は姿を隠して転移者たちが入った後から迷宮に入りました。追い越して準備を整え待ち構えただけです。
勇者放置で先行するパーティーがいるとは想定していません。ハジメたちは仲違いが知られるのはまずいと隠していたし、普通に考えて最大戦力の“勇者”より難度の高い層に進めるヤツがいるとは思わないから。



ありふれ「ステータスがクラスメイト並のハジメ②」

 今日の勇者パーティーは快進撃を続けつつも、いつものように荒れていた。

 トータスの世界で生まれた者には不可能な89層の攻略を成していながら、前人未到のエリアを攻略しているわけではない。自分たちと歩調を合わせない連中が既に攻略した後を追っているだけだ。意地を張り「訓練にならないから」と地図の提供を断ったものの、先行する者たちのように進めないことに苛立ってばかりだった。

 こちらのパーティーには最大戦力の“勇者”光輝がいて、メンバーの質も量も永山パーティーに勝っているのに置いて行かれているのだ。違いがあるとすれば物資の現地製作者、つまり勇者パーティーのアイドルが好意を寄せる“錬成師”南雲ハジメの存在だろう。迷宮の外で話を聞く限り、そして自分たちにも渡された武具の性能を考えても、この推測は間違っていない。それがさらに光輝と不良組のまとめ役である檜山を苛んだ。

 苛立ちと焦りが視野を狭め、魔物が一体もいないと言う平常心なら気付ける異常に気づけない。ストッパーの雫が静止する声も届かず、90層のマッピングを進めた。

 その結果がコレだ。

 

「ぐ、がぁっ……!」

 

「強いことは強いけど、思った以上に脆かった。前のめり過ぎて転ばしやすい。こんなのが“異教の使徒”か。焦らなくて良かったかもね」

 

 待ち構えていた魔人族の女の寝返りの誘いを断り、交戦。

 永山パーティーが抜けている分、本来の世界線より人数こそ少ないものの、ハジメ製の装備もあって戦力は充実していた。

 しかし“土術士”がいない。

 ゆえに煙を浴びた対象を石化させる土属性上級攻撃魔法“落牢”を看破できず、まともに受けた。固有能力を持つ魔物との戦闘経験は積んでも、対人戦闘の経験を積まなかった。自分は使わないが魔人族が使ってくる技術を学んでいなかったツケを支払う時が来てしまったのだ。

 かろうじて動けるのは全属性耐性を有する光輝、まずいと判断してから煙より速く動いて距離を取れた雫、雫が掴んで共に逃げた香織の三人だ。他のメンバーは全員石化し、魔物に囲まれていた。

 

「もう勝負はついたと思うけど、どうする? まだ降伏は受け付けるよ。石になった奴らだって、砕けば死ぬけど治癒すりゃ治る」

 

「…………ッ!」

 

 ギリギリと光輝が歯を食いしばる。

 “落牢”による石化はまだ続いており、気を抜けば石化が進行する。返事ができる状態ではなかった。

 

「はっはっはっ、悪いね。それじゃ答えられないか! これは善意で言ってあげるけど、その状態を維持した方がいいよ。力ずくで石化を弾いたら、余波で石像は壊れちゃうからね。

 勇者はああだし、まずはあんたたちだ。どうする?」

 

「わ、私たちは………」

 

 ニヤニヤと笑いながら魔人族の女が雫たちに問いかける。

 雫たちはもう詰みだ。人質は多く、戦力でも魔人族の女が勝っている。もう後は心を折り、降伏を認めさせるだけだ。魔法の道具で縛るにしろ、自発的に受け入れるように誘導し妥協を覚えさせておいた方が使いやすいから止めを刺さずに話しているだけ。

 雫にはそれがわかっていて、でもどうしようもない。せめて香織だけでもと思うが、それすら力が足りなかった。

 

 もう雫たちにできることはない。だから、状況を打開したのは第三者の介入だった。

 

「ッ!? 何だ!?」

 

 一切の前触れもなく光が弾け魔人族の女の視界が潰れる。

 光を浴びた者の石化を異様な速度で解除し、次いで地面が波打ってクラスメイト達を弾き飛ばし魔人族の女と配下から無理やり距離を取らせた。

 クラスメイトの近くにいた魔物は別方向にまとめて打ち上げられ、特大の雷撃で消し飛ばされた。

 

「え、何が起きてるの……?」

 

 雷撃が飛んできた方を向くと、壊れた短剣を放り捨てる南雲ハジメが一人歩いて来ていた。

 

「もう大丈夫。あとは任せて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 

「やべぇよやべぇよ……! 本当に魔人族が来てる! 天之河が交渉蹴って戦い始めちゃったし時間がねぇ!」

 

「待って、落ち着いて。交渉したなら目的があるはずだ。内容は? あと敵戦力は?」

 

「ええっと、内容は―――」

 

「ふんふん、引き抜きか。じゃあ殺しちゃ意地になってやりづらくなる。多少時間はありそうだね。見えない敵? 範囲攻撃がいるね。用意はある。討ち漏らしに備えて皆の武具の奇襲対策も増やしておこう―――できた。 土属性? 確か石化する魔法もあったはず。対策作ろう―――できた。 後は乱戦だとジャマだから敵味方の分断―――できた。野村君、コレ土属性の補助具だから地面波立たせて分断して。で作戦だけど―――」

 

 先行して様子見をして来た遠藤の報告を受けて、ハジメが次々と作戦を立て対策となる魔法具を錬成していく。

 パーティーのリーダーは永山だが、指揮官はハジメだ。その理由がコレである。

 機転の良さに加え、技能“錬成”によりハジメなら即興で対策アイテムを作成し対処できる。他のメンバーには不可能に思える状況も、ドラえもん染みた便利さで潜り抜けるチートキャラなのだ。

 元々“錬成”という技能の発展性は戦闘系技能の比ではない。当人の技術に加え、使う材料とその組み合わせ、発想などでいくらでも拡張できるのだ。ハジメならトータスの一般人並のステータスと“錬成”さえあればクラスメイトとも互角、戦略的価値であれば圧倒しただろう。それなのにステータスまでクラスメイトと互角になっているせいでバランスブレイカーになりかけていた。

 

「こんなものかな。じゃあ行こう。タイミングを外したら何人か死んじゃいそうだし慎重にね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今、作戦通りに事は進み、ハジメ一人で魔人族の女と対峙していた。永山たちは別方向から隠れて近づき、雫たちへの説明と避難誘導を行っている。

 

「一人だけとは随分嘗めた真似してくれるじゃないか」

 

「―――“錬成”」

 

 ハジメは魔人族の女の言葉を無視して攻撃を開始する。どうせ勧誘には応じないし、敵も降伏には応じない。なら話すだけ相手の準備が整い不利になるだけだ。

 手に持つ短剣を“錬成”し、短剣が有する魔力を一気に放出。予備動作のほぼない大火力が透明になり隠れたままの魔物の群れを薙ぎ払った。

 

「…………は?」

 

 魔人族の女はその光景を理解できず、呆けたような声を上げた。

 そうしている間にも、次の短剣が錬成され同じように魔物が薙ぎ払われていく。

 

 トータスにおいて魔法の武具は長持ちするものだ。魔法の効果で剣は刃こぼれも曲がりもせず、鎧は凹まないし早々傷つかない。ドラゴンクエスト染みた性能だ。戦場で武具が破損し敗れると言った事態を防ぐための技術が開発されてきた成果であり、トータスの常識でもある。

 だがハジメの武具は違う。武具の修理を行う“錬成師”が戦場に来ていること前提の性能で、込められた魔力を消費して大技を放てるようになっている。ファイアーエムブレムの武器が近いだろう。それをハジメが使用する場合、直前に“錬成”を行うことで魔力を一度に全放出する特大火力に改造できるのだ。

 オルクス大迷宮の道中でも「ハジメが全放出直前の武器を用意し、遠藤が運んでボスに突き立て炸裂させる」というコンボを防げる魔物はいなかったほどだ。武器を使い捨てにすることなるが、威力も連射性もトータスの常識では測れない。

 

 なお先ほどの石化解除も同様のコンボで行われ、常識外れな性能の援護も可能だったりする。大抵火力で片付くので使われることはあまりないのだが。

 

「アハトド! 殺れ!」

 

 下半身はゴリラ、上半身は筋骨隆々な四本腕、頭部は牙の生えた馬という魔物が透明化を解いて殴りかかる。

 だがそれをハジメはあっさり回避し、取り出した短剣を炸裂させ撃破する。魔人族の女の切り札だったのだが、数がいれば多少面倒という程度だ。

 

 ハジメは雫や光輝のような正当な技術を学んだわけではないが、生存能力は異常に高いのだ。

 オルクス大迷宮表層は縦に長い迷宮だ。落ちれば普通に階下で体を打って死ぬ。それに真のオルクス大迷宮に6つの証を持たずに入れないよう対策も取られているから、転げ落ちて入ってしまうことなどまずない。

 加えてチートスペックな転移者でも真のオルクス大迷宮にレベル一桁で放り込まれれば死ぬ。大迷宮6つ踏破が前提の、強モンスターで満ちた単純な強さが求められる迷宮なのだ。最弱の魔物相手でも反応できず一発で殺される。特に爪熊に餌と認識された状態から逃げ切るなど不可能だ。

 だが、ハジメはそこで死を逃れるセンスと生き延びれる場所まで辿り着ける異常な悪運を持つ。勘に身を任せて回避行動を取ればアハトドごとき脅威にもなりはしない。

 

 最大戦力があっさり始末された魔人族の女に勝機はない。透明化と言っても完全ではなく揺らぎが見えて大体の位置は注意すればわかるし、透明化中は機敏に動けずほぼ棒立ち。回復も吸収も間に合わない速攻大火力で魔人族の女の手駒は全て駆除された。

 

「勝負はついたと思うけど、捕虜になる気ありますか? 色々しゃべってもらいたいんですけど」

 

「はッ! あたしが話すと思うのかい? 人間族の有利になるかもしれないのに?」

 

「ですよね。応じられても困ってました」

 

 利害での戦争ならともかく、種の存亡をかけた宗教による全面戦争だ。それなのに倒されてあっさり捕まるなど、何か仕込みでもしてあるに決まっている。

 

「ここで討ちます。言い残すことはありますか?」

 

 1人から得られた情報では信用できない。罠かもしれないし、拷問から逃れたくて知らないことも適当に言っているだけかもしれないからだ。

 だから魔人族の女が捕まれば、扱いはおそらく民衆のストレス発散兼宣伝用となるだろう。ハジメでは想像もできない過酷な未来が待っているのは間違いない。ここで討つのがせめてもの慈悲だ。

 

「あたしの恋人があんたを殺すよ。覚えてな」

 

「わかりました」

 

 苦痛のないよう一撃で殺し、体に罠が仕掛けられている場合に備えて死体を焼き尽くす。

 そこまでやって、ようやく気を緩められた。

 

「…………あーもう! きついなぁコレ……。やっぱり人と魔物殺すのは別だよ……。いつかやることだったとはいえさぁ……」

 

 魔法の道具を使って永山たちに戦闘終了を伝える。ハジメの全力戦闘は周辺被害が大きく、連携の訓練をしていない味方は避難しないと危険なのだ。

 

 少しして香織を抱えた雫が見えた。他の連中は振り切ってしまったらしい。相変わらず仲のいいことだ。

 

「……まぁ八重樫さんも無事だったし、頑張った甲斐はあったかな」

 




雫のピンチにはきっちり駆け付ける男、南雲ハジメ。

戦闘センスに関しては「カンピオーネ!」の魔王たちイメージ。絶対死ぬ場面でも何故か死なず、勝利に必要なピースを気付けば揃えていて、遥か格上相手に実力差を無視して勝利する理不尽です。大体合ってるはず。

銃器の類は戦争が変わるので現時点では作る気はないです。
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