わたくしはヌル。元神の使徒です。今は、初めて『ベッド』という物を体験しています。柔らかくて気持ちいいですね。篝火影二は天才です……え、普通にある?という事はミレディも……ほぅ?
「今日もヌルちゃんは気持ちよさそうに寝てるね〜。……起きたら手伝ってくれないかなぁ……全然終わらないんだけど……」
ミレディの声が聞こえますね。無視しましょう。いえ、今まで散々磔にされていたのを今更恨んでいるとかそういうのではありませんよ?本当ですよ?というより、なぜミレディの声が聞こえるのでしょうか……?
「ッ!!…………ここは?」
「ヌルちゃん!?私のこと覚えてる?体は問題ない?違和感は?」
「ミレディ……?質問は一つずつにしてください」
「良かった……いつものヌルちゃんだ」
どうやら、わたくしは今目覚めたようですね……腕も普通に動きますし、目も見えます。声も出せるようですし……問題なさそうですね。
「わたくしはどれくらい眠っていたのですか?」
「えーとね……外の時間で言ったら、3日くらいかな。」
「そんなに……」
「でも本当に良かった……ヌルちゃん……」
「ミレディ……」
涙目の表情のミレディがわたくしに抱きついてきました。……どうすればいいのでしょう?
「ゴーレムボディが冷たいので退いてください」
「急に辛辣ゥ!!君ちょっと影二君に毒されてるよね!?」
「ちょっと何を言っているのか分かりません」
「分かってほしいなぁ!?」
これが……イジるという物ですか。なかなか愉快で楽しいですね。
「そういえば、篝火影二は?」
「ん〜?ああ、そうだったね。ほら振り向いてみなよ」
「え……ッ!?」
なぜ篝火影二が隣に寝ているのです!?……ってまさか!
「いやさ、やっぱりお姫様を救った王子様って結ばれるじゃん?」
「なんのことか全然分かりませんが馬鹿にしている事は分かりました」
「ちょ!?分解はやめてよ!?ギャー!!ローブに穴がぁ!!」
「…………あら?」
そういえば、少し体が重たいですね……魔力も少し減った気がします。
「ミレディ、何故か体が重たいのです。魔力も少なくなっていますし……篝火影二が何かしたのでしょうか?」
「えっ、ほんと?ちょっと待ってね……う〜む……ステータスの最大値が少し減ってるかな?多分影二君が何かしたんだと思うよ」
「……何故でしょうか」
「さぁね〜……おっと。影二君から伝言を託されたんだった♪えっとね……『貴女はもう自由。私の宝物庫から好きな服を持って、これから好きに生きてください』だって〜。はい、これ影二君の宝物庫。ヌルちゃんに似合いそうな服もたくさんあったよ!」
…………服?この鎧じゃダメなのでしょうか?別に何も困らないのですが。
「あ、今別にいらないって思ったでしょ?ダメだからね!ヌルちゃん美人なんだから、もっと可愛い格好しないと♪」
「はぁ……?」
服など動くのに邪魔にならなくて耐久性が有れば問題ないはずです。
「……これからヌルちゃんは外の世界に出るんだし、常識とかそういう知識も勉強しなきゃね?」
「はい。楽しみです」
外……初めて行く未知の世界。ミレディのよればここは大陸の中央らしいですから、行こうと思えばどんな場所にだって通じています。
「ええとね……よし!ヌルちゃんこのワンピースを着てね。影二君なかなかいい服揃ってるじゃない♪あ、私はちょっと修理の続きしてくるから自由にしてていいよ。もう拘束する必要もないし」
「え……あの、ミレディ?」
「じゃあまた後で〜」
足早に行ってしまいました……嵐のような人ですね。
「…………着方がわかりません」
ワンピース……という物らしいです。今わたくしが来ている服?鎧?に似ていますが、これも脱いだ事がないからどうすればいいのでしょう……
「篝火影二の服装は……上と下で服が分かれてますね。でもこのワンピースは繋がってますし……ああ!!上から被れば良いのですね」
着方は分かりました。しかし、肝心の今のわたくしの服の脱ぎ方が分かりません。うーん……はっ……いやしかし……
「ふ、ふふふ……ええ、そうです。一部だけです。ちょっと継ぎ目を分解すればいいのです……」
「ダメに決まってるでしょ!?まさかと思ってきてみれば案の定だったよ!!」
「ミ、ミレディ……誤解です!決して服の脱ぎ方が分からなかったとか、そういうわけではありません!!」
ミレディはわたくしを信用してなさすぎです!!ちょっと翼を出してちょっと肩の部分を分解しようとしただけなのに……
「もう……言ってくれたら手伝うのに。しかも、影二君の前で着替えようとするとか……」
「……?篝火影二に性別は無いはずですが……」
「そういう問題じゃないの!!ほら……両腕上げて」
「は、はい……」
「ちゃんと見て覚えるんだよ?」
「はい!!」
えーとこうして……と普通に脱がしてくれるミレディは流石です。そして、思ったより簡単に脱げますねこれ。見た目以上に機能性も抜群そうです。
「ありがとうございますミレディ……」
「うん……ってうわ……でっか……」
「ミレディ?」
「い、いや……なんでもないよ?あ、ねえねえヌルちゃん。どうせだしその格好で翼出してみてよ〜」
何故そんなことを……?背中は……大丈夫そうですね。肩に袖がありませんし、背中も大きく開いていますから翼を出すのにも不自由ありません。
「いいですが……ッ!?」
「えっ!?」
わたくしの翼が……黒く染まっています!?どうして……
「ぬぬぬヌルちゃん!?どうしちゃったのそれ!?」
「い、いえ……わたくしにもさっぱり……というか、わたくしに関する大体の原因って……」
「……だよねぇ〜。結局は君が起きるのを待つしかないみたいだね。影二君?」
「……zzZ」
「全く……辛そうな顔で気絶したくせに寝息までたてちゃってさ〜……真っ黒すぎて表情わからないけど」
ミレディの言う通り篝火影二の顔は、赤く光る瞳も閉じている為完全に黒い。……少し不気味ですね。
「ふふ……ちっちゃいと可愛い感じがしますね」
「え……そ、そうだね!私もそう思うな〜(……マジ?)」
わたくしの2人目の恩人。篝火影二……ドッペルゲンガーらしく、人間族とも亜人族とも魔人族とも魔物とも違う異世界の種族。
彼は強い……魔力が分解されるはずの空間で、わたくしを倒すほどには。初めて……戦闘で『楽しい』と感じました。彼との戦いはエヒトによって作られたはずの心が躍るようでした。それでも……どうやら手加減されていたようです。ハンデにハンデを重ねながらの手加減……わたくしの『断罪』や分解能力は確かに効いていたけど、彼には及ばなかった……
「さて……また修理に戻るよ。ここにはなーんもないけど、好きにしててね〜」
「はぁ……ありがとうございましたミレディ」
また行ってしまいました……暇ですね。ちょっと篝火影二でも見てみましょうか。
「………」
「……zzZ」
変な人……人?いえ、人ではないですね。何故……この方はあれほど強いのでしょうか?愛する人とはどのような方なのでしょうか?あの武器は誰が作ったのでしょうか?あの口調は本当にこの方のものだったのでしょうか?……篝火影二を見るたびに疑問が浮かんできます。しかし……あの時、2人目のわたくしが現れる前に篝火影二が体験したであろう感情が流れ込んできました。
「少しくらいなら……ね?」
わたくしのために頑張ってくれたご褒美……というのはおこがましいですが頭を撫でるくらいならいいでしょう。……おお、意外とあったかいです。でもどうして真っ黒なのに髪を触っている感覚があるのでしょう?落ち着きますね……うにゅ……また眠くなってきました。どうせすることもないのですし、ちょっとだけ……
「篝火影二……あったかい……です……今は……苦しまなくて……良いのですよ…………zzZ」
あんな歪な感情の連鎖を経験して……どうしてまともな感情を持てるのでしょうか?
〜第三者視点〜
「ふんふふんふふ〜ん……よし!トラップの方はなんとかなったね……魔力も少なくなってきたし、休憩しようかな。『界穿』」
全身から淡い光を放ちながら、ミレディは呟く。どうやら影二に破壊されたトラップが直ったようだ。そのままミレディは神代魔法の一つである空間魔法を使って作ったワープゲートを通りヌルのいる部屋までショートカットした。
「おや?おやおや〜、ヌルちゃんったらやるね〜!もうべったりじゃん」
そこには、小さくなった影二の体を抱き枕のようにして眠るヌルの姿があった。
「う……うぅ〜ん。特大の肉まんが顔に……」
「どんな夢を見てるのさ……影二君」
「篝火影二……わたくしの……主様」
「どんな夢見てるのさヌルちゃん!?」
唐突に変な寝言を言い出したヌルへのツッコミのキレは、疲れているのにも関わらず衰えていない。
「ふふっ……2人のこれからが、自由な意思のもとに有りますように」
檜山と光輝の生殺与奪は君達にあるのだ!
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檜山殺
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光輝殺
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両方殺
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両方不殺
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クラスメイトも一緒に……殺?