ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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VS ヒュドラ

 

 

 

「ほう……ここが……なかなかの景色ですね」

 

 

俺がありったけの肉を食って約6時間、全快した俺はハジメたちの代わりに道中の魔物を殲滅したため良いペースで百階層まで辿り着くことができた。もちろん無傷である。

 

百階層、無数の強大な柱が規則正しく並んでいる荘厳さを感じさせる空間だ。

 

 

「ハジメたちはどこまで確認したのですか?」

 

「ここまでだ。これ以上進むと柱が光ったからな。明らかに怪しいと思って引いた」

 

「良い判断です」

 

 

感知系の技能でも使ったのだろうか。

 

また少し進めば、この空間の端である巨大な扉が見えてきた。10メートルほどはあるだろうその扉は、サイクロプスがいた扉のようにまた美しい彫刻が彫られている。

 

 

「……なるほど。例えるならラスボス、とでも言いましょうか」

 

「ああ、俺たちはようやくゴールに辿り着いたってことだ」

 

「……ハジメ、ユエさん。冷や汗をかいていますよ?怖いですか?」

 

「……まあ少しな」

 

「んっ……」

 

 

おそらく本能的な物だろう。

 

 

「だが、関係ない。どんな敵がいようとも、俺たちの邪魔をするなら全員殺してやるだけだ」

 

「んっ!!」

 

「フフフ……その意気です。さあ、行きましょうか」

 

 

部屋の中心ほどまで進めば、床に巨大な魔法陣が現れる。ベヒモスが現れたときにも同様の魔法陣があったことから、これもそういうタイプだ。

 

 

「マジか……デカすぎるだろ……完全にラスボスの雰囲気じゃねえか」

 

「……大丈夫。私たち、負けない」

 

 

そして、光が弾ける。

 

 

「「「「「「クルゥァァァァァァァン!!!!」」」」」」

 

 

6つの配色が異なる頭に長い首、さらに鋭い牙と赤黒い目の化け物。そう……地球の知識を当てにするなら、ヒュドラとも言うべき魔物だ。

 

先制攻撃とばかりに赤色の頭が口を開けると火炎放射を放ってくる。

 

 

「「ッ!!」」

 

「……食らってみましょうか」

 

 

ハジメは左に、ユエさんは右に飛んで避けた。俺はその場で立ち止まりあえて攻撃をくらう。

 

 

「「影二!?」」

 

「……痛いですねぇ。ええ、久しぶりの肉体的な痛みです。私も回避するとしましょう」

 

 

肉などないが、ヒリヒリとした感触。どうやら火傷のようなダメージを負ったらしい。

 

 

「バカかお前はッ!!食らえッ!!」

 

 

回避したハジメはドンナーを赤い頭に撃ち込んだ。思ったより防御力はなかったらしくすぐに吹き飛んだ頭だが、白い頭が叫ぶとすぐに回復し元に戻った。

 

 

「ほう、一体の魔物の癖に役割分担がしっかりしていますねぇ。ならば私が回復役を潰しましょう!!」

 

 

俺は跳躍し、白い頭目掛けて腕を振りかぶる。しかしそこに割り込んできた黄色い頭。

 

 

「むっ!!」

 

 

構わず殴り飛ばしたが、頭を吹き飛ばすまでには至らなかった。ギリギリ皮一枚と言ったところか。

 

すかさず白い頭が叫ぶことで回復。……なんともまあ嫌らしいことだ。

 

 

「盾役……仕方ありません。ユエさん!!」

 

「任せて……!!」

 

 

ユエさんに声をかけると、赤い頭に向かって『緋槍』を連射した。

 

 

「ハジメ!!」

 

「わあってるよ!!」

 

 

ハジメは青と緑、それとまだなにもしていない黒を担当。

 

 

「さて、いつまで耐えれますかね!!」

 

 

俺は、黄色に攻撃をし続けることで、白色の回復を黄色に集中させる。しかし……

 

 

「ッ!!範囲回復……なんと面倒なッ!!」

 

 

白は先ほども大きく叫び声を上げると、すべての頭が回復した。

 

 

『ユエ、影二、キリがないから白い頭に一点集中するぞ!!』

 

「ええ!!」

 

 

ハジメから念話で伝わってきた声に、返事をする。俺に念話は使えないため相手から俺への一方的な連絡となってしまうが……

 

 

「……ユエさんの返事がない?」

 

「いやぁぁぁぁ!?!?!?」

 

「なに……ユエ!!」

 

 

唐突に聞こえるユエさんの叫び声。ハジメともに彼女を見れば頭を抱えて蹲りながら叫んでいるユエさんの姿が。

 

 

「ハジメ、ここは抑えておきますので貴方は彼女を」

 

「任せたッ!!」

 

 

ヒュドラを見れば黒がずっとユエさんを見ている。なるほど……精神系ですか。

 

 

「押し通らせていただきます!!」

 

 

跳躍し割り込んできた黄色を殴り、その背でもう一度跳躍。今度は黒にしっかり届き頭を蹴り付け吹き飛ばした。

 

 

「恐らくこれで……ッ、させませんよ!!」

 

 

一息つけるかと思った矢先に、ユエさんと彼女を助けに行ったハジメに赤青緑からの攻撃が集中しようとしていた。

 

 

「間に合えば……良いですね!!」

 

 

己の全身全霊を持って駆ける。白によって黄色と黒が回復されているが仕方がない。

 

 

「うぐぅ……!!」

 

「影二!!」

 

「早く退きなさい……キツいんですよ……思ったよりね!!」

 

「……すまん!!」

 

 

ハジメは土産とばかりに手榴弾と閃光弾を投げてからユエさんを連れて遠くの柱の陰に退避した。

 

 

「なるほど……連携をとられると……ステータス差もあまり意味を為しませんね……」

 

 

攻撃役の天乃河、坂上、八重樫に防御役の谷口、精神系は恵里、回復は白崎。いつか強くなった彼らと戦うとなるとこういう経験はある意味助かったと言えるだろう。

 

 

「それでも……私の目的のために……貴方には死んでいただきます!!」

 

 

俺がそう宣言してから、チラッとハジメたちを見ればなんとまぁキスをしているではないか。……正体現したね?

 

 

「へぇ……ふぅん……そうですかそうですか……ぶっ殺しますよ!!!!」

 

「「「「「「グリュギャァ!?」」」」」」

 

 

そんな理不尽な!?とでも言いたそうなヒュドラなど俺は知らん。恵里に会いたい想いを募らせている間に乳繰り合っているリア充を見た俺の苦しみを知ると良い。俺は先ほどの1,2倍ほどのスピードで走り瞬く間に赤と黒を破壊した。

 

 

「『緋槍』『砲皇』『凍雨』」

 

 

そして俺の後ろから放たれた魔法の数々。

 

 

「大丈夫ですかユエさん」

 

「んっ……ハジメが……慰めてくれたから」

 

「……そうですか」

 

「ハジメがとどめを刺すらしい……連発できないから……援護を」

 

「分かりました」

 

 

俺が頭の間近で撹乱し、その隙にユエさんが魔法で傷をつけていく。ハジメはまだ準備段階らしい。宝物庫を持ってない今では仕方がない。

 

そしてもう一度、ユエさんに向けて黒が魔法を使った。

 

 

「もう……効かない!!」

 

 

一瞬動きが止まったがすぐに動き出すユエさん。そしてさらに増え続ける魔法の連射。ならばと黒はハジメに目を向けた。

 

 

「それがどうした!!」

 

 

ハジメにも精神系の魔法は効かず、黒はドンナーで撃ち抜かれた。……何故俺には使ってこないのだろうか。見た目的に?……解せぬ。

 

 

「チェックメイトだ!!」

 

 

ハジメがそう叫ぶと同時に、ハジメの新たな兵器『シュラーゲン』がヒュドラに向かって放たれた。

 

それは以前見た天乃河の『神威』にも劣らない威力。発射された銃弾は真っ直ぐ、周りの空気を焼きながら黄色に突き刺さり……風穴を開けた。しかしそれだけにはとどまらず、貫通しその後方にいた白にも直撃。最も厄介な頭2つを吹き飛ばした。

 

 

「流石ですねハジメ。まさかファンタジーに現代兵器を持ち込むとここまで凶悪になるとは……私も負けれられません!!」

 

「『天灼』」

 

 

後ろからユエさんの魔法名が響き、赤と緑がその雷球によって焼き尽くされる。

 

 

「……お覚悟」

 

 

俺は跳躍し青の首を手刀で切り取る。そして落ちていく青の頭をさらに踏みつけて黒の元まで飛んでいき……頭を殴り飛ばした。

 

すべての頭が消え、そこにあったのは焼けただれたヒュドラだったもの。ハジメがそれを見届けてユエの元に行こうとすると……

 

 

「ハジメ!!」

 

 

なんと、胴体から飛び出してきた7つ目の銀色に輝く頭。それはハジメに避ける隙を与えず……極光でハジメの体を飲み込んだ。

 

 

「…………あぁ……ぁぁ……」

 

 

やってしまった……完全にやってしまった……恐らく最後の攻防の時、黒と()()()()()()()()()

 

『不安』が俺の中を支配する。目の前に浮かんでくるのは今の今まで先頭をしていたハジメやユエさん……そしてヒュドラの姿ではない。

 

 

 

 

 

蔑んだ目で俺を見下ろす、恵里の姿だった。

 

 

 

 

 

『どうして……ねぇ、影二。どうして光輝くんを殺したの』

 

(なにを……いって……)

 

 

そんなことしていない。するわけがないじゃないか……俺は……私は貴女のために…

 

 

『どうして……僕のためとか言って光輝くんを殺すの!!見なよ……光輝くんが……僕の光輝くんが……』

 

 

恵里が指を指す方向を見る。そこにいたのは……俺。頭と胴体が離れた天乃河の死体を、無我夢中で貪る俺の姿だった……

 

 

(違う……俺はやってない……俺はここにいるじゃねえか!!)

 

『……君には失望したよ。僕の協力をするとか言って……本当は邪魔な光輝くんを殺すつもりだったんでしょ』

 

(違う……俺は本当に……大好きな恵里のために!!)

 

『僕のことが好き?……よくもまぁそんなことが言えるね?……所詮は……人と相見えることなんてできない()()()()の癖に。僕は……いつも鬱陶しかったんだよ。君のことが』

 

 

そして、恵里の姿が消えていく……俺の意識も、そこで途切れた。

 

 

 

 

〜三人称視点〜

 

 

 

『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ーーーー!!!!!』

 

「なに……あれ……」

 

 

銀の頭になす術なくやられ甚大なダメージを負って倒れ伏したハジメのそばで、ユエはその光景に呆然とする。

 

 

「影二……?」

 

 

ユエは、先ほどから叫び声を上げている存在が影二であるということは認識している。だがその姿は、いつものモヤのかかったような人型に赤く光る目ではない。手は鋭い爪のように、下半身はなく胴体と地面がモヤでくっついている。その形状はどうしても人とは言い難く、誰がどう見ても『バケモノ』としか言いようがなかった。

 

 

「怒ってる……いや……泣いてる?」

 

 

ユエにはその声が激怒からくる叫びではなく悲しみから来るものだと悟った。

 

 

「……とりあえず……ハジメを……安全なところに」

 

 

魔力枯渇で思うように動かない体を無理やり動かして、ハジメを引き摺って柱に寄せる。

 

 

「影二の中の……耐えられないような大きな『不安』……私ではどうしようもない」

 

 

先ほども自らが泣いて叫んでしまったように、影二の『不安』を直視させられたのだろう。しかし、満身創痍のユエにはどうすることもできない。ステータスに絶対的な差がある影二相手には、たとえあのような状態で不意を突いても倒すことはできないからだ。

 

 

「……とりあえず、神水をかけないと」

 

 

ボロボロになったハジメの体に神水をかけていくユエ。時には口移しで体の中へと神水を無理やりねじ込むが、どこか治りが遅い。

 

 

『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ーーー!!!!』

 

「ッ!?」

 

 

叫んでいたはずの影二が突然動き出した。銀の頭に向けて大きく腕を振りかぶり横から殴打。大きく吹き飛ばされた銀の頭も負けじと光弾を大量に放つが全てが影二の体を突き抜けるだけで終わってしまう。

 

そして影二は両腕でひたすら銀の頭を引っ掻く。あまりダメージを与えられいないのが見て取れるが、そんなことはお構いなしとずっと同じ動作を繰り返している。力任せに攻撃をし続けるその姿にユエは、どこか癇癪を起こした子供のような印象を受けた。

 

そのような攻防がどれくらい続いただろうか。ユエ自身も時間を忘れてその光景に見入っていた時、後ろから声がかけられる。

 

 

「これは……どういう状況だ?」

 

「ハジメ!!」

 

 

治りが遅くとも着実に回復したハジメはついに体を起こせる程度までになった。そんなハジメは、目の前で繰り広げられている大怪獣決戦のような現場を見て驚いている。

 

 

「たぶん……影二、黒い頭のを食らった」

 

「なに?……だからか。アイツ、いつも演技をして本当の自分を隠しているから、こういう時に纏めて出てくんのかよ。なんかあるなとは思ってたが……これ程か」

 

『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ーーーー!!!!』

 

「はぁ……ユエ、血を吸え」

 

「でも……ハジメは」

 

「お前の一発で影二の目を覚ますんだ。大丈夫さ、アイツには致命傷にもならないだろうからな。ついでに銀の頭も殺せたら丁度いい」

 

「……んっ!!」

 

 

ユエはハジメの正面から抱きつき、その首筋に噛みつく。幸い銀の頭は影二に集中しているためハジメたちに気付いている様子もない。

 

 

「……んっ。『蒼天』!!」

 

 

血を吸い終わったユエは立ち上がり、今までで一番の声で魔法を発動する。

 

 

銀の頭と影二の間に大きな青い太陽が出現し。1人と1匹を飲み込んでいった。

 

 

「グリュギャァァァァァ!?!?!?」

 

『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!?!?!?』

 

「目覚まし時計はもうなってんぞ影二。とっとと起きやがれ!!」

 

 

ハジメはユエの放った『蒼天』に向かって、残っている爆薬をありったけ投げる。銀の頭は抜け出そうと体を動かすが、影二の手によって拘束されて炎に焼かれながらも攻撃を食らっているため離れることができない。そのままヒュドラは焼かれ、逃げることもできずに燃え尽きていった。

 

 

「……影二は?」

 

 

ユエが息も絶え絶えに聞く。それに対してハジメは……

 

 

「見てみろよユエ。バッチリだ」

 

 

ユエがハジメの言う方向を向くと、元の人型に戻って倒れ伏し意識のない影二の姿があった。

 

 

「良かった……」

 

「ああ、影二がいないとどうなってたか分からないからな。後で迷惑かけた詫びでとっちめるか」

 

「んっ……血ももらう」

 

「それは……辞めてあげろ。せめて万全の時にな?……すまん、ユエ……俺も、もうムリ」

 

「ハジメ!?」

 

 

軽口を言っていたハジメが突然ぶっ倒れた。ハジメは、ユエが駆け寄ってくるところまでは見えていたが、やがてそのままゆっくりと意識を失った。

影二が演じるキャラの性能に制限は必要?

  • いる
  • いらない
  • どうでもいいから続き書けよ
  • もはや、他作品キャラやめて
  • どうでもいいから恵里との絡みを増やせ
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