東方審判眼 - 神室町の探偵が幻想入り   作:ガリュウ432

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各話はそれぞれ、1〜3くらいに分けられて進みます。
まず、八神さんは妖怪の山の哨戒隊長である、犬走椛に出会います。
バトル等はまた先になりますね。


Chapter.1―1 忘却されたものが訪れる世界

周りに倒れている謎の武装集団を、隊長さんと木陰に運び終えたところで、本題に戻る。

 

「さて、自己紹介がまだでしたので、先に済ませましょうか。私は妖怪の山の哨戒隊長、犬走椛(いぬばしりもみじ)です!」

 

哨戒・・・ということは、この当たりの警備ということか。つまり彼らは警備集団で、彼女はその隊長と。

まあ、こんなわかり易い不審人物は今までにいないだろうな・・・。

 

「八神隆之です。・・・まあ、その、君の言う外来人?になるんすかね。」

 

―外来人。

俺にとっては聞き慣れない単語だ。仲間意識が強い地区に入り込んでしまったということか?

 

「なにがなんだかわからないって顔してますね・・・。まあ、無理ないと思います。ここは()()()()()()()()()()()()()()()からね。」

 

―――な、

元いた世界じゃない・・・!?

 

「ちょ、ちょっと待て。ち、違う世界って異世界みたいなもんすか・・・?」

 

「まあ、そう捉えてもいいでしょうね。ここは幻想郷です。あなた達の世界で忘れ去られたものが訪れる場所、といわれています。」

 

「忘れ去られたもの・・・。」

 

俺忘れ去られたってこと・・・?海藤さんと蘭子さんとあんだけベラベラ喋ってたのに・・・?

 

「ああ、八神さんみたいな人は例外ですよ。稀に八神さんみたいに迷い込んじゃったり、スキマ妖怪という妖怪の仕業でこちらに連れてこられたりするんです。」

 

「ってことはここに来る前に何かに飲み込まれたから・・・。それがスキマ妖怪の仕業ってことか。」

 

「まあそんなところですね。・・・八神さん飲み込み早いですね。」

 

「だって周りどう見ても元いた世界じゃないですし。さっきまでしっぽと犬耳生やした奴らと戦った上で妖怪否定することも出来ないですよ。」

 

「い、犬耳・・・。一応白狼天狗なんで狼なんですけど・・・。」

 

「逆に俺は今白狼天狗とかいう種類の天狗がいることにびっくりしたんですけど・・・。」

 

こんな変なやり取りしてる場合じゃない。

まずは海藤さんを見つけないと。依頼主である蘭子さんを見つけるのも重要だが・・・。ひとまずはこのことを犬走さんに話しておこう。

 

「海藤さん・・・。厳つい顔でごつい人・・・。ちょっと待ってくださいね・・・。」

 

そういうと犬走さんは目を閉じて集中し出す。

 

「・・・?い、一体何を・・・?」

 

「・・・どうやら、その情報に当てはまる人は妖怪の山にはいないみたいです。」

 

「なんで分かった!?目を閉じてただけじゃないんですか!?」

 

「千里眼です。幻想郷の妖怪や、一部の有力な人間はみんな能力を持ってるんですよ。私は『千里先を見通す程度の能力』のような感じで。」

 

「その能力、探偵家業ではめっちゃいいな。」

 

「た、探偵?」

 

「俺元の世界では探偵やってたんです。依頼主が来て、・・・まあその依頼主が多分ここに俺らを連れてきたんだと思います。」

 

けど参ったな。この山には海藤さんはいないってことか・・・、

何も分からないし手がかりもない。どうしたものか。

――あ。

 

「犬走さん。貴女さえよければ、同行していいすか?」

 

「うえっ!?」

 

まあ困惑するよな。侵入者かと思ったら外来人で同行していい?

なんてこといわれてんだもん。

 

「いや、まあ大丈夫ですけど・・・。そうですね、じゃあ先に私の家に向かいましょうか。」

 

あ、承諾を貰えたみたいだ。

 

「すみません、なんかお世話になっちゃって。」

 

「いや、まあ部下が迷惑をかけましたから。それのおわび、みたいなものです。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

―椛の家―

 

山の開けたところに、平屋が一軒建っていた。

どうやらこれが犬走さんの家のようだ。

 

「・・・いい家住んでんなぁ・・・。」

 

「そうですか?白狼天狗はこれを3、4人で使っているみたいですけど。私は哨戒隊長なので1人で使わせてもらえてるんです。」

 

隊長特権か。

犬走さんに促され椅子に座ると、目の前にお茶が置かれる。

お茶に口をつけ、一息つくと、犬走が再び準備をしていた。

 

「あれ?犬走さんまた出かけるの?」

 

「今から妖怪の山の方に八神さんのことを伝えてきますので。八神さんはあまり外に出ないでくださいね。」

 

「ん?そりゃまたなんで?」

 

「妖怪の山自体危険って言うのもありますけど、妖怪の山を統治している天狗っていうのは仲間意識が非常に強いんです。私が上に報告するまでは、あなたが仲間に、『犬走に保護されている』ということを伝えても信じて貰えないかもしれないので。これからどうするかは帰ってきてから決めましょう。それじゃ、行ってきますね!あ、お茶請けは机の上にあるやつを勝手に食べててくださーい。あ、あともう苗字呼びじゃなくて名前で呼んでくれて構いませんよ。」

 

・・・行ってしまった。しかし、これまた慣れない気分だ。

妖怪とはいえ女性の部屋に俺一人とは。いや妖怪の時点でツッコミどころしかないけど。取り敢えず今の状況をまとめるために懐から手帳をだす。

 

(・・・今俺がいるこの場所は幻想郷という世界の中にある妖怪の山。そしてこの幻想郷というのは俺が元いた世界とは別の世界らしい。・・・そして、海藤さんを含め、俺らをここに連れてきたのはあの女、()()()()とみて間違いない。)

 

「今後、行動するとすればこの東雲蘭子という女を探すしかないってことか。」

 

だが、この女が言っていた『村を救って欲しい』という言葉に引っかかる。村名を出していた訳でもない、詳しい場所を話した訳でもない。ただ、『村を救って欲しい』とだけ言っていた。

 

(正直、あの女が何をしたかったのか皆目見当もつかないな。ひとまず、海藤さんが危険な目にあってなければいいけど。)

 

手帳に、『幻想郷の情報を集める』と『東雲蘭子を探す』ということを書き記したところで、家の扉が開く。どうやら犬走さんが帰ってきたようだ。

 

「いぬば・・・、椛さんおかえりー。」

 

そういやさっき名前でいいって言っていたことを思い出したので、下の名前で呼んでみる。が、どうやら相手は椛さんでもないようだ。

 

「あやややや?椛を探しに家に来たのですが、家を訪ねてみれば本人はおらず、知らぬ人間の男が1人・・・。」

 

俺の目の前に立つ女性は背中に黒い翼を生やしており、これまた別の妖怪のように見える。

あのデカい紅葉のような物を持っているので、天狗なのは間違いなさそうだ。

 

「・・・一応お名前を聞いても?」

 

「あー、えっと、八神隆之です。椛さんに拾われました。」

 

「八神さん!!間違えてないけどなんて言い方してるんですか!!あと文さんは勝手に人の家に上がんないでください!!一緒にご飯食べる予定だったとはいえ家主いないのになんで上がるんですか!!」

 

椛さんナイスタイミング。

 

「あ、椛。どこに行ってたんですか?」

 

「そこにいる外来人の八神さんのことを上に報告しに行ってたんです。帰ってきてみれば文さんが勝手に家に上がってるので肝を冷やしましたよ。」

 

「あやや。どうりで見慣れない人間だと思ったら。外来人だったんですか。」

 

・・・置いてけぼりだ。

 

「あ、あのー・・・、椛さん。その方は?」

 

「あー・・・、私の上司の射命丸文さんです。」

 

「どうもー、清く正しい射命丸文です。以後お見知り置きをー。」

 

「射命丸さんはどんな妖怪で?」

 

「あら、どんな妖怪とは外来人らしくない質問ですね。その様子だと粗方のことは椛から教えてもらったようですね。私は鴉天狗です。あと、下の名前の呼び捨てで結構ですよ。」

 

鴉天狗・・・。まあ、聞いたことの無い名前ではない。

しかし実物を見るのはさすがに初めてだ。

 

「妖怪を見ること自体初めてでしょ八神さん。」

 

「まあそれもそうなんだけど。」

 

「あと八神さん。下の名前とは言いましたがさん付けはさすがに慣れないので・・・。私も呼び捨てでいいですよ。それにタメ口で構いません。」

 

「そう?じゃあそうさせてもらうよ。それで、上へ報告した結果どうなった?」

 

「ある程度は自由に行動して構わないそうです。他の白狼天狗にはもう連絡済みですので。一応基本的には行動する際は私が同伴するという形をとって欲しいそうです。」

 

「まあ自分のシマで好き勝手して欲しくはないよな・・・。そうだな、じゃあとりあえず、外来人はここに行くべき、みたいな場所はある?」

 

「それならやはり博麗神社ですね。ただ、ここから少し遠いですよ。今から出発すると日が暮れてしまいますね。」

 

・・・じゃあさすがに明日になるか。今日は大人しく椛の家の手伝いをさせてもらうことにしよう。保護してもらった以上恩は返したい。

 

「え、家の手伝いを・・・?そんな悪いですよ。」

 

「いやいや。一応匿ってもらってるわけだしさ、なにか手伝えることない?」

 

「・・・じゃあ、晩御飯作るの手伝ってもらっていいですか?」

 

「もちろん。おやすい御用だ。」

 

「あ、八神さん!椛!今日は肉じゃがでお願いしますね!」

 

「焼き鳥にしましょうか、八神さん。」

 

「お、それいいね。そうしよう。」

 

「ガッデム!!!」

 

鴉天狗に焼き鳥は効くのか・・・。

 

「冗談ですよ・・・。鴉天狗の上司が来てるのにさすがに焼き鳥は出しません。適当に鍋にでもしましょう。」

 

椛は具材を切り分け、鍋に盛り付ける。その間に俺はテーブルの上にカセットコンロを出し、取り皿を出しておく。

 

「・・・そういえば、八神さんはここに来る時に、どうやって来たのかの心当たりはありますか?」

 

文からの何気なさそうな質問。

どうやって来たかで言えば、『何かに飲み込まれたから』というのが正しい。

 

「その・・・、スキマ妖怪?ってやつに連れてこられたって感じかな。」

 

「・・・へぇ。スキマ妖怪に・・・。だとすれば、面倒事は不可避だと思った方がいいですねぇ、八神さん。」

 

「・・・なぜそう言いきれる?」

 

・・・まあ、あらかた予想はついているが・・・。

 

「不手際とかで幻想郷に迷い込んじゃうならまだしも、スキマに飲み込まれたということは、少なくともスキマ妖怪に()()()()()()()()ということですから。スキマ妖怪というのはこの幻想郷では賢者と呼ばれている妖怪です。あなたがここに来る前に関わったと言っていた、東雲蘭子という女は、そのスキマ妖怪の手下とみて良いでしょう。」

 

東雲蘭子がスキマ妖怪の手下・・・。それならば腑に落ちる。

 

「ま、どれだけ予想しても本人に聞かないことには何も分かりませんから。明日、私も同行するので博麗神社に行きましょう。そこにいる巫女に話をすれば、スキマ妖怪には話が行くと思うので。」

 

鍋をセットしつつ椛が言う。

食事を始めだした頃、ふと気になった事があったので口に出す。

 

「椛、隊員の人たち、大丈夫だった?割と本気で殴る蹴るしちゃったけど。」

 

「その程度で音を上げるほどでは無いですよ。みんなピンピンしてます。それよりも人間の八神さんが下っ端の下っ端とはいえ白狼天狗に勝ったのは驚きましたけどね。」

 

「やっぱりこう、あの人が呼び寄せた外来人ってだいたい強いですよね・・・。」

 

「そんなもんなのか・・・。けど、あんまりな化け物は勘弁して欲しいね。」

 

「いやー、きっと戦うことになると思いますよ。さっきも言いましたけど、外来人ってそんなものですから。」

 

まあ、京浜同盟みたいな戦闘狂じゃなければ、なんでもいいか。

話し合いで通じる相手ばかりならありがたい。

 

「・・・そういえば八神さんって、ここに来る前は探偵をやっていたんでしたっけ?」

 

「探偵!?探偵って、真実はいつも1つ!みたいな事するんですか?」

 

まだ忘れ去られてないはずのコ〇ンは知ってるのか・・・。

いや、触れないでおこう。

 

「あれはかなり脚色されたヤツだよ・・・。探偵なんて名ばかりで、悪くいえば何でも屋だよ。猫探しや人探しは勿論、浮気の調査なんてのも依頼でくることもある。」

 

「・・・本当に何でも屋ですね。」

 

「まあ、これを生業にしてるから。依頼完了しないと報酬なんて貰う訳には行かないしね。」

 

それを話したところで、事務所に依頼が溜まっていないか確認するべく、スマホのメモ機能を開く。

ほとんどにクリアの文字が付いている。

 

「ま、杞憂か・・・。」

 

そんなことを3人で話しながら鍋を平らげていく。

そして、しばらくくつろいだ後、文が家に帰ることになった。

3人は玄関先に出る。

 

「それじゃあ私は帰ります。椛、八神さんのこと、頼みましたよ。」

 

「ええ、もちろんです。」

 

そういい、文は飛び立っていった。

 

「・・・ん?()()()()・・・?」

 

飛んでる・・・!?人が・・・!?いや人じゃないけど・・・!!

 

「飛んでるッ!?」

 

「あ、そういや言ってなかったか・・・。と、とりあえず家の中で説明しますから・・・。外で呆然としてたら体冷えちゃいますよ。」

 

「あ、うん・・・。」

 

――――――――――――――――――――――――

 

再び椛の家の中。

 

「実は私たちは普通に空を飛べるんですよ。」

 

「え・・・、なんで・・・?」

 

「なんでって言われましても・・・。飛べるからとしか・・・。」

 

そうか・・・。ただこの、幻想郷という世界の常識と言うだけか・・・。

 

「まあ、そうってだけならそうだな。説明しにくいなら、それでいいや。」

 

「淡白ですね・・・。」

 

「考えるべきことはもっとあるからな。この世界のこともそうだが、聞きたいことの答えはその博麗神社とやらにある。明日、そこに向かいたいし、その時にはよろしく頼むぜ。」

 

「もちろんです!任せてください!」

 

その後はそのまま風呂に入り、そのまま眠りに入った。

久々の布団だったせいか、ぐっすり眠れた気がする・・・。たまには布団敷いて寝るか・・・。ベッドで寝るのは体に悪いな・・・。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「八神さーん。朝ですよー。」

 

「んぬ・・・。久々に熟睡した・・・。逆に倦怠感・・・。」

 

「朝ごはんできてますから。ぱっと食べてしまって、博麗神社に行きましょう!」

 

朝ごはんはご飯と味噌汁と焼き魚だった。

ちゃんとした朝ごはんも久々だな。・・・1回生活リズム見直そう。そのほうが身のためだわ。俺不摂生極めすぎてるわ。

飯を食べて、出発する。

 

「ところでさ、博麗神社まではどのくらいかかる?」

 

「空を飛んだら一瞬ですけど・・・。八神さんは空を飛べませんからね。」

 

「まあ人間ですし。」

 

「博麗神社の巫女は空を飛びますよ?」

 

「人間じゃないんじゃない?」

 

「いや人間ですよ。いや、それより話を戻しましょう。ここから徒歩でしたら半日ですね。昼過ぎには着けると思いますよ。」

 

「半日くらいなら大丈夫だ。丸1日猫を追いかけたこともあるからな。あれはしんどかった。もうしたくない。けど猫探しの依頼って報酬がいいんだよなぁ・・・。不思議だ。」

 

「まあ、山道なんで辛いのは辛いと思いますけどね。」

 

それはそれで聞きたくなかった。

・・・しかし、監視の目を感じなくなったら本当に長閑な山って感じだ。

 

「侵入者がいなければ平和な山ですからね。登山道に関しては頂上にあるまた別の神社の参拝道なので、天狗の陣営とはまた別の管轄下なんですよ。」

 

「え?昨日俺がいたのは登山道じゃないの?」

 

「あれは天狗が使う道ですね。獣道みたいなものです。天狗しか使わない道に人間がいたら、そりゃあ警戒しますよ。」

 

確かにそれは警戒されても無理ないな。本当に昨日ぶっ飛ばした方々には申し訳なく思う。まあ、斬りかかってきたのはあっちだしお互いさまで。

 

「山を下りると人里に入ります。人間が住む場所なので、少しは八神さんも落ち着けると思いますよ。」

 

人里・・・か。ここでまた、なにか幻想郷に関する情報を集めれればいいな。

しかし、この世界は掴めないことが多い。もし、依頼をされたとしても、この世界を知らなかったら、簡単に死んでしまいそうな気がする。・・・人里でしっかりと準備をしよう。

それに、ここで海藤さんが見つかればいいが・・・。どうだろうか。

 

To be continued...




妖怪の山を下りた八神と椛は、妖怪の山の近くにある人里に辿り着く。
八神はここでなら情報収集ができるだろうと考え、未だ知らぬ事が多い幻想郷について、深く知ろうとする。
そして八神の相棒、海藤を見つけるべく人里での捜索も並行して開始するが・・・。

―Next → Chapter.1―2 未知の世界
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