ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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『演技』の篝火影二

「おねがいします!!」

 

 

ハジメにずっと抱きついている少女、シア・ハウリアの声が谷に響く。不機嫌とかいう表現を天元突破したユエさんが本気の膝蹴りをシア・ハウリアに叩き込んでいるが、それでも離す気配がない。俺?ずっと肉食ってるよ。そろそろ無くなりそう。

 

そんな時、ハジメの右手から紅い魔力光が迸る。あぁ……これ死んだかな?

 

 

「アババババババババババババババババ!?!?!?」

 

 

ハジメの技能の一つ『纏雷』だ。彼の銃のほとんどは、この技能で電気を流すことによってレールガンとして打ち出している。数秒シア・ハウリアがビクンビクンすると、ハジメから離れて崩れ落ちた。

 

 

「ハジメ〜そのままこっちに流して少し焼いてください。締めるので」

 

「もう食い終わるの!?あの巨体を!?……はぁ……ほらよ」

 

「どうも……もぐもぐ……」

 

 

おお……焼かれたことによって肉汁が出てさらにジューシーに……流石だ……流石ハジメだ!!」……おっと思わず口に出してしまった。

 

 

「全く……非常識なウザウサギだ。ユエ、影二、行くぞ?」

 

「ん……」

 

「……ごっくん……はい、ご馳走様でした。行きましょうか」

 

 

美味しかった。今はただそれだけでいい……

 

 

「に……にがしませんよぉ……」

 

 

煤でさらに無惨な姿になったというのにシア・ハウリアはまだ立ち上がる。流石に驚愕したのだろうハジメは魔力駆動二輪に注いでいた魔力を中断してしまったようだ。あーあ、魔力の無駄遣い……

 

 

「お前……ゾンビみたいなやつだな……割と重症レベルの威力でやったんだが……なんで動けるんだよ!?」

 

「……不気味」

 

「おやおや、私の攻撃でも折れませんかねぇ……」

 

「無理……細切れ」

 

 

ダメだそうです。流石のユエさんも今の俺の一言には顔が青くなっている。だよな〜……ナンバーズの使徒でもいればそこそこ楽しめるんだが……

 

 

「うぅ〜なんですかその物言いは!!さっきから肘鉄とか足蹴とか酷すぎると思います!!断固抗議しますよ!!お詫びに助けてください!!」

 

 

ビシッっと指を指してさらに要求しているシア・ハウリア。

 

 

「ったく、なんなんだよ……とりあえず話を聞いてやるから離せ……ってさりげなく俺の外套で顔を拭くんじゃねえぇ!!」

 

「はぎゅん!?……ま、また殴りましたね!?父様にも殴られたことがないのに!!よく私のような美少女をそうポンポンと……もしや殿方同士の恋愛に興味が……だから先に私の誘惑をあっさり否定したんですね!!そうでッあふん!?」

 

 

ハジメにホモ疑惑。やめてやれよ。こいつは地球で男友達居ないんだぜ?俺は性別がないからノーカンな。そして、このウサギちゃん見所がある。まさかアムロネタを放ってくるとは……

 

 

「ユエさん、大丈夫ですよ。ハジメに男友達はいません。私は一応この姿の時は性別がありませんし、私はノーカンなので本当に友達がいません。ええいません」

 

「……可哀想。でも私がいる」

 

「そしてそこ!!なに暴露してくれやがるんだ!!そういえば、そうだなって今思ったじゃねえか。ああ?……クソ」

 

「ハジメ……可哀想」

 

「ぐっはぁ!?」

 

 

あ……哀れみの言葉にハジメが崩れ落ちた。

 

 

「む……?ユエさん、どうやらこの騒ぎで他の魔物もよって来ているそうなので食ってきますね」

 

「んっ……任せっきり……申し訳ない」

 

「いえ、食料調達ですので。終わったら言ってください。召喚【撃鉄】……はダメですね。グチャグチャになってしまいます。【獄鎌】」

 

 

正直、飽きた。そんなことよりも、魔物を食い散らかそうか。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜運動後の食事は格別ですね〜。今度、魔力式コンロでも作っていただきましょうか。せっかくのアザンチウム鉱石製の調理器具も使う機会がないですし」

 

 

軽く魔物をあしらい、気になる奴を食う。そうすること約15分。ハジメからようやくお呼びがかかった。

 

 

「影二、サンキューな。話も纏まったから行くぞ」

 

「ほう……なら走りながらゆっくり聞くとしましょうか」

 

 

魔力駆動二輪にはハジメとユエさんが、俺(擬態バトルウルフ)の上にはシアさんが乗り、樹海まで駆ける。

 

 

「ほぇ〜、篝火影二さんて言うんですね。先ほどはすいませんでした……魔物と勘違いしちゃって」

 

『いいえ、私の姿を見て驚くのは当然の反応ですので。それよりもシアさん。これをどうぞ』

 

 

俺は宝物庫から予備の白いローブを取り出してシアさんに渡す。ちなみに、ハジメに貴重な念話石を貸してもらって3人の脳内に『コイツ直接脳内にっ!?』している。バトルウルフだと喋れないんだよなあ……

 

 

『乙女がそのような格好ではいけませんよ』

 

「おお〜ハジメさんと違ってやさしいですn「あぁ?」ひぃ!?なんでもないですぅ〜」

 

『ハジメ。一応契約者なのでしょう?対等に扱ってあげなさい。顧客は大事にするものですよ』

 

「……はぁ。分かったよ」

 

「おお……あのハジメさんがこうも簡単に……そういえば、ハジメさんや影二さんってさっき魔法を使ってましたよね?ここでは使えないはずなのに」

 

「ああ……それはな……」

 

 

大体の事情はハジメが説明した。念話石で話すのにも魔力を消費するためハジメが考慮してくれたからだ。

 

ハジメはシアさんに、ハジメ製のアーティファクトや魔法を使える理由などを簡単に説明した。

 

 

「えっと……それじゃあお三方も直接魔力を操れたり固有魔法が使えると……」

 

「ああ、そうなるな」

 

「……ん」

 

「グルゥ……」

 

 

む?何やら背中に冷たい感触が……この匂いは……涙?

 

 

『シアさん、どうかされました?』

 

 

俺の念話に2人も気づきこちらを向く。

 

 

「いえ……ただ、1人じゃなかったんだなって思ったら……なんだか嬉しくなってしまって……」

 

「「「…………」」」

 

 

ハジメたちからの説明によるとシアは亜人族の中では忌子とされる髪や能力の持ち主らしく、生まれた時に殺すべきとかいう風習がある。温厚で同族に情の厚い兎人族ハウリアはそれを隠し16年も育てた。そしてついに亜人族に見つかってしまい、一族郎等根絶やしの処分を受けて、逃げ出しこの谷まで逃げてきたらしい。しかしヘルシャー帝国という国では亜人族の奴隷が多くいて、その中でも特に兎人族は愛玩奴隷として人気らしいので、帝国兵士に出会ってしまったハウリア族の一部が捕らえられた……と。

 

『魔力操作』や固有魔法を持つのは本来魔物だけ。そういう意味で、ずっと同じような人がいなかったシアさんにとっては、俺たちのような魔力操作持ちは同族に見えたのだろう。

 

 

『シアさん。この世界は貴女が思っているよりも広いのです。【貴女だけ】なんていうことは余程のことがない限りあり得ません』

 

「影二さん……ありがとうございます」

 

「影二……(それめっちゃブーメランだぞ……お前しかドッペルゲンガーなんていなさそうだしよ)」

 

 

ハジメが怪訝な顔でこっちを見てくる。どうせ、ドッペルゲンガーは俺だけだからブーメランだぞ?とか思っているのだろう。

 

そのあと、何故かユエさんとハジメがいちゃつき始めた。今の流れで……?

 

 

「あの影二さん……私たちのこと忘れられてませんか?一応、状況的には私が慰められるべきだと思うんですけど……そんな事があれば私コロッと堕ちちゃいますよ?チョロインですよ?せっかくのチャンスなのにスルーするなんて……寂しいです!私も仲間に入れてください!」

 

『一応……私、慰めたんですけどねぇ……いや、別に1人以外にモテたくないんで良いんですけど』

 

「「黙れ残念ウサギ!!」」

 

「……はい……ぐずっ」

 

『シアさん大丈夫ですよ?この姿の私の毛、ふわふわですけど触ります?』

 

「…………さわりますですぅ〜。きもちいぃですぅ〜。傷ついた心と体が浄化されていきますぅ〜」

 

 

そう言って全身で巨体を撫で回してきた。

 

 

「影二……ウサギにやさしい」

 

「あ〜……多分、同族に裏切られたってことで同情でもしてんじゃねえの?しかも、影二基準では人間族以外は、アイツの『嫌いな人間』判定されないらしいし」

 

「へぇ……」

 

 

泣いている女性を放置してイチャラブな世界を作り出している2人も割とどうかと思う。こんな感じのやりとりが数回繰り返された時、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。

 

 

「ッ!!皆さん!!もう直ぐみんながいる場所です!!父様たちがいる場所です!!」

 

『では、シアさん。一度ハジメの方に乗り移ってくれませんか?やらないといけない事があるので』

 

「ふぇ?それはもちろんやぶさかではないですけど……ハジメさーん。影二さんから頼まれたので乗せてくださーい」

 

 

俺は体をハジメの魔力駆動二輪の方に寄せる。

 

 

「影二が?……何するんだ?」

 

『大勢がいるそうなので人間体にします。差し当たって……シアさんが上にいると邪魔なのです』

 

「……たくっ、仕方ねえな。おい残念ウサギ、ありがたく思え。俺の後ろに飛び移れ。ウサギなんだから飛ぶのは得意だろ」

 

「ありがとうございますです!!いや〜、やっぱり影二さん分かってますね〜。これでハジメさんとの距離も物理的に縮まっt「側面に縛り付けて引き摺ってやろうか?」……今すぐ飛び移らせて頂きますですぅ!!」

 

 

このウサギは反省という言葉を知らないのだろうか?額に青筋を浮かべたハジメの言葉によって、急いで魔力駆動二輪に後ろに飛び移ったシアさん。それを確認したあと、俺はすぐに人間に擬態する。

 

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篝火影二 17歳 レベル76

天職:役者

筋力:4500

体力:2800

耐性:2000

敏捷:36000

魔力:30000

魔耐:2000

技能:演技[+千変万化][+武器操術補正]・文才[+心象投影]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇]・裁縫・家事・我流武器操術[+槍術][+拳術][+剣術][+弓術][+鎧術][+鎌術][+鋸術][+扇子術][+奏術]・生成魔法・言語理解

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人間用のステータスはこれで良いだろう。え、高いって?まあ、元の姿から一桁減らしただけだからな。魔力に関しては聞くな。これ以上減らすと擬態を維持できない。敏捷は、これくらいないとハジメたちの魔力駆動二輪についていけないんだ……。地球にいた頃は魔力無しで擬態できてたんだがなぁ……。召喚に合わせて体の仕様もこの世界基準に調節されたらしい。エヒトめ、絶対に許さん。

 

 

「おいおい……影二お前……ステータスにどんな振り方したんだよ……コイツについて来れるとか敏捷おかしいだろ。んでもってやっぱその口調懐かしいな。……キモいわ」

 

「仕方ないだろう。バイクに4人乗りしろとでも?だったら多少おかしな目で見られてもこうしないといけないからな。まさか、今から4輪に乗り換えなんかしないだろ。あとハジメ、後で俺の元の姿で鬼ごっこな?」

 

「……影二の口調……気持ち悪い」

 

「ふわぁ……お話には聞いてましたけど、ここまで変わるんですね〜」

 

 

ボロクソに言ってくれるじゃないか……。何故だ、何故並走しているだけでこんな扱いなのか。というか、さっき確認したが、『演技』の派生技能『千変万化』って神域での天之河の技の名前にもあったよな?すこぶる嫌なんだが……

 

 

「ッと……お前ら、無駄口はここまでだ。気配感知に反応があった。地上に40前後くらいの人、空に……6匹の魔物だ」

 

「空!?てことは……ハイベリアです!!急がないと父様たちがッ!!」

 

「ハジメ、俺は先に行く。召喚【魔弓】」

 

 

宝物庫から【魔弓】を取り出し、黒いスイッチを押すことで魔力を伴わない弦を出した。さらに宝物庫から矢が収められた矢筒を取り出し背負う。そして、そのまま走る速度を上げて魔力駆動二輪を追い越した。

 

 

「おい!!……アイツ、マジで速いな。いや、負けてられねえな!!人間に(人間じゃないけど)負けるバイクなんてねぇんだよ!!」

 

「ハ、ハジメ!?……速すぎる」

 

「うわぁ!?ハジメさん、安全にお願いしますですぅ〜!!」

 

 

俺たちは、爆走しながら峡谷を駆けて行った。

 

 

2分ほど走れば、空を飛んでいる魔物が見えてきた。

 

 

「ハジメ、俺はここから狙撃する。先に行ってろ」

 

「ああ分かった」

 

 

俺は足を止める。ただ、速すぎたためズザザザ〜と土煙を上げながら自分の体にブレーキをかけた。

 

 

「この距離なら……わざわざ演じる必要もない。訓練の成果の見せ所だ」

 

 

右膝を着き、矢筒から矢を取り出して構える。人間族の平均の1000倍以上はある筋力でしっかり弦を引くが、さすがオルクス大迷宮産の魔物の糸。そう簡単に千切れはしない。

 

ハジメはすでにドンナーを取り出し構えながら運転している。ハジメが接敵した瞬間に俺も射ろうか。

 

 

ドパンッドパンッ!!

 

「……………………ッ!!」

 

 

俺は矢を放つ。軌道はハイベリアというワイバーンのような魔物を捉えているがここは谷。そして距離にして約300m。常識的に考えれば弓の射程なんぞはるかに超えている。しかし、我流武器操術の派生技能による補正も考えればその矢を外すわけもない。

 

 

「「「グギャァ!?」」」

 

 

その矢はしっかりとハイベリアの頭に突き刺さる。矢もハジメがしっかり作ったものであるため丈夫で強い。ハイベリアの悲鳴が重なって聞こえたのは恐らくハジメがやったものだろう。銃声も響き渡っていたし。

 

 

「第二射……構え………………今ッ!!」

 

 

一人で何を言っているのだろうと思われるが、まあルーティンの一つだ。二発目もしっかりとハイベリアの姿を捉えて命中。しかし今度は翼にだ。シアさんが宙を舞っているがハジメが投げただろうから無視。万が一にでもシアさんに当てるような訓練の仕方はしていない。ハイベリアは飛行が出来なくて落ちている。殺し切れていないがハジメがやるだろう。もう後はゆっくり歩いてハジメたちの元に向かう。【魔弓】のテストも終わったしな。魔力の弦と矢を試せてないけどまあ今はいい。

 

……はぁ、二射目は当たりこそしたが殺すまでには至らなかったか。そりゃあ1ヶ月もやってないのに弓が完璧になったなんてあり得ないから当たり前だ。そんなこと言えば全弓道民からフルボッコだろう。だが、()()()()()()()()何も出来ないのでは意味がない。以前、ユエさんに『演技=俺』みたいな事を言った。大体合ってると言えばそうなのだが俺が何も出来なければこれから先、恵里と共に歩もうなんぞ言う資格はない。俺の全ては恵里のために、それが今の行動原理だ。

 

早足で歩けばすぐに合流できた。どうやらハウリア族との顔合わせの最中なようだ。

 

 

「おう、遅いぞ影二。俺が作った【魔弓】、完璧な仕上がりだったろ?」

 

「影二……良い腕」

 

「凄かったですぅ!!影二さんいろんな武器を使えるんですね!!」

 

 

……まあ、今はこういうのも悪くないのかもしれない。ヒトの真似事をしなくてはならないように生まれたことを後悔したけど、どうやらこの世界は俺と相性が良いらしい。全く、神様は何処まで見てこの世界を作って俺を転生させたんだかな。

 

 

「ハジメ……俺の腕を褒めるっていう選択肢は無かったのか?ユエさんやシアさんみたいに扱ってくれても良いんだぞ?【魔弓】は確かに良かったけどな」

 

 

ああ……俺、今『楽しい』のか。コイツらとの旅が……そうか……じゃあそろそろ『苦しい』が来るのか。

 

【楽】の後には【苦】を。

 

【苦】の後には【楽】を。

 

人生はその繰り返し。俺が唯一()()から学んだ教訓。

 

 

さて、今回はどんな風に演じようか。

 

 

「初めまして、篝火影二だ。ハジメたち共々、よろしくお願いする」

影二が演じるキャラの性能に制限は必要?

  • いる
  • いらない
  • どうでもいいから続き書けよ
  • もはや、他作品キャラやめて
  • どうでもいいから恵里との絡みを増やせ
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