ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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最大の試練(誰のとは言ってない)

「はぁ……はぁ……ここは?」

 

 

思わずハジメたちから逃げてしまって何時間経っただろうか。あれから俺はずっと走り続けた。何も考えず、何も見ず、何も聞かず、ずっと走った。ようやく止まってみれば、どうやらライセン大峡谷に戻ってきたらしい。

 

 

「……なるほど、楽しみすぎたのですね。あーあ……苦しいなぁ……何ででしょうか……」

 

 

【楽】の後の【苦】は思ったよりずっとキツかった。ハジメたちの顔を見ると何故か胸が張り裂けそうになる。だから逃げた。

 

 

「所詮私は……バケモノですか。……それにしても、方向音痴にはうってつけの場所ですね、ここは。東西どちらかへの一本道しかないのですから」

 

 

顔をあげれば果てしなく続く一本道。こんな広大な峡谷で、シアさんはすぐに迷宮を見つけることができたのだから凄まじい。

 

 

「……少しの間、ここら辺にいましょうか。頭を冷やさなければいけませんし」

 

 

運良く迷宮も見つかれば万々歳。そうでなくとも、反省にはちょうど良い。

 

 

「ある意味では、ハウリアに対する反面教師でしたね。殺しを楽しんではいけないという」

 

 

確か、ハー◯マン式で改造されたハウリアをシアさんが諫める筈だ。帝国兵と同じ顔をしていると。ならば、それよりも凄惨な場面を見たのだから意識に変化はあるだろう。別に己の行為を肯定するわけじゃないけど、人間らしくは無かったな。

 

 

「はぁ……ミレディ・ライセンの迷宮でも有れば憂さ晴らしが出来るのですが……おや?」

 

 

『おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

 

 

噂をすれば何とやら……正直タイミングが良すぎるし、方向音痴の俺にとってはあきらかに何者かの作為が働いているとしか思えない。もしや神が手を出さねばならないほど俺の方向音痴は機能しているというのか……

 

 

「ま、まぁ……せっかく巡ってきたチャンスですし……挑むとしましょうか……ええそうしましょう。ここのウザさならば馬鹿な事をした私への罰になるでしょう」

 

 

こんな変な感じで、1人での迷宮攻略が決まってしまった。

 

 

「確かこの辺りに回転扉が……ぬお?」

 

 

適当に壁を触っていたらビンゴだったらしい扉が回転して、後ろから迫る扉に押されて中に入れられてしまった。

 

 

ヒュンヒュンッ

 

「む……チクチクしますねぇ……?矢?この程度の矢では私に傷一つつけれませんとも」

 

 

無数の矢が俺の体を貫こうとして弾かれ、時にはすり抜け……全くのノーダメージだ。衣服が穴だらけな点を除けばだが。縫い直し……いや、新しく買ったほうが早いか。金なんて全く持っていないけどな……

 

広い空間の真ん中に、入り口の時と同じような石板がある。

 

 

『びびった?ねえ、びびっちゃった?ちびってたりして。ニヤニヤ』

 

『それとも怪我した?もしかして誰か死んじゃった?……ぶふっ』

 

 

【ライセン大峡谷】のコンセプトは卑劣な神陣営からのあらゆる攻撃を魔法を使えない状況下で対応する力を磨く事。正直な話、この程度でイラつくような俺ではないし、なんならどれだけイラついていても演じる事でごまかす。演じる事は魔力を使わないからな。ちなみに、この迷宮に入ってから外よりも魔力分解作用が働いていて、正直なところ擬態は無理だ。

 

 

「ミレディ・ライセン。どうせ最深部から見て聞いているでしょうから先に言っておきます。私は全てのトラップを破壊して通ります。そして私は、天性の方向音痴です。一本道でも確実に迷います。覚悟はいいですね?」

 

『…………』

 

 

石板には何も書かれていない。何言ってるんだコイツ?ってところだろうか。

 

 

「ちなみにこんな見た目ですが、エヒト陣営ではありません。異世界にいるバケモノだとでも認識していてくださいな」

 

 

ひとしきりの自己紹介は終わった。さぁ……攻略を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

〜三人称視点〜

 

 

3日後

 

 

 

「な、何なのコイツ……嘘でしょ……」

 

 

とある空間で、フードを被った小さなゴーレムが何かを見つめていた。このゴーレムの名はミレディ・ライセン。七大迷宮【ライセン大峡谷】の創設者にして、管理やラスボスを担当している。そんな彼女は、3日前に挑んてきた挑戦者の様子をモニターしていた。

 

 

「なんで……なんで……こんなに一本道で迷うことができるのかな!?」

 

 

そう。この迷宮なら3日程度は普通……いやまだ序盤も序盤。ミレディがわざわざ悲鳴を上げるようなことはないのだ。そんな彼女が驚きを隠せない相手……人型の真っ黒なボディに、赤く光る眼光。たまに口らしき箇所も動いていることから独り言を呟いているであろう、ソイツの名前は……篝火影二。彼は、余程の弱者でもない限り数時間もあれば攻略できるようなトラップの数々を全てを徹底的に、残弾も許さず破壊していく。ミレディが何年もかけて準備してきた自信のトラップをだ。

 

 

『……この道は通りましたね。という事はまたどこかに隠し扉があるのでしょうか?』

 

「そんなわけないでしょ!!その一本道を普通に行けよバカァ!!わざわざ壁を破壊してまでなんでそんなところ通るかなぁ!?」

 

 

ミレディから見れば、彼は世界一の鬼畜に見えただろう。一本道のはずなのに、壁を破壊し、別の道を行き、そしてそこでまたトラップを破壊。それを繰り返し、いつのまにか入り口に戻ってきている。仕様で入り口に戻らせているわけじゃない。彼自身の感性でいつのまにか戻っているのだ。この迷宮は一定時間ごとに道が入れ替わるようになっている。空間魔法という神代魔法を使い実現しているが、それは壁の向こうに別のトラップ部屋が隣接している。それを見事に引き当て、尚且つ入り口に戻る。トラップを破壊しながら……

 

 

『……全く、ミレディも往生際が悪いですねぇ。このままでは次の挑戦者が来る前に全てのトラップを破壊してしまいそうです。……いや、敢えて破壊するというのは……ありですね』

 

「ありなわけないでしょ!?コイツ……性格悪ッ!?てかなんで私が追い詰められてるんだよぅ!?」

 

 

七大迷宮というのは、神代に神へ反逆した者たちが、それぞれの得意とする魔法を授けるために試練を課す場所。しかし、現在ミレディが逆に篝火影二に試されているような状況だ。

 

 

「せめてゴーレム部屋にはたどり着いてよ!!それよりもなんで生身でトラップを食らってなんともないわけ!?あの体何でできてるの!?岩の大玉を人差し指で破壊したと思えば、壁の両側から出てくるノコギリ状の刃が切り裂いたはずなのになんともないようにくっつきやがって!!あれなんて生物!?」

 

 

ドッペルゲンガーです。そんな事は今のミレディにはわかるわけもないが、本気で彼女は困っている。迷宮の修繕のために使用しなければならない資材の量はもちろん、それを行うための魔力、次の挑戦者が来るまでの時間。いくら神代魔法があると言っても、ここまで無残な事になれば全てに膨大な量を必要とさせられる。不定形の異形である影二とっては相性がいいと言える。

 

 

「そういえば、なんで印とかつけてマッピングしないんだろう?いくら方向音痴だと言っても、さすがに印さえあればいけると思うんだけど……」

 

『…………マズいですね』

 

「お?やっと諦める気になったかな?」

 

 

影二のネガティブな声が聞こえ、画面を覗くミレディ。しかし現実は非情だ。

 

 

『飽きてきました……全力で魔力を解放すればこんな壁を破壊して、最深部と空間ぐらい繋げられるのでは……はッ!?』

 

「はッ!?じゃない!!……なんてこと言ってくれてんの!?コイツ……挑戦者云々関係なく人類の敵でしょ!!」

 

 

もう一度言おう。この迷宮のコンセプトは卑劣な神からの精神攻撃への耐性をつける事。だが現在、管理者であるはずのミレディが、卑劣な挑戦者からの精神攻撃への耐性を強制的に引き上げさせられていた。そしてミレディは気づいていない。篝火影二はすでにそれをクリアしているから、このトラップ達を無視させて実力を試すゴーレム部屋まで案内しても良いことに。それに気づかなければ……ミレディはただただ迷宮を破壊されていく被害者になるだけなのだ。そして、影二の言っていることは、影二が本気を出せば出来てしまうことなのでその対策も、ミレディは考えなくてはならない。彼女はゴーレムの体にないはずの胃がキリキリと痛む感覚を覚えた。

 

 

ズドガァァァァァァン‼︎‼︎

 

 

『お……新しい道ですね。行ってみましょうか』

 

 

「もう……もう……もうやめでぐだざぁ〜い」

 

 

涙も出ないはずなのに……ミレディの声は明らかに泣いていた。彼が迷宮を攻略するまでに、ミレディの精神は持つのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

〜影二視点〜

 

 

 

さらに4日後

 

 

「……食料が底をつきましたね」

 

 

ずっと迷宮内部にいて時間の感覚がわからない。食事は元々必要無いため食べなくても大丈夫だが、睡眠は一応必要だ。と言っても毎日寝ているわけでは無い。適当に眠くなったら寝るという感じだから全く日にちも分からない。

 

 

「やはりここのトラップはぬるいですねぇ。早く次のステージに進みたいものです」

 

 

侵入すぐに宣言した通り、襲いかかってきた全てのトラップを根本から破壊しながら通って来た。きっと今頃ミレディは発狂しているだろう。

 

 

「したよ!!それはそれはもう毎日毎日発狂したからね!?」

 

「…………おや?」

 

 

どこからか声が聞こえてくる。ふと後ろを振り返ってみれば、フードをかぶったゴーレムの姿が。

 

 

「おやおや……召喚【撃鉄】」

 

「ちょっと待って!!確かにこんな迷宮でこんなゴーレムが出てきたら身構えるけどちょっと待って」!」

 

「自覚あるんですね……」

 

 

手をパーにしてブンブン振り、顔の表情も焦ったものに変わる。……便利だなそれ。

 

 

「はぁ……私がこの迷宮の創設者のミレディ・ライセンちゃんだよ。よろしくね」

 

「これはこれは御丁寧に。篝火影二と申します。この度は憂さ晴らしも含めてこの迷宮に挑ませていただきました」

 

「憂さ晴らし!?だからあんなに破壊してくれちゃってたのか!!」

 

 

丁寧に発射口を潰し、残弾を探して粉砕。仕事は徹底的にやるべきだ。

 

 

「それで、わざわざ貴女が出てくるような用事とはなんでしょうか?」

 

「あぁ……それね……ほい」

 

 

ミレディの疲れ切ったような声の後、迷宮の構造がまた変わった。

 

 

「あの扉の先が順路だから。お願いだからこれ以上迷宮の破壊はやめて欲しいかなって」

 

「おや……いいんですか?ショートカットなんて作ってしまっても。もし私が迷宮を攻略した時に神代魔法が得られない可能性があるのでは……?」

 

「ここでの試練はもうクリアしてるから大丈夫……ていうか早く先に行って欲しいんだよ。ていうか行って、今すぐにでも!!」

 

 

両手を腰に当てプンスカと怒っているような表情をしているミレディ。ただし声のトーンはひたすら変わっていない。

 

 

「はぁ……分かりました。ていうか、ミレディ・ゴーレムに移らなくて良いのですか?最終試練まで一気に突っ切りますよ」

 

「ッ……なんで知ってるの?」

 

 

今度は警戒したような声になった。いつでも重力魔法を使えるように備えているし。

 

 

「そうですねぇ……私の固有魔法とでも申しましょうか。そうとしか、今は説明できませんし。ああ、別に他の人にここの事をチクったりしてませんよ。チクったところで、攻略できる人間なんぞ2桁もいないでしょうし」

 

「…………君さ、ほかに攻略した?」

 

「オスカー・オルクスの所だけですね。実はかくかくしかじかでして……」

 

 

【オルクス大迷宮】を攻略した経緯を軽く説明した。

 

 

「へぇ……でも、他の神代魔法無しじゃ攻略は無理だったはずだけど……」

 

「私、ドッペルゲンガーですので」

 

「説明になってないんだけどな……」

 

 

神の使徒以外には遅れはとらんよ。この世界の魔物は弱すぎる。

 

 

「じゃあ、私は行きます。あ、修繕頑張ってくださいねw」

 

「絶対に後でぶっ殺してやる!!」

 

 

そうして、ミレディは空間魔法で転移していった。御丁寧に中指を立ててから。

 

 

「……行きますか」

 

 

床、壁、天井全てに『順路→』って隙間なく書いてあるのは流石に悪意があると思うんだ。ていうか迷宮で順路って……

 

 

「ミレディ・ライセンって意外とお茶目なんですねぇ……」

 

 




『ミレディ・ライセンって意外とお茶目なんですねぇ……』

「だぁぁぁれのせいだとおもってんだごらぁぁぁぁぁ!!!!」

「……はぁ。結構面白い子だったね。性格は別として。さて……私じゃ手に負えないかなぁ。……もしかして彼なら……って思っちゃったけど、どうしようかな。君はどう思う?」

「…………」

「まぁ、そうだよねぇ……でもミレディ・ゴーレムまで壊されちゃったらなぁ……う〜ん。ごめん、やっぱりお願いするね」

「…………?」

「いいよいいよ〜死んじゃったらそこまでの奴って事だし、彼、ほっとくと危なそうだしさ」

「…………」

「え、仕返し?いや〜人聞きが悪いよ。……ちょっと地獄を見てもらうだけだから。じゃあよろしく、ヌルちゃん。えいっと」


ガチャン……


「…………了解」

檜山と光輝の生殺与奪は君達にあるのだ!

  • 檜山殺
  • 光輝殺
  • 両方殺
  • 両方不殺
  • クラスメイトも一緒に……殺?
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