ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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『自由』の名の下に

『はぁ……解放者の1人として、篝火影二の【ライセン大峡谷】攻略を認めるよ。まさかヌルちゃんが負けちゃうなんて……』

 

「いやぁ……強敵でしたね」

 

「どの口が言うの!?」

 

 

スッとミレディが小さいゴーレムの姿で現れた。空間魔法で転移したのだろう。

 

 

「…………あの」

 

「ん、どうされました?ヌルさん」

 

 

その場に女の子座りで、呆然とした表情でこちらを向いているヌル。

 

 

「なぜ……トドメを刺さないのですか?」

 

「質問に質問を返すようで悪いですが、なぜトドメを刺さねばならないのです?」

 

「当たり前でしょう……わたくしは負けたのです……」

 

 

悲痛な表情をして顔を伏せた。

 

 

「はぁ……ミレディ、貴方達解放者の合言葉のような物を、私はオスカー・オルクスから聞きました」

 

「ん〜?あぁ!!『君のこれからが自由な意思の元にあらんことを』……だね」

 

「それは誰に対しての言葉ですか?」

 

「神の意思に囚われてしまった人たちへ、かな?」

 

 

ミレディも真面目な感じで話している。いつもこうしていれば普通に聖人なんだが……

 

 

「ではその言葉は……ヌルさんにも当てはまりますか?」

 

「もちろん。ヌルちゃんは神の使徒だけど、感情があって、心がある。今は私が世話を焼いた分の恩返しを考えているみたいだけど、いつかはヌルちゃん自身の気持ちでこれからの事を決めて欲しいよ」

 

「ミレディ……しかし、わたくしは……」

 

「外に出れば、エヒトからの魔力供給を受け生きていることがバレてしまう、ですか?」

 

「ッ!!……はい」

 

 

最初に聞いた話によれば、エヒトは逃げたヌルを追うために魔力供給のパスを繋げて現在地を確認していたそうだ。エヒト目線では、反逆者の潜伏場所らしき所に瀕死の使徒が言っても殺されるだけだと捨て置いたのだろう。

 

 

「質問です。エヒトに廃棄を決定された後、どうして逃げたのですか?」

 

「……わたくしは、信じたかったのです。創造主を。きっと何か別のお考えがあるのだと」

 

「では廃棄を真実だと知った後も、どうして創造主の命令を聞かなかったのです?」

 

「……死にたくない。わたくしの感情がそう叫びました」

 

「ほぅ……貴女に備わっている感情が勝手にそう訴えただけで、貴女自身の意思ではないと?この谷の底で一生這いつくばっていくつもりだと……」

 

「ッ……それ……は……」

 

 

どうして俺は、この人にこんなに入れ込んでいるのだろうか?気に入った、と言うのもあるがそれだけだったら別にここまではしない。

 

 

「ちょっと君、そんな言い方ないじゃん!!ヌルちゃんは……私が外の世界の話をするとき、いつも楽しそうな顔して聞いてくれ……って、ヌルちゃん?どうしたの?」

 

 

ミレディが怒ったように、俺に向けてヌルのことを話す。ミレディは途中でヌルからすごい表情で見られていることに気づいた。

 

 

「ミレディ……わたくし、そんなに分かりやすかったですか?」

 

「え……う、うん。いつもキラキラした目で私の話を聞いてくれるし……『お外行きたい』オーラが凄かったよ?磔にしてた時も」

 

(友人を磔にしながらその人の憧れている世界をつらつらと話す解放者ってなんなのでしょうかねぇ……)

 

 

ミレディとヌルは2人で少し話し合っている。話し合っている……はずなのだが……数分ぐらいしてから、何故か口論が始まっていた。

 

 

「だーかーらー!!ヌルちゃんはもう少し我儘になってもいいって言ってんの!!」

 

「いいえこれだけは譲れません!!わたくしは何千年もミレディのお世話になってきたのですから、わたくしはミレディに恩を返さねばなりません!!」

 

「それはヌルちゃんが本当に望むことじゃないでしょ!!何千年も私の我儘で磔にされてたんだから……もう……いいんだよ」

 

(私、いつまで見てればいいんでしょうか……見た目よりボロボロなんで早く休みたい……)

 

 

飽きてきた……天使とゴーレムが口喧嘩している様はなかなか見ていて楽しかったが、内容が何回かループしている。お互い本当に譲れないのだろうが、早くして欲しい。

 

 

「ですから!!どっちみちわたくしは外に出れないのです。出ればエヒトに見つかり、ミレディの存在もバレてしまいます!!」

 

「あっ、言い忘れてました。その点なら問題ありませんので前提条件を考慮しなくてもいいですよ〜」

 

「「え…………?」」

 

 

面倒臭さが声に出てるな俺。しかし、2人にとっては重要度が高かったらしく目を点にして俺を見た。ミレディ……わざわざゴーレムの顔の表情まで変化させなくていい。

 

 

「ど、どう言うこと……地上でエヒトに見つからないってこと!?」

 

「いや、さすがに見つからないってことはないと思いますが、一方的な魔力供給で位置バレし、干渉されることはありません。要は、ヌルさんとエヒトとの繋がりを遮断すればいいのです」

 

 

【ライセン大峡谷】で使うと確実に俺のほぼ全てが持っていれる可能性のある大技。『マギ』に登場する主人公の1人、『アラジン』が用いた魔法だ。『錬金魔法(アルキミア・アルカディーマ)』という魔法がある。

 

原作によれば、空気中の目に見えない小さな『粒』を集めて再構築し違う物質を生み出すらしい。しかし『アラジン』は違う。人体の構成する物質を組み替えて、見た目は本人だが中身は全く違う、という事を成し遂げた。なんでも、魔法式という魔法を使うための色々……この世界風に言えば魔法陣を102万2000個も用いたらしい。この世界で魔法の勉強をした俺なら分かる。おかしい……最悪魔法陣だけは組めても、それを行使するには明らかに人間の脳の許容量では制御しきれない。だから、それを用いれば使徒の体を別の何かへ再構築する事で魔力供給を断つつもりだ。俺はその事をミレディに説明した。

 

「そんなことが……でも、それは物語のお話で……そんな魔法。この世界には……」

 

「ありません」

 

「ッ……じゃあ!!「ですが」……?」

 

「私の天職は『役者』、そして体はドッペルゲンガー。演じ切って見せましょうとも。2つの世界を股にかけた最強の魔導師をね。今日が私の最高のステージになりそうですよ」

 

 

心躍る。2人も……俺の演技を必要としてくれる人がいるのだろう?役者名利に尽きるというものだ。

 

 

「ヌルちゃん!!これで……自由になれるよ!!」

 

「…………すか」

 

「なんて?」

 

「いいのですか……?本当に……わたくしが……自由になって……」

 

 

ヌルの声は震えている。目が潤んでいるから、おそらく涙を我慢しているのだろう。

 

 

「当たり前でしょう。人は自由です。誰かに支配されるものではありません。……しかし自由を得るには、自ら選ばなければならない」

 

「自ら……選ぶ……」

 

「選びなさい。貴女はこれからも一生この地に這いつくばって生きるのか、太陽が照りつけ、自然に溢れ、今なお命が育まれている世界を夢見て自由を謳歌するのか、それを選ぶのもまた……貴女の『自由』ですから。ミレディを言い訳にするのはやめなさい。貴女は……貴女自身は……どうしたい、ヌルさん?」

 

「君……(あれ、私より解放者っぽくない?もしかしてここに私、いらない?)」

 

 

ミレディがどうでもいい事を考えている気がするがゴーレムだから表情が読めない。それからどれくらい経っただろうか、何秒?何分?もしかしたら何時間も経ったのかもしれない。そう思えるほどの静寂の後、ヌルは口を開いた。

 

 

「わたくしは……外に出たいです!!外に出ていろんな物を見て、聞いて、触って……自由に、生きたいですッ!!」

 

 

涙を流しながら生きたいと叫ぶ彼女は、それでも美しく見えた。

 

 

「クフフッ……分かりました。ミレディ!準備をします。魔力回復薬と、魔力分解の対象を私から外してください」

 

「ふふっ……オッケー!!」

 

 

ふと、体が軽くなった感覚を覚えた。どうやら魔力分解から逃れることができたらしい。ミレディって割と神代魔法に対する適正高いよな。

 

 

「ミレディ、宝物庫を預かっておいてください。中に女性物の服も入っていますので」

 

「なんで入ってんの……?」

 

「女性体にも擬態するからですよ。そして、私に正確な性別というものはありません」

 

「ふぅ〜ん」

 

 

訝しげな視線がミレディより送られてくる。さっさと魔力回復薬寄越せ。

 

程なくして、ミレディから貰った魔力回復薬が効き、ほとんどの魔力が回復した。

 

 

「さて……では始めましょう。ヌルさん、先ほどの戦闘で傷などはありますか?」

 

「……いいえ、ありません」

 

「それは良かった。傷一つの違いでまた魔法式を変えなくてはいけませんからねぇ……なるべく肌に物理攻撃を当てなくて正解でした」

 

(あら……わたくし、もしや手加減されてましたの?ハンデがある状態で手加減されて負けて……ふふ……わたくしも弱くなりましたね)

 

(篝火影二君……素なのかな?無自覚で人を傷つける天才なのかな?そして、ちょっとヌルちゃん嬉しそう?……そんなわけないか〜)

 

 

じゃあ『アラジン』に擬態するか。

 

 

「…………よし!準備は万端。じゃあ横になってくれるかな?ヌルお姉さん」

 

「おねえ……さん……?」

 

「……話には聞いてたけど、本当に凄いねこれ。そしてキモいね君」

 

 

2人からの信じられないような物を見る目。悲しいねぇ……そしてなんで俺が演技してると、キモいって言われるんだろうな……知らない人に補足すると、アラジンの喋り方は割と子供らしい。一人称が僕だったり、◯◯お兄さん、の呼び方をする。

 

 

「ほら早く早く!時間は有限だよ」

 

「……分かりました」

 

 

ヌルはその場で横になった。一応宝物庫に入れていた寝具を取り出して、そこに寝てもらっている。腕や頭、腰に下げていた鎧を取り外してもらってラフな格好のヌルの額に触れる。

 

 

「……錬金魔法(アルキミア・アルカディーマ)!!」

 

 

「あっ……」

 

 

俺の手から広がった光は、ヌルの体を包み込み……彼女の意識を失わせた。全力でヌルの体の構成物質を変える。……やはり人間とは異なる物質が多々使われていた。血液とかも勿論ある、食事も出来れば睡眠も取れる。排泄行為や呼吸も勿論必要だ。そういう意味では、人間に近い事が多い。だが、その中でも神の使徒たらしめる部分を全て別の物に書き換えた。5分ほどかかった。本物のアラジンなら一瞬で完了させていたのに……そして頭が破裂しそうなほど痛い……俺の演算が追いついていないんだろう。

 

 

「うっ……まだまだぁ!!」

 

「ヌルちゃん……」

 

 

あと少し、この欠けた1ピースをはめる最後の工程を……クリアすれば!!

 

 

「はぁ……はぁ……せい……こうだね」

 

「本当ッ!?じゃあ、ヌルちゃんは!!」

 

「うん……もうエヒトに直接干渉されることはないと思うよ、ミレディおねえさん」

 

「良かった……本当に……良かった……ありがとう影二君!!」

 

「ふふっ、僕の名前はアラジンだよ?……うっ!?」

 

 

頭が……痛い……もう魔力が残っていないようだ。まさか6桁もある魔力を全部持っていかれるとはな……もう擬態を保つのも無理だ。

 

 

「げほッ……まさか、僕の体で血を吐くなんて……擬態を解きましょう。もう無理です」

 

 

俺はアラジンの擬態を解いた。

 

 

「君ッ……体が!!」

 

「え……あぁ……足りなかった魔力分を微量の生命力で補ったからでしょうか。私も無茶した物ですねぇ……」

 

 

体の感覚が鈍い。どうやら見た目的にも小さくなっているらしい。おそらく、次目が覚めた後のステータス減少は致し方なしか。

 

 

「ミレディ……ヌルさんが起きたらこう伝えてください『貴女はもう自由。私の宝物庫から好きな服を持って、これから好きに生きてください』と。意識を保つのがやっとで……」

 

「うん。じゃあ、私の住居スペースに運んでおくね!!影二君……ヌルちゃんを助けてくれて、本当にありがとう!!」

 

 

ゴーレムの表情が、泣きそうながらも笑顔を浮かべるというとても器用な物になっている。

 

 

「ええ……精々感謝して余生を過ごしてくださいよミレディのババァ……」

 

「誰がババァだこん畜生!?……って、寝ちゃったか。……影二君がヌルちゃんと出会ったのはきっと偶然じゃない。もはや作為的なまでな気がするねぇ……」

 

 

ズドゥゥゥン……

 

 

「うぇ!?はぁ……また壊れたのか〜、トラップ直さなきゃ……」

 

檜山と光輝の生殺与奪は君達にあるのだ!

  • 檜山殺
  • 光輝殺
  • 両方殺
  • 両方不殺
  • クラスメイトも一緒に……殺?
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