「本当にすみませんでした」
「おう、もういいさ。どっちかって言うとうまく働いたしな。なぁシア?」
「ちょっと何言ってるかわからないですぅ……」
「だからお前ってどこからネタを仕入れてんの?」
ハジメたちからの説教は終わったらしい。もういつもの雰囲気に戻っている。やはりシアさんがいるとこのパーティーの雰囲気もなごやかだ。
「そういえば……あの人誰?」
「ああ、紹介しましょうか。ベル」
「はい、主様」
ユエさんが、ベルに気付いて聞いてきた。ハジメやシアさんも思い出したかのようにあっ……という顔でベルを見ている。
「リベルタと申します。主様の従者として、皆さんの旅に同行させて頂くことになりました。ベルとお呼びください。よろしくお願いします」
カーテシーをしながらベルは3人に挨拶した。どこでカーテシーなんぞ覚えたのだろうか……
「南雲ハジメだ。影二の従者っていうんなら別にいいが、役に立たないようであれば追い出すからな」
「ユエ……ハジメの女」
「シア・ハウリアです!!よろしくですぅ!!あ、私もハジメさんの女です!!」
「お前は違うだろ」
三者三様の自己紹介。特にシアさんは元気いっぱいだ。
「ハジメ、先に言っておきますが私はベルと『殺し合い』をしました。甘く見てると痛い目に遭いますよ」
「……は?嘘だろコイツが……!?」
「……新しいバケモノ」
「殺し合いしたのに、従者なんですか?」
大体の敵は俺が相手をすると蹂躙か虐殺になってしまう。ステータス差があり過ぎるからだ。だが、殺し合いとはその名の通りお互いがお互いを殺せる状況下にある。つまりそこそこ拮抗した実力がないとできない。ハジメとユエさんはそれを理解したのだろう。
「またまた主様。あの時の主様は魔力が使えない状況で手加減もしていました。つまり、実際には殺し合いにはなっていません。あれは手合わせです。……わたくしは殺すつもりだったのですが」
「貴女の『断罪』こそ結構危なかったですよベル。アレを使わざるおえないほどにはね」
「……会話がエグすぎる。何で影二とまともにやりあえるような奴がそこら辺にいるんだよ」
「大丈夫ですハジメ。そんなにいません」
「逆にいえばちょっとはいるってことじゃねえか!!」
ハジメのツッコミもキレがあっていい。ミレディやハジメはやはり向いている。
「じゃあ、影二さんはベルさんと戦ってそんなに可愛い姿になっちゃったんですか?」
「ん……私もそれが聴きたかった」
「これですか……これなら、ちょっと命を削ってベルに魔法をかけた副作用ですよ。時期に戻ります」
「命をって……何をしたんだ?」
「ベル……話してもいいですか?」
「主様のお仲間なら信頼できます」
ベル……やはりお前俺より性格良いよな。シアさんなんか、良い子ですねぇ〜ってユエさんと言ってるレベルなのに……
「実は……かくかくしかじかで……」
「へぇ……真の神の使徒ねぇ……」
「あの……主様以外にそんなに見つめられても嬉しくないのでやめてください」
「……影二とミレディの両方からいろんな悪影響受けてるな」
ベルの出生から今に至るまでの内容を話した。ベル……未来の大魔王様にそれは……いつか英雄譚として伝えられるレベルの発言だぞ……
「人の体を構成する物質を書き換える?……影二はこの世界の全魔法使いに謝って」
「いや、別に私の魔法ではないですし……」
「ミレディ……女の子を十字架に何千年も磔にしてたんですか?……性格がひん曲がってるとは思ってましたけどまさかそこまでとは……」
「ちょ……ウサギちゃん心外!!ミレディちゃんだってあの頃は必死だったんだからね!!」
ハジメはベル、ユエさんは俺に、シアさんはミレディに標的が行っている。
「で、どうです?これでも反対ですか?」
「いや……文句の一つも出ない。ベルだったな……戦力として期待してるぞ」
「お任せください」
「うんうん……ひと段落ついたようで良かったよ!!じゃあ、そろそろ神代魔法を覚えよっか!!」
思い出したようにミレディが発言し、3人がミレディの方へ行った。
「ベル、貴女は覚えないのですか?」
「主様が寝ている間にもう、修得しました。適性もバッチリだそうです。多少は使えるようにもなりましたし」
そう言って手に黒い球体を生み出したベル。重力球だろう、練度も申し分ない。……ユエさんの役回りが(ry
「ほぅ……そういえば私の適性も聞かなければ」
ついでなので俺たちもミレディのもとに向かう。
「これは……やっぱり重力操作の魔法か」
「そうだよ〜ん。重力魔法って言うんだ。ええと……君とウサギちゃんは適性ないねぇ〜もうビックリするレベルでないね!」
「それくらい想定済みだ。喧しい」
「あ、そうそう。影二君の適性は……微妙だね。金髪ちゃんやベルちゃんほど高いわけじゃないけど、この2人みたいに全く使えないわけでもないし……まぁ、この2人が1週間努力して出来ることが1ヶ月有ればできるんじゃない?」
なんと効率は四倍らしい。ないよりましだけど面倒だな。しかしシアさんも全く使えないわけじゃ無く、体重の増減ぐらいは出来るそうだ。……なんに使うのだろう?
「おい、ミレディ。さっさと攻略の証をよこせ。それから、お前が持っている便利そうなアーティファクト類と感応石みたいな珍しい鉱石類も全部寄越せ」
「君のセリフ、完全に強盗と同じだからね!?自覚あるのかな!?はぁ……最近の若者は礼儀がなってないねぇ……」
ミレディはそう言いながらも自前の宝物庫から大量の鉱石類を出し、ハジメに渡した。
「おいそれ宝物庫だろ。どうせ中にアーティファクト類入ってんだろうが。それごとよこせよ」
「無理だよ。どっかの誰かさんのせいでほとんど残ってないし、君たちが壊した分も修理しないといけないんだからさ」
「知るか。よこせ」
「ハジメ、ストップです」
「ああ?なんでだよ影二」
ミレディの口調からすると、俺がぶっ壊したトラップ類は全て修復した上でハジメたちに攻略されたのだろう。
「実は私、この迷宮を攻略するにあたって、全てのトラップを残弾ごと破壊しながら進んだんですよね」
「……それで?」
「何日か経ってから、ミレディ本人が出張ってきまして、道を用意してやるからこれ以上壊さないでと泣きながらお願いされまして……」
「へぇ……コイツ泣かしたのか。やるじゃん影二」
「そこ!!褒めるとこじゃないからね!!」
「その後もゴーレムやら足場やら、だいぶ破壊し尽くしたので本当に資材は残ってないと思いますよ?」
「…………チッ、仕方ないか」
俺の説得でどうやら諦めた様子のハジメ。先ほどから会話に参加してこない3人は少し離れた位置できゃいきゃいと会話をしている。もう仲良くなったらしい。ベルにはコミュ力まで備わっていたのか。
「たくっ……もっと役に立つ物持っとけよ。俺はただ攻略報酬として身ぐるみを置いて行けと言っているだけだろうに……」
「それを当然のように言える君はどうかしてるよ!!影二君、君もしっかりしてよね!!……うぅ……いつもオーちゃんに言われてたことを私が言うなんて……」
「ちなみに影二の弄りとか、俺とかは全部そのオーちゃんとやらの迷宮で培った価値観だ」
「ガッデムッ!!オーちゃんどうして!?」
膝をついて絶望したような体勢になった。
「はぁ……初めて……ああ、正確には初めてじゃないか。まあ記念すべき一桁台の攻略者がこんなにキワモノだなんて……こうなったら強制的に外に出すからね!戻ってきちゃダメだよ!!」
「ベル」
「分かっています主様」
ミレディは浮遊ブロックに乗って上まで行き、何故かぶら下がっている紐を引いた。
「「「?」」」
ガコンッ!!
「「「えぇ!?!?」」」
ハジメたち3人が驚いた理由は主に二つ。いつものトラップの作動音がして大量の水が部屋に流されたこと。もう一つは、ベルの背中から、漆黒の翼が生えたことだ。しかもその翼は淡く光り羽が宙を舞っている。分解付きだ。
「ふふっ……させないよベルちゃん」
「ッ!!……魔力が……」
「解除していいですよベル。……ミレディ、貴女、本当にそれでいいのですか?」
ミレディが呟くと、魔力分解の対象から外されていたはずの俺とベルは再びその対象に戻された。
「良いんだよ影二君。ベルちゃんをよろしくね……私の……親友を」
「承りました。また来ますよ」
「ミレディッ!!わたくしはッ!!」
「頑張って……君はもう自由だよ!!行ってらっしゃい!!」
ミレディは最後まで笑って俺たちを見送った。彼女はこれからたった1人でこの迷宮を管理していく。そのはずの彼女にしては、とても嬉しそうだ。ベルは悲痛な顔でミレディの名を呼ぶが、もう彼女は後ろを向いてしまった。おそらく顔面の表情が、己の意思に反して勝手に悲しい顔をしているのだろう。
「ベル、私の手を取ってください」
「……はい、主様」
俺はベルを離さないように手をしっかり繋ぎ、抵抗することなく水に流されていった。……せっかくベルに服を着せたばっかりなのに、乾かさなければ。
ドンッ!!
「ひにゃぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?」
何やらミレディの悲鳴が聞こえた。同時に聞こえた爆発音から、ハジメが投げた手榴弾だと言うことが分かる。ハハ……ワロス。
そのまま数分間、俺たちやハジメたちは流され続けた。ベルが大丈夫か心配だったのだが、目に水が入らないようにギュッと目を閉じている。多分水に浸かるのも初めての経験だろうな。
どこが上なのか分からないが、見上げると少し光が見えた。どうやら地上が近いようなので『完全擬態』で人間の篝火影二に擬態しておく。……ただ、もちろん人間なので呼吸が必要。しっかりと息を止めておく。ちなみに、体が小さくなったからといって擬態に影響があるわけではない。元の体に合わせて擬態先も幼くなったりと言うことはないから全く問題ないのだ。
そのまま俺たちは上へ上へと引っ張られ大きく水柱を上げながら地上に飛び出した。
「どぅわぁぁああぁぁぁああ!?」
「んっーーーーー!?」
「…………」
「ベル、目を開けてみてください」
「……ッ!!あぁ……何千年振りかの……太陽ッ!!主様、わたくし……嬉しいです!!」
皆それぞれの反応をしている。俺とベルは場違いな話だがな。そのまま、俺とベルは綺麗に着地。しかし、俺はベルをお姫様抱っこで抱えている。感動しすぎて呆けていたからな。残りの3人は対岸にドボンだ。あーあカワイソー。
「ゲホッ……ゲホッ……ひ、ひでぇ目にあった……アイツ、いつか絶対に破壊してやる……ユエ、シア、大丈夫か?」
「んっ……大丈夫」
ハジメとユエさんが水の中から上がってきた。シアさんの姿はない。
「ハジメ、シアさんは?」
「なにっ!?……おいシア、どこだ!!」
周りを見渡すハジメ。おそらく気配感知を使っている。ピクッと、眉が動きすぐに水中に潜って行った。その間に俺は、魔法使いを演じて魔法を行使する。
「『蒸発』」
ずぶ濡れだった俺、ベル、ユエさんの服や髪などから水分を熱で飛ばす。ちなみに、制御を誤れば体内の水やら血液やらが全部蒸発して干からびて死ぬ。制御のためにちょっと魔力量を増やして使った。……普段の3分の1しかないためちょっと減りが早いし怠い。擬態+演技で使う能力は結構厳しそうだ。
「影二……ありがとう。上がってきたら2人にもお願い」
「ああ、勿論だ。ユエさん」
「……やっぱりその口調、キモい」
「……我慢して欲しいものだ」
最近の俺はどうしてこういう扱いのだろうか。
「主様、わたくしはカッコいいと思いますよ?」
「……ベルはいい子だな。いや、マジで」
俺の従者が出来すぎている件について。そうだよな、持つべきものはこういう存在だよな。これだけでも連れてきて良かったとしみじみ思う……はっ!?殺気?……恵里が嫉妬してくれたのなら嬉しい。
「あ、貴女たちはん?」
フリフリな服を着たゴリマッチョ……もとい漢女が話しかけてきた。ほぅ……よく鍛えられている。
「ハジメたちの仲間だ。用事があって少し別行動していてな……少し前に合流したんだが、天然トラップに引っかかってあの様さ」
「それは……大変だったわねぇ〜。それにしても……貴方、いい男じゃな〜い。王子様みたいねっ!!」
ドスドスと背中を叩かれる。王子様というのは、抱えているベルを含めて俺を見たからだろう。しかしベルに衝撃が響いているからやめてほしい。俺はステータスを弄ってないから痛くないが。まだまだ現地人には遅れはとらんよ。
「主様、ユエさんが視線で主様を呼んでいます」
「ん……ハジメ、やるじゃないか」
「主様、わたくしもアレをしてみたいです」
「却下だ」
振り返ればシアさんがハジメにキス……ではなく人工呼吸されている。そしてその近くでオロオロしながら俺に助けを求めるような視線を送ってくるユエさん。地獄かな、今俺に対応しろと?
「『蒸発』」
「……後でボコる」
とりあえずハジメとシアさんの水気を飛ばし、ユエさんにサムズアップしてからスッと漢女の方に向き直る。ユエさんが何か怖いことを言っていたが俺には勝てないだろうから問題なし。いざとなれば【撃鉄】の『吸収』でどうにかする。
その後、シアさんが復活してから漢女もといクリスタベルさんやソーナ・マサカさんという、ハジメたちが通ってきた【ブルックの街】の住人と自己紹介を行った。どうやらブルックの街へ戻る途中だったらしく、せっかくなのでと、他の冒険者たちが護衛する馬車へと乗せてもらうことにした。ハジメたちは、「なんであの化け物と普通に話せるんだ……」とか呟いていたがハジメよ、他の個体より大きくて強そうなアリがいても一瞬おっ?って思うだけだろ?……そういうことだよ。
「ミレディ……今頃どうしているでしょうか?寂しさのあまり泣いていないでしょうか……」
「ミレディなら大丈夫だろう(今頃、ハジメの報復手榴弾で泣きながら修復活動しているだろうからな)」
ドンマイ、ミレディ。でも地球ではこう言うんだぞ。日頃の行いが悪いってな。
馬車での出来事
「「「「「「リベルタちゃん!!俺と付き合ってください!!」」」」」」
「……主様、付き合う、とはなんですか?」
「男女間の交際のことだ。親しい者同士で行うことが多い。たまに一目惚れで告白してくるやつも居るけどな。大抵下心が丸見えだから気にくわない」
「へぇ……じゃあわたくしと主様みたいな関係ですね」
「「「「「「ッ!?!?」」」」」」
「いや違うだろ……ベル、お前さては天然だな?」
「………?」
檜山と光輝の生殺与奪は君達にあるのだ!
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檜山殺
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光輝殺
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両方殺
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両方不殺
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クラスメイトも一緒に……殺?