新たな出会い
「なんでやねん」
ハジメのその声を皮切りに俺は目を開けた。どうやら洞窟に出たらしい。
「……秘密の通路……隠すのが普通」
「ええ、こちらからの侵入を許すはずがありません」
「あ、ああ……そうか確かにな。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないか」
カリカリと頭をかいているハジメ。どうやら、地上に出れると聞いてよほど浮かれていたんだろう。真っ暗でなにも見えないが、ハジメとユエさんには問題無い。実は俺も技能に関係なく種族特性で夜目が効くので大丈夫だ。真っ直ぐ進んでいると、やはりと言うべきか数々のトラップがあった。しかし、ハジメが……というか俺たちが所持しているオルクスの指輪が反応して全て解除された。正直、期待外れである。
だが、ハジメとユエさんにはまだ見えていないが、奥の方に本当に小さく光が見えた。
また少し歩くと2人にもそれが見えたらしく、顔を合わせて駆け出していった。若い人は元気だねぇ……あ、ユエさんはそうでも「『蒼天』」ミギャァァ!?!?はぁ……はぁ……やりおるわ……俺に対しての遠慮がない。
「……戻ってきたんだな」
「……んっ」
外に出て太陽の光を全身に浴びた2人は感慨深そうに眺めたあと、帰ってきたという実感が湧いたんだろう。お互いに見つめ合い思いっきり抱きしめあっていた。
「よっしゃああーーー!!戻ってきたぞこの野郎ぉおーー!!
「んっーーー!!」
「おやおや、結構眩しいですねぇ。太陽とはこうでしたか……」
三者三様の喜び方だが、そんな中で無粋な奴らが俺たちの周りを囲んでいた。
「は〜、全く無粋な奴らだな。……確かここって魔法が使えないんだっけ?」
「ライセン大峡谷のようですし、そうでしょうね。私の擬態も大幅に制限されます」
「……分解される。でも力づくで行く」
今俺たちがいるライセン大峡谷で魔法が使えないのは、魔法の魔力が何故か分解され散らされてしまうから。体の内側で発動する身体強化などは大丈夫なのだが、俺は外側に魔力を放出して皮を作っているようなものなので効率がヤバいことになる。しかもその状態で擬態先の技能なんて使った暁には……なぁ?
「力づくって……効率は?」
「十倍くらい?」
「ええ……ん?……いや……百倍では無いですか?私の魔力量はバグレベルですけど……擬態して魔法を使ったらすぐに尽きそうなのですが……」
どう言うことだ?ここは十倍程度だと思っていましたが……
「あ〜、じゃあ俺と影二でやるからユエは身を守る程度にしとけ」
「うっ……でも」
「ユエさん。ハジメに作っていただいた武器の性能もみたいのでここは任せてください。召喚【撃槍】【烈槍】」
両手に槍を呼び出し構える。右手に【激走】、左手に【烈槍】を構え魔物の集団に走っていく。
ドパンッ!!
始まりの合図だ。ハジメのドンナーによる一撃で、魔物の一頭の頭が弾け飛んだ。他の魔物がそれに驚いているうちに俺は懐まで忍び寄り、首に向かって【烈槍】を突き刺す。穂先が人の肩幅より大きいこともあって、首がちぎれて死んだ。
「さて、奈落の魔物とお前たち、どちらが強いのか……試させてもらおうか?」
「なかなかな使い心地、やはりハジメはいい仕事をしますね!!」
ハジメがガン=カタの構えを取り銃を撃ちまくっている間、俺は異常な敏捷を活かしひたすら魔物を屠り続けた。時に突き、時に切る。全力で槍を振り抜けば風圧で魔物が吹き飛ぶ。その様子はもはや蹂躙だ。魔物たちは逃げると言う思考をする暇もなく全滅。2分もかからなかった。
「いいですねぇ……アーティファクトとしての真価を発揮できないのは気がかりですが……私が本気で使っても壊れない頑丈さに切れ味。十分です」
「ベタ褒めじゃねえか。気に入りすぎだろ」
魔物の屍の上に立ち、銃を納めたハジメが呆れたように言ってくる。いやいや、実際素晴らしいんだからな。
「後で、しっかり磨いてあげないといけませんね。とりあえず収めておきましょう」
宝物庫に槍を戻した。ハジメは何やら怪訝な顔をしている。ユエさんも戦闘が終わったのを見て寄ってきた。
「……どうしたの?」
「いやな、あまりにあっけなくてな……ここの魔物は相当強いって聞いてたから正直本当にここがライセン大峡谷なのかなと……」
「……ハジメが化物。影二はもっとバケモノ」
「上手いこと仰いますねユエさん。きっと奈落の魔物が強すぎたのですよ」
「お前、ほとんど苦戦してないのによく言えるな……てか、そろそろ服着とけ」
「おや、これは失敬」
実は俺、今素っ裸なのだ。全身真っ黒なため特に隠すようなものもない。というか隠すべき局部というものは形どってない。なんなら生殖機能もない。擬態すればできるが……しかし、擬態した時も服は魔力で再現しているだけなので、実質素っ裸。ふとした時に服の擬態だけ解けてはいけないので、宝物庫から服を取り出して着る。ちなみに服装は、『ログ・ホライズン』の『シロエ』のローブ姿だ。単純に好みなのであって、決して人間体がシロエベースで作ってあるからではない。無いったらない。
「さてと、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする?」
「ふむ……せっかくですし樹海側に向かって行きませんか?」
「何故……樹海側?」
「ライセン大峡谷に七大迷宮があるというのはよく聞く噂ですし……樹海にも大迷宮があるそうですよ?」
「何?影二、お前それどこで……?」
「王国図書館にそれらしき資料がありましたよ。禁書の場所にね」
「お前……あの場所行ったのかよ……見つかったらヤバかったのに」
原作知識ですとか言っちゃいけない。ていうか、ガチで禁書コーナーにそういう資料があった。恐らく教会がどうにかして隠していたのだろう。
「まあそういうことなら樹海側に進むか」
「ん……異論ない」
「ありがとうございます」
そして、ハジメは宝物庫から魔力駆動二輪を取り出した。詰まるところ魔力で動く二輪バイクだ。
「あの……ハジメとユエさんが乗るのは確定しているとして……私は?」
「お前がずっと魔力を注ぐんだったらサイドカーをつけてやってもいい」
「……分かりましたよ。自分で走ります」
思ってたよりハジメが厳しかったので、俺は完全擬態で『トリコ』の『バトルウルフ』という大型の狼に擬態。魔力消費は、魔力駆動二輪に注ぐよりはマシなので我慢することにした。
(召喚【絶刀】)
宝物庫から【絶刀】を呼び出し口に加える。口に刀を加えた狼ってなんかいいだろ?
ライセン大峡谷は東西に真っ直ぐ伸びているので、道成に行けば何処かには必ず着くことができる。俺たちは迷宮の入り口らしきものがないかだけ確認しながら走っていた。途中で何体か魔物が出てきたが、俺が咥えている【絶刀】によって皆切り裂かれていった。これもいい出来だ。
またしばらく走っていると、前の方に頭が二つあるティラノサウルスのような大型の魔物が現れた。
「スン……ガルルゥ」
「影二?……一回止まるぞユエ」
「んっ」
俺が吠えてハジメに停車を促す。
「どうした?」
「この先にあの魔物以外の匂いがあります。一応、警戒しておいたほうがいいかと」
「了解。ユエ、慎重に進むぞ」
私の姿に戻って、【絶刀】を手に持ち構えながら進む。すると、ピョンピョン跳ねながら半泣きで魔物の攻撃から逃げているウサミミ少女の姿が見えた。
「なんだあれ?」
「兎人族?」
「ほう?……人間族じゃなければ誰でもいいです」
「相変わらずだな影二……なんでそんな奴がこんなとこに?まさか谷底が住処ってわけじゃねえだろ?」
「ふむ……犯罪者として追放されたか、自ら選んでここにいるのでしょう」
「……悪ウサギ?」
どうやらユエさんは前者で解釈したらしい。俺たち3人、誰も動こうとしないことから誰も助ける気がないのだろう。俺も別に興味ないし……
「だずげでぐだざ〜い!!ひぃ!?死んじゃいます〜〜!!だずげで〜おねがいじまず〜」
すごく情けないウサギの声が谷に木霊する。しかもこちらに向かって全力疾走だ。
「こういうのってなんていうでしたっけ?」
「……モンスタートレインだな。タゲを他のやつに移して逃げるタチの悪いプレイングだ。勘弁しろよ……」
「じゃあ私、あの肉を頂いてもよろしいですね?」
「……まあ、影二の食料はどこかで確保しなきゃなんねえからな……だが、あのウサギが助けてくれたって思っても面倒だ。もうちょい待て」
「分かりました」
「……迷惑」
恐竜の肉なんて食べる機会無いでしょうし、ここでひとまず食い溜めでもしておきましょう。いや、別に食べなくても生きていけますけどね?
「まっでぇ〜みずでないでぐだざ〜い……おねがいでずぅ〜!!」
何もしない俺たちを見てさらに声を張り上げるウサギ。このまま行けば確実にあの少女は食われるだろう。……兎人族の肉にも興味はあるが……
「「グルアァァァァァ!!」」
「はぁ……いいぞ」
「やっとですか……『蒼ノ一閃』」
【絶刀】に魔力を流し、袈裟斬りをする。刀は空振りしたが、蒼の魔力が斬撃となって飛んでいく。分解されない程度に魔力を過剰に乗せたため、結構消費が大きい。やはり、俺だけ魔力分解のレベルがおかしい……
魔物の2つの首を見事に切り裂き絶命したその巨体……いや、肉塊はバランスを崩して倒れた。よほどの巨体だったのだろう。倒れたときの衝撃波で少女の体も吹き飛ばされる。
「きゃぁぁぁぁぁ!?助けてくださ〜い!!」
ボロボロの少女は色々なところが見えてしまっていて、並の男なら下心丸出しで助けるだろう。俺とハジメじゃなければ。
「アホか、図々しい」
「お肉、頂きますね」
ハジメは少女の言葉を一蹴。俺は何も考えず肉のほうに走っていった。
「おお!!少し硬いですが、その分筋肉質で歯応えがあって良いですねぇ……む、内蔵ですか……このえぐみもなかなか……奈落の魔物には劣りますが美味しいですね〜」
しかも大量にある。質と量のベストマッチ。思わず声に出てしまう。勿論、汚い食べ方はしていない。その証拠に白いローブには返り血も何もついていない。これが俺クオリティ。
「し、死んでます……ダイへドアが一撃でだなんて……」
「離れろこの痴女ウサギ!!」
「あべしっ!?」
意識をハジメたちの方に向けると、ハジメに抱きつき、本人じゃユエさんから一網打尽に足蹴にされている少女が呆然とこちらを見ている。
「ん?」
「ひぃぃぃ!?ダイへドアよりも凶暴そうな魔物が!?」
「失礼極まりないですねぇ……結果的に助けてもらっているというのに」
「きゃぁぁぁぁぁ喋ったぁぁぁ!?」
「うおらぁ!!」
「へぶぅ!?」
こめかみに青筋が浮かんでいるハジメがついに少女の脳天に向かって拳骨を繰り出した。「頭がぁ〜割れちゃうぅ〜」と唸っているので恐らく大丈夫だろう。流石の打たれ強さだ。防御系が、低い(俺の他のステータスと比べて)ので少し羨ましい。
「おい影二……ってもう半分以上食ってんのかよ……これほっといてさっさと行くぞ」
「逃がしませんよ!!」
「うお!?この……離れろウサギ!!」
魔力駆動二輪を出したハジメの様子を見た少女がガバッと起き上がりまたもやハジメにくっつく。
「先ほどは助けていただいてありがとうございました!!私は兎人族ハウリアの1人、シアと言いますです!!これも何かの縁ということでとりあえず私の仲間も助けてください!!」
「「「ず……図太い(ですね)」」」
思わず声に出してしまった。それも全員。
ハジメにしがみついて離れない少女……シアの姿を見ながら、俺は肉を食う。ハジメは女性ホイホイのアーティファクトでも付いているのだろうか?
少なくともこの出会いは無駄じゃ無いと知っているので、これからのハジメに要注目だ。単純に面白いからな。
影二が演じるキャラの性能に制限は必要?
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いる
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いらない
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どうでもいいから続き書けよ
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もはや、他作品キャラやめて
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どうでもいいから恵里との絡みを増やせ