ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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篝火影二という者

 

「ん……ここは……?」

 

 

眩しい……もう朝か。もうすこし寝させてほしい。正直起きたくないんだ……これ以上……これ以上あんな……ッ

 

 

「恵里ッ!!」

 

 

急激に意識が覚醒した。

 

 

「恵里は……恵里はどこ……ベッド……なぜ?」

 

 

天幕付きの柔らかそうな……いや、柔らかいベッドの上に俺はいた。俺の体は……ああ、普通か。特に問題もない。

 

 

「……あれは、夢?それにしては……現実味があった。なんだよ……だったらあんなの見せんなよクソがっ」

 

 

周りに誰もいない。……独り言でも、素で喋るのはいつぶりだろうか……

 

 

「俺は……天乃河が邪魔なのか…?いや、そんなわけない。だって天乃河は……恵里の好きな人で……だから、殺すなんてそんな……なんなんだよ」

 

 

コンコンッ……

 

 

「ッ……誰ですか?」

 

「私……ユエ……入っていい?」

 

「……ええ、どうぞ」

 

 

扉をノックしてきたのはユエさんらしい。と言うか扉?よく見れば、ここは部屋になっているようだ。

 

 

「おはよう……影二。体は大丈夫?」

 

 

入ってきたユエさんは、俺が作った急ごしらえの毛皮の服ではない、ちゃんとした女性物の服を着ていた。すこしサイズが大きそうなので、後で仕直しをしよう。

 

 

「……ええ、問題ありません。それよりもここは?」

 

「解放者オスカー・オルクスの住処」

 

「……解放者?」

 

「反逆者って言われてる人たち……詳しい話は……ハジメと一緒に」

 

「……そうしましょうか」

 

 

そうか、あの後ハジメとユエさんはアイツを倒せたのか。……全く、ステータスに頼り切った肉弾戦なんてするべきじゃなかったな。役立たずじゃないか……

 

ユエさんに案内されて、屋敷の大広間のような場所に着いた。

 

 

「よぉ……今回はまたよく寝てたじゃねえか。まさか2週間も寝るとは思わなかったぜ」

 

「……申し訳ありません。まさか、こんなにすぐに無様を晒してしまうとは」

 

 

赤のラインが入った黒いコートに、眼帯をして、左腕に義手をつけたいかにもま厨二病患者がいた。とりあえず謝りながら全力で目を逸らしておくことにする。

 

 

「ああ、後できっちり説明してもらうからな。……ってなんで目を逸らしてる?」

 

「いえ、私の知り合いにここまで重度の厨二病患者は居なかったはずなので人違いかと思いながら謝っているわけでは決してありませんよ?」

 

「……ユエ」

 

「んっ……『緋槍』」

 

「なにも攻撃することないじゃないですか」

 

 

ユエさん、ハジメへの理解が深まってて少し恐怖を覚えるぞ。『蒼天』じゃないのはマジであざっす。ダメージ?あると思うか?

 

 

「はぁ……その口調での減らず口は健在みたいで逆に安心したわ」

 

「んっ……最近のハジメは……ツッコミが出来なくてうずうずしてた」

 

「ほう……?」

 

「ありもしない事実を平然と言わないでくれユエ。……本題に入るぞ影二」

 

「ええ」

 

「あの日、お前が黒い頭の精神系魔法を食らって暴走を始めた。ここまではいいな?」

 

「……私が、暴走?」

 

 

いつだ……?確か……黒の目を見た後は……()()を見て、その後は……分からないな。

 

 

「覚えてない?……魔物みたいな形で……銀の頭をずっと殴ってた」

 

「魔物みたいな……まさか、これでしょうか?」

 

 

俺はある一つの可能性を思いつき、体の構成を変化させた。

 

 

「ユエ、あってるか?」

 

「んっ。この姿」

 

「……そうですか。見られましたか」

 

 

マジか……まさか見られるとは思っていなかった……

 

 

「白状しましょう……いや、白状しよう。これが俺の完全な素だよ。種族、ドッペルゲンガーの本来の姿にして俺の基本形態だ」

 

 

腕は人間よりも細くなり爪は鋭い。胴体は上半身と下半身の区別をなくし、地面にくっついているようなフォルム。頭も胴体に直接隣接し、首という部分は消えている。まるで影から現れたオバケのような姿だ。

 

 

「ドッペルゲンガー……聞いたことない」

 

「そりゃあ、俺しかいないからな」

 

「口調は、人間の影二のままみたいだが?」

 

「少しだけ違う。人間の時は無駄に硬い喋り方だったけど、素は粗雑な喋り方でどっちかっていうと今のハジメみたいなもんだよ」

 

「へぇ……ん?誰が粗雑な喋り方だ!!たくっ……で、結局なんなんだよお前は?」

 

「なに……とは?」

 

「体も口調も戻すのな……まあいいか。一つずつで良いから答えろ。地球には他にもお前みたいなのがいるのか?」

 

 

ハジメと口調がかぶるので姿と口調を元に戻す。……ふむ、俺の尋問タイムか。まあ良いだろう……答えられるものは答えようじゃないか。

 

 

「いえ、知っている限りでは私みたいな怪異?のような存在は知りません」

 

「じゃあなんで自分の種族の名前を知ってる?」

 

「名付け親がいるので」

 

「へぇ……それは誰だ?」

 

「神様です」

 

「あっそ、神かよ……ん!?神だと!?」

 

「ええ、神様です」

 

「……エヒト?」

 

 

ん……ああ、もう神代魔法を手に入れたのか。オスカーの記録映像を見たのだろう。

 

 

「いいえ。そうですねぇ……ああ、ハジメ。この世界に来た時のイシュタル・ランゴバルドの話を覚えていますか?」

 

「イシュタル……?誰だ?」

 

 

……まさか覚えていないのか。

 

 

「召喚された時に出迎えた老人ですよ」

 

「……あの恍惚とした表情を浮かべていたジジイか。なんか重要なこと言ってたか?」

 

「私たちの世界は、この世界よりも上位だそうですよ?」

 

「ああ、だからこっちの人間はステータスが高いんだっけか?」

 

「その通りです」

 

「……なんの繋がりがあるんだ?」

 

「上位世界の……神様?」

 

「……あっ!!そういうことか!!」

 

 

やはりユエさんは頭がよく回る。思ったより少ないヒントで答えにたどり着いたな。

 

 

「若干違うのですが、概ね正解です。私はあちらの世界の神様に直接ドッペルゲンガーにしていただき、しかも能力までもらって生まれてきました」

 

「それって……神様転生。マジか……アニメとかそういう世界の話じゃなかったのか……」

 

「私たちも今現在アニメとかそういう世界を実体験……いえ、生きているではありませんか。これくらいの奇跡はもう慣れましょう」

 

「……そうだな」

 

 

正確には、神様趣味のためにこの『物語』が創られたのだが……まあ今はいいだろう。

 

 

「つまり……影二は3つの世界を知ってる?」

 

「ええ、始まりは私がいた地球。次にハジメたちが生きる地球。そしてこのトータスです」

 

「俺たちの世界に来る時ドッペルゲンガーになったんなら、最初の世界では人間だったのか??

 

「……はい」

 

「なぜ人間を辞めたんだ?」

 

「……言わなければいけませんか?」

 

「ああ、言え」

 

 

こういう遠慮のなさは魔王ハジメという感じがして良いけどな。それが自分に向けられるとなると確かに面倒だ。

 

 

「私、実は15歳で死にまして……」

 

「「ッ!?」」

 

「原因が……本当に聞きます?」

 

「……ああ」

 

「後悔しても知りませんよ……7歳の時からの両親からの虐待と学校でのいじめ。そして15歳まで耐えて卒業と同時に橋からの投身自殺です」

 

「「……………………」」

 

「そして……って辛そうですよ?大丈夫ですか?」

 

「……続けてくれ」

 

「んっ……ちゃんと最後まで聞く……」

 

「物好きですねぇ……」

 

 

最初は興味なさげだったが、自殺やら虐待やらのワードを出した瞬間に顔が強張ったハジメ。だんだんとその表情は申し訳なさそうな顔になっている。ユエさんに至っては少し顔が青い。

 

 

「そしてそんな事があれば……まあなりますよね?人間嫌い」

 

「でも……ハジメや私には……普通」

 

「そうだな。お前の想い人だって人間のはずだ」

 

「まあ後々説明します。続きを言いますね。そこで出会ったのが、その世界の神と呼ばれる存在でした。ええ、ビックリしましたよ。橋から身を投げたのに意識が戻ったら炬燵で茶を啜るジジイが居るのですから」

 

「空気が読めねえ神様だな」

 

 

いや本当にな?結構人当たりの良い老人って印象だったが。

 

 

「……その方に同情心から転生を勧められ、ちょっとした技能をもらい、嫌悪感しかない人間を辞めさせてもらったのです。はい、ここまでで人間を辞めた経緯は説明し終わりました……っと?ユエさん……?」

 

「屈んで……」

 

 

唐突に俺の前にだって見上げてきたユエさん。ハジメに至ってもなんか『仕方ない……』という表情をしている

 

 

「はあ……一体なにを……ッ!?」

 

「影二……頑張った…… いい子……」

 

 

屈んだ俺の頭を抱きしめて、頭を撫で始めたユエさん。

 

 

「…………ユエさん」

 

「影二の努力は……吸血鬼の姫だった私が保障する……だからここでくらい……自分を出してもいい」

 

「ユエさん……」

 

 

ここでくらい……ね。

 

 

「それは嫌です」

 

「え?」

 

「私にとって演技とは私自身であり、それは何者にも侵されるこの無い領域……いや、もはや神域!!そして何より私が素を出してもいいと思うのはただ1人の前ですので」

 

「……ハジメ〜」

 

「オイコラ影二ィ!!ユエがしょげたじゃねえか!!可愛いけど……可愛いけど!!ぶっ殺すぞテメェ!!」

 

 

ジト目になってしょげながらハジメの元に駆け寄って行ったユエさん。ハジメはどっちかっていうと父親っぽくなっている気がする。

 

 

「ですがユエさん」

 

「……?」

 

「うれしかったです。……その、ありがとうございます」

 

「「…………」」

 

「あれ、どうしました2人とも?」

 

「「影二がデレた!?」」

 

「……ふ、ふふふ。私が珍しく素直になってお礼を申し上げたというのにその反応ですか。そうですねぇ……鬼ごっこしましょう。私が鬼です。さあ逃げなさい!!」

 

 

俺の純粋な謝礼を返しやがれ!!

 

 

「うおッ!?まずいユエ、逃げるぞ!!」

 

「んっ……抱っこ」

 

「……仕方ねぇ、うおぉぉぉぉ!!!!」

 

「フッハハハハ!!!せいぜい醜く逃げなさいハジメ!!」

 

 

そのあと俺たちの鬼ごっこは、俺が空腹でもう一度ぶっ倒れるまで続いた。……腹減った。

影二が演じるキャラの性能に制限は必要?

  • いる
  • いらない
  • どうでもいいから続き書けよ
  • もはや、他作品キャラやめて
  • どうでもいいから恵里との絡みを増やせ
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