ありふれない家族が世界で最も幸せに   作:ゼノアplus+

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第三幕
冒険者として


ブルックの町に到着した俺たちは、ハジメたちが泊まっていたというマサカの宿へ宿泊していた。俺とベルで一部屋、ハジメたち3人で一部屋の計二部屋だ。といっても、ハジメとユエさんがおっ始めそうだったらしくシアさんがこちらへ避難してきたが。

 

 

「ふふふふふ……貴方たちの痴態。今日こそじっくりねっとり見せてもらうわ!」

 

 

外から声が聞こえてくる。と言ってもとても小さな音で、ベルとシアさんには聞こえていない。どうやら、この宿の看板娘、ソーナ・マサカがハジメとユエさんの情事を覗きにきたらしい。ああ、アレすごいもんな。俺だってチラ見した時エグかったし……まあ気になるよな。そういう年頃なら余計に。

 

 

「手洗いに行ってくる」

 

「行ってらっしゃいませ、主様」

 

「行ってらっしゃいですぅ。うぅ……私もハジメさんに……」

 

「何のことですか?」

 

 

シアさんがしょげているが無視だ。今のハジメにはまだ無理だからな。俺は外へ出て、屋根に飛び移ると、垂れていたロープを引っ張り上げる。

 

 

「きゃっ!?……アレ、貴方は」

 

「アイツらを覗くのはいいけど、もうちょいやり方があるだろ?

 

「ふぁ!?……何のことだか……私はただ宿の点検をしていただけで……」

 

 

どうやらどこまでもシラを切るらしい。まあいいけどな。

 

 

「そうか、それはすまなかった。ついでだが、ハジメに払ってもらったから俺たち分の宿泊費は自分で払っていなかったからな。これを渡しておこう」

 

「……これは?」

 

「気配を消す、という効果が付与されたアーティファクトだ。別に簡単に手に入るものだから返さなくていい。……頑張れ、アイツらは……凄いぞ?」

 

「ご……ごくり……分かりました。不肖このソーナ・マサカ、任務を遂行してみせます!!」

 

 

妙にやる気の入った少女の決意を聞いてから俺は部屋に戻る。シアさんが居なかったが、ベル曰くユエさんが連れて帰ったようだ。しかし数分後に「にゃぁぁぁぁあああぁ!?!?」と悲鳴が聞こえたので失敗したのだろう。明日、怒られなければいいのだが……

 

 

「主様の価値観から言えば、人間に興味がないはずでは?」

 

「ふむ……多少は、ヒトと寄り添っていこうと思ってな。ハジメたちに、あんなこと言われたら流石になぁ……」

 

 

だからといって別に敵に容赦はしないし、普通に食うけど。

 

 

「主様、わたくしは少し不安です。わたくしは……他の人と普通に話せているでしょうか?」

 

「特に問題はなかったぞ。あの冒険者たちやクリスタベル、ここの宿の女将や主人、娘などとも普通に喋っていたしな。そんなに気にすることはないさ」

 

 

不安げな表情で俺に相談してくるベル。ゴスロリという服の特性も相まって保護欲を掻き立てられる。

 

 

「そういえば主様、どうして女性3人、男性2人で部屋を取らなかったのですか?」

 

「んあ?そうだなぁ……ベルは外の世界は初めてだ。不安だろ?」

 

「……はい。最初はワクワクしていたのですが、今は少し」

 

「ミレディからもよろしくと言われたからな。当分は、この組み合わせでいく。慣れてきたら、ユエさんやシアさんと同じ部屋で寝るといい。あの2人にはもう説明してあるしな」

 

「お気遣いありがとうございます主様」

 

 

優しげに微笑むベル。だが、その目は少し眠そうだ。おそらく初めてのことが多くて疲れたのだろう。2、3日は続きそうだな。

 

 

「よし、じゃあ寝るか。お前も疲れただろう?慣れない宿のベッドだが、しっかり休んでくれ」

 

「はい。主様、おやすみなさい」

 

「おやすみ、ベル」

 

 

それから1週間ほど、俺たちはブルックに留まった。何やらハジメは得たばかりの重力魔法を使った新しい色々を開発するために、俺はベルが早く人の世界に馴染めるように出来るだけ多く知り合いを作りベルを効率的に案内したりするのに時間を使った。そのおかげか、俺やベルが歩いているのを見かけた住人たちや商店の人たちはよく知り合いのように話しかけてくれた。その間にベルも少しずつ慣れてきて、ユエさんと同じくらいにはコミュニケーションを取れるようになった。そういう行動を取り続ける中で、ベルの好みなどを発見することができた。特に食事、初めて食べたのは俺が作ったコンソメ擬きのスープだったが、えらく気に入った様子だった。その後食事の素晴らしさに目覚めたベルはそれが趣味になった。この世界の食事は割と高いので痛い出費だったぜぇ……

 

そうだ、冒険者ギルドにも登録しておいた。何より俺は路銀を持ち合わせていないので、近場で受けれる依頼をひたすら周回して出来る限り金を集めた。雑用から、採取系、狩猟系、色々受けて緑まではあげれた。下と上からちょうど5番目だ。金も、俺とベル2人で使う分なら余裕が持てるくらいには手に入ったので上々。おかげで、ギルドの人に仕事をしすぎだと心配されたりもしたが、そこにいた俺よりランクの高い人との決闘で圧勝したことにより渋々認められた。

 

 

 

 

〜翌日〜

 

 

 

 

カランカランと冒険者ギルドに音が響く。ハジメが扉を開けた音だ。俺、ハジメ、ユエさん、シアさん、ベルの5人はギルドに用があってやってきた。すでに見知った顔も多くギルド内のカフェから飛んでくる知り合いの挨拶や酒の誘いに対応しながら進む。何やらハジメとユエさんが『スマラヴ』とか呼ばれているらしいがあまり言及はしないでおこう。人間の男であった頃に、股間をやられる痛みはよく刻み込まれているのであまり思い出したくない。

 

 

「おや、今日は全員一緒かい?珍しいねぇ」

 

 

俺たちがカウンターに近づくと、ベテラン受付のキャサリンさんが声をかけてくる。俺たち5人が揃ってギルドに来るのは何気に初めてだからか、キャサリンさんも少し驚いているようだ。

 

 

「ああ、明日にでも町を出るんでな。あんたには世話になったし、一応挨拶をと思ったついでに目的地関連で依頼があれば受けておこうと思ってな〜」

 

 

ちなみにハジメが世話になったのは、開発云々で部屋を貸してもらっていたことだ。俺も、地図を貰ったり、ベルの常識関連の教育をしてもらったりと多大な恩がある。教育に関しては依頼という形でしっかり金を払った。

 

 

「主様、皆さんの飲み物を買いませんか?」

 

「そうだな。ユエさん、シアさん、少し行ってくる」

 

「ん……任せた」

 

「ありがとうございます〜影二さん、ベルさん」

 

 

ハジメたちが話し込んでいる間に、カフェで携帯できる飲み物を買った。

 

 

「ようエージ、リベルタちゃん。お前ら、この町をでてくのかい?寂しくなるねぇ……」

 

「まあ、俺たちにも目的があるからな。ていうかアンタ、昨日もここで酒飲んでただろ?アル中になっても知らないぞ?」

 

「余計なお世話さ、俺の相棒と言っても過言じゃねぇ。テメェらもそうだろ!」

 

「「「「「「あったりめぇよ!!ガッハッハッ!!」」」」」」

 

 

やはりここの冒険者はいい人間が多い。……昼間っから酒飲みが多いのも随分とヤバいけどな。奴らが俺の名前を呼ぶときに若干間延びしているのは発音しにくいらしい。この世界でも日本語は難しいのか……

 

 

「影二、ベル、用は済んだから次行くぞ。挨拶しとけよ。俺らは受ける依頼の手続きをしてくる」

 

「了解。行こうか」

 

 

ハジメたちに飲み物を渡してキャサリンさんの元へ向かう。受付の奥から熱い視線を何人分か感じるが無視だ。

 

 

「あんたは、このブルック支部の期待の新星だったんだけどねぇ……リベルタちゃんも随分と有名人になったもんだよ」

 

「はい、皆さんには本当にお世話になりました」

 

「俺がもし冒険者として有名になったら、ブルックが見出したって事で自慢してくれて構わない」

 

「そりゃいいね。そうさせてもらうよ」

 

 

周りの冒険者たちも、そうだそうだとヤジを飛ばす。悪いヤジじゃないからいいのだ。

 

 

「というか、職員たちの教育はしっかりしたほうがいいぞ?」

 

「あんたのせいでもあるんだけどねぇ……いつのまにかウチの半分くらいの女の子たちを落としてて呆れたよ」

 

「勝手に惚れられても困る。俺は一途なんでね」

 

「あんたにそこまで思われてる子は幸せだねぇ。まぁ、あんたたちも元気でやりな。たまには顔を見せに来なよ」

 

「「もちろん」」

 

 

ギルドの奴らに挨拶をして、俺たちはクリスタベルの店に行った。ハジメだけが嫌そうだったが、1人の意見で覆るものではないし、全員がしっかり世話になっているのでもちろん挨拶をしに行った。ベルに服の着こなしなどを教えてくれたり、俺自身も裁縫を習ったりしたのできっちり挨拶をした。

 

 

 

 

〜さらに翌日〜

 

 

 

 

ハジメが受けた依頼、中立商業都市フューレンまでの商隊の護衛依頼を行うためにハジメがリーダーに商人に挨拶に行った。そのリーダーはモットー・ユンケルというらしい。名前でもう人生辛そうだな。

 

俺とベルは、この護衛依頼を受けた他の冒険者たちへの挨拶回りだ。昨日飲んだくれていた冒険者も若干いたので打ち解けるのも早くて助かった。途中、ハジメから殺気を感じたので何事かと思ったが、いつもの、俺の女だアピールだったので特に変なことはなかった。

 

 

護衛依頼が始まって3日ほど経った。何回か魔物の群れが近くにいるとハジメから報告を受けていたが、俺が【殲琴】を演奏することによる、付与されている闇系魔法の効果によってこの隊への意識を逸らすことで無駄な戦闘を避けながら進んでいた。ちなみに演奏は割と好評で、夜の飯時などによく弾いている。精神に刷り込ませるような弾き方で、演奏で安らぎを与えているため演奏後は心地いいと褒められる。

 

 

「はむっ……おいひいでふね主様」

 

「ベル、物を口入れて喋らないように。キャサリンさんにまた怒られるぞ?」

 

「ごくん……そうでした」

 

 

今日の夕飯はシアさんが用意した物だ。毎日、俺とシアさんで交代しながら飯を作っているため味に偏りが無く、ハジメたちには好評らしい。ちなみに宝物庫から食材を取り出し、ハジメ印のアーティファクト調理器具で料理しているため手間もあまりかからない。シチュー擬きだが、優しい味がする。……どっかで適当な理由をつけて魔物肉でも食いに行こうかな?

 

 

「ダメですよ主様」

 

「急に思考を読むな。ていうか食うの早いなベル」

 

「おいしくてつい……」

 

「ああもう、口元に残ってるぞ。ほらこっち向きなさい」

 

「あ、すいません」

 

 

ベルの口元を布で拭き取る。こういうところはマジで天然なんだよなぁ……『錬金魔法』を使ったときに何故か目つきの悪さも解消されたのでこういう場面を見たらマジでアホの子だ。

 

 

「ユエさん……あれ完全に……親子ですよね?」

 

「ん……両方自覚がない……自覚できるような環境で育ってないから気づかない」

 

 

どこかから変な視線が飛んできているが……別にいいだろう……

 

ちなみにハジメは、シアさんのご厚意で飯を恵んでもらった他の冒険者たちへの説教タイムだ。

 

 

「主様、食後の運動でもいかがですか?」

 

「あー……いいぞ。召喚【烈槍】」

 

 

ベルからの提案で、ちょっと広めの場所に移動し双方武器を構える。ベルはハルバードを一本、俺は【烈槍】一本だ。ベルのハルバードはハジメの手によって、重力魔法が付与され好きなタイミングで重量を増減できるようになった。この一撃が割と重たく、並の魔物なら肉片も残らない。元々のステータス的にも出来そうだが、単純に火力が増した。十分である。

 

 

「はぁッ!!」

 

「むっ、やるな……これならっ、せいっ!!」

 

 

お互いに軽く得物をぶつけ合う。毎日行っているおかげか、他の冒険者にとってはいい見せ物らしい。

 

 

こんな感じで、フューレンまでの道のりを護衛し続け残り1日程度で到着……というときに、無粋な連中が現れた。

 

 

「敵襲です!数は百以上!森の中から来ます!!」

 

 

シアさんの声が冒険者たちの耳に届く。俺たちは警戒態勢を強めた。

 

 

「くそ、百以上だと?最近襲われた話を聞かなかったのは勢力を溜め込んでいたからなのか?」

 

 

護衛隊のリーダー、ガリティマがそう悪付く。

 

 

「召喚【撃槍】【烈槍】……さて、やるか」

 

「わたくしの準備も整いました。いつでも出撃出来ます」

 

 

俺は槍を2本、ベルはハルバードを2本とも構えてスタンバイする。ベルのような女の子が2メートル級の武器を一本ずつ持っている光景に、他の冒険者が驚くがすぐに真面目な表情に戻る。流石ベテラン。

 

 

『2人とも、ストップだ、ユエがやるってよ』

 

「ほぅ……なら任せよう」

 

「そうしましょうか」

 

 

俺たちは、念話石を通じて聞こえてくるハジメの声で武器を収める。他の奴らが俺らの行動に疑問を覚えている間に、空に閃光が走る。

 

 

「彼の者、常闇に紅き光をもたらさん、古の牢獄を打ち砕き、障碍の尽くを退けん、最強の片割れたるこの力、彼の者とありて、天すら飲み込む光となりて、いつしか我らが友を打ち破る、『雷龍』」

 

 

ユエさんの声から聞こえる詠唱が終わると同時に、空に放電する東洋龍が現れる。そのままその龍はまだ姿の見えない全ての魔物を蹂躙していった。

 

 

「流石ユエさん。だが、宣戦布告はしっかり聞き遂げたからな?」

 

 

チラッとユエさんに視線を向ければ、不敵な笑みを返してくる。確信犯だなありゃ。

 

 

『いつしか我らが友を打ち破る』

 

 

ハジメといい、ユエさんといい、俺を目標にしているからには……俺も負けていられないな。

檜山と光輝の生殺与奪は君達にあるのだ!

  • 檜山殺
  • 光輝殺
  • 両方殺
  • 両方不殺
  • クラスメイトも一緒に……殺?
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